速報コンテンツの一部配信停止について
Softbank 側の設定ミスで、 au が緊急地震速報の仕組みに載せて流した広告を緊急なものと間違えて流してしまったのが原因とのこと。
これについて、緊急システムを広告など用途外利用するのはいかがなものかなどいろんな意見が出ています。今回の事故についての反省点は後に述べることとして、緊急システムを普段も利用すること自体は悪いことではなく、むしろ最近はそれが求められています。
お金の問題
たとえば映画館などでの緊急時に、特定の非常口が混まないように観客の分布を見て非常口の方向をディスプレイに示すといった研究があります。面白いのは、研究でありながら、そのディスプレイは普段は広告などを流すことを想定します。ぶっちゃけ、普段使わないんだったら、このご時世わざわざお金を出してこのシステムを導入する施設などないだろうという現実的な問題があるからです。信頼性
でもお金の問題だけではありません。確実な動作のためでもあります。つまり、緊急のときしか動かさないものを緊急のとき確実に動かすには、普段から使っておくのがもっとも効果的です。
非常食を準備していたが、3年も放置してしまい肝心のときは酸化しててまずくて食えなかった、なんてことが起こらないようにするには、たとえば普段から食べるものにして回しておくのがてっとり早い上に確実です。
今回の事故にしても、今回のようなことが起こるということは、逆に肝心の緊急地震速報を携帯が受信しないという事故も起こりえるのです。もちろん年に1回は広く周知した上でテストするといった方法もありますが、毎日使っていれば、それだけでシステムの信頼性はあがります。
なお、もちろん普段広告を流してるからといって、肝心のときに鳴らす機能が働かなかったとか、普段使いしていても完全に不具合を防止できるわけではないです。その辺は限界があり定期的なテストも必要ですが、普段まったく使わないのとは大きく異なります。
いつまでも使えるように
長期的にはもっと切実な利点があります。普段使っているなら、こまめに改良できます。古い機器も更新できます。でも、10年一度も使っていない緊急システムだとしたら、どうでしょう。更新しようにも、もう古くて同じもので更新はありえない、あるいはもうできない。だけど、新しいものにするほど開発費がかけるのは現実的でない、だって一度も使わないんだもの、なんて八方ふさがりになることがあります。どうしようもなく、古いまま維持され、肝心のときに動かなかったなんてことになりかねません。
(念のため補足しますけど、東の方はたまに緊急地震速報が起動しますが、それ以外はほとんどしないので、今まで一度も受信したことないって人もいます。東もどんどん少なくなってほしいし。)
上手に普段使いするには
以上のように、緊急システムを普段使いすることには確実に動く物を長期間運用するという点で、決定的な利点があり重要な手法になっています。もはや普段使わない緊急システムは、事実上信頼できないとすら考えていいと思います。それはいいすぎかもしれませんが、違う言い方をすると、普段使いと併用できれば、緊急の方は一度も使ってないのにいつも最新の技術に維持することもできます。逆の場合は、一度も使わないのに、財政を圧迫し、システムは古いままになりかねません。
ただし、普段使いと併用は、今回の事故のような弊害も出ます。今回の事故については、もちろん事故が起こらないようにすることも大切ですし、さらには誤配信が起こる可能性をあらかじめ考慮し、たとえば誤配信が起こったらすぐに察知して告知などの対応を取る体制が必要だったのでしょう。
つまり、緊急のときしか動かさないものを緊急のとき確実に動かすには、普段から使うのが効果的ですが、そのためには普段と緊急が混ざらない努力を惜しまないことも、大変重要です。その点は甘かったですから大いに反省してもらいたいところです。
が、私自身は、きちんと普段から用途外使用していたことを今回初めて知り、むしろ「へー、ちゃんと使っているんだ」と感心したのでした。
・併せてどうぞ
【この発想はなかった。首都圏路線の異常を瞬時に捕える railmonitor*tokyo】ただ流してくれれば、人間が異常を発見できるという仕組み。ただ眺めるのも癒し。
【リアルタイムに巨大地震の揺れ・沈下・津波は計算できるのか】