「今月の家シネマ」は、アップリンク・クラウドで楽しめるオススメ映画作品を、アップリンクスタッフが独自の視点で執筆し、紹介する連載。
スペインといえば、照りつける太陽に闘牛、パエリア、サッカー、ペドロ・アルモドバルなど、赤と黄色の国旗に象徴されるような濃い色彩の文化を連想させる。世界第三位の観光国というだけあって、日本からの渡航者も年々増えているようだ。
その中でもツーリストに特に人気が高いのがサグラダ・ファミリアとフラメンコ。今月ご紹介するのはスペインを代表するこのふたつの名物をフィーチャーしたドキュメンタリー。
未完の美しさをご覧あれ、『創造と神秘のサグラダ・ファミリア』
『創造と神秘のサグラダ・ファミリア』は、かの名匠アントニ・ガウディの未完の教会、サグラダ・ファミリアのこれまでとこれからを見つめる映画なのだが、映し出される仕事量がとにかくすごい。万年工事中と言われる新宿駅をしのぐ130年以上もの間、何が行われてきたのか。
これまで公開されなかった内部の状況が見られるほか、「違いがわかる男」として知られる日本人彫刻家、外尾悦郎氏をはじめ、ステンドグラス職人、建築家などがそれぞれにガウディの遺志を解釈。完成というゴールに向かって緻密な仕事を積み重ねる様子を見るにつけ、この壮大な物語の結末を見届けたい気持ちが大きくなっていく。
現在の完成予定は、当初の予定より100年以上短縮された2026年。工事中の姿はあと9年しか見ることができない。本作を観て現地へ飛べば、サグラダ・ファミリアの未完の美しさをより深く理解できるはず。
悲しみと情熱のドキュメンタリー『サクロモンテの丘~ロマの洞窟フラメンコ』
太陽のような国、スペインにも悲しみの歴史がある。映画『サクロモンテの丘~ロマの洞窟フラメンコ』は、かつて迫害を受けたロマたちが独自に生み出したフラメンコの歴史と伝統、そしてその魅力についてのドキュメンタリー。
グラナダの世界遺産、アルハンブラ宮殿の近く、サクロモンテの丘には無数の洞窟があり、ロマたちはそこに居を構えていた。貧しい生活や差別を吹き飛ばすかのように、彼らのフラメンコはパワフルで情熱的。やがてそのパフォーマンスを一目見ようと世界中から客が押し寄せるようになり、サクロモンテのフラメンコは興隆を極めていく。
しかし1963年の水害によって突如街は壊滅、政府は人々を強制的に移動させたのだった。そんな悲劇にあってもなお、洞窟フラメンコの精神は脈々と受け継がれ、時代の変化に沿って伝承されてきた。
当時を知る老人たちの舞とカンテ(歌)には、皺に刻まれたような奥深さがあり、見ているだけで涙が出そうなほど力強いのだ。彼らの会話にしばしば挟まれる下ネタと豪快な笑い声にさえ、なんだか元気をもらえるような気がしてしまう。
フラメンコには興味がないあなたにもおすすめしたい、勇気の出る一作。
人知と労力を惜しみなく費やして教会を作ったり、思いの丈を踊りや歌で表現したりと、自由奔放で情熱に溢れ、魅力が尽きないスペイン。しかし実際に現地へ赴くには時間とお金、やる気と元気が必要。夏休みが終わってしまった今、次のタイミングへ向けてまずはご自宅でスペインの熱に当てられてみては。
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有効期限:9月14日(木)13:00〜10月14日(土)12:59まで
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