福岡県はバスでも自転車でも移動のしやすい福岡市内。近くにはカフェや飲食店も多くあり住み心地もよさそうな住宅街に、ioさんの住まいはありました。

お名前(職業):ioさん(編集・ライター)
場所:福岡県福岡市
広さ:39㎡/2DK
住宅の形態:築38年 マンション
間取り図:

提供:ioさん

以前「みんなの部屋」で取材した際には、東京の賃貸で暮らしていたioさん。相棒のミシンとテレビだけを持って上京し、DIYを駆使してひとりで作りあげたというお部屋に、驚いた方も多くいたのではないでしょうか。

あれから2年、新天地でさらにお部屋の楽しみ方を広げるioさんに、お部屋づくりの新たなチャレンジについてお話を伺ってきました。

■目次
1. お気に入りの場所
テレビもアートの一部にしたグリーンの壁面
植物や花器を詰め込んだ窓際
DIYで仕上げたサニタリースペース

2. この部屋に決めた理由

3. 残念なところ

4. お気に入りのアイテム
モザイクタイルでDIYしたサイドテーブル
塗装し直して蘇らせたアンティークのテーブル
オーダーカバーと組み合わせたIKEAのソファ

5. 暮らしのアイデア
賃貸でもDIYをとことん楽しむ
お気に入りの一角を増やしていく
お香を焚いて、香りで整う

5. これからの暮らし

お気に入りの場所

テレビもアートの一部にしたグリーンの壁面

東京での住まいと変わらず、パリのアパルトマン風のイメージをベースにしたioさんのお部屋。今回の住まいのテーマは、「海外の美術大学に通う学生のお部屋」です。

アトリエのように空間を使いながら、必要なものは自分で作る。そんな創作意欲がそのまま反映されたようなスペースが、グリーンの壁面でした。

「自分の家でありながら、架空の人が暮らす家を一歩引いて見る感覚で住まいを作っています(笑)。また、これまでの暮らしではできなかった、『色で遊ぶ』ことがようやくできたスペースでもありますね。

これまでナチュラル、シンプルなものがインテリアの正解だという頭があったのですが、今回の住まいではテーマである“学生”のイメージで、自分の好きな色を自由に使おうという気持ちからグリーンを取り入れてみました」

カラーもさることながら、飾られた多種多様なアートにも目がいきます。

「テレビを中心にアートを並べて、テレビもアートの一部にしました。欲張りなのでアートのジャンルもフレームもバラバラですが、どこかしっくりくるのは自分で貼ったくすみグリーンの壁紙のおかげのような気もします。ここはこれからもアップデートしていく予定です」

飾られたアートもそれぞれ異なる国のもの。こうして好きなアート作品を自由に取り入れているところも、まさに美大生のお部屋のようですね。

植物や花器を詰め込んだ窓際

これまでの住まいではできなかったものの、新たに楽しめるようになったのが植物を育てること。日当たりのいいお部屋の窓際にはすくすく育つ植物と、自然光でキラキラと光る小物が並べられていました。

「今回の住まいで初めて植物の成長を感じられるようになりました。窓が広くなったことでブラインドを設けられるようになったのも、個人的には新しく取り組めてよかったなと思っているポイントです。差し込む光が本当に美しいんですよね」

「本棚ははじめこそ本を収納するために購入したのですが、いつしかディスプレイ用になっていました。見せたい小物たちをここに集めているので、目で見て愛でる一角。下から2段目にはこつこつ集めた花器をぎゅうぎゅうに置いています。お花を買ってきて、どの花器に生けようか考える時間がとくに好きです」

ベッドサイドの窓際にも同じく植物が並んでいました。住まいの変化によって、お部屋の楽しみ方が広がっているなぁ。

DIYで仕上げたサニタリースペース

メインのリビングとは違うカラーになっていたのがサニタリースペース。

「洗面所はDIYで理想の空間に仕上げました。長時間いることのないスペースだからこそ、他とは違う、気分が上がる場所にしたいと思い、色味も派手なカラーを選ぶようにしています。特徴的な小鳥柄のグリーンの壁紙は、友人からプレゼントでいただいた鏡に合わせて選びました」

トイレはブルーの壁面に。リビングをはじめ、壁紙1つで印象の異なる空間が作り出されていたのが印象的でした。

この部屋に決めた理由

広くて明るい部屋とDIYしやすい立地

福岡へ引っ越されてから、今回の住まいは2件目。前回の住まいより広い空間であることはもちろん、東京での住まいから変わらず大切にしている条件がありました。

「広さはもちろん、間取りが二間続きで広く使えることと、南側でよく陽が入ることが決め手でした。以前の部屋にはなかった独立洗面台と脱衣所があり、キッチンの広さも理想的でしたね」

「加えて立地がよかったんです。交通の便がよく、周辺にはおしゃれなカフェもあり、ここに住んでから周辺のお店を開拓するのが楽しくなりました。そして何より近くにホームセンターがあること。DIYしやすい材料が近場で手に入るのは、お部屋づくりがはかどる条件です」

下の階が事務所になっているため、家でのDIYも気兼ねなく行えるのだとか。暮らしやすさはもちろん、DIYの観点からも魅力的な部屋選びをしているioさん、さすがですね!

残念なところ

ただよう“元和室感”

視覚的に好きな空間をつくり出すことはできても、どうしても避けられないのが住まいそのものの古さ。取材時中、水道管に流れる水の音が聞こえてくることも。

築古物件であるため、レトロな住まいとして楽しむ心意気が大切なようです。

「部屋のテーマは海外のアパルトマンなのですが、“元和室感”はどうしても否めないですね(笑)。そこをどうにか工夫して『脱日本!』を形にしていく楽しさはあります」

「また引っ越してから気づいたのですが、レンジフードの高さがやけに低い。私が低身長だから問題はないのですが、住まい選びの優先順位をつけながら折り合いをつけていくのが大切ですね」

お気に入りのアイテム

モザイクタイルでDIYしたサイドテーブル

ベッドサイドに置かれたタイルテーブルは、お得意のDIYで作成。ホームセンターの木材に楽天で購入したモザイクタイルを貼り付けた、部屋のテーマカラーともなっているグリーンカラーのインテリアです。

「韓国インテリアでよく目にするタイルテーブルを、大好きな緑のタイルで作りました。ベッドサイドテーブルとして使っています。休日はここで遅めの朝ごはんを食べながら録りためた番組を観ることからスタートしていますね」

塗装し直して蘇らせたアンティークのテーブル

テレビとソファの間に置かれた味わい深いアンティークのテーブルはフリマアプリで購入し、ご自身で手入れされたもの。美しい外観をioさんが蘇らせた、思い入れのあるアイテムです。

「購入当初は塗装が剥げていましたが、電動サンダーで削って塗装し直し、オイルを塗って今の状態に仕上げました。おそらくヨーロッパで作られたアールデコ時代のものです。古いものに手をかけて使い続ける家具好きのロマンを感じます」

曲線美が目を引くテーブル。昔のものでも自分で一手間加えると、一層愛着が増しますよね。

オーダーカバーと組み合わせたIKEAのソファ

テレビの前に置かれたソファは、ioさんがずっと欲しいと思っていたIKEAのソーデルハムン

これまではサイズの関係で住まいに置けなかったものが、引っ越しと同じタイミングで新たなサイズが発売され、住まいに迎え入れることのできた縁あるインテリアでした。

「広い座面と大きなクッションに埋もれるように座れる、わが家の特等席です。カバーはCOMFORT WORKSでオーダーして作っていただきました。既製品にはない生地で、ベルベットの深みのあるグリーンが気に入っています」

暮らしのアイデア

賃貸でもDIYをとことん楽しむ

「自ら好きな空間を作り上げていく」ことを大切にされているioさん。その言葉通り、DIYのアイデアが至るところで光っていました。

例えば窓際の植物台の脚は、けん玉を使って作成。教えてもらうまで気づきませんでしたが、よくよくみると確かに玉も含めてけん玉そのもの。脚に使おうという着眼点がさすがです。

アイランドキッチンのようにしたかったと話すキッチンスペースの作業台も、ご自身で制作されたもの。

「タイルテーブルもそうなのですが、同じ型が連続するタイルのデザインが好きで、ついつい使ってしまっていますね」

「アトリエ的な要素を入れた部屋作りをしていることもあり、ところどころ作りかけで、施策の連続、構想の途中です。賃貸であってもできる限りのことはやりたいと思っていて、はがせる壁紙や石膏ボード用のピンなど原状復帰できるようなアイテムを選ぶようにしています」

「特に壁や床を変えるのがおすすめ。取り掛かるまでに時間がかかるかもしれませんが、達成感と雰囲気をガラリと変えられるので、インテリアにこだわりたい人におすすめしたいです」

お気に入りの一角を増やしていく

これまでの部屋とは違うアイテムやカラーを使いながらお部屋作りをしているioさん。その空間作りはどのように進められているのでしょうか。

「雑誌で見かけたフレーズなのですが、『景色を整える』ことこそが私にとってのインテリアだと思いました。インテリアのアドバイスをする時も、このことを伝えるようにしています」

「目を向けたときに今日もいい景色だなと思えるような一角を作ることで、気持ちも整う気がします。一つの絵を作るみたいに、構成するものや角度を決めていく。そうしているうちにお気に入りの一角が少しずつ増えていき、私にとっての好きな部屋ができていますね」

空間全体を一気に考えることは難しいですが、目の届く範囲からはじめてみることはチャレンジしやすそうですね!

お香を焚いて、香りで整う

視覚的には見えませんが、ioさんのお部屋づくりには五感に響く、もう1つのポイントがあります。それが香り。いつ伺ってもこの香りに癒されるのです。

「​​部屋のいたるところにインセンスホルダーを置いています。一人暮らしをはじめた時からテーマにしていた『音と光と香り』は今でも大切にしている部屋の要素の一つです」

「特に間接照明だけで過ごす夜にはお香は必須アイテムです。Lisnのお香がとくに好きで、1日に1~2本程度消費しています。音楽を流しながら煙をぼーっと眺める時間は、この部屋だからこそ感じられる特別な時間だと思って浸っています」

これからの暮らし

エピソードのあるものに囲まれた暮らし

これまでの一人暮らしの部屋の中で、最も広い住まいとなっている今回のお部屋。インテリアも必要なものは揃った今、これから考えたいと話すのが、長く使っていきたいと思えるモノ選び。

「これまではアンティークや古いものを集めてきましたが、デザイナーズ家具も取り入れていきたいと思っています。まずはチェアと照明から。リプロダクトですが、いつかは本物を買いたいですね。

これまでDIYなどで、解体できるものを中心にお部屋を作ってきましたが、これからは作家さんの作品など、エピソードがあるものに囲まれた暮らしができたらいいなと思っています」

「将来的には古民家を自分で改装しながら暮らすのが夢です。改装となるともっと本格的な作業になるので、今やっているDIYはその予行練習みたいなものだと思っています。

そこでテーマにしたいのは『シノワズリ』。海外インテリアに東洋のものを取り入れることで、美術館で観るアジア美術の展示のような空間をつくりたいとアイデアをあたためているところです。そして今年は猫を飼う予定。これからの相棒を見つけていきたいですね」

頭の中で描いた理想の住まいを次々に実現されているioさん。

絵や図として描くことはなく、頭の中のイメージをまず手を動かして具現化する。そして失敗したら、どうすれば好きになれる空間になるかを考え、また手を動かす。常に住まいと向き合うからこそ、でき上がった空間に嫌いな部分はなくなるのだそう。

練り上げられた作品のようなお部屋に、今日はまたどんな一筆が加わるのでしょうか。

Photographed by tsubottlee

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