まだ記憶に新しい2019年に大きくリニューアルし、今や毎月新製品を展開、進化し続けています。
その魅力を発信するPRの長嶋さんに、ユーザーに愛され続けるブランドの信念について、うかがいました。
ブランド名、ロゴのリニューアル。激動の10年間
──はじめに、現在のSHIROに至るまでの変遷を教えてください。
SHIROの前進となるブランドが立ち上がったのが2009年。当時はまだ店舗が札幌にしかなくて、ブランドを知ってもらうところからのスタートでした。
名古屋、大阪、鹿児島など全国各地の商業施設でポップアップストアを出店しながら、少しずつ知ってもらっていって。
初めは店舗の場所も施設の一番奥のところからのスタートだったので、出店してからもなかなか客足が遠く……。少しずつ少しずつ実を結んできて、入り口付近に出店させていただけるようになったのは最近のことなんですよ。
──そこからブランド名が「shiro」に変わったのが2015年。
はい。そのときは海外にも出店をしていく段階だったんですが、ロゴも製品パッケージもまったく新しいものに入れ替わって。
その頃には店舗も増え、まさに激動でしたね。
長嶋さんの肌がとってもきれいで、スタッフ一同驚きました
──さらにブランドロゴが小文字の「shiro」から大文字の「SHIRO」に変わったのが、2019年と。
ロゴやパッケージなどを一新したのですが、LAURELのときより認知度が上がっていた分、お客様からさまざまな声をいただいて。そのときにブランドを創設した弊社の今井が話していたことが印象的で、まさにそうだなと強く感じたのが「もう自分たちだけのブランドじゃない」ということでした。
定番アイテムである『ボディコロン』も本来は廃盤になる予定だったのですが、「どうしてなくしてしまうんですか…」といったお声をたくさんいただきました。そういったお客様からのお声がきっかけで、あえて以前の容器で提供を続けることにしたのです。
他にも『アールグレイ』の香りは限定販売でしたが、お客様から定番販売を希望する声を多くいただき、現在はオンライン限定で定番販売しています。お客様が喜んでくださるのであればできる限りやっていきたい思いがありますね。
──まさに「自分たちだけのブランドじゃない」ということですね。
ずっと愛用してくださっている方がたくさんいて、今のSHIROがあることを、ブランドが変わっていくたびに実感させられます。お客様に育てていただいているんだなと、ずっと感じていますね。
常にユーザー目線で製品に向き合う
──長嶋さんはいつ頃からSHIROに?
今年で11年目です。北海道で入社し、そこから東京や大阪の店舗に勤務していました。
現在はPRとして新製品の情報を社外に発信したり、販売に向けて「こんな製品が出ますよ、いつ出ますよ、こういうところが特徴ですよ」と一番最初に社内外に向けた情報発信をメインに行っています。
──新製品を実際に試したりもするのでしょうか?
はい。開発チームが同じ企画のグループいるので、製品の試作品を実際に使って、使用感について意見を言い合うことも多いです。
製品開発に当たる部分ではありますが、そこは垣根なく「もうちょっと香りに甘さがほしいですね」「肌への保湿力がほしいですね」なんてやり取りをしたり。
やっぱり使ってみないとわからないですし、自分たちが使いたいと思えるかを主軸に考えています。
──あくまで「ひとりのユーザー」としての視点を大切にしているんですね。
もちろん「私はあんまり好みじゃないな」なんて意見もありますし、いろいろな感想があっていいと思うので「自分はこうだった」と正直に伝えています。
ユーザー目線、ブランドのいちファンとしての視点を持つようにしていますね。
「世の中を幸せにする」のが会社の経営理念で、製品作りの面では「自分たちが毎日使いたいと心から思えるかどうか」が判断基準になっています。
新製品は年間約200個。素材への徹底したこだわり
SHIRO表参道本店には製品に使われている素材がずらり
──酒かすやがごめ昆布、タマヌなど、どの製品も素材を大切にされている印象です。
ブランドができたときから製品に使用する「素材」にはこだわっています。取り扱う素材が増えたのは、スキンケアのラインができてからですね。
素材を使わせていただいている生産者さんにお会いして、生産の背景を知ったうえで、その素材の良さをSHIROは化粧品を通して伝えていきたいなと。
生産者さんが愛情をかけて作った素材の良さを、たくさんの方に知ってほしいという思いがあるので、その素材の力を最大限に引き出す処方はどうやったらできるのか? と考えながら製品作りをしています。
2021年4月に登場したばかりの「タマヌオイル UV」
──HPを拝見すると、年間で新製品の数が平均約200個。これだけの数をどうやって実現しているのでしょうか?
北海道の砂川市に自社工場があるんです。企画、開発から製造まで自分たちで作れるところは強みですね。
でも数を出せばいいということではなく、妥協はありません。大枠が固まったものでも「本当にお客様に喜んでいただけるだろうか?」と、企画は毎日の朝礼で話すんですよ。
できたものは必ずみんなで試して、常に問いかけながら進めています。
──素材との出会いはどのように?
インターネットで調べて実際に素材を見に行ったり、生産者さんから「こういう素材があるよ」と教えていただいたりと、素材との出会いはさまざまです。じゃあどんな効能があるのかな? 一番効果的に肌に届けられる処方はなんだろう? と考えたりします。
例えば「タマヌオイルインセラム」は、タマヌの特長を最大限に引き出しつつ、さまざまな素材の効果を凝縮したものを作りたいという思いから生まれたアイテム。沖縄県産の貴重なタマヌに加え、酒かすやローズの蒸留水などを配合して作った製品ですね。
──型にはまらず、自由な発想から製品が生まれるんですね。
素材の力を最大限に引き出した製品を提案していくので、今後もどのような製品が出てくるか楽しみにしていただければと思います。
──製品名も直球で、わかりやすいなと。
そこがSHIROらしさかもしれません。「がごめ昆布マスカラ」なんて聞かないですよね(笑)。
名前だけでなく生産者さんの情報がわかるよう、例えば酒かす化粧水の裏には「栗山町小林酒造」と記載しています。
お客様からは、「昆布すごくよかったよ」「酒かすの香り好きだな」なんて言っていただくこともあるのですが、会話だけ聞いたら化粧品には聞こえないのがおもしろいですよね。
お客様からそういうお言葉を言っていただけると、製品を身近に感じて、愛着を持って使ってくださっているのをすごく感じますね。
環境にも配慮したパッケージレス製品の販売
──一方で、「エシカル割」など環境に配慮した取り組みも印象的です。
紙箱をなしにすることで、製品の包装を削減し、通常販売価格の3%をお値引きする「エシカル割」が始まったのは2020年の3月。
ルミネエスト新宿店に箱なしの製品を購入できる「SHIRO SELF」をオープンしたタイミングでスタートし、同時にオンラインでもエシカル割で購入できるようになりました。
もともと箱って、自分用に買ったときはよっぽどでなければ取っておくことってないんじゃないかなと。
写真提供:SHIRO
──たしかに、開封したら捨ててしまうことが多いですね。
利用される方が徐々に増えて、オンラインではエシカル割のものから売り切れることも多くなりました。お客様からも、他の店舗でも実施してほしいとお声をいただきますね。
ギフトだとやっぱり箱に入っていたほうが素敵なので、箱がいるシーンと不要なシーンのすみ分けをお客様ご自身でしていただけたらいいなと。
──ちなみに他にも、SHIRO独自のサービスはあるのでしょうか?
店頭で購入していただいた際にショップバッグの持ち手にオードパルファンなどで香りをひと吹きするのは昔からやっていて、喜んでいただくことも多いですね。
「お帰りの際も心地よい香りで癒されてほしい」という思いから生まれた習慣ですが、これも自分たちがいちファンとして、こういうことをされたら嬉しいよね、という想いが生かされているかもしれません。スタッフも店舗も製品作りも、すべてに関してそうですね。
性別、年代、国籍問わず手に取りやすい製品作り
写真提供:SHIRO
──SHIROではメンズ・ウィメンズの垣根がないように感じますが、これも何か意図が?
よく言われますね、スタッフからも「メンズラインは作らないんですか?」なんて声もあったりして。これは僕の考えも含めてですが、“肌質”って男女問わずさまざまじゃないですか。
例えば世の中のメンズラインだと「皮脂が出やすいから」と、大体の男性の“肌の傾向”に寄せられて作られているものも多く……。僕はすごく乾燥肌なので保湿力がほしいなと思うので、メンズラインだとあまり自分の肌に合うものがなかったりします。
なのでSHIROではそういった区分けを作らず、目の前のお客様のコンディションや理想の肌にあわせて選んでいただきたいと考えています。店頭で「男性でも使っていいですか?」と聞いていただくことがあるのですが、もちろんです!とお伝えしています。
──実際に男性のお客様も多いのでしょうか。
最近はぐっと増えましたね。いままではフレグランスだけの使用だったお客様から、「化粧水ちょっと使ってみたいんですけど」とスキンケアも手に取っていただくことが多くなったり。
いずれは男性も日常的にベースメイクをするなど、そういう時代が来たらいいなと思っています。
──製品パッケージもシンプルで手に取りやすいですよね。
性別だけでなく年代や国籍を問わず使っていただきたい思いがあるので、手に取りやすいデザインになっているかもしれませんね。
デザインもそうですが、迷ったときや答えが出ないときも「シンプルに考える」ことを意識しています。いつでも「それは本当にお客様のためなのか?」と立ち返るのが、社風かもしれないですね。
時代にあわせて、一人ひとりに寄り添い続けたい
──まだまだコロナ禍が続きますが、SHIROとしての変化はありましたか?
社内で聞いた話なのですが、ルミネ大宮店が2020年3月にオープンしたとき、70代くらいの女性のお客様が、オープンと同時に走ってアルコール製品を他店舗に買いに向かう姿を目の当たりにしたそうなんです。
当時は除菌ケアできる製品がなかったので、自分たちにできることはないかと考え始めました。世の中でアルコールが枯渇しているなか、SHIROではフレグランスなどアルコールを使って製品を作っている背景があったので、その製造を一旦止めてでも除菌ケアできる製品を求めていらっしゃる方々に届ける方向にシフトしました。
そこからはとにかくスピード優先で発売までは3週間くらい。すぐに届けられる方法を選び、今あるボトルで作ったので同じ製品でも3~4種類違うボトルがあったりするんですよ。
──想定していなかった新製品だったんですね。
このような状況になるまでは、まったく予定していなかったです。他にも、それまではリップ系のアイテムを開発していましたが、マスクを日常的に着用しなければならない状況になって、じゃあ今求められているものはなんだろうと考えたときにアイメイクに注力したり。
ビジネスチャンスという目線では見ていなくて、環境が変化して求められるものや必要なものが変化していくなかで、お客様のことを考えて、そこに対応していきたい思いが強いです。
やっぱり「今の自分が使いたいと思えるがどうか」は、普段生活していて従業員の一人ひとりが感じること。そこの判断基準は、SHIROというブランドを語る上で欠かせない部分ですね。
写真提供:SHIRO
──最後に、この先のSHIROが目指していることがあれば教えてください。
暮らしている状況が変化し、そのときの状況や時代に合わせてというのはもちろんあると思うのですが、自分たちがワクワクする物を作るのは今までもそうですし、これから先も続けていきたいですね。
先日、お客様からのメールに「若いときの肌は好きじゃなかったけど、SHIROの製品を使うなかで今の肌が一番好き。自分の肌を好きだと思えるようになりました」とあって、それがとても嬉しくて。
人にはそれぞれの個性があり、それこそがその人にとっての魅力だとSHIROは考えています。ありのままの自分を好きになれるよう寄り添った製品作りを今後も続けていきたいと思っています。
おまけ:PR・長嶋さんの推しアイテム
①酒かす化粧水ほんのり甘酒みたいな香りのする、酒かす化粧水がお気に入りです。一ヶ月使ったあとの肌を見ていただくと、鏡を見て笑顔がこぼれると思いますよ。
実感したのは、当時販売していた酒かすの化粧水を初めて試したときのこと。「使うと透明感が上がるよ」と先輩スタッフに言われたのですが、「本当にそうなのかな?」と思い、自分の腕に塗って実験をしてみたんです。
日焼け止めはまったく使わずに右腕だけ毎日酒かす化粧水を塗り続けたら、一ヶ月後左右で白黒になっていて。透明感がまるっきり違ったんですよね。
肌のきめが細かくなりますし、自分で思っていた肌の限界値を上げてくれるアイテム。自分の肌ってこんなにキレイになるんだとうれしい驚きがあり、今でも使い続けています。
②がごめ昆布美容液写真提供:SHIRO
社内でも「酒かす化粧水」か「がこめ昆布美容液」かというほど、人気のアイテム。僕も両方好きでずっと使っていますが、特に乾燥が気になるときはがごめ昆布美容液を使うと肌の潤いが変わるんですよね。
処方はとてもシンプルで、がごめ昆布は普通の昆布より何倍もとろみがあるのですが、それを濃縮して入れています。昆布自体が自分を守るために出すとろみ成分の持つ保水効果が強いので、乾燥が気になっている方にはおすすめの組み合わせ。
両方とも油分は入っていないので、最後にクリームなどを塗るといいですよ。
Photographed by Kosumo Hashimoto
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