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俺の棒銀と女王の穴熊【3】 Vol.19
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俺の棒銀と女王の穴熊【3】 Vol.19

2013-10-09 18:00
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    「あ、いきなり水に飛び込んだりしたら危ないわよね」
     依恋は海面に足を踏み入れると、手を離した。すばやく足下から水をすくって、勢いよく連続攻撃を浴びせかける。
    「そらそら! 反撃してみなさい!」
     前屈みになる依恋の胸の谷間がすごいことになっていた。来是は思わず動きを止めてしまう。その隙に、どんどんと水がかかる。たちまち口の中がしょっぱくなった。
    「だああ! 調子に乗るな!」
    「きゃあん!」
     依恋の倍のスピードで反撃する。さすがにこういう勝負なら男が女に負ける道理はない。あっという間に依恋の全身はびしょ濡れになった。
     まとわりつく滴が、さらに彼女の艶やかな肢体を強調していた。……来是はまともに見ていられなくて目を逸らした。
     なぜだ。なぜこんなに依恋に見とれてしまうのだ。まったく調子が狂う――。
    「ね、もうちょっと人のいないところで泳ごうよ」
     再び来是の手を取る依恋。もう片方の手であっち、と指さしている。
     確かに人もまばらで快適に泳げそうだが、だいぶみんなと離れてしまう。あまり好ましくない状況だ。
    「なあ、俺らだけじゃなくて、みんな一緒に遊ぼうぜ」
    「……そんなこと言って、紗津姫さんの水着姿を見ていたいとか思ってるんでしょ」
    「まあ、それもある」
    「このおっぱいバカ! み、見るならあたしのを見てなさいよ!」
    「なんだそりゃ!」
    「うっさい! あたしのほうが綺麗なおっぱいしてるんだから!」
     確かにバランスのよさでは依恋に軍配が上がるかもしれない……ではなく。来是は一呼吸置いて、落ち着いてから話す。
    「別にそれだけじゃないっての。先輩を放っておいたらまずいことになるかもしれないんだよ」
    「どういうことよ」
     依恋の身にも及ぶかもしれないことだ。昨年あったというトラブルについて話した。さすがに真剣な顔つきで依恋は聞き入っていた。
    「そうよね。あたしや紗津姫さんみたいな絶世の巨乳美少女がナンパされないわけないわ」
    「ああ、だからあまり先輩から目を離したくないんだよ」
    「……しょうがないわね。いったん戻りましょ」
     ふたりはビーチパラソルまで引き返した。ところが荷物番の斉藤先生が読書をしているだけで、他のメンバーの姿はない。
    「先生、先輩たちは?」
    「お前たちの邪魔をしちゃいけないとかで、向こうに行ったぞ」
    「んな! お、俺たちはそういうんじゃないですって!」
    「そうなのか? 似合いのカップルだと思うが。清く正しい付き合いなら、先生は別に反対しないぞ」
    「もういいっす。依恋、行こうぜ」
    「……うん」
     どっぷりと溜息をつきながら、来是は紗津姫たちの姿を探した。相当に人が多いが、あのとてつもない水着とスタイルは目立つから、すぐに発見できそうだ。
    「あたしたちって、周りからもカップルに見えるのかな」
    「よせよせ。お前だって迷惑だろ」
    「……来是は迷惑なの?」
    「……俺は先輩一筋なんだよ。ああもう、この話はもう終わりだ」
     それ以上は依恋も何も言わなかった。
     ほどなく、座り込んでいるスクール水着の眼鏡少女を発見した。
     何をやっているのかと思えば、寝転がる関根を砂に埋めていた。頭以外はすっかり覆われていて、金子はなおもペタペタと砂を積み上げていた。
    「ありゃ、ふたりとも戻ってきちゃったんですか」
    「先輩とは別行動なのか?」
    「それがですね、出水さんがどこかに連れて行っちゃいまして。もう有無を言わさぬ勢いで」
    「部長、なんで止めなかったんです! 危ないじゃないですか」
    「ですよねえ。出水さんってガチ百合みたいですし」
    「そういう意味じゃない!」
    「男同士だったらいろいろ想像がはかどったのに惜しいです」
    「あんたはそのまま妄想にふけってなさい! ……で、紗津姫さんもわかってるんでしょ? 変な男たちに絡まれる心配があること」
     依恋の問いに、関根はろくに動かない首でもちろんと頷いた。
    「そんな奴が来たら、自慢の合気道で返り討ちとか出水さんが言うもんでな。子供の頃からやってたんだってよ」
    「マジっすか……」
     来是はさっさとその場を離れた。出水の合気道の腕前のほどは知らないが、それでも女の子ふたりでは不安なことに変わりはない。
     依恋も引き続き来是の隣についてくる。ずいぶんと肩を怒らせていた。
    「ホント、面倒ばっかりかけてくれるわねあいつは――」
    「仕方がない。よっぽど先輩のことが好きなんだろ」
    「紗津姫さんも優しすぎるのが玉に瑕よ。みんな一緒にいないとダメじゃない!」
    「……さっきまでのお前と同じなんだけどなあ」
     そして――不安はさっそく的中してしまった。
    「あんたたち、邪魔なんだけど」
    「まあまあそう言わずに。一緒にメシを食うだけでいいから」
    「俺らのおごりでいいぜ。だからさあ」
     大学生あたりだろう。よく日に焼けて体格もいい四人の男グループが、紗津姫と出水を取り囲んでいた。
     出水は紗津姫をかばうように男たちと口論しているが、いくらなんでも多勢に無勢すぎた。自慢の合気道とやらも、おそらく役には立たないだろう。
    「紗津姫ちゃん、行きましょ」
    「ええ……」
    「つれねえなあ。それとも彼氏が待ってるわけ?」
    「ぎゃはは! いたら放っておくわけないだろ。こんなすげえおっぱいしてる子をよ」
     男たちの視線が、紗津姫のアピールしすぎる胸に集中している。舐め回すような、劣情を隠さない目。
     来是も同じ男として、気持ちはわかる。だがしかし、そのナンパ、成功させるわけにはいかない!
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