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いしたにです。「家を考える」第3回です。

第1回の「間取り」第2回の「家の外」に続いて、どうしようかと思っていたのですが、前回プレゼント企画をさせてもらった私の新刊が『あたらしい書斎』という書名であることもあり、「家と書斎」について考えてみましょう。

書斎という空間を考えるとき、2つの方法から書斎にアプローチすることができます。「空間ありきで書斎を考える」か、「書斎ありきで家の中から空間をひねり出す」かという違いになります。ちょっとわかりにくいと思いますので、順番にご説明していきましょう。

仕方がないことですが、家の中で書斎を考えるとき、どうしても部屋にしばられます。第1回でお話しした「間取り」がネタとして共有されやすいのも、標準的な間取りが深くみなさんの意識に入っているからです。そこまではいいのですが、間取りにとらわれすぎると、発想が間取りの外に出ません。これが快適な書斎の設計においては、往々にして弊害になります。

そこで、これは『あたらしい書斎』でも提案していますが、まずは自分と本の関係や、日々の行動などを見直して、自分が書斎という空間にどういう機能を求めるのかをまず考えてほしいのです。つまり、自分の行動から空間を定義して、その空間を家の中で切り取っていく方が、家と自分、人によっては家族との関係の中で、幸福な形を考えることができるはずなのです。

例えば、昼間や夕方までは、小さなお子さんと遊んだり絵本を読んだりする空間として使い、お子さんが眠ってしまった後は、親たちが本を読む空間として使うというような家族の生活に合わせた書斎を考えることもできます。これも『あたらしい書斎』で提案している書斎の形のひとつです。

その場合、4畳半とか6畳という個人のための部屋に書斎の空間を作るよりも、居間の一部などに仕切りなどを作ることで、居間の中に書斎という空間を切り取った方が、家族のためには、有効に機能するはずです。そして、その際、その空間の面積は6畳も必要なく、1畳から2畳程度で十分なものが作れるはずです。

発想をこう切り替えてみると、家の中に、書斎になるとそれまで考えていなかった場所も、書斎を作る空間として考えることができる人もいるでしょう。また、いやおれの部屋はワンルームだから書斎なんて関係ないよ、と考えていた人にとっても、同じように考えることで、ひとつの部屋の中から書斎という空間を切り取ることができるはずです。





さて、おいおい、そもそも私たちに書斎は必要なのか? という問いが残っていると思います。これについては、『あたらしい書斎』の冒頭の言葉を引用しておきたいと思います。




どこでも仕事ができてしまう時代だからこそ、もっとも集中できる「書斎」が大切だ

 
書斎という空間は、実は、本の発展・市民社会の確立という順番を経て、人の歴史の中で、われわれが先人の努力のおかげで、獲得してきたものになります。その書斎をベースにして、いろいろなものが生まれ、書物という形で知識や知恵が広がっていっています。

今はそこにさらにネットによるコミュニケーションも加わります。このネットのおかげで、物理的には閉じた空間にいながら、精神的には開かれた形で書斎にこもるということが可能になりました。こういったあたらしい書斎の姿を考えながら、一度自分の家の中で、書斎空間を考えてみるといいのではないでしょうか。




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