年を重ねるごとに、実際に目にしてみたい、その空間に身を置いてみたいと思うようになった。
百聞は一見にしかず、そのときの自分がどんなふうに感じるのか。そもそも出不精ではあるけれど、できるだけ足を運ぶようにしてる。
おかしくて、でもちゃんとかっこよくて。ジーンと胸が熱くなった先週は、ラッキーなことに予期せぬ機会に恵まれちゃった。
私、興味のある人からのお誘いは、できるだけ素直にのっかってみるようにしているの。それが、人を紹介してくれるというものでも、コンサートでも舞台でも。
先輩からお誘いいただいた「CONDORS(コンドルズ)」の近藤良平さん主宰の舞台。
男性(大半はおじさんね)のみで構成されている「コンドルズ」は、学ラン姿でダンス、生演奏、人形劇、映像、コントを展開するダンス集団。
今回の演目のタイトルは、坂本美雨さんの透き通る深く美しい声から始まる『Never Ending Story』。
おかしくて、でもちゃんとかっこよくて。キャストの表情から目が離せなかった。
一生懸命って、なんて素晴らしいんだろ。客席のあたたかさや、ファンの質の良さも伝わってきて、会場全体で包み込まれるようだった。最後にはジーンと胸が熱くなったよ。
新参者なのにも関わらず、打ち上げにも参加させていただいて「会えてよかったー!」ってお伝えしてきた。「危うく知らずに死ぬところだった」って(笑)。
うっかり知らずに死ぬとこだったけど、最高のタイミングで出会えた興奮冷めやらぬ次の日、大好きな人がお寺でおこなわれるライブに連れていってくれた。
事前情報はいっさいなし。行き先がお寺であること、そこでライブがあるってことをタクシー運転手さんに伝える会話のなかで知ったくらい。
「mama!milk(ママミルク)」というアコーディオン&コントラバスのユニットと、京都法然院ではじめまして。
緑が呼吸する深い静けさのなか、鈴虫の大合唱とたまにカコーンと響く庭の添水の音とともに聞く、人が紡ぎ出す生の響きは本当に豊かで贅沢で...。シンプルに気持ちよく音を楽しむことができた。
目をつむって、音が空気を伝わって私の内側を震わせるのを心地よく感じていたら、「寝てたでしょ」って。
生演奏を聴いていると、頭のなかにいろんな景色が浮かんでくる。いつも、そう。この日も曲ごとに妄想を楽しんでたの。気持ち良さそうな顔してたのかな(笑)。
それにしても、あまりに突然の非現実的な空間へのワープは、素敵なサプライズすぎて、忘れられない大切な時間になった。
これもまた、うっかり知らずに死ぬところだったけど、最高なタイミングで出会えて、私のなかに入ってきて、私を変化させてくれた。
このイベントは、毎年開催されているそう。また、来年も大好きな人と一緒にこの空間に身を置けたらいいな。
指折り数えてその日を待った先週は、予期せぬうれしい出会いに加えて、ずっと待ちわびていた人にも会えた週だった。
「STUDIO PREPA(スタジオプレパ)」は、デザインから製作まですべてをご夫婦ふたりでおこなっている吹きガラス作家。私の友人のお姉さんでもあるの。
いつもチェックしているサイトで、8年くらいずっと欲しいと思っていたガラス食器が「STUDIO PREPA」のものだったと知って、本当に驚いた。
友人からお姉さんの話を聞いたときに、「こんなことってあるんだ!」って心が震えてた。ずっとお会いしたいと思っていたから、東京で展示会があると聞いて、指折り数えてその日を待ったよ。
マスプロダクトの製造過程で切り捨てられる、あるいは表現されない「少しだけ気を使った」「ちょっとだけこだわった」ディテールの追究こそが、小さな工房である自分たちの使命だと思っているそう。
とくに心にグッとくるのは、「色」の美しさ。さまざまな色を重ねて作り上げられる小さな宇宙。
宇宙といえば、「RAKU WARE - One of the Most Traditional Japanese Ceramics」を観に樂美術館にも行ったんだった。お茶を習っていたから、茶碗は私にとって親しみのあるもの。
ここでまず私の目に飛び込んできたのは「手のひらの中の宇宙」樂焼き、っていう文字。宇宙がここにもあった!
そして器といえば、「器は料理の着物だ」の言葉で有名な魯山人展にも足を運んできた。
今回、彼の壮絶な生い立ちをはじめて知った。だからってことじゃないけれど、いままで幾度となく触れてきた彼の言葉が、さらに重く深く沁みてきたよ。
「われわれはまず何よりも自然を見る眼を養わなければならぬ。これなくしては、よい芸術は出来ぬ。これなくしては、よい書画も出来ぬ。絵画然り、その他、一切の美、然らざるなしと言える」
いつも胸に置いてる、茂木健一郎さんが彼の著書のなかの「人は美しくなるために生きている」という言葉。ここにも通じる核となる言葉だなって思った。
『すべては音楽から生まれる』のなかにも、こんな一節が。
「本当に素晴らしい演奏に接すると、その体験の記憶は一生残る。そればかりではない。鮮明な記憶は育ち続けるのだ。............記憶の成長とは、いわば、目に見えない道路や空港のようなインフラが、脳の中に張り巡らされていくような現象である。.........記憶の元となる体験が豊かであればあるほど、それをインフラとして育っていくものの可能性も大きくなる。体験にさらなる体験を重ね、人は創造的な存在となっていく」
これから先、どんな体験を積み重ねて、どんな自分になっていけるのか。ひとつひとつ、美しい体験を選べるクリアな目を持ち続けたいな。
秋といえば、食欲、スポーツ、読書、行楽、それからやっぱり芸術...こう言っちゃうとなんでもありだね(笑)。
「〜の秋」っていうのには、それぞれに由来があるようだけれど、なんでもいいから集中して毎日を楽しめるといいな。お買い物をしすぎる秋にだけはならないように気をつけなきゃ。
久美ちゃんは、この秋はどんなファッションを楽しむ予定?
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