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【レポート】2015年7月1日実施のうるう秒についての説明会
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【レポート】2015年7月1日実施のうるう秒についての説明会

2015-05-19 23:26

    画像:2012年7月1日のうるう秒挿入 (撮影:NVS)

    2015年7月1日に実施される「うるう秒」について、
    日本標準時JSTを配信している情報通信研究機構(NICT)による説明会が実施されました。
     
    説明概要】
    ・なぜうるう秒が発生するのか?
    ・世界標準時(UTC)、日本標準時(JST)とは?
    ・日本国内で配信されている時刻情報とは?
    ・配信サービス毎のうるう秒の配信の方法について
    ・うるう秒を体験するには?
    ・うるう秒の廃止の検討について
     
    日本を始め、アメリカ、フランス、オーストラリア、韓国、中国がうるう廃止を支持する中、
    うるう秒廃止に異議を唱えるロシア、イギリスの事情とは?
     


    (以下2015/5/19追記)
    ●なぜうるう秒が発生するのか?
     地球の時間は元々、天文観測で求められており、1日は地球が1周する時間で、
     1時間はその1/24。1分はさらに1/60。1秒はさらに1/60の時間でした。
     その後、時計が進化し、1967年以降は数十万年に1秒しか狂わない
     セシウム原子時計を基準にするようになりました。
     
     しかし、実際は地球の自転は不規則で、セシウム原子時計による国際原子時(TAI)が
     制定された1958年から、今日までに35秒も自転の速度が遅くなっており、
     ここ数年では地球の自転が0.001秒ほど遅くなっている為、
     1000日(約3年)で1秒程度の誤差が出てしまいます。
     
     狂う事の無いセシウム原子時計を基準に使いながらも、遅くなっていく地球の自転に合わせる為に、
     地球の自転を元にした世界時(UT)とセシウム原子時計を元にした時間の差が0.9秒以上にならないように
     うるう秒で補正しています。この時間が世界標準時(UTC)です。 
     
     うるう秒の実施は、地球の自転を監視している機関。国際地球回転・基準系事業(IERS)が決定し、
     実施が決まった場合、1月1日。または7月1日のどちらかにうるう秒が挿入されます。

    資料:情報通信研究機構(NICT)

    ●世界標準時(UTC)、日本標準時(JST)とは?
    ・世界標準時(UTC)は国際度量衡局(BIPM)が世界中にある原子時計400台の平均を元に決めていますが
     計算に1ヶ月の時間が掛り、400台の時計の平均なので、時計としての実体はありません。
     なお、400の原子時計のうち、18台は日本の情報通信研究機構(NICT)のセシウム原子時計で、
     世界標準時に占める割合は7%。世界2位の割合となっています。
     
    ・日本標準時(JST)は情報通信研究機構(NICT)により決定されており、
     まず、セシウム原子時計18台でUTC(NICT)を計算し、その時間に時差9時間を足してJSTを決めています。
     
    ●日本国内で配信されている時刻情報とは?
     情報通信研究機構(NICT)で決定された日本標準時(JST)は
     「標準電波・電波時計」「テレホンJJY」「NTP(インターネット)」「商用時刻認証」などで配信されています。
     
    ●配信サービス毎のうるう秒の配信の方法について
    ・標準電波・電波時計
     電波時計の時刻情報には「分」「時」「1月1日からの経過日数」「年」「曜日」の情報が含まれており、
     全ての情報を受信するのに1分掛ります。その為、リアルタイムにうるう秒を受信する事は困難です。
     しかし、2015年6月2日の9時から送出する電波にうるう秒を告知する情報が付与されていますので、
     時計がうるう秒の自動挿入に対応している場合、自動でうるう秒が挿入されます。
     一般に市販されている電波時計の多くは自動対応しない為、7月1日9時00分以降に電波を受信すると
     うるう秒が修正された時刻が表示されます。
     
    ・テレホンJJY
     通信・放送事業者向けのサービスなので一般人が触れる機会はありませんが
     時刻情報としては7月1日8時59分59秒の次に60秒を挿入した時刻が配信されます。
     また、こちらも電波時計同様2015年6月2日の9時からうるう秒情報が送出されるので、
     うるう秒に対応できないシステムの場合、専用の受信機で100秒前から1/100秒ずらし、
     うるう秒を発生させない処理をする場合もあります。
     
    ・NTP(インターネット)
     NICTのNTPサーバ(ntp.nict.jp)からは7月1日8時59分59秒の次に60秒を挿入した時刻が配信されます。
     こちらも6月30日9時00秒から7月1日8時59分60秒の間にうるう秒予告情報が付加されて配信されます。
     
     ※NTPにおけるうるう秒予告方法は、2010年に1ヶ月前から予告情報を配信すると改定されたが、
      旧システムが稼働している場合を考慮し今回も旧方式の前日から予告情報を配信するとの事。
     
     
    ●うるう秒を体験するには?
    ・「電話時報」
     ひかり電話の117サービスじは チッ、チッ、ピッ、ピッ、ピッ、ポーンポーン! と2回鳴るそうです。
     加入電話、INSネットの場合、  チッ、チッ、チッ、
    ピッ、ピッ、ピッ 、 ポーン! と秒音が1つ多くなります。
     参考:時報サービス「117」の「うるう秒」調整の実施について

     https://www.ntt-east.co.jp/release/detail/20120615_02.html
     
     
    ・「NICT インターネット時刻供給サービス」http://www.nict.go.jp/JST/JST.html
     NICTのホームページで60秒が挿入された時刻を見る事が出来る。
     ただし、閲覧が殺到した場合、ページが開かなかったり、時差が発生する事がある。
     コンピュータの内蔵時計もリアルタイムでNTPと同期している訳ではない為、
     「NICT インターネット時刻供給サービス」の下段に表示される
     「あなたのコンピューターの内蔵時計」が1秒ずれるはずです。

     
    ・「電波時計」
     市販の電波時計の多くは1日に数回しか電波による補正を行わない為、
     うるう秒は即時に反映されない為、7月1日9時00分00秒以降に電波受信の操作を行うとで
     うるう秒の補正された時刻が表示されます。
     もしくは家庭にいくつか時計がある場合、電波時計だけ手動電波受信をすると
     それ以外の時計と1秒ずれが発生するはずです。
     
    ・「うるう秒(60秒)対応の時計を見に行く」
    a)情報通信研究機構NICT本館 東京都小金井市
    b)武蔵小金井駅コンコース 東京都小金井市
    c)おおたかどや山標準電波送信所のモニュメント 福島県田村市都路町国道288号沿い
     GoogleMAP> https://goo.gl/maps/tBk3b ※海側は帰還困難区域の為、通行規制があります。
    d)おおたかどや山標準電波送信所のモニュメント 福島県双葉郡川内村 県道36号沿い
     GoogleMAP> https://goo.gl/maps/SGmu2 ※海側は帰還困難区域の為、通行規制があります。
     
     
    ●うるう秒の廃止の検討について
    日本を始め、アメリカ、フランス、オーストラリア、韓国、中国は、
    ・改ざん防止のタイムスタンプシステムをはじめ、
     時刻情報を参照するコンピュータ機器が増大している事
    ・電子商取引などで秒単位の時差が許容できなくなっている事
    などを理由にうるう秒廃止を支持。
     
    イギリスは世界時(UT)の観測基準であるグリニッジ子午線を有しており、
    グリニッジの伝統を受け継いだ時間系を守る為、うるう秒廃止に異議をとなえており、
    協定世界時(UTC)は維持したまま、別の連続時間系の新設を主張しています。
     
    ロシアはロシア版GPSのGLONASSがUTCを採用しており、
    うるう秒の扱いが変わるとシステム改修が必要になる事などを理由にあげ
    今後も協定世界時(UTC)を採用し、新たな時関係の新設やうるう秒の廃止も必要無いとの立場を表明しています。
     
    その他、アラブ諸国やアフリカ諸国はうるう秒を廃止する事の
    メリット、デメリットの議論、検討が十分でない事を理由に態度を保留しています。
     
    ●もし、うるう秒が廃止が決定された場合
    うるう秒問題は2015年11月のWRC(World Radio communication Conference)で最終決定される見込みで、
    もし廃止が決定してもすぐに廃止されるわけでは無く、最短でも2022年まではうるう秒の管理は実施されることから、今年11月にうるう秒の廃止が決定されても現状のペースで進行すれば、あと1回くらいはうるう秒が実施される可能性があります。

    また、うるう秒が廃止されると、自転のズレはそのまま蓄積され、修正されないため、このままのペースが続けばズレがどんどん蓄積され、50年後には世界時から30秒ほどズレた時間で生活をする事になるかも知れません。
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