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「いいね!」で学ぶ、世界一わかりやすいお金の仕組み(その6)〜なぜ「いいね!」は格差を起こすか〜
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「いいね!」で学ぶ、世界一わかりやすいお金の仕組み(その6)〜なぜ「いいね!」は格差を起こすか〜

2016-11-08 20:30

     「いいね!」で学ぶ、世界一わかりやすいお金の仕組み(その5) の続きです。

     ここまで、「いいね!」の構造とお金の構造を比較してきました。「いいね!」はロングテール構造を持っていて、その分析をお金にも当てはめることで、お互いを比べることができ、「いいね!」のジニ係数を調べたり、両者の「格差指数」を計算して比較もしました。

     しかし、そもそもなぜ「いいね!」の世界はこんなに格差が生まれるのでしょうか。

     (その3)ではなぜお金の格差はなくならないかという問に対して、「いいね!」と同じ構造だからとしましたが、ではなぜ「いいね!」はそんな構造になるかということです。

     だれか強力な権力者が私たちに強いているのでしょうか? そんなことはありません。私たちが「いいね!」する自然な行動から生まれています。

     それは人々の適応能力に由来します。あるいは個性と言ってもいいでしょう。

     たとえば人間全てがクローンで機械のように同じ思考をしていたらどうなるでしょう。

     ニコ動にアップされる動画について、「いいね!」するしないを選ぶとします。すると、ある基準を超えた動画には、全ての「機械人間」が「いいね!」をします。その基準を超えない動画には、誰も「いいね!」をしません。ニコ動には「満点」の動画と「0点」の動画しかありません。

     このような世界がいいのか悪いのかは別にして、この地球で種が生き延びていくためには、このような種は生き延びるのが困難です。

     たとえば人間がバナナだけ食べて生きている生物とします。バナナはクローンで作られているので、一度病気が広がると全滅しかねません。過去には全滅した種もあります。もし人間がバナナしか食べてなかったら、諸共全滅です。

     地球全体に多様な種が繁栄しているのは、生物たちがそれぞれの環境にそれぞれの戦略で適応しているからです。中には非常に限られた環境に特化して生きている種もいれば、より広い環境に適応している種もいます。

     その結果、たとえば、気温が20度から25度に適応している種が100匹いたら、気温が25度から30度に適応している種も100匹いて、さらに20度から30度に適応している種が200匹いるようになります。じっさいある地域の種別個体数をグラフにすると、見事なロングテールになっていると聞きます。

     そうやってそれぞれの種がそれぞれのやり方で適応することによって、地球上のあらゆる場所に生命が繁栄しているのです。

     そして人間は、それをたった一種でやってのけました。一人一人が個性を持つことで、地球上のあらゆる場所にはびこったのです。

     ですから、ネットのコンテンツに対しても、「いいね!」をつけるかどうかは一人一人違います。音楽で言えばロックが好きな人もいればクラシックが好きな人もいるように。

     つまり、動画の再生数が多い少ないは、それだけでは、その動画の優劣を示しません。ニッチな分野であれば、たとえ再生数が10000程度でも、その世界では傑作なことでしょう。そういう動画が何百もあるわけです。

     その中で、最大公約数的な傑作がずば抜けた再生数を獲得します。スマホが一気に広まり世界に広がったように。

     それは最初から大きな再生数を狙ったものかもしれませんが、それを狙ったからといって実際に思っただけ再生数が取れる動画などごくわずかでしょう。逆にPPAPのように、日本でちょっとうければいいやみたいな動画が世界で爆発することもあります。再生数が多いものは、むしろ、そういったものが多いことはみんな経験的に知っています。

     昔のヒットコンテンツは大きなメディアが全国民向けに作ったものからしか生まれませんでしたが、今は個人の他愛のない動画だってその可能性があるわけです。

     それを支えるのが、人々の個性。つまり動画をアップする人は、自分の周りにこれを気に入ってくれる人がいるというインフラだからアップしているのであり、それが結果的に爆発的に再生される動画を生み出しています。

     上で機械のように同じ思考をする人間を考えましたが、実はその世界では、全ての動画は満点か0点かではありません。全て満点になります。だって、0点になる動画なら、そもそも自分がダメだと思って、アップしませんから(笑

     なぜ「いいね!」の世界は格差がひどいのか。あらゆる規模のコンテンツが存在できるプラットフォームだからです。それは劣ったコンテンツという意味ではなく、その規模で成り立つニッチ市場も無数に存在できるということなのです。それはテレビ番組などマスメディアではまったく許されないことでした。

    つづく


    《ワンポイントミライ》(

    ミライ: おお。格差が広がるのは、小さいものも存在できるから。

    フツクロウ: ホウじゃ。しかも無数に。小さいものは小さいながらに無数の需要があるんじゃ。

    ミライ: えーと、なぜ無数の需要が?
     
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