思いいれがある部屋の一角を、住人による投稿形式で紹介する企画「わたしの部屋」。
ここに、中古のコーポラティブハウスをリノベーションした部屋を投稿してくれたのが、野村恒司さんでした。
写真もインテリアもすてきで気になる! ということで、編集部がお邪魔してきました。
名前:野村恒司さん、可奈さん、咲良(さら)ちゃん職業:ゼネコンでの建築設計(恒司さん)、都市計画コンサルタント(可奈さん)
場所:東京都文京区
面積:80㎡ 2LDK
物件購入額:非公開
築年数:築8年
間取り図(クリックで拡大)
お気に入りの場所
階段からの眺め(恒司さん)1階と地下1階からなるメゾネットタイプの野村家。
ふたつのフロアをつなぐ階段の途中が、恒司さんのお気に入りの場所。
「朝起きてきて階段に座ると、家族の様子が見わたせるんですよ」
1階にあるサブリビングの壁に反射した光が差し込み、地下でありながらも、うす暗い印象はありません。
家事がしやすく、部屋が見わたせるキッチン(可奈さん)可奈さんのお気に入りは、なんといってもキッチン。
「家のなかでいる時間がいちばん長い場所ですね。料理中に子どもと話ができるし、家の中で一番明るくできています」
もともとの施主はフランス人と日本人のご夫婦。
それもあってか、キッチンとお風呂とトイレは、高スペックながらかなりコンパクトにまとまっています。
「洗濯機スペースも、ふつうのマンションでは考えられないせまさなんですけど……
そのぶん家事動線がよくて使いやすいですね」(可奈さん)
この部屋に決めた理由
「コーポラティブハウス」という選択肢コーポラティブハウスとは……入居希望者が集まって組合をつくり、自分たちが事業主となって、土地取得や設計者の手配など“希望する家”を企画する方法。
近年とくに注目が集まっています。
なんと可奈さんのご実家は、40年ほど前に建てられたコーポラティブハウスだったとのこと。
「ふたりで好きな家を建てたいところからスタートして、コーポラティブを探したんです。
妻が『こんなところあるんだけど、一回見てみようよ』と提案してくれたのが、この部屋でした」(恒司さん)
「ふたりとも建築学科卒ですし、夫が設計者ということもあって、デザインのこだわりが強くて。
普通のマンションは、外装や外構がいまいちなことって多いですよね。
コーポラティブなら、室内だけじゃなく、外までこだわって建てられることが多いから、いいんじゃないかなって」(可奈さん)
玄関
「ある日、コーポラティブハウスを企画するアーキネットのWebサイトを見ていたら、ここが中古で出ていて。
近所にすごく仲のいい友人がマンションを買ったところでもあったし、この辺はよさそうだって慌てて見に来て、即決でしたね」(可奈さん)
中古のコーポラティブハウスだからこそのよさもともとはイチから建てようと思っていたものの、土地の状況に見えない点が多かったり、コストの折り合いがつかず、頓挫したこともあったとか。
だからこそ、中古のコーポラティブハウスにはメリットが多いといいます。
「組合で進めるから、工事費やスペックがわからないけれど、中古物件だったら完成を見てから買えますからね。
みなさん最初にこわだってるから、もともとのスペックが高く、設備もいいものが入っているケースは多いとおもいます。
その上で、リノベして手直しをして住めるので、お買い得でした。
設計施工は、もともと私の会社の先輩で、独立をした中田製作所にお願いしました」(可奈さん)
1階から地下1階を見る
実際、地下フロアには床暖、キッチンには食洗機が備え付けられているなど、中古マンションのリノベでは得られない特権が。
「サッシもいいものが採用されているし、キッチンも設備は全部そのまま。
リノベ費用にも限りがあるので、設備部分の充実度は魅力的です」(可奈さん)
文京区を選んだのは、可奈さんの職場が近く、上京して最初に住んだ場所だったため。
神楽坂が近いなど、買いものや住環境も魅力的なエリアです。
「娘は、部屋が広くなったことで、より活発になったと思います」(恒司さん)
まわりは静かな住宅街で、咲良ちゃんにとってもいい環境といえます。
残念なところ
細部に施工のあまさが…?こだわって建てられたコーポラティブハウスですが「ちょっとおおらかにつくられた感がありますね」といって恒司さんが見せてくれたのは、洗面台。
洗面台の下のモノをどかすと、実は土台が丸見えだったり。
また、部屋の天井に照明を吊るすソケットがないものの、前の家でメインで使っていた照明はどうしても手放せず、唯一付けられるトイレに設置。
「よくみると配線が出ていて(笑)。
ソケットが上からじゃなくて、ななめから出てるのに、ちょっと無理してつけていて……。
それでも、この照明だけは手放したくないんです!」と、照明好きの恒司さん。
総タイル張りのバスルームは、掃除がしづらいかも「お風呂とトイレはタイル張りなので、目地の汚れが目立つのが気になりますね。
どうしても取れない汚れもあるので……。
目地を黒にぬりなおすか、大々的に変えるか検討中です」(恒司さん)
お気に入りのアイテム
キッチンカウンター下の飾り棚可奈さんがずっと憧れていた飾り棚は、お母さんに「ホコリが溜まるから、扉をつけたほうがいいよ」と言われても、どうしてもつけたかったのだそう。
「子どもがさわるので、普段はモノを入れてないんです。いずれは、お気に入りの食器をここに入れたいですね」(可奈さん)
つくりつけのロングベンチ地下フロアの壁面いっぱいに広がるベンチは、収納にも椅子にも机にもストックヤードにもなるスグレモノ。
咲良ちゃんがお絵かきをするときはテーブルになり、お客さまを招いたときは、テーブルを寄せることで席数を増やすことができます。
前の住人から受け継いだ大型プロジェクター天井に吊るされたプロジェクターは、前の住人が置いていってくれたもの。
友だちが遊びに来たときは写真を流したり、咲良ちゃんのためにアニメを上演したりと大活躍です。
家型のブックシェルフ(恒司さん)お気に入りのアイテムをうかがうと、開口一番に出たのがこのブックシェルフ。
「独身時代の家から夫が持ってきたもの。いつも部屋のすみでホコリをかぶってたのが、やっと日の目をみました(笑)」と可奈さん。
「そんなに有名なブランドではない気がするんですけど、ネットで見つけてすぐ買いました。今後、絶対に活きてくるのを信じて」という恒司さんの言葉に、可奈さんも「活きてくるまでが長かったね」と笑います。
BoConceptで揃えたプロダクト(恒司さん)前の家で使っていた家具が多いなかで、サイドテーブルや玄関のラダーは、新居に合わせてBoConceptで購入。
「キッチンのシンク上に、吊りのペンダントライトが欲しくて、それと合わせていくつか買いました。
どんな家具を持っているかも、設計施工をお願いした中田製作所に見てもらって。
テーブルがうすい色だけど、壁の木はどうしようなど、家具に合わせて内装を相談できたのがよかったですね」(可奈さん)
キッチンまわりの便利なアイテムたち(可奈さん)マグネット式の包丁置きは、キッチン道具を下げるフックとともに、可奈さんが絶対につけたかったもの。
「夫はステンレスの壁に穴を開けるのをいやがって『ほんとにいる?』って押し問答になったんですけど(笑)。
包丁は引き出しに入れると、子どもが取り出せる可能性があって怖いんですが、壁の奥なら手が届かないので安全です」(可奈さん)
炊飯器は、キッチンシンク下にぴったりサイズでしまえるように工夫されています。
おままごとセットなどの、かわいいおもちゃ(咲良ちゃん)「おままごとが大好きなので、なるべくかわいいものを揃えるようにしてます。
キッチン用品はイケアのおままごとセット。全部ステンレスで、本物みたいですよね」(可奈さん)
木工職人が手がけるままごとキッチン・COOK TIMEは、可奈さんのお兄さんからの出産祝い。
「赤をたのんだら、間違いでピンクが届いたんですけど……
やさしい色味で気に入ったので、そのまま受け取りました(笑)」(可奈さん)
ディック・ブルーナが描くうさぎのキャラクター・ブルーナボンボンのバルーン遊具もお気に入り。
暮らしのアイデア
アイテムは黒か白で統一する基本的にインテリアまわりの買いものは、こだわりやさんである恒司さんに確認を取る……が野村家のルール。
しまわずに出しておくものは、黒か白にすることで、統一感を大切にしています。
そうすることで、衝動買いを減らす効果も期待できるんです。
「鍋はしまえないから、出したままでもサマになるVitacraftのお鍋に。
普通のタイプは取っ手が黒なんですが、よりデザイン性を重視して、オールステンレスタイプにしました」(可奈さん)
ほかにも、ロングベンチの下に入れる収納ボックスも、素材や色には気をつかっています。
引っ越しを期に、断捨離を本や雑貨は、メルカリを活用して、大規模な断捨離を実施。
それぞれのフロアに大型収納はあるものの、不要なモノを減らすことで、スッキリとした部屋を手に入れています。
地下だからこそ、緑を絶やさない外の植物があまり見えないため、ふたりとも緑を絶やさない工夫をしています。
植物を育てたことがなかったという恒司さん。空気を入れるためのドライエリアを庭として活用するために、棚をDIYしたり、イスをおいてみたり。
今ではガーデニングをたのしんでいるそうです。
また可奈さんは、キッチンの天板に必ず枝ものの緑を活けるようにしているそう。
「緑を飾るだけで、部屋の雰囲気が変わるんですよね。
お花屋さんに『部屋に半日しか陽が当たらないんですけど』ってきいて、元気なものだけを育てています」(可奈さん)
これからの暮らし
「直近では、水まわりをなんとかしたい!」という恒司さん。
また、ふたり共通で考えているのは、子どもの成長に合わせて家をどう変化させるか。
「子どもがふたりになったとき、1階の部屋をどう分けるか……は、何年か後に考えないといけないなって。
家具を壁代わりに置くのか、それともちゃんとつくるのか。ゆっくり考えていきます」(恒司さん)
「子どもが男女になるのかなど、そればっかりはわからないので、そのときに考えようかなって。
夫も大学に入って家を出るまでは、弟さんとひとつの部屋だったらしいし、意外といける気もしてます。
あとは地下フロアの奥のスペースを与えようかなんて、いろいろ話していますね」(可奈さん)
自分でイチからすべてやるのは難しいし、予算も限られているけれど、部屋にはこだわりたい。
そんな人に“コーポラティブハウスを中古で買う”という選択肢は、新しい可能性を生んでくれると感じました。
明るく、設備も充実したこの家なら、野村家らしい暮らしが楽しめそうですね。
Photographed by Kenya Chiba
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