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オンリー☆ローリー!〈1〉 Vol.14
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オンリー☆ローリー!〈1〉 Vol.14

2013-12-22 21:00
     笑顔と笑い声が絶えない、素晴らしい時間だった。
     気持ちがよすぎると頭がボーッとして、夢見心地になるのだと、このとき初めて知った。零次はひたすら食べ、飲み、しゃべり、体が浮かび上がってしまうような高揚感に支配された。
    「よーし、ここらでビンゴゲームをしようか。一抜けた子にはキスをプレゼントしてやるぞ!」
     メルティの唐突な宣言で、熱気が瞬く間に最高潮に達した。比喩ではなく、教室の温度が上がったのを零次は感じた。
     数多のギラギラした目の中、見事一番乗りを果たしたのは……。
    「やったぁ、ビンゴ!」
    「おー、宮路さんか。ではちょっと屈んでくれ」
     頬にキスされたその女子はキャーキャーと騒いだ。
     零次は賑やかなのが何より好きだ。
     こんな場を提供してくれて、先生には感謝しなくてはならない……夢見心地の中で、すっかり安心していた。
    「深見くん、すっかりクラスに慣れたようで何よりだよ」
     近寄ってきたのはクラスの副委員長である佐伯幸太。クラス一の秀才ということで尊敬を集めているらしい。
    「メルティちゃんあってこその、この平和な学園生活だ。あの人のおかげで、僕は毎日が楽しいよ。まさしく天使だね! いいや、女神だ! 唯一神だ!」
    「そ、そこまで言う?」
    「実は僕はね、メルティ先生に救われているんだ」
    「どういうこと?」
    「僕は中学まで、体が弱くてね。病気がちの毎日を送っていたんだけど……この高校に進学して、メルティちゃんを一目見たときから、身体中に力がみなぎってくるようでさ! それ以来、まったく病気をしなくなったよ」
    「へえ……」
    「さっきビンゴで勝った宮路さんなんか、小学校の頃からいじめられてて、ものすごく暗い性格だったんだって。でも今はそんなことはない。ラブリーでキュートでワンダホーなメルティちゃんのおかげで、明るくなれた。立ち直ることができたってさ」
     結界の影響下にある者は、メルティの魔力のおかげで心身共に健康になる。その効果はどうやら本物らしい。実例を目の当たりにしては、感心せざるを得なかった。
    「みんな、本当にメルティ先生の大ファンなんだな」
    「はは、君は転校してきたばかりだから、まだなってないのかな? でもそのうちになるよ」
     何本目なのだろうか、メルティは「イッキ、イッキ」と囃されながら缶ビールを盛大にあおっている。飲み干すと両手を天に突き上げて、拍手を受けている。そしてゴスロリドレスの裾を持ち上げて意味なくクルクル回っている。
    「人生に何も悩みがないというようなあの笑顔が、またいいよねえ」
     何百年も生きていれば、そりゃ達観の境地に至るだろうなと思った。
     それよりあの子は……零次はチラッと崇城に視線を向ける。
     美少女はちびちびとドリンクを飲み、スナック菓子をつまんでいる。あまり周囲と会話はしていない様子だった。
     誰よりも交流を深めたいのは崇城だ。何か情報があれば掴んでおきたい。
    「ところでさ、崇城さんってどんな人?」
    「口数は少ないけど、委員長としてしっかりしてるね。とても成績優秀だし」
    「他には?」
    「うーん、あまり話したことがないから、プライベートのこととかはさっぱり。他の人に聞いても同じじゃないかな」
    「あ、そう……」
    「それにしても美人だよね。だから人気は高いよ。といっても二番目だけど」
    「……先生が一番目?」
    「ああ。メルティちゃんは僕らの入学と同時に赴任してきたんだけどね。もうその日にはファンクラブができていたよ。昨年度は確か一年B組の担任だったかな? 僕はC組でね。今年の春はメルティちゃんが担任のクラスになりたいがために、毎日神社で願掛けしたさ」
    「それはすごいね……。佐伯くんは最初、どう思った? あの人のこと」
    「もちろん驚いたよ。でもそのうちね、細けぇことはいいんだよ! って気分になっちゃうわけなんだこれが。男子も女子も関係なく」
    「な、なるほど」
    「だから深見くんもあるがまま、メルティちゃんの可愛さと神秘を受け入れるんだ! そして一緒に学園生活を満喫しよう!」
    「わ……わかった。ごめん、ちょっと女子と話を」
    「メルティちゃんのことを語らせたら、俺の右に出る者はいない!」
     急に御笠が乱入してきた。
     ふたりはしばらく零次を放さず、耳にタコができるほどメルティがいかに素晴らしいかと聞かせた。零次もせっかく新しくできた友達を邪険にできず、苦笑いしながら相槌を打つはめになった……。
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