大海原をボートで漂流する少年パイと一頭のトラの227日間を描いた、ヤン・マーテルの世界的ベストセラー『パイの物語』。ブッカー賞を受賞したその奇想天外な小説を、『グリーン・デスティニー』や『ブロークバック・マウンテン』などでおなじみのアン・リー監督が見事に映像化したのが、『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』です。
インドで動物園を経営する両親に育てられた少年パイは、家族と動物たちを連れてカナダに移住するため、日本の貨物船に乗り込みます。ところが、彼らの乗った船は嵐に見舞われて沈没。パイは体重200キロを超すベンガルトラとともに、果てしなく広大な太平洋を漂流することになってしまいます。
最先端の3D技術を駆使して製作された今作。観客はまず、その壮大なスケールと幻想的な映像美に圧倒され、気がつけば映画の世界に包み込まれています。まるでパイのボートに同乗して、彼を襲う数々の試練を一緒に体感しているような感覚に陥るのです。
と、ここまで読むと、サバイバル・アドベンチャー大作という印象を受けるかもしれませんが、圧倒的に美しい映像の奥には哲学的なテーマが潜んでいます。また、アン・リー監督のストーリー・テリングのセンスは今作でも健在で、海の真ん中でトラと取り残されるという想像を絶する状況にもかかわらず、観客の心をパイのそれに引き寄せ、優しく寄り添わせてくれます。
そして物語の最後には、思わぬ展開が待ち受けています。過酷な状況を生き抜く上で、本当に必要なものは何なのか。観終わった後、誰かと話したくなる作品です。
『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』[20世紀フォックス映画]『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』
監督:アン・リー(ブロークバック・マウンテン/グリーン・デスティニー)
出演:スラージ・ジャルマ、イルファン・カーン、ジェラール・ドパルデュー
原作:ヤン・マーテル「パイの物語」
2013年1月25日(金)、TOHOシネマズに日劇ほか全国公開 <3D/2D同時上映>
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