省エネ、安価でアンモニア合成=将来の利用拡大に期待-東大、九州大
で、内容を調べてみたところ、以下は東京大学のプレスリリース。
単純で安価な鉄錯体を触媒に用いた常温常圧の窒素ガスの還元に成功!-次世代型窒素固定法の開発へ前進する研究成果- : 総合研究機構 西林仁昭准教授
52文字中37文字が漢字という脅威のタイトルです。最近科学ではカタカナが多い中、ほとんど漢字でカタカナ2文字しかないとか、ちょっと珍しい気がします。すごい印象的でしたが、なかなか人を寄せ付けない感じです。そこで、このタイトルを読み解いてみようと思いました。適宜プレスリリースの内容を拾っています。
まずは後ろの方から
まず「窒素固定法」とありますが、農業に関係があります。空気中の窒素から植物は育つのに必要な窒素肥料を作る方法(「窒素ガスの還元」も同じ意味)で、今はハーバー・ボッシュ法と言われる方法が使われています。20世紀の大発明と言われていて、人間がこれだけ増えられたのは、この方法でばんばん肥料ができていっぱい農作物が作れるようになったからです。しかし、このハーバー・ボッシュ法は高温高圧(400-600℃、200-400気圧)で行われるなど、とてもエネルギーを必要とします。その結果、なんと人類の使うエネルギーの数%がこの窒素固定に使われているそうです。そこからできる肥料を使って農作物が作られます。私たちは化石燃料を食べて生きているのです。
化学者もその問題は認識していて、ハーバー・ボッシュ法ができた1909年以来、100年以上もっとエコな窒素固定法が研究され続けています。しかし、いまだ実用化できる技術は生まれていません。いわば化学分野におけるフェルマーの最終定理です。
今回、その窒素固定を常温常圧で、つまり温度も上げず圧力もかけず、できたわけです。実現できれば、一気に省エネ進められそうです。
そして前半
これで後半は大体説明できましたが、まだ前半が残っています。実はレアメタルを使うことで、常温常圧で窒素固定する方法は見つかっていました。でもそれでは高価でハーバー・ボッシュ法に対抗する見込みは薄かったのです。今回は、安価な鉄を利用してそれができたのです。ということで、もう一度タイトル。
単純で安価な鉄錯体を触媒に用いた常温常圧の窒素ガスの還元に成功!-次世代型窒素固定法の開発へ前進する研究成果-
すっごいたくさんの情報入ってて、プレスさんの気合いがみなぎってます。
持続的農業に不可欠な技術
気合いも入ろうものです。実用化されれば世界を変える力があると思います。特殊でない安価な装置で常温常圧で動かせて、原料は空気となれば、ようは世界中どこでも窒素固定ができそうです。今貧しい国も自分たちで肥料が作れれば自分たちの食料を作れるようになるかもしれません。日本の中でも各地域の自然エネルギーで窒素を固定し、窒素の地産地消ができるかもしれません。新石器時代における人類が初めて農耕を開始した「新石器革命」、18世紀の輪作と囲い込みによる生産性向上を果たした「農業革命」、上でも触れた品種改良や化学肥料の投入による大量増産を達成した「緑の革命」に続き、本格に持続的な農業が実現する四番目の革命につながるかもしれません(参考:wikipedia)。凄く楽しみです。第四革命を見ずに死ねません。
なお、こういう風にアンモニアが作れると一家に一台アンモニア生成器を置いてそれで走らせるアンモニア自動車とかできるかもしれません。そんな夢のあるお話はこちらから。
臭いアンモニアから、明るい未来が見えてくる(3)
ちなみに、今世界の胃袋を支える超巨大プラント、ハーバー・ボッシュ法を知りたい人はこちらへ。
窒素固定をめぐって-1 - 化学者のつぶやき -Chem-Station-
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