デザイン性もエコも一緒に。

建築関係の賞というと何千億ドルもかかるような大型プロジェクトに与えられるイメージがありますが、アメリカ建築家協会(AIA)の2014年Housing Awardsは普通の人々が実際に暮らす住居にフォーカスした賞なんです。

今回受賞した10作品はどれもクライアントの生活や趣味に基づいた設計になっています。

フライフィッシングの愛好家や低所得層の高齢者にスキーヤー、自閉症の成人に至るまで、それぞれのニーズを満たす受賞作をみると、建築は人のためにあるってこういうことなんだなと気付かされます。

また、作品の多くが省エネルギー構造で、古い建物をリノヴェーションした建築も多いのも興味深いですね。

受賞作品はどれも一見の価値あり。



28th Street Apartments(ロサンゼルス)



KoningEizenberg 建築がデザインした開発プランのベースとなったのは、ロサンゼルスにある築80年の元YMCAのビルでした。

このアパートメントは児童養護制度を終える子供たちや精神を病んでいる人、ホームレスのために49室の住まいが用意され、職業訓練プログラムといった支援サービスのために8000フィート(約743平方メートル)のスペースもあります。

太陽光パネルが建物のルーフではなく壁一面を覆っているのが珍しいですね。米ギズが取材した時の記事はコチラ



Informal House(カリフォルニア州サウス・パサデナ)



シンプルかつ、お手頃で省エネと三拍子揃っています。

KoningEizenberg 建築のデザインによるこの住居は、大きなスライド式のドアと地下を通るアースチューブからも室内に空気が入るので、通気の良い住まいになっています。



Kicking Horse Residence(ブリティッシュ コロンビア州、カナダ)



ブリティッシュコロンビア州キッキングホースに建つ、このスキー用の山小屋の傾いた屋根線は、雪の重みが負担にならないよう、降り積もった雪が落ちるようにデザインされています。

建築を手掛けたBohlin Cywinski Jackson によると、使用した木材は周辺の森から調達したそうですよ。



Park Passive(ワシントン州シアトル)



パッシブ・ハウス(Passiv Haus)というのは、ドイツ発祥の省エネ住宅スタンダードで米国の建築界ではニューカマーです。

シアトルで初の認定住宅となったこの一戸建てはNK Architectsの設計によるもの。



Sol Duc Cabin(ワシントン州シアトル)



熱心なフライフィッシング愛好家夫婦がOlson Kundig Architects に注文したのは、「釣り旅行の間滞在するためのコンパクトで手のかからない頑丈な家」でした。

そして完成したのが、この高床式のこじんまりとしたキャビンです。滞在していない時にはスチール製のシャッターを引いて閉めることができるのもポイントですね。



Topo House(ウィスコンシン州)



米国中西部、ウィスコンシンからリスト入りを果たしたのはJohnsen Schmaling Architects がデザインした、こちらの住宅。

トレイル近くに住みたいというサイクリングが大好きな、マディソンに住む夫婦のために建てた住まいは、省エネ構造で耐久性に優れています。建築家によるとこのエリアはトルネード級の暴風に見舞われる傾向にあるため、頑丈に作ったそうです。



1221 Broadway(テキサス州サン・アントニオ)



ここは長い間「ホームレスが運営する最大規模のホームレスシェルタ」として知られていた廃ビルでした。しかしオークションで競り落としたオーナーは、構造はそのままに全く新しい建物に作り変えるようにとLake Flato Architects に依頼したのです。

そこで彼らは内部を取り壊してからリノベーションを行い、古びた巨大ビルはそこらの新築マンションよりも省エネな住居へと変貌を遂げました。



Cherokee Studios(カリフォルニア州、ロサンゼルス)



Brooks + Scarpa がデザインしたアパートメントビルはファサードが特徴的です。室内を快適に保つため、アルマイト製のパネルは住民の手で折り畳んで調節することもできます。

このファサードを初めとする構造が功を成し、近隣の建造物に比べ40%もの省エネを実現しています。



Merritt Crossing Senior Apartments(カリフォルニア州オークランド)



高齢化してゆくベビーブーマー世代が国中の共同住宅へと入居しているのを考えると、シニア住宅がリスト入りしないのは不自然です。

この建物は、オークランドの収入中央値の30から50%しか収入がない高齢者に住まいを提供するべく、非営利団体がオーダーしたもの。設計を担当したのはLeddy Maytum Stacy Architects です。

建物内部は、太陽熱温水器で温められ、太陽光発電パネルも使用しているため、こういった集合住宅物の約半分のエネルギしか使わないそうです。



Sweetwater Spectrum Community(カリフォルニア州ソノマ)



このプロジェクトを注文したのは自閉症を抱える成人のための住まいを作る非営利団体で、全米各地の同じような団体にとって、モデル施設となっています。

デザインを手掛けたLeddy Maytum Stacy Architects によれば、現在は自閉症を抱える人に特化した住居というものがない「危機的なレベル」なんだそう。

ここでは、感覚刺激を緩和するように丁寧にデザインされており、16人の成人した自閉症患者が住んでいます。耐久性を備えた建物やドアや細部に至るまで全てが、居住者が安全かつ幸せに暮らせるようデザインされています。

Kelsey Campbell-Dollaghan – Gizmodo US[via たもり ギズモード・ジャパン

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