チャンネル 動画 記事 (5) 投稿が新しい順 コメント数の多い順 投稿が古い順 コメント数の少ない順 キーワード タグ 【第154回 直木賞 候補作】『孤狼の血』柚月 裕子 コメ0 芥川賞・直木賞発表を楽しもう 107ヶ月前 プロローグ 呉原東署の会議室は、殺気立っていた。 ドアの外には呉原市暴力団抗争事件対策本部、と書かれた紙が貼られている。 部屋には七十名近い捜査員が集結していた。所轄の東署副署長をはじめとする幹部、暴力団係の係員と各部署から掻き集められた署員、県警捜査四課暴力団担当の捜査員ならびに管区機動隊員だ... 【第154回 直木賞 候補作】『孤狼の血』柚月 裕子 コメ0 芥川賞・直木賞発表を楽しもう 107ヶ月前 プロローグ 呉原東署の会議室は、殺気立っていた。 ドアの外には呉原市暴力団抗争事件対策本部、と書かれた紙が貼られている。 部屋には七十名近い捜査員が集結していた。所轄の東署副署長をはじめとする幹部、暴力団係の係員と各部署から掻き集められた署員、県警捜査四課暴力団担当の捜査員ならびに管区機動隊員だ... 【第154回 直木賞 候補作】『羊と鋼の森』宮下 奈都 コメ0 芥川賞・直木賞発表を楽しもう 107ヶ月前 森の匂いがした。秋の、夜に近い時間の森。風が木々を揺らし、ざわざわと葉の鳴る音がする。夜になりかける時間の、森の匂い。 問題は、近くに森などないことだ。乾いた秋の匂いをかいだのに、薄闇が下りてくる気配まで感じたのに、僕は高校の体育館の隅に立っていた。放課後の、ひとけのない体育館に、ただの案内役... 【第154回 直木賞 候補作】『羊と鋼の森』宮下 奈都 コメ0 芥川賞・直木賞発表を楽しもう 107ヶ月前 森の匂いがした。秋の、夜に近い時間の森。風が木々を揺らし、ざわざわと葉の鳴る音がする。夜になりかける時間の、森の匂い。 問題は、近くに森などないことだ。乾いた秋の匂いをかいだのに、薄闇が下りてくる気配まで感じたのに、僕は高校の体育館の隅に立っていた。放課後の、ひとけのない体育館に、ただの案内役... 【第154回 直木賞 候補作】『戦場のコックたち』深緑 野分 コメ0 芥川賞・直木賞発表を楽しもう 107ヶ月前 第一章 ノルマンディー降下作戦 夜空は曇っていたが、少しずつ途切れはじめた雲間から月がのぞき、あたりを照らしはじめた。暗い空を飛ぶC47輸送機“スカイ・トレイン”の隊列が、風を切り、黒くさざめくドーバー海峡を間もなく抜けようとしていた。 一九四四年六月六日の真夜中、窓から外を見ると、何フィートも離... 【第154回 直木賞 候補作】『戦場のコックたち』深緑 野分 コメ0 芥川賞・直木賞発表を楽しもう 107ヶ月前 第一章 ノルマンディー降下作戦 夜空は曇っていたが、少しずつ途切れはじめた雲間から月がのぞき、あたりを照らしはじめた。暗い空を飛ぶC47輸送機“スカイ・トレイン”の隊列が、風を切り、黒くさざめくドーバー海峡を間もなく抜けようとしていた。 一九四四年六月六日の真夜中、窓から外を見ると、何フィートも離... 【第154回 直木賞 候補作】『ヨイ豊』梶 よう子 コメ0 芥川賞・直木賞発表を楽しもう 107ヶ月前 安政五年(一八五八)九月六日、初代歌川広重没。享年六十二。文久元年(一八六一)三月五日、歌川国芳没。享年六十五。元治元年(一八六四)十二月十五日、三代歌川豊国(初代国貞)没。享年七十九。 一、梅が香の章一 白梅の香りが境内に漂っている。 元治二年(一八六五)如月初旬。童たちが太鼓や笛を鳴らしなが... 【第154回 直木賞 候補作】『ヨイ豊』梶 よう子 コメ0 芥川賞・直木賞発表を楽しもう 107ヶ月前 安政五年(一八五八)九月六日、初代歌川広重没。享年六十二。文久元年(一八六一)三月五日、歌川国芳没。享年六十五。元治元年(一八六四)十二月十五日、三代歌川豊国(初代国貞)没。享年七十九。 一、梅が香の章一 白梅の香りが境内に漂っている。 元治二年(一八六五)如月初旬。童たちが太鼓や笛を鳴らしなが... 【第154回 直木賞 候補作】『つまをめとらば』青山 文平 コメ0 芥川賞・直木賞発表を楽しもう 107ヶ月前 (ひともうらやむ)「なんだ?」 長倉克巳は怪訝そうに言った。目は、長倉庄平が持参した釣針に向いている。「なんだ、とはなんだ!」 相変わらずだな、と思いながらも、庄平は答えた。長倉本家のたいそうな屋敷の、克巳の座敷である。「十日前、どうしても今日までに釣針が欲しいと言ったではないか」「そんなこと、... 【第154回 直木賞 候補作】『つまをめとらば』青山 文平 コメ0 芥川賞・直木賞発表を楽しもう 107ヶ月前 (ひともうらやむ)「なんだ?」 長倉克巳は怪訝そうに言った。目は、長倉庄平が持参した釣針に向いている。「なんだ、とはなんだ!」 相変わらずだな、と思いながらも、庄平は答えた。長倉本家のたいそうな屋敷の、克巳の座敷である。「十日前、どうしても今日までに釣針が欲しいと言ったではないか」「そんなこと、...