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「これからの日本の文化圏に創発性を持つ若者をより多く登場してもらいたい」という主旨のもと、2012年11月に発足された「ILCA(イルカ)の学校」。4月から毎週土曜日午後にIID世田谷ものづくり学校にて多彩な講座をスタートしています。

とり・みき先生の「マンガを描いてみよう!」に続いては、夭折の天才「飯野賢治を学ぶ。第二回 映像で振り返るKenji Eno」。記念すべき第二回に出席しました。

ゲストは飯田和敏氏 、西健一氏、山田 秀人氏、進行に関智氏、江口勝敏氏の5人で、生前出演していたTV番組の映像やゲーム「Dの食卓」、「エネミー・ゼロ」のCMなどを通して、社会に対してどういった想いで発信していたのか、彼の実態に迫る2時間でした。

奇才のゲームクリエイター飯野氏の功績として、一番に上がったのは、常識を打ち破ることで新しいゲームの世界観を提示したこと。それは、ステージをクリアしていくだけの単なるゲームではなく、企画、シナリオ、作曲のみならず、アイコンの形やフォントのデザインにいたるまでの総合芸術に昇華しました。

私はゲームをしないので、この講義を聞くまで彼の軌跡を知りませんでした。ただ、この2時間を通して、この天才から人間哲学的の側面を感じ、とても魅力があることを知りました。映像内の質疑応答の中からもそれが感じられます。抜粋して紹介したいと思います。


「僕は絵コンテではなく字コンテをプログラマーに渡します。」

— 伝えたいこと全てを書ききらないことで、コミュニケーションを図る中でズレが生じ、予期しない面白い変化が出ることを表現している言葉。

確かに、同じことでも人によって表現が異なり、面白い化学変化が起きる時がありますよね。

「今の人は自分の存在を不安定な存在と自覚していない。自分って何? 疑いながら生きてみよう」

— エネミー・ゼロの主人公に想いを寄せつつ、ゲームをやっている人に対して。

今ある目の前のことだけを全てだと捉えがちな私たちにも言えることですね。

「高校生まで何をやっていたか?」

— 早熟の天才が自分自身の中で悩み、考えた体験から出てきた言葉。これらの経験が全てゲームを作り出すことに反映されているとのこと。

自分の中で、望むものをたぐり寄せ、成功する術を貪欲に吸収していった様が感じられます。

「(ゲーム作品を)あえて完成させない。余韻を持たせている」

「(ゲーム作品の中に)あえて矛盾を取り入れている。」

— 前述の「疑いながら生きてみよう」と近しい意味ではありますが、ゲームをしていて謎を解く鍵がなくて困っているプレイヤーからの質問に対しての返答。

常識とされていることが常に正解では限らないと諭している様子が感じられます。

「サクセスストーリーが必要」

不遇だった子ども時代を経て、自身が成功をすることで新しいヒーロー像を見出すように。子ども達に夢を見せることが大切だと感じていたようです。すごく共感できます!



私は、この講演中に「Eno」の表記が特殊なこと、これがブライアン・イーノ(Brian Eno)と同じ表記ということに気がつきました。実際、「Eno」は、この偉大なミュージシャンから来ているようです。イギリス出身の彼は、暗黙のルールを打ち破った音楽家として知られています。

1970年、作曲家Gavin Bryarsがイギリス、ポーツマス美術学校で学生を集めて結成した世界最悪の交響楽団がありました。それが「THE PORTSMOUTH SINFONIA」(ポーツマス・シンフォニア)。

音楽家でない者、または音楽家であっても演奏をしたことのない楽器で演奏するという、通常では考えられない入団条件で構成されたメンバーが、ロック界の異端児、Brian Enoのプロデュースによって世に広まりました。

そんな条件で入団している彼らは、音がはずれる、音が出ない、音の大きさが不揃い、などともちろんめちゃくちゃ。ですが彼らの演奏は、これまでの暗黙的ルールを多角的な要素で壊していきました。

そして、彼らのシリアスで必死な気持ちによって生まれた真っ直ぐな演奏が、徐々に聴く者の心を引きつけ、大きな勇気と強い感動を与えたことは社会現象にもなり、今でもなお、その名を残しているほどです。

この2人の偉大なEnoを前にして、私たちがいかに暗黙の了解的なルールの中に身を投じているかということ、過去において当たり前とされていたことが現代の正解ではないということ、に気付かされます。



日々の中でも自分の視点を意識して行動することの大切さを改めて知ることができました。

次回は5月25日(土)に第四回が開催されるので楽しみです。詳しくは下記のリンクからどうぞ。

[イルカの学校]
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