岡田斗司夫プレミアムブロマガ 2019/08/02
今日は、2019/07/14配信の岡田斗司夫ゼミ「『進撃の巨人』特集〜実在した巨人・考古学スキャンダルと「ウォール・ローゼから外を見ると何が見えるのか問題」」からハイライトをお届けします。
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【画像】スタジオから
では、『進撃』の話に戻ります。
今現在、お話はどうなっているのか? さっきは皆さん「ネタバレでもいいよ」って言ってたんですけど、一応、気を使いながら、ストーリーを簡単に簡単に説明してみます。
ここから、フリップを出して話すけど、気になる人は、あんまり見ないように、聞かないようにしてください。
現在、単行本で28巻まで出てるんですけども。
(パネルを見せる)
まず、「1.壁の中に閉じ込められていた人類。壁の外には巨人がいっぱいいる。その壁が破られてしまった!」というのが、単行本1巻での話です。
「2.ようやっと壁を取り戻した! しかし、壁の外にも人類はいた! 実は俺達は閉じ込められていたんだ!」これが、2巻から22巻です。つまり、『進撃の巨人』というのは、ほとんどがここに占められています。
そこから先は「3.巨人兵器を操るマーレ、巨人奪還作戦は失敗した!」という昔話に戻ってしまうのが、23巻から24巻の真ん中くらい。マーレという他所の大陸にある敵の国を襲う話ですね。
その結果、「4.敵の方から、また援助も来たよ!」というのが、24巻から26巻。
「5.そんなことをやっているうちに、パラディ島という主人公達がいる島の人達も、段々と分裂してきた!」というのが27巻28巻ですね。
で、「6.主人公達がいる以外の全ての国が、パラディ島という島を襲ってきたぞ!」というのが、今現在、連載している部分です。
簡単に言うと「2の部分がやたら長い」と思ってください。
今、ストーリーをザックリと説明したんですけど。『進撃の巨人』の面白いところは、地理的なところだと、僕は思うんですね。
これ、確か1巻に出てきた図なんですけど。
(パネルを見せる)
地理で状況を簡単に説明すると、人類というのはこういった3重の壁の中に住んでいます。
外側の壁、その内側の真ん中の壁、最後の一番内側の壁。この中心の辺りに王都と呼ばれる、王様が住んでいる大都市があるんですけど。
この壁のサイズがですね、とにかくメチャクチャデカイんですよ。
ええと、アニメ版の『進撃の巨人』で、一応、いろんなところで設定が語られるんですけど。
「一番中央の都市から一番内側の第3の壁ウォール・シーナまでが、半径250キロある」と書いてあるんですよ。「半径が250キロ」です。
で、「3番目の壁から2番目の壁ウォール・ローゼまでが130キロ」。かなりあります。
そして、「一番外側の第1の壁までは、さらに100キロ」。つまり、この一番中心の街から一番外側の壁まで、半径にして480キロ。直径で言うと、960キロなんです。かなりデカイんですね。
みんな、『進撃の巨人』の世界を、この印象で考えるんですよ。本編の中で、こういう図が出てくるから。
(パネルを見せる)
「この図はいわゆる模式図だ」というふうに書いてあるんですけど、なんとなく、これくらいで考えてしまう。
【画像】概念図 ©Hajime Isayama作者が、概念図として描いてくれている、こういうイラストを見て、「ほぼこのまんまのサイズ」って思っている人が、かなりいるんですけど、実際は違います。
じゃあ、実際の地図上に置いたらどれくらいのサイズなのか?
(パネルを見せる、アメリカ大陸の地図)
例えば、アメリカ合衆国に、この『進撃の巨人』の壁があったとしたら、一番広い壁が、ほぼインディアナポリスからダラスまで。つまり、アメリカの中央平原をまるまる飲み込んでしまうような、巨大な円だと思ってください。
赤ペンで書き込むと、こんなデカいんですよ。アメリカ大陸の中央部が、ほぼ丸々入ってしまうくらいのデカいんです。
ヨーロッパに置いたらどれくらいのサイズかというと。
(パネルを見せる。ヨーロッパの地図)
ヨーロッパに置いたら、だいたい、フランスの東部から、ポーランドの果てまでが、もう全部入ってしまうような円なんです。
だから、完全な円形では無理なので、「スペインからギリシアの東までの範囲までが、壁の内側だ」と考えた方がいいんじゃないかと思ってしまいます。
これ、何かというと、ほぼ古代ローマ帝国と同等のサイズです。
日本で言うと、どれくらいか?
中心を東京に置いた場合、一番内側の壁ウォール・シーナの西の果てが名古屋で、北に行くと新潟くらいまで入ります。かなりデカいです。
その外の2番目の壁ウォール・ローゼが、大阪から仙台まで。すごいデカいですね。
一番外側のウォール・マリアに至っては、東京から半径で鳥取まであります。北の方は秋田まであるという、日本列島がほぼすっぽり入ってしまうサイズです。
さっきのアメリカの地図でもわかる通り、マンガの中では、これを「島」って言ってるんですけど、違うんですね。ほぼ大陸なんですよ。
オーストラリアくらいの大陸でないと、こんな巨大な壁、作れっこないんですね。
この壁のデカさというのをよくわかってないと、『進撃の巨人』の面白さが、なかなかわかりにくんですよね。
なんとなく僕らは、さっきも話したように、この模式図で考えちゃうんですよ。で、この模式図で頭の中に入ってると「東京都くらいのサイズかな?」って考えちゃうんですね。
「全体が東京都のサイズで、まあ、一番内側のウォール・シーナというのは、山手線の内側くらいかな?」というふうに考えている人、絶対に多いと思うんです。
「この端っこの方に出ている、なんとか区って言われるやつも、まあ、吉祥寺くらいだろう」とか、「荻窪くらいだろう」とか、「新宿の公園くらいじゃないの?」って思っている人、すごく多いと思うんですよ。
僕もね、本当にキッチリ調べるまでは、そう思ってたんですけど。
でも、実際には、とてつもなくデカいんですね。さっき言ったカンザスからアトランタくらいまで。アメリカで言うと、中央平原がほぼ入っちゃうくらいなんです。
じゃあ、この壁の上に登ると、どれくらい遠くが見えるのかというと。
これ、簡単な計算方法があって、もうGoogleとかで「高さ 見える範囲」とかで検索したら、こういうのが出てくるんですね。
(パネルを見せる。高さを入力すると見える範囲が計算できるフォーム)
「高さ50メートル」に設定すると、どこまで遠くが見えるのかというと、「26.77キロ」。つまり、27キロまで見えるわけです。
ということは、一番狭い間隔のウォール・マリアからウォール・ローゼまでも100キロだから、この世界ではかなり高い50メートルの壁のてっぺんに立っても、地平線の向こうにすら隣の壁は見えないわけですね。
それくらい広いんですよ。壁のてっぺんに登っても、向こうの壁は見えないし、おそらく、壁の丸みも、なんとか分かるかどうかというギリギリだと思います。
一番外側の壁なんか「ほぼ直線で地平線の端っこがちょっと内側に曲がってる」というような感じじゃないかなと思います。
この日本の本州がほぼ入ってしまうくらい巨大な面積の中に、125万人、江戸時代の人口よりもちょっと少ないくらいの人間が住んでいるわけです。
こんなに広大な世界だからこそ、壁の中の人達は「外には世界がない」と思っていたんですね。「壁の外には人類はいない」と言われて、なぜ信じられたのか、なぜ、エレンとアルミン以外は、外の世界に興味を持たずに生きられたのかというと、実は壁の内側というのが、ものすごくデカいからなんですよ。
物凄くデカいし、中にちゃんと湖もあるし、生態系も一通り揃ってる。だから、外側に行かなくても十分に幸せに暮らせていけたわけですね。壁の内部だけで生きていくにしても、十分以上の面積があった。
中央のウォール・シーナの内側の、王様が住んでいる大都市には、工業都市もあるし、あと天然資源を採掘出来る鉱山や、加工プラントもあったでしょう。
なので、第1次産業、農業というのは、この一番外側と二番目の壁の中で賄われたと考えるのが、地図的に見るには正しいと思います。
主人公の3人が住んでいるのが、この壁にできた出っ張りです。シガンシナ区というんですけど。
この出っ張った部分のことを、中国語で甕城(バービカン)というふうに言います。
これが、実際の中国にある甕城なんですけど。
(パネルを見せる)
城塞都市の周りに、攻められた時に防衛しやすいように作っている出島みたいなものです。隣に写っている自動車がこのサイズですから、そんなに大きくはないんですけど。
これの特別デカいやつが、シガンシナ区。主人公達が住んでいたような街だと思ってください。
今、コメントでも出てた通り真田丸なんですね。大坂城の真田丸のようなものだと考えてください。
しかし、この『進撃』の世界では、このバービカンというのは、とてつもなくデカいです。
これは、トロスト区の壁に登った時に、向こうを見ている風景なんですけど。
(パネルを見せる)
登場人物達が、厚み10メートルの壁の向こうに広がる甕城部分を見ている。その向こうには、もう、山があって、地平線の先にはウォール・マリアがあるはずなんだけど、壁なんて完全に見えていません。
これ、単行本でいうと、20巻のちょい手前くらいの絵だと思うんですけど。この頃になると、作者もようやっと描き慣れてきて、正しい縮尺で絵が描けるようになってるんですね。
この、幅が2、3キロ、長さが5キロから、下手したら7キロくらいあるのが、この甕城部分だと思ってください。
これ、ウォール・ローゼから見ているんですけど、「一番外側のウォール・マリアは地平線の遥か向こうにあって、全く見えない」というところに注意してください。
さっきも話したように、物語の中で、シガンシナ区という、突出した一番外側の部分の甕城の外側の門が、破られます。
これ超大型巨人のキック1発で、穴が開いちゃったんですけど。さらに、その穴から入ってきた鎧の巨人というやつが、ウォール・マリアという外側の壁そのものの入り口を破壊してしまいます。
つまり、「2つのエアロックの内側扉と外側扉の両方を開けられた」ようなもんですね。
エアロックの両側の扉が破壊されたら、中の空気が全部漏れる。それと同様に、外にいた巨人たちが、この穴からどんどん入って来て、結局、それまで人類が持っていた土地の3分の1を失うことになってしまいました。
これ「領土の3分の1を失う」と言っているんですけど、農業面積で言うと、もう半分なんですよ。
【画像】農業面積 ©Hajime Isayama 最初に説明した通り、もともと、壁の真ん中の部分というのは、工業プラントがあったりですね、鉱物資源採掘場があったり、あと王様の都市があったり、いろんなものがあるから、あんまり農地としては使えないんです。
つまり、外側の部分で農業というのをやっていた。そんな中で、ウォール・マリアが破られるということは、食料生産能力の半分を失ったのも同じわけですね。
壁の内側の人口125万人というのは、この面積を使った農業で暮らしていたわけなんですよ。
しかし、食料生産能力が半分になっちゃったので、「人減らし戦争」と後に言われることになる、25万人、総人口の20%を投入した戦いをすることになるんです。この辺が、1巻2巻の流れですね。
まあ、ただ、その125万人のうち25万人を投入して、人減らしのための戦いをやったとして。例え、人口が100万人に減ったとしても、慢性的な食料不足は解決できないんですよ。
食料を作れる土地が、いきなり半分になっちゃった時に、果たして人口のどれくらいを食わしていけるのか、と。
まあ、これが、地理的な要因で見た『進撃の巨人』ですね。
『進撃の巨人』というのは、いろんな見方が出来るんですけど、案外、こうやって「正確な縮尺で考えたらどんな話なのか?」と考えると面白いと思います。
実は、壁に囲われている範囲はすごく広大だから、中で暮らす人に「壁に囲われている」という意識がなくても当たり前で。
ところが、その外側の壁が破られただけで、一気に食料が半分になってしまうというのは、おそらく、本当に誰も予想してなかったことだと思うんですよね。
なので、徐々に徐々に、壁の中が生きていくだけで地獄のようなことになっていく。
そういうような部分が、この地理的なところで抑えたらわかると思います。
ちょっとだけネタバレを話してみましたけども。
ここから先の後半の有料部分では、どんな話をするのかを、予告します。
ラストを面白く読むために押さえておいて欲しいと思うのが、やっぱり「第1話の伏線がすごい」ということなんですね。
(パネルを見せる)
第1話の最初のこの見開き。
(パネルを見せる)
あとは、第1話で森の中で初めて立体機動の戦闘をやる時に、「奥から来ているこいつは誰なのか?」ということ。
(パネルを見せる)
あとは、第1話のほとんど頭の方になるんですけど、「主人公がなぜ泣いているのか?」という、この辺の伏線の置き方がメチャクチャ上手いので、ちょっとこの第1話というのを見ておいてほしいと思います。
あと、後半で話したいのが壁の中にいる巨人ですね。
(パネルを見せる)
この巨人の顔のアップからわかること。
(パネルを見せる)
あとは、このヒストリアというお姉さんが妊娠しちゃうんだけど、これがどういうことなのか?
(パネルを見せる)
あとは『情熱大陸』で、去年の11月に『進撃の巨人が』が特集された時に、「ラストシーンはもうすでに出来ている」ということで、公開された最後のページ。
「お前は自由だ」っていうふうに子供を抱えた誰かが言っているんですけど、これは何なのかというのを、後半ではゆっくり語ってみようと思います。
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