岡田斗司夫プレミアムブロマガ 2018/02/21

おはよう! 岡田斗司夫です。

今回は、2018/02/04配信「今夜「オカダ書店」開店!寒い冬は本を読もう!」の内容をご紹介します。
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2018/02/04の内容一覧

ドイツ旅行記「ミュンヘン市街のなんちゃってゴシック」

 こういうのが、18世紀の半ばくらいに作られたアザム教会なんですけど。でも、大体の人は市の中心部に行くわけです。
 市の中心部には、別名「ラートハウス」と呼ばれるミュンヘン新市庁舎という観光名所があるからですね。
 これがその写真なんですけど。大抵の観光客は、これを見て「わー! ヨーロッパだ!」とか、「古い! カッコいい!」とかって思うんですよ。
 まあ、見て分かる通り、ゴシック建築の建物です。塔がとんがってますし、窓が細長くて、窓の上もとんがってるから、ひと目でわかるゴシックなんですけれども。
 だけど、この建物、実は建てられたのが19世紀半ばという、明治時代の建物なんですよ。こういった建築物は「ネオゴシック」と言われています。
 そんな、今から150年くらい前に作られた、メチャクチャ新しい建物なんですけど、観光客はこれを見て、ありがたがって写真を撮ってるんですね(笑)。

 どういうことかというと、さっき話したドイツ帝国が形成されつつあった時代、ドイツの人々は「ドイツとは何か? 自分たちのアイデンティ-とは何か?」ということに悩んでいたんですよね。
 その結果、もう全員が復古主義に陥っていたんですよ。で、「昔のものは良い!」ということで、新しく街を作る時にも、とにかく古く見える建物ばかりを建てたんですよね。
 そうやって「歴史ありまっせ感」を満載にした建物ばかりを造っていたので、明治時代の建物なのに、すごく風格ありげに見えるんですよ。

 それと同時に、この市庁舎の写真の端っこに写っている塔を見てください。
 この塔も、ゴシック建築だったら、普通は、塔を建てたら上に鐘を付けるはずなのに、「ドイツの技術力をみてください。精密機械でっせ」ということで、ここに世界最大の仕掛け時計を作って、3時とか4時に鐘が鳴る度に、160体の人形が一斉に動き出すという、無駄にすごい仕掛けを作っているんです。
 この鐘がなる時は、この小さい広場に何万人もの観光客が集まって、本当に動けなくなるくらいなんですけども。
 つまり、単に、ゴシックの建築を建てるだけじゃなく、「私達は精密機械を作れるんです」っていうのをウリを表現しようとしているんです。もう本当に、明治時代のパビリオン万博の考え方なんですね。

 しかし、この建物、なんせ後の時代になってから作った偽物だから、ゴシック建築としての詰めが甘いんですよ。

(中略)

 まあ、さっきの変態兄弟の教会みたいなものは奇跡的に残っているんですけど。そのおかげで、街全体はぺちゃんこになってしまいました。だから、こういったゴシック教会風の市庁舎というのを復興したわけですね。
 この市庁舎について、もうちょっとだけ話すと、この建物の裏手に回ると、こんなふうになっています。

 これ、途中までは、頑張って作ってるんですよ。例えば、階段がある斜めになっている廊下の部分では、壁や窓も斜めに切ってあるんですけど。
 だけど、途中で力尽きたんでしょうね。途中からは、完全にコンクリートで作っています。斜めの部分も、窓枠っぽい斜めの線を入れただけになってるんですよ(笑)。
 この辺の、「途中まではきっちり作ったけど、力尽きました」みたいなダメな感じというのが、俺、結構好きなんですよね(笑)。

 裏側にも、メチャクチャカッコいい塔があるんですよ。

 これなんですけども。ちゃんと、ピサの斜塔みたいに螺旋階段が上まで続いている4層建ての塔なんですけど。
 もう、力尽きて、はっきりコンクリートで作ってるんですよね。わかりますよね? 足場とか、みんなコンクリートなんですよ。

 要するに、これらは「ディズニーランド」なんですよ。
 例えば、ディズニーシーに行くとベニスの街とか、ディズニーランドに行ったらニューオリンズの街っていうのが作ってありますよね。ああいうところに行くと、普通の人は「すごーい!」って喜ぶんですけど。ちょっとマニアックな人は、「こんなもの偽物だ」とか言うんですよ。
 「ニューオリンズ風とか、ヨーロッパ風に作っただけの偽物だ。そんなもので喜ぶなんて、わかってないね」って言う人もいます。まあ、そう言ってしまう気持ちもわかるんですけど。
 でも、そんなことを言いだしたら、このミュンヘンの観光名所だって、もう「ド」のつく偽物なんですよね。完全に、ゴシック的な建物をコンクリートで作っているだけなので。これ、本当に中国にあってもおかしくないくらいの偽物建築なんですよ(笑)。
 なので、「ディズニーランドを偽物と言う人は、もうちょっと勉強したらどうですか?」っていうふうに思うんですけども。
 まあ、それを見つけられて、僕はすごい楽しかったですよね。「うわー! 偽物だー!」って思いながら写真を撮るのが、すごい楽しかったです。

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