【本格将棋ラノベ】俺の棒銀と女王の穴熊
いよいよレビュー最終回です。前もって言っておきたいのですが、傑作でした。
最終局 神の一手
神の一手というフレーズで思い出すのは、やはり『ヒカルの碁』です。ヒカ碁の藤原佐為もこれを追い求めていましたが、この『王手桂香取り!』においては本物の神様がおわすわけです。神にしか指せないような、形勢をひっくり返す最善の絶妙手。女王様の手ほどきを受け続けた歩は、西本相手にそんな手を指すことができるのでしょうか。
先手は歩に決まり、対局開始。事前情報どおり、西本は後手ならば振り飛車にしてくるという予想も当たり、まずは順調な立ち上がり。この大一番で歩が採用した囲いは、第1巻でも好きだと言っていた天守閣美濃です。単に好きだから採用したのではなく、隙あらば玉頭戦を仕掛けられるので、「先に攻める」という方針に合っているわけですね。
準決勝をはるかに上回る密度の対局描写に、ページをめくる手が止まりません。順調に思えたのもつかの間、読みを外されて焦る歩。じわじわと傾く形勢。そんな中でついに見つけた絶妙手! このシーンは誇張ではなく叫びそうになりましたね。
神の一手とは何か? それはひょっとしたら「神にしか指せない」のではなく「神さえも感激させる手」のことかもしれません。本書を読んで、私はそう思いました。
対局の結果は書きません。しかし実際のプロ棋戦に勝るとも劣らない情熱がそこにありました。
さて、気になるのは今後この物語はどう進んでいくのかということ。はっきり言って桂香先輩とのラブコメはオマケ要素ですからね。
奨励会三段に匹敵する西本を出してしまったので、もうこの先は奨励会やプロにステージを移すしかないように思います。あるいはアマチュアでありながらプロを凌駕するような存在を目指すのかもしれません。
なんにせよ、第3巻の発売を心待ちにするのみです。新人のデビュー作は、3巻までは保証してくれるみたいな話は聞くのですが、どうなることでしょうか。
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