昔、離島とか魚の豊富なとこに旅行に行くたび、地元の小さな魚屋に入ってきたばかりの魚を買い付けるのに憧れてました。物は並んでるんだけど、名前書いた紙がぺとって貼ってあったり。場所の広さからいってもともと数匹しか並んでないような、いわば一品ものです。
福山に住むようになってもうすぐ3年。今日そんなできごとが自分にあったのです。日常の中で偶然がいくつも重なって。やっぱり地方に住むの素晴らしいのです。
大絶賛放映中の「流星ワゴン」の舞台となっている福山の鞆の浦。その近くに内海町という二つの離島でできた町があります。橋で繋がっているので、鞆の浦から車で30分もかかりません。そこで以前から細々と地元の食材を使った食品開発のお手伝いをしています。
先週その内海町の魚屋さんで打ち合わせをしたのですが、延長コードを置き忘れて帰ってきてしまったのです。
今日同じ内海町の民宿で仕事があったので、それが終わったあと魚屋さんに立ち寄って、延長コードを返してもらいました。
その魚屋さんに立ち寄る時はよくオススメの魚を買って帰っています。とはいえ、頻繁に通ってるわけでもなく、そのときは普通のお客さんです。特別なことが起きるわけではありません。
今日もなにかあればとは思っていましたが、実は今はめぼしいものがない時期で、近くのお魚がおいしいと評判のレストランは1週間冬休みをとってしまうくらいです。
けれど、立ち寄った時は、ちょうどわずかながらも魚を積んだ軽トラが帰ってきたところで、挨拶がてら「いいのありますか〜」「う〜ん、特にないね〜」と言葉を交わしながら、軽トラの荷台から降ろされていくカゴを眺めていました。
その時です。それが目に入ったのは。カゴの中にごろごろと赤貝が二匹だけ転がっています。「あ、これ赤貝ですか? てか、これでかくないですかっ!?」
これは家に帰ってからの写真ですが、これがそれです。
なんとかツマヨウジで大きさをお伝えしたいのですが、赤貝の中身しか見たことないからわからないという方は、後に中身の写真もあります。計ったら564gでした。
これ右の方でもなかなか見られない大きさです。201g。それが子供に見える大きさです。
こんなに大きいのはこの辺では珍しいと店の人も答えてくれました。
というわけで、店の敷居をまたいだばかりの赤貝はすべて私によって買い占められたのです。2匹だけど。
いったい私が買わなかったら、この2匹はどうなったのでしょうか。大きさも不揃いのたった2匹ですから遠くにいくことはなかったのではないでしょうか。数ないから料理人のところにも行かなそうだし、地元のスーパーや魚屋でも、ぽつんと値段が高すぎると売れなそうだし。
いずれにせよ、普通に暮らしてたらまず見ることもないようなものに出会って、しかも買っちゃって、しかもすぐその夜自宅で食べてしまったわけです。
昔から漠然と憧れてたことを、なんかわけなくやってるではないですか。生きててよかった。
しかし、これ、こんなに大きくて本当においしいのか?という一抹の不安は抱えていました。
さあ、夜です。