未来に立ち向かうために一番大切な能力、問題を設定するという能力について、後編です。(前編)
見落とされがちな問題解決にあたって一番大事な能力
このように設定された問題に取り組んで行く上で、解決するために一番大切な能力はなんでしょうか。それは、解けそうな問題を設定するということです。問題を解くには問題を設定する能力が必要なのです。
数学の難問に取り組んでしまい一生を棒に振るなんてエピソードがあります。もちろん彼らは数学に関して極めて高い能力を持っていたことでしょう。でもその能力を適切な問題に振り向けず無謀な問題に向けることで無駄になってしまったのは残念なことです。解けそうな問題を設定することは何より重要なのです。
あまり簡単な問題はとっくに誰かに解かれていることでしょう。解かれていない問題はどれもどこかに壁や落とし穴のある難しいものでしょう。その中で、うまくやればどうにか解けそうな問題を見抜く必要があるのです。
解決したい問題があったら、少しやってみて、出来そうか無理そうか見極めて、無理そうであればとりあえず棚上げし、他の問題に取り組む、その能力こそが問題を解決するために一番大切なものです。あるいは解決できそうな問題に修正しても構いません。
棚上げにするとは諦めるわけではありません。なにか新しい情報や道具が現れることで動かせるようになるかもしれません。
問題設定することで成長する問題解決能力
そのように、常に問題を解くという目標を持って日々進んでいる人は、どんどん問題解決能力を付けていくことでしょう。時には失敗することもあるでしょう。 その失敗も、血肉となって問題解決能力を高めます。さらにその失敗は人類の宝でもあります。カリキュラムで与えられた解けることが分かっている問題が解けなかったら、あなたは無能だと言われてるようなものですが、解けるか解けないか分からない問題で失敗することは、貴重な情報です。共有されれば、次の人はそれを参考に取り組むことができます。
時に解けたり、時に解けなかったり、それを繰り返すことで、問題に取り組む間合いをはかることができるようになります。つまり、一番重要な問題を設定する能力が研ぎすまされていきます。
効率化する人生
別に常に目標に沿った行動をしなければならないということではなく、別に休んでも構いません。目標を持って、それに向かっていれば、自然とあまりに無駄な行動はなくなるでしょう。イチローチョップスティック問題でも取り上げたように、 当事者でもないのに他人同士の問題に首をつっこんで炎上させるなんてもってのほか、 直接参加せずともそんな炎上の様子をつぶさにチェックして憤慨することも、自分のストレスを増やすだけでまったくの時間の無駄です。 目標を持っていればそんなことに取り憑かれない歯止めが容易に効きます。 それだけで、人生が随分効率的になるのです。
様々なライフハック系情報に対する接し方も変わります。リーダーシップの育て方、コミュニケーションの取り方、時間管理術……、無数のテーマにネットでは多様な手法が溢れていますが、ただそれらの優劣を見極めようと比較しても、だめな評論家になるだけです。さらには「そういうのは無駄だ」みたいな説教にも耳を傾けることになり、時間は浪費する一方です。
でも、もし解決したい問題があり、そのためにそれらに接すれば、とても役に立つでしょう。今取り組んでいる問題に合う手法を合うように取り入れればいいのです。ただ読んで使うところを想像して終わるのでなく、すぐ試せますから、実践的だし、身にも付きます。他人の「無駄だ」みたいな批判もまったく気にする必要もなくなります。
ネットのあらゆる情報は目的があれば、きわめてすっきりしています。この点でも人生が随分効率的になります。
社会を変える問題解決能力
そうやって、問題解決能力を身につけた人は、未来に新たな問題が発生したとき、 適切に問題を設定し、的確に解いていくことができます。社会が大きく変化する中、様々な解決しなければならない問題が次々に発生しています。 それら大量の問題を手当り次第に解いていく人材が大量に必要になっています。
前回取り上げた、産学官が急に「ギャップイヤー」を推進し始めた件も、 そういう人材を育てるためです。
大学が準備したカリキュラムに沿って学ぶとき、 問題の設定はすでにされています。その問題は「解ける」ことが分かっている問題です。どんなに解くのが難しい問題だとしても。その枠でどんなに優秀でも、では解けるかどうか分からない問題が、解けそうかどうかを見抜く問題設定能力が育っているとは限りません。
でも、解けるかどうか分からない問題が噴出している今、優秀な人材が実は解けない問題に没頭されては社会の損失です。
一方で、 学生一人一人が長期休暇やギャップイヤーで勝手に考えて勝手に行動を起こすときは、 社会のカリキュラムに従う訳ではなく自分で勝手に問題設定をしています。それこそが極めて効果的な問題設定訓練なのです。
子どもの遊びと同じです。 砂浜に放たれたとき、 勝手に巨大な城を作ると行った目標を設定し、 それを達成する為にそのへんの枝を道具に変えたり、 ときには目標が変わったり。 そうやってある結果を生み出していく。自分が設定した問題に対して、どんな結果だったか。予想より低かったか、予想以上だったかを見届ける。そこで培われる能力こそが未来の問題を解く力です。
ギャップイヤーのシステムをきっかけに、 ギャップイヤーするしないにかかわらず、学生達は問題設定能力を身につけていくことでしょう。
学生でない人たちも、 いますぐ問題を設定して、 目標を持って日々行動し、 問題設定能力と問題解決能力を研鑽しましょう。
そうすれば今後変化の激しい社会で次々湧いてくる問題をばったばったと解決する無数のヒーロー達の一人に加われるのです!
・併せてどうぞ
今回本文で紹介したエントリ
【「イチローチョップスティック」をスルーする力でネットが捗る】
【馬】すでに今の普通「ギャップイヤー」の先
未来に立ち向かうために一番大切で今すぐできるたった一つのこと(前編)