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子どもにワクワクや楽しさ、悲しさ、教訓などを教えてくれる絵本。大人になって読んでみると、また違った印象を受けることもあるかもしれません。夜眠る前に、雨降りの日に、もちろん、晴れの日だって、絵本を読む時間は、きっと、貴重な時間となることでしょう。

というわけで、大人も子どもも楽しめる絵本の紹介をしていきたいと思います。第10回は、わかやまけん 作・絵・『しろくまちゃんのほっとけーき』です。

「こぐまちゃんシリーズ」はカラフルで楽しいお話がいっぱいなのですが、こちらは、ホットケーキ作りをしたくなる1冊。

ストーリーはこんな風。

しろくまちゃんが、お母さんとホットケーキを作ります。冷蔵庫から卵をとってきて、牛乳を入れてよくかきまぜます。ふわふわの小麦粉とふくらし粉を加えて混ぜて、焼きましょう! フライパンに「ぽたあん」と生地を入れて、表面が「ぷつぷつ」してきたら、ひっくり返します。おいしそうに焼けたら、お皿に「ぽいっ」とのせて、できあがり。

できあがったら、こぐまちゃんと一緒に食べます。お皿洗いも忘れずに。

『しろくまちゃんのほっとけーき』は、1972年から愛されている絵本。

「こぐまちゃんえほん」シリーズの生みの親でもあり、出版社のこぐま社を設立した佐藤英和さんのインタビューを読んだことがあるのですが、子どもにとって、初めての友だちとなるぬいぐるみ、その中でも親しみのあるクマをキャラクターに、「絵はシンプルで色使いの美しいもの、食事や排泄、遊びなどをテーマ」に、と生まれたのが、このシリーズだったのだそうです。

現在、絵本のクレジットとしては、「わかやまけん 作」となっていますが、実は、文を担当した森比左志さん、児童劇の劇作家・和田義臣さん、絵を描いた若山憲さんの3人と話し合いを重ねてできあがったという、まさに、子どもに読んでもらうために、しっかりと考えられた絵本なんですね! だからこそのベストセラー!

わかやまけんさんの絵は、カラフルなリトグラフ。当時は、まだまだ、海外の翻訳絵本も多かったそうなので、写実的な絵や海外の影響を受けた絵などが多く、きっと、40年前には、とても斬新な挿絵だったのではないかと思います。なにせ、背景が濃いオレンジやグリーン、黄色だったりと、とにかく目立つんですよね。

そして、その中でも『しろくまちゃんのほっとけーき』は、約235万部以上の大人気作品。

見どころは、やっぱり、ホットケーキが焼ける12の工程が、絵と擬音で表現されているところ。フライパンに、「ぽたあん」と白い生地を落とす、表面が「ぷつぷつ」してきたら、「しゅっ」「ぺたん」とひっくり返す、「ふくふく」とふくらんだら、「ぽいっ」とお皿にのせて、できあがり、など。こんな工程を見せられてしまっては、どうしたって、ホットケーキを作りたくなっちゃいます。

卵を割って、一生懸命に粉を混ぜて準備をするところも、ほほ笑ましくて、特に、子どもたちは、作る気満々になりますよね。お皿洗いもきちんと手伝っています。絵本の楽しさはもちろん、どんな風にホットケーキができているのかを知り、お手伝いをしたいという気持ちを芽生えさせてくれます。

しろくまちゃんやこぐまちゃんの、一見、無表情な感じも、よかったりして。

大人も子どもも、ホットケーキの甘い誘惑に負けてしまう1冊。
明日の朝食は、ホットケーキで!

わかやまけん・もりひさし・わだよしおみ作『しろくまちゃんのほっとけーき』 (こぐま社)
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