桜が咲いて初々しい新社会人を街で見かけたら「春だなぁ」と、道すがら蚊取り線香の匂いがすると「夏だなぁ」と、なんとなく思うことがあるものの、僕らが日常生活の中で季節の変化を意識することはそんなに多くない。

今から約150年以上前に暮らしていた人びとは、1年の季節を24分割にした「二十四節気」と呼ばれる区分けと、そこからさらに細分化された「七十二候」を暮らしに取り入れていた。72個の季節というと、だいたい5日に1つのペース。そのときの旬の食材を食べ、旬の花木を愛でる生活をし、自然の移り変わりとともに今よりずっと細分化された季節の移ろいを感じていたのだ。

七十二候の「意味」や旬の食材を知ることで、普段よりも敏感に季節の変化を意識できる。季節の移ろいを感じ、取り入れてみて、暮らしに深みをもたせよう。

前回の七十二候:「腐草為蛍」夏の風物詩、蛍が見られる季節

七十二候:梅子黄(うめのみきなり)

6月16日~6月20日ごろ
四季:夏 二十四節気:芒種(ぼうしゅ)

梅の実が熟してきて、黄ばみを見せる季節。

梅の産地・和歌山では日本の梅の約8割を出荷しており、その歴史も古く、1000年以上も梅の栽培と梅酒づくりが続いているという。

旬の食材

2月~4月ごろに花を咲かせ、この時期に熟して収穫する。今の時期に梅酒を仕込み、おおよそ4か月~1年ほどでおいしくできあがる。

ちなみに「梅雨」は梅が実この時期を指した名称という説もある。旧暦5月(ごろ)の雨のことを「五月雨」と呼ぶが、「五月雨式」は梅雨のようにだらだら雨の降る様子からきている。

スズキ

成長に伴り名前を変えていく「出世魚」。フランス料理にも使われており、カルパッチョやムニエルで出てくることもある。

また、きりっとした顔つきと特徴的なトゲから「鯛に次ぐ美魚」とも言われている。

本日の一句

ほろほろと雨吹きこむや青簾

正岡子規

高温多湿な日本において、夏場に簾は欠かせないもの。作者が生きていた明治の暮らしにも使用されていたことがわかる。

青簾とは、青竹を使い編まれた簾のこと。青々としたおろしたての簾からは、夏が始まったばかりの雰囲気が感じとれる。

次回は「乃東枯(なつかれくさかれる)」。

illustrated by Kimiaki Yaegashi

参考文献:白井明大(2012)『日本の七十二候を楽しむ ―旧暦のある暮らし―』東邦出版.
Japanese plum via Shutterstock
Cooking ingredient series Japanese sea bass via Shutterstock

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