Photographed by tsubottlee タイの首都・バンコク。急速に発展を続ける中心地から車で20分ほど、新しいコンドミニアム(分譲タイプの集合住宅)の住宅街が増え続けるエリアに、今回ご紹介する孝枝さんのお住まいはありました。

お名前(職業):孝枝さん(移動式雑貨店「iiddeeii(イーディー)」の雑貨デザイナー兼バイヤー)、ドンさん(フリーランスの通訳、翻訳家。iiddeeiiを孝枝さんと経営)、お子さん、猫
場所:タイ、バンコク
面積:120㎡、3LDK
築年数:築6年
住宅形態:戸建て
費用:タウンハウス購入費380万バーツ、リノベーション費用30万バーツ
間取り図(編集部作成):

左:1階 右:2階

 

タイは家具付き物件が多いことから気軽に引っ越しがしやすいということで、10年弱で6件ものお部屋に住んできた孝枝さん。

現在暮らすのは初めての持ち家で、仕事で関わってきたものを活かしながら進めた、家族と暮らしを楽しむ住まいづくりについてお話を伺っていきます。




■目次
1. この部屋に決めた理由
2. お気に入りの場所
3. お気に入りのアイテム
4. 残念なところ
5. これからの暮らし

この場所に決めた理由

家族の暮らしに適した環境

さまざまな物件に住むのが好きで、引っ越しを繰り返してきた孝枝さん。現在の住まいを決めたのは社会の変化を受けて、家族での生活を考え直したことがきっかけでした。

「コロナ禍のタイで、厳しいロックダウン措置が取られ、学校はもちろん、公園も閉鎖。食料品の買い出し以外、外出もままなりませんでした。

当時娘が遊びたい盛りだったにも関わらず、住んでいたコンドミニアム内に籠らなければいけなくて不憫でたまらなかったんです。

同時に、物件サイトで中古の戸建て物件の価格が一部下がり始めたんです。そのことを知り、すぐさまいくつか内見して決めたのが、大手デベロッパーの戸建てタウンハウスでした。

築浅かつ家族3人で暮らすのにちょうど良さそうな間取りに加え、タイでは『ムーバーン』と呼ばれるセキュリティゲート内に一軒家が集中して建てられる集合住宅が一般的で、その施設や設備が充実していたことが魅力的でした。

住民が共用で使えるプールやフィットネスジム、公園などがあり、子育てをするうえでも安心と感じましたね」

長く暮らすことを想定した持ち家になったことで、賃貸物件に住んでいたころよりも引っ越しがしづらくなり窮屈に感じてしまわないかという不安もあったそう。ですが、落ち着く空間を目指し、夫婦で好きだった植物や木製家具で充実したお部屋になっていました。

「引っ越す前までは備え付けの家具で生活することが当たり前になっていた分、物件自体の雰囲気は好きでしたが、家具は全く納得がいっていませんでした。

今回は家具もほぼ全て住まいに合わせて、一度ゼロにしてから揃えていくことができたので満足度の高いお部屋にはなったかと思います」

お気に入りの場所

大好きなグリーンが集まるバックヤード

キッチン、ダイニングスペースに隣接する間取りで設計されているバックヤード(裏庭)には、タイでは珍しい壁と屋根で囲まれた空間に。さまざまな用途で使っているといいます。

「タイの場合、バックヤードは屋根や壁がなく、屋外キッチンや洗濯スペースなどとして使われることが多いです。

わが家ではプライベートな空間としてサンルームのような使い方をしていますが、タイは日光が強いので全面クリアにするのは避けました。

洗濯物を干すだけの空間にすると殺風景なので、夫婦揃って大好きなグリーンをワサワサ集めて癒しの空間をつくりました。

朝は洗濯が終わるのを待つ間、葉水をしながら飼い猫とスキンシップを取ったり、夜は食後にキャンドルを灯してチルアウトしたり。週末には友人を招いてお酒を飲みながらワイワイ過ごすこともある、家族全員のお気に入りスペースです。

じつは、一番最初のリノベーションは大失敗でした。壁の色はオーダーと違うし、洗濯機は上手く接続できてなくてバックヤードがプール状態になってしまうなんてことも……。

帰国も考えたくなったときに、要望にしっかり応えてくれる工務店を見つけ、ようやく今の仕上がりになったんです」

紆余曲折があり完成したバックヤード。壁の色合いも植物に馴染んで今でも十分魅力的ですが、理想はスタジオジブリ作品『借りぐらしのアリエッティ』のような世界観なのだとか。まだまだ植物の数を増やしていくようです。

コンパクトだけど快適なキッチン

前に住んでいた方の家財はほぼ売り切ってしまったなかで、唯一と言っていいほどそのままで使っていたのがキッチンでした。

「タイの新築戸建て物件の場合、キッチンスペースはあってもシステムキッチンが備え付けられておらず、購入後に自分達で取り付けなければいけません。

ただこの家は中古物件で、IKEAのものが設置されていたんです。外食文化ということもあり状態もすごくきれいだったのがよかったですね。

スペースとしては非常にコンパクトですが、L型で小回りが効くし、窓からはバックヤードの様子も見ながら作業できるので快適に使えています」

また、キッチンの収納も工夫しながら整頓された状態を維持。取材中もテキパキと手際よく作業されている姿が印象的でした。

リラックスできる空間を意識した寝室

2階は孝枝さんのワークスペースに、子ども部屋、そして家族全員で使う寝室という構成。寝室は淡い色合いが印象的な落ち着く空間になっていました。

「とにかくリラックスできるよう白を基調とした家具に大好きなグリーンを配置しました。ベッドを並べて家族3人、仲良く川の字で寝ています」

ベッドの反対側は、夫婦の衣類や季節ものの収納スペースとして活用していますがとってもコンパクト。

その秘密は、次回公開する記事「暮らしのアイデア編」で詳しくお話を伺いました。

お気に入りのアイテム

マイホーム記念に購入した食器棚

ダイニングとキッチンの間に置かれているのは、タイ北部「vintage.pinetree」でオーダーしたチーク材の食器棚。

今回の住まいに合わせて購入した思い入れのあるインテリアだそう。

「値段は張りましたがマイホーム購入記念に思い切って購入したものです。機能的で“見せる”と“隠す”の両方を兼ね備えた収納棚でとても気に入っています」

おうち時間では、夫のドンさんが食器棚のカウンタースペースを使ってコーヒーを淹れてくれるそう。気分とリズムを整える大切な存在でもあるのですね。

タイ各地から集めたカゴ

無類のカゴ好きだと話す孝枝さんが、仕事でもプライベートでも集めているカゴはおうちの中でもさまざまな場所で使っています。

「カゴが好きすぎるあまり、数年前からカゴ編みで有名な村に特注でカゴをオーダーし、それをタイ国内外で販売するようになりました。



収納アイテムとしてはもちろん、ティッシュカバー、鉢植えカバー、くずカゴなど……わが家はカゴだらけですね(笑)」

残念なところ

収納がほとんどなかったこと

3人家族で衣類や生活用品も多くなってしまうのに対して、孝枝さんが困ったと話すのが収納の少なさ。

「タイの建売り住宅は収納がほとんどありません。多くは物件購入後に自身でビルトイン収納を取り付けなければならず、費用もかかるため、ほとんどの人が収納家具を設置しています。

わが家も例に漏れず、収納という収納は階段下に設けられたわずかなスペースのみです。

収納家具を置いて対応してはいますが、引っ越し直後は費用面で、生活するうえでは機能面で、日本にあるようなビルトイン収納を羨ましく思うことは多くありました」

これからの暮らし

友人と家族ともっと楽しめる住まいをめざして

現在の住まいでは、今後訪れてくる人たちと一緒に楽しめるよう、バッグヤードとダイニングの間の壁に棚を取り付けたいと話すお二人。

「友人が家に訪れてくる際にお酒を持ってきてくれるんです。私も合わせてサングリアを振る舞うのですが、そのときにお酒を置く棚が狭くてパンパンになってしまうんです。

なので、L字カウンターをつけてお酒を置くスペースを広げることで窓からバックヤードにサーブできたら良いなと思っています」

今回、理想の空間を作ったことでまた新たな住まいでのお部屋づくりの熱も高まってきたと孝枝さんは話します。

「今の住まいは3人で暮らすにはどうしても少し手狭で、インテリアも余裕を持って楽しみたいと思っています。

私の作業部屋は確保しつつ、子どもの部屋ももう少し広くしてあげたいので150平米くらいが理想です。

また、現在このエリアにも近くに電車の路線が伸びて、中心部のダウンタウンまでも20~30分ほど。東京でいう新宿と世田谷のような距離感になって、ロックダウン時に下がった地価も高騰してきたので、この家を家具付きで売って、より広い部屋に住みたいですね」

社会の変化がきっかけとなり、家族にとってより良いと思える暮らしの選択。タイならではの住宅様式とうまく付き合いながらつくりあげた心地よい空間。

この住まいを含めたこれまでの経験が今後どのように繋がっていくのか、これからも目が離せませんね。

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