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  • 拝啓、財務省様(消費税増税ニ至ル病)

    2014-11-16 23:13
    拝啓

    財務省様

    新政権になってほぼ2年が経過しました。
    しかし、デフレ脱却も道半ばで未だままならず、景気も低迷を続けております。
    そんな中、今春には消費税の増税を強行し、兆しが見えつつあった改善の火が消えてしまいかねない事態に陥りました。
    そんな状況でもなお財務相様は「このままでは財政が破綻する」「一刻も早く増税しなければ国債が」などとおっしゃいます。
    これらに関し、一理はあると思うものの「時と場合を考えるべき」で、あまりにも無理筋な御主張が多いと思われましたので、その点老婆心ながら反論とご指摘をさせて頂きたく存じます。以下の4点、ご考慮頂ければ幸いです。

                                      敬具


    【財務省の主張】
    将来的に大幅な消費税増税が必要になるから今消費税上げなければ!

    【反論】
    まず、なぜ大幅に増税が必要になるから「今」増税が必要になるのかの根拠が希薄です。

    現在のようなデフレで景気が低迷している状況で消費税を増税するという事は、収入が増加しない中で可処分所得を減少させる事であり、生活防衛による消費の低迷と、それによる更なるデフレおよび景気悪化を招くのは必然といえます。

    実際、機械受注統計調査報告の平成26年9月実績および平成26年10~12月見通しのなかで 民間設備投資の先行指標である「船舶・電力を除く民需」の動向を見ると、平成26年1~3月期で増税前の駆け込み需要はあったものの、平成25年10~12月期を基準にした場合、平成26年7~9月期の実績で約-1.4%減、平成26年7~9月期の見通しで-1.7%減です。
    このような状況に於いて消費税増税を強行した場合、予定通りの税収が確保できるとは考えにくく、更なる景気悪化で税収の総合的な減収に繋がる可能性すらあり得ます。


    もし増税の理由が財政危機による国債の下落であるならば、これは根本的に間違っていわざるをえません。
    日銀および財務省は10年以上前から「財政危機」を宣伝し、日本の信頼が喪失して国債が暴落するとのメッセージを出していますが、日本国際の需要は衰えるどころか強まるばかりです。
    「そんなことはない」と仰るのでしたら、「なぜ財政悪化+金融緩和してるのに金利が未だ世界で最も低水準である」事実をきちんと説明して下さい。なぜ「投資家は“破綻するリスクのある”危険な日本国債を極めて低金利にもかかわらず購入し続けるのか」を。



    【財務省の主張】
    増税で景気に悪影響が出ることは認めているが、 増税するにあたり今ほど最適な(景気のいい)時期はない 地方の税収も実際に増えている!


    【反論】
    現在の地方経済は全く改善しておらず、所得や給与も悪化しています。

    雇用面に於いては本年7~9月期の完全失業率は全国で0.1%の改善ですが、内情を見ると首都圏(南関東)、東海、東北を除き雇用状況は停滞~悪化しています。
    前期比で改善が東北(-0.1%)南関東(-0.3%)東海(-0.4%)。
    変わらずは北陸と近畿。
    悪化は北関東甲信(+0.1%)中国(+0.2%)四国(+0.2%)沖縄(+0.7%)。
    北海道と九州は改善ですが、就業者減少以上に雇用諦めた人が増えたため、数字上改善となっているだけなので実質悪化といえます。

    初任給が人手不足による上昇というニュースもありましたが、一部職種、地域で人手不足が発生しているものの、雇用の3/4をしめる地方では人手不足は発生しておらず、消費税増税を加味した初任給は首都圏(南関東)以外ではむしろ大きく減少しています。

    金構造基本統計調査結果(初任給)によると、今年春の大卒初任給は、消費税増税考慮すると北海道(前年比+1.5万)、東北(前年比-2.1万)、北関東・甲信(前年比-2.8万)、南関東(前年比-4.5万)、北陸(前年比-4.1万)、東海(前年比-3.7万)、近畿(前年比-4万)、中国(前年比-3.7万)、四国(前年比-7.7万)、九州(前年比-3.9万)、沖縄(前年比-8.8万)になります。

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    北海道を除き2万1千~8万8千円の減少となっており、初任給の水準はリーマンショック直前(2008年)とほぼ同じ。大卒求人倍率はリーマンショック前にくらべての4割程度減少していることも考慮すると、「人手不足は一部の地域や業種、企業規模のみ。雇用や給与は引き続き低迷~減少」という理解が正しい理解です。

    また、中小企業基盤整備機構「中小企業景況調査報告書」によると、中小企業景況調査業況判断DI(前年同期比増減率)は、H25年7~9月期からH26年7~9月期の見通しまで全国はおろか、どの地方のDIでも「一度として好転したことが無く」、輸出関連や一部大企業以外に金融緩和の恩恵が全く繁栄されていないことが分ります。

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    この状態で『景気がよい』『これ以上景気が良い時期はない』というのであれば、それは地方が壊滅することを意味しています。
    税収は景気との相関関係はあるが、因果関係はありません。
    この状況で増税を行ったら、地方経済は再生不可能なほどの壊滅を受けるのですが、財務相様は「景気の悪い地方は死ね」と仰るのでしょうか?

    もし「そうじゃない」というのであれば、もう一度景気状況を日銀や財務相様自身の思惑を排除した上で正しく数字を理解すべきですし、理解した上で仰るのなら「なぜ今でなければならないのか」の説明を、現在のような自己都合にまみれたものではなく、きちんと万人が納得できるようにすべきです。
    国民は馬鹿ではありませんので、「景気悪化を覚悟し、日本経済を瀕死の状況に追い込んでも増税する必要」をきちんと納得できるように説明して下されば、きっと賛同してくれることでしょう。



    【財務省の主張】
    増税時期を確約してくれるなら延期は許容するが、その時に経済状況がどうなっているかは分からない!

    【反論】
    景気状態を無視して増税時期を確約するという事は「患者の容態を無視して手術を強行する」事に他ならず、行政のエゴとしか言いようがありません。
    将来増税が必要であることと、「増税時期を確定する」事は全く意味が異なります。
    極めて無責任で国益や国民生活を蔑ろにする主張です。
    仕事の難易度は高くなりますが、財務相様は優秀な官僚が集まっているのですから、仕事の手抜きをしないでしっかり働いて下さい。



    【財務省の主張】
    直間比率の問題で「人は必ず消費するのだから恒久的に安心できる財源である」


    【反論】
    たしかに間接税は補足率が極めて高く安定した財源であることは間違いありません。
    けれども所得税に比べて逆進性が強く、低所得者層により重い課税となります。
    特に不景気時に補足率の高く逆進性の強い消費税を行う事は、低所得者層を貧困に追い込み、生活保護等の社会保障費用を増大させる悪手です。
    そして「恒久的に安心できる」などという文言は「行政が努力しなくても税収が確保できる」事の言い替えに他なりません。
    そして根本的な問題として、「不景気時に消費税増税して本当に税収が増えるのか?」という疑問が残ります。
    消費税導入、および5%への増税時の税収は以下の通りです。
    財務相様の主張と“真っ向から対立している”としか理解できないのですが・・・

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