店の戸を開けてすぐのところで気品たっぷりにくつろいでいたのが、日本の老舗木製家具メーカー天童木工の「アームチェア」でした。
古家具好きだけでなく、新規でご来店したお客さんも、その美しいデザインに一目惚れしてしまうことから、入荷する度にすぐに売り切れてしまう人気商品なのだとか。
そんな多くの人を魅了する「アームチェア」が持つストーリーや特徴を、店長の菅野さんに教えてもらいました。
美しい曲線のヒミツは?
このチェアが生まれたのは1960~70年代。それまでの椅子は、切って繋げた直線的な造りが普通でした。
でもその時代に、「プライウッド成形(成形合板)」という技術が生まれたことで、このような美しい3次曲線を持ったチェアを作ることができるようになったんです。
天童木工は、日本ではじめてこの技術を実用化したメーカーなんですよ。
なんともミステリアス…
でも、これだけモダンでスタイリッシュなデザインは、当時の日本では珍しいものだったのでは……?
当時のインテリア雑誌などで「あれは海外のデザインの真似じゃないか?」と、酷評されたこともあったそうです。
でも、アイデアってそういうもの。0からというよりは、良いものを掛け合わせて出来ていくものですよね。
酷評されるということは、それだけ人々の興味を強烈に引く、強いデザインだったのだと思います。
当時から「デザイナーは誰だ!?」と随分賑やかに詮索されたようですが、今となっては、このチェアをデザインした人が誰なのかは、もうわからないんじゃないのかな。
このデザインを生み出したのが、誰なのか分からない。
そのミステリアスささえもが、このチェアの美しさを引き立たせているスパイスになっている気がしてきますね。
ずっと座っていたくなるホールド感…
デザインだけじゃなく、その座り心地も魅力のひとつと菅野さんは語ります。
体のラインにぴったりと沿う3次曲線が、座ったときのなんとも言えないホールド感を演出してくれて……。座り心地で購入を決める方も多いですね。
私も座らせてもらいましたが、体全体をしっかり支えてくれる安心感と、背もたれに体を預けた時の柔らかくしなる感触が、なんとも心地いいものでした……。
同行したROOMIE編集部員も思わずウットリ……
「プライウッド成形」で世界的に有名な家具と言えばセブンチェアですが、天童木工のチェアは日本人サイズで小ぶりなため、アームの位置含め、日本人が使うのにちょうどいいんですよね。
永く愛され続けるチェアとして
このチェアの座面には、作られた際のビニールレザーを使用していますが、布や本革に張り替えることも可能なのだとか。
わたくしどもは、過去何脚もお客様の好みで張り替えをしています。そうやって雰囲気をインテリアに合わせて柔軟に変えることができるのも、人気の秘訣かと思います。
1960年頃から、その変わらぬ美しさを保ちつづけてきた天童木工のアームチェア。
状態や好みで座面を張り替えたりメンテナンスしたりしていけば、この先も何世代にもわたって使っていけそうです。
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Photographed by Kenya Chiba