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ダンジョンズ&ドラゴンズ 『ネヴァーウィンターの失われし王冠』リプレイ -第3回-
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ダンジョンズ&ドラゴンズ 『ネヴァーウィンターの失われし王冠』リプレイ -第3回-

2013-12-12 14:20

    ミシュナ:絶望の導く道
     夜明け前。
     高原の冷たい空気は刃のようで、吸い込むたび胸の奥が切裂かれるように痛む。
     ――許されぬ、ことをした。
     塔への階段を登るごとに、自責の思いが彼女を苛む。
     ――取り返しのつかぬ、ことをした。
     “たすけて”と絶えゆく息の中、彼は声にならぬ言葉を唇だけで訴えて。
     それに応え、彼女はあの時。
     どうしたのかは覚えていない。けれどもそれから、絶望の黒い瞳があれからずっと。まぶたの裏から消えようとしない。
     ――ごめんなさい。
     何を謝るというのか、誰に謝るというのか? 何もかももう、終わってしまったことなのに。足を止めてしまったならば、責める声に胸が詰まる。ゆえに彼女は歩きつづけ、上り詰める。
     魔術塔の最上階に至った。
     どこまでも拡がる空の下、どうしようもなく行き止まりだった。
     それでも未練がましく、彼女は胸壁まで歩いてゆく。
     このまま、足を止めずに虚空に踏み出してしまえば――。彼女の体は微塵と砕け、胸中からの声も、まぶたの裏の瞳も消えるだろう。そして、その時にはこの自責に苛まれる魂も自由になる。
     焦がれる死への思いをもてあそぶ彼女の眼下で、要塞都市サークロスに朝が訪れようとしていた。
     大路では、ひからびた衛兵達が隊列を組んで最後の夜番に向かっている。骸の馬が車を引いて、貴族の家へと主を帰す。車に道を譲ろうと、白く息吐く奴隷達が散らばる。そして一人、逃げ遅れた者がひき殺される。

     街は回って行く、人一人消えた日も。何も変わる様子もなく、忙しく。
     彼はもう、笑わないのに。彼はもう、いないのに。
     かけがえのないものなどいないと、風は吹く。
     彼も、奴隷も、同じように忘れられて行く。ならば、私も同じように――。
     彼女はその一歩を踏み出そうとした。

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    ミシュナ:サークロスの学院
    DM:では早速、ミシュナの導入をしましょう。物語は皆さんが今いるネヴァーウィンターから東へ遙か約三千マイル離れた、魔道国家サーイから始まります。
     詳しい説明は『フォーゴトン・レルム・キャンペーンガイド』や『ネヴァーウィンター・キャンペーン・セッティング』にありますが、サーイと言う国は魔術師が支配する魔道国家であり、ザス・タムという強大なリッチ(魔術により不死となった魔法の使い手)の独裁の元、さまざまな悪の企みと死霊術の研究を行なっています。ミシュナはここで寄宿制の学校に通い、魔法を学んでいます。
    若月→ミシュナ:サーイでも名門の家の娘で、じつは兄二人もレッド・ウィザードとして活躍しています。ミシュナは今はレッド・ウィザードになるために学院で学んでいますが、家名を怖れられてクラスメイト達からは浮いています。期待に答えようと頑張っているんだけど、やっぱり友達も欲しいなぁ……」
    DM:では、そんなミシュナの学校のシーンから。

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    「魔術めいた朝の挨拶が、濁った灰色の空にこだまする。
     ザス・タム様のお庭に集う死霊術師達が、今日もデミリッチのような邪悪な笑顔で、背の高い門をくぐり抜けていく。
     呪われた心身を包むのは、赤い色のローブ。
     呪文構成用ポーチの中身を乱さないように、赤いローブの裾は翻さないように、ゆっくりと歩くのがここでのたしなみ。
     もちろん、疾走アクションで走り去るなどといった、はしたない生徒など存在していようはずもない。『ザス・タム上級アカデミー』デイル暦1335年(※現在1479年)創立のこの学園は、もとはザルカーの子息のためにつくられたという、伝統ある死霊術系魔導師学校である……」

    堀内/外野:じゃあ、スカートの裾をつまんでゾンビが「遅刻遅刻~!」と。
    DM:いえ、ゾンビはどちらかというとサーイでは使用人とかですね。この学校に通うのはゾンビ作る方で、高い成績を収めるとリッチになったり。この学院の校長、ヴァリンドラ・シャドウマントルもザス・タムの寵愛深いリッチです。ただしここ最近は西の方の大事な作戦に従事していて学院にはたまにしか現れないそうですが。理事長のザス・タムも行事の時に自分の幻像を送ってくるくらいで」

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    瀬尾/外野:朝礼の時に5分で静かにならないと、生徒が死にそうな校長先生(笑)
    DM:こんな中、ミシュナの学園生活は……。
    ミシュナ:いつも朝早くから教室に来ています。優等生であろうと頑張っているんで。
    堀内/外野:で、クラスメイトがそれを見て噂する「さすがミシュナ様」「でも、おっかないですわ」「ひそひそひそひそ」
    ミシュナ:構わずに、誰が来ても「おはようございます」と返し、席に座って予習しています。
    DM:と、始業間際に教室に一人、クラスメイトが飛び込んできます。

    「やっべ、遅刻しちゃったよ!」と、少年は乱暴にミシュナの隣の席に滑り込む。
     寝癖の残る髪はこの地には珍しい金髪、ややもすればあどけなく見えるのは浮かべた微笑みのせいだろう。ミシュナとは別の意味で彼は教室から浮いていた。
    「力術のテスト赤点でさ、ノート見せてくんない?」
    「ブラックモア、お前はいつもそればっかりだな!」ミシュナは叱りつけつつ、ノートを差し出す。「この間、ヤマが当たったからイケると思ったんだよ」「手を抜くからいかんのだ!」

    DM:そうして講義が始まります。一限はサーイ史で、担当教授のトリヴァスト師はまだ若いですが、そり上げた頭に入れ墨、赤いローブという誇り高き伝統的レッド・ウィザードの姿で、生徒達への指導も厳しい教師です。

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    「……このようにしてサーイでは秘術の精華、死霊術を国を挙げて修めることとなった。
     我らサーイの力は、ザス・タム師の遠謀深慮によりすでにフェイルーン地方全体を覆いつつある。校長のヴァリンドラ様もそのために奔走しておられるのだ。今頃はおそらく、西方で街の一つや二つが死霊の群れに飲み込まれていることだろう……」
     ざわざわと興奮がさざ波のように教室に拡がってゆく。選良たるレッド・ウィザードが、その力で世界を動かす、そのことに若い魔法使い達はそれぞれの野望を焦がすのだ。

    ミシュナ:ところが隣のブラックモアを見ると、ノートに落書きとかしてるんですよ。
    DM:「見てくれ、これオリジナルの魔法陣」とか言ってチョークぶつけられてます(笑)で、放課後。「これ、やるよ」とブラックモアが手作りの護符をよこします。前に彼がハマっていたのは魔法のアイテム作製だったんで。
    ミシュナ:「へえ、こんなの作れるんだ? 」と観察。
    DM:「そろそろ試験だろ。ミシュナは本番には弱いから、その護符、やる。ヘマすんなよ」
    ミシュナ:「その言葉、そっくりお前に返してやるよ!」えっと、魔力はありますか?
    DM:ええ、稚拙ではありますが、込められた魔力は本物ですね。
    ミシュナ:「こんなことしてる暇あったら、その分テスト勉強すればいいんだ」
    DM:「そーだねー(しょぼん)」
    ミシュナ:「とはいえ、これは、その、ありがたく、もらって、おく」
    瀬尾/外野:ういういしー♪
    DM:そうして、時は流れ卒業試験の日になります。


    最後の実習:ミシュナ

     試験の場は城塞都市サークロスの墓所であった。
     サーイの都市の例に漏れず、ここではほとんどの墓が掘り返されている。死霊術がサーイの主たる魔術となってからというもの、墓所は亡者が休らうところではなく、それなりに貴重な魔術資材の“鉱山”へ変わった。今では、そこに死体はほとんど残っていない。
     この国では、“生きている”というのは“アンデッドではない”程度の意味しか持たないのだ。
     中央に立つのはトリヴァスト師。
     徒弟たちはみな、墓所の大地に伏して粗く息をついている。その体には魔力で形作られた鎖が絡みつき、締め上げている。鎖の輪は手足をつないだ亡霊の姿で、みゃうみゃうと怖気の立つ鳴声を上げている。幾人かはすでに限界が訪れたらしく、白目を剥いて痙攣をはじめていた。
    「お前達がこの先出くわす死霊どもは、これよりも遙かに強い瘴気をまとっている。ここで倒れる程度なら、もとよりお前達はこの道を征くにふさわしくないということだ。ははは、どうしたどうした。睨むだけでは生き延びられぬぞ」

    DM:と言うわけで、ミシュナをはじめとして候補生全員がトリヴァストから呪いを受けて、拘束状態になります。これを解くにはまずセーヴィング・スローに成功して拘束状態を解除し、それから用意された魔法陣へ移動して〈魔法学〉判定を成功させなければなりません。
    ミシュナ:今までのパターンだと1とか出しそうなんだよな……。よし、20出た!
    瀬尾:さすが優等生!
    DM:まるでそんな呪いなどなかったかのように、ミシュナはするりと抜け出す。
    ミシュナ:「先生、手加減をした?」
    DM/トリヴァスト:「ほう、私の呪いをああもあっさりと。許せんガキだな」
    ミシュナ:次は〈魔法学〉……!
    DM:いや、ロールしなくてイイです。ここで、ブラックモア君がくれた護符がはじけ飛び、出目は20になります。そして、膨大な死霊エネルギーが地下墓地から溢れて暴走します!
    ミシュナ:えッ!?
    瀬尾/徒弟:「一体何がっ!」

     その奔流は原因のミシュナ、とっさに防壁を展開したトリヴァストにはなんら影響を及ぼさなかった。そのかわり、これを引き起こした護符の因果を遡り、作り主を襲った。
     馴染みある少年の声が墓所に響いた。

    ミシュナ:み、みんな!?
    DM:大半は倒れています。が、1人、明らかにいま命の灯が消えようとしています。ブラックモアの体は下半分が死霊に蝕まれ、骨やら腸やらが飛び散っている。
    ミシュナ:「あ、あ、ああああ……」

    「ほう、これはちょうど良い。最後の試験には死体を使おうと思っていたところだったのだが、こんなに新鮮なものが使えるとはな。お前達は運がいいぞ、これならよほどのことがない限り失敗しないはずだ。息絶えるのを待って、こいつをゾンビにしろ。それが最後の試験だ」
     叫びを必死で堪える。
     目の前で、ブラックモアは“たすけて”声にならぬ言葉を、唇だけで訴えて、息絶えた。
     ミシュナは強く、強く杖を握りしめ、身の震えを打消す。
    「さあ、ミシュナ以外は儀式を手伝うのだ。詠唱を行なえ、祭壇を形作れ、教えたとおりにやって見せろ!」



    瀬尾/徒弟:「そ、そうよ。さっき倒れた私たちにはできないけれど、“優等生”のミシュナなら!」(笑)
    宮坂/徒弟:「なんて言ったって、ミシュナは首席だもんな!」
    堀内/徒弟:「ミシュナさんなら、余裕よ!」
    若月/ミシュナ:わー!?
    堀江/外野:追い込むなぁ(笑)
    瀬尾/外野:言ってて何だけどヒドイ(笑)
    宮坂/外野:こりゃ逃げ出すわ(笑)



     それからのことは記憶に残っていなかった。ブラックモアがどうなったのかもなにも。
     我に返ったときには、墓所の前でトリヴァストが試験の終わりを告げていた。「今日生き残ったお前達は、レッド・ウィザードだ」との言葉に、クラスメイト達が歓声を上げていた。

    ミシュナ:ブラックモア君は……ゾンビになっちゃったんでしょうか。
    DM:そうですね……そこはわからないことにしましょう、後に設定として使いたいです。これからミシュナはどうします?
    ミシュナ:なら、ふらふらと学院の塔の屋上まで歩いてゆきます。

     踏み出そうとしたが、できなかった。胸壁に額を押し当て、すすり泣く。
     そうだ、この街は回って行くのだ、人一人消えた日も。何も変わる様子もなく。
     私がいなくなっても、同じだ。
     私の死もまた、この街に、自分がしてきたように利用されるのだ。
     飛び散った肉体を脳漿を、死体の下僕がかき集める。そしてトリヴァストやクラスメイトたちがゾンビやスケルトン、それよりももっとおぞましく胸の悪くなるものに作り変え、魂を縛り付ける。
     死などでこの街の悪業からは逃れられぬのだ。

     もう一度、ミシュナは顔を起こす。既に、夜は明けていた。

     東に立つサーイの峰の向こうから陽光が闇を切裂き、西へ拡がる大地を照らし出す。
     朝霧に煙るレシアーの森の先、青黒く落星海が拡がる。その先、雪を頂いたアーススパーの山々が白く輝き聳え立っている。

    ミシュナ:「もしかして、あそこに行けば、こことは違う生き方ができるのかな」と、彼女は思った。

     あの輝く山の向こう、サーイの山が見えないところまで逃げれば、そうしたらこことは違う生き方ができるかもしれない。
     故に彼女はすべてを捨てて、旅立った。サーイからソード・コーストまで数千マイル。
     その旅を語るのは、別の機会を待ちたい。


    このシーンのうらがわ

     参加プレイヤー、若月繭子。
      TCGの代名詞、『マジック:ザ・ギャザリング』の日本公式サイトにて翻訳記事をてがける。マジック・ザ・ギャザリングと並んで以前よりD&Dを遊んでいたが、この配信にて4版を体験。
     これまでの配信では縁あって毎回メイジ(ウィザード)のメギスをプレイしていたが、今回もいろいろ調整するうちにメイジ、しかも『ネヴァーウィンターに迫る嵐』のシーズンに遊んでいたのと同じレネゲイド・レッド・ウィザード(レッド・ウィザードの裏切者)のテーマを遊ぶことになった。そこで一念発起してキャラを作ってきてくれたのだが……。

    ミシュナのキャラシート


    座礁リヴァイアサン亭:合流
     ネヴァーウィンターの北西1/4、ブラックレイク地区。その港には有名な居酒屋がある。名は座礁リヴァイアサン亭。座礁した船(この船の名がリヴァイアサンであった)を引き上げて酒場に作り替え、店員はかつての乗組員。店長は片足のハラグという元海賊である。
     店を訪れる者は、船乗りや密輸商人、海賊、商人のたぐい。つまりは海からこの街を訪れて、守護卿区までは足を伸ばさぬやからであった。そして、この地区に居座っているセイヴとヘプタ、彼らに招かれたジェイドもまた、この店の客となっていた。

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    ヘプタ:「うまいッすー、お代わりくださいッすー、もう食べられないッすー」
    サブマス:ジェイドですが、おそらく彼は、ネヴァーウィンターのことを話した時点で義父が襲撃されたこと、そしてここがネヴァーウィンターであること、この街に来てまだ戸惑っているので、廻りを警戒しています。
    セイヴ:「こう言うところでは、キョロキョロするんじゃねえよ」と首をつかんで、まずは食事を勧めよう「黙って飯喰え」と。
    ヘプタ:「おなかいっぱいデブー」
    セイヴ:「お前は食い過ぎだよ! もう喰ったのか!」

     一方、フェイの2人もまた襲撃の手がかりを追ってネヴァーウィンターを訪れていた。
     先行するニュー・シャランダーの部隊はネヴァーウィンターの森で襲撃を受け、行方がわからなくなっている。奇妙なことに死体は残っていなかった。残っていたのは惨劇の痕跡とネズミの足跡、そして竪琴を象ったピン。ハーパーの印である。
     目立つ2人にかわってタランが探してきた情報収集拠点、それがこの座礁リヴァイアサン亭であった。

    エリオン:酒臭いし、汚い。あまり入りたくないけれど……「行きましょう、エイロヌイ殿」といって店の扉を開けますが?
    エイロヌイ:中の空気を吸ったエイロヌイは、一瞬だけ眉をしかめる。「さあ、タラン。あなたの情報収集の腕を見せる時よ。私は外で待っているわ」
    DM/タラン:「え、聞いてくるの俺っすか? なら一緒に行きましょう」とエリオンに……。
    エリオン:「いや、エイロヌイ殿をこんな寒空の下、ごろつきも出そうな往来に一人放っておくわけにはいかん。タラン、一人で行って話を聞いてこい」
    全員:おいッ!(爆笑)
    セイヴ:合流する気ゼロだよこの人達!

     とはいえ、さすがにNPCにすべてを任せるわけにはいかないので、二人ともタランと共にハンカチで鼻を押えて酒場に足を踏み入れる。当然中の連中は殺気立つが、二人はフェイならではの無頓着&傲慢さで気にも止めない。

    DM:で、二人が入っていって最初に目にするのは腹一杯食べておなかをさすってるヘプタの姿。そして剥き出しのヘソにきらりと光る竪琴のピアス。
    エイロヌイ:最初は汚らしそうに一瞥するが、そのピアスに気がつき刮目。
    セイヴ:つか、見せびらかしてるよな、これ(笑)
    エリオン:「おい、そこの無様に寝そべっているちんぴら!」
    セイヴ:「待ちな。アンタ、人の連れに、あんまりな言い方してくれるじゃないか」
    ヘプタ:「アニキ、言ってやって、言ってやって!」
    エリオン:「こいつが! 無様に! 寝そべっている! チンピラ以外の何だと言うんだ!!」(全員爆笑)
    サブマス:何一つ反論できないよ!
    エリオン:懐からピンを出して尋ねます「このピンはとあるところで手に入れたものなんだが……」
    ヘプタ:「だ、駄目ッす! それ出しちゃ、話しちゃ!」と口を押えようとします。
    エリオン:「やめろ、汚い、触るな!」(笑)
    ヘプタ:「触られたくなかったら、こっち来て座るッす! 良いッスか、それは人前で見せちゃダメなんす。あんたもそれを盛ってるってことはつまり、アレなわけでしょ? このピンは大事にとっておくもので見せびらかすもんじゃないンすよ!」
    エリオン:「だったら、お前のヘソはなんなんだよ!!」(爆笑)

     話しが長くなりそうなので、セイヴは料理を頼み闖入者を卓に迎えた。

    ヘプタ:「つまりそのアンタもアレなんでしょ?」
    セイヴ:「俺も聞かせてもらいてえな」
    ヘプタ:「もう、しょうがないッすねえ……秘密ッすよ。これはね、ハーパーの証ッす」
    エリオン:「ハーパー、ハーパーとは一体?」
    ヘプタ:「ひえ? いや、知らないとかあり得ないス。こんなに有名な秘密組織ッすよ」
    エイロヌイ:ふうん。では酒場の客に呼びかける「みなさーん、ハーパーって組織のことご存じ?」
    全員:わーっ!?

     出し抜けにレジスタンスの頭(“元”ではあるが)の事なぞを尋ねたら、たいていのやからは驚くだろう、次に厄介事を恐れてその場を離れる。
     というわけで座礁リヴァイアサン亭からは客が逃げ出し、あっという間に貸し切り状態になったのであった。

    セイヴ:「まぁ、逆に好都合だな。腹を割って話して貰おうか」
    エリオン:「私の友人達がネヴァーウィンターの森で消息不明になった。そこには争いの痕跡があったのだ」
    ヘプタ:「……つまり、ピンの持ち主が悪さをしたって思ってるッすか?」
    エリオン:「私はそう考えている。それと、その場には大きめのネズミの足跡もあった」

     ヘプタとセイヴそれぞれが心当たりに眉根を寄せる。

    セイヴ:「アンタが追ってるのは、面倒な相手だ。俺には心当たりがある」
    ヘプタ:「……実は、ハーパーについてなンすけど」

     セイヴの脳裏にあったのは死鼠団。生前の記憶はおぼろげだが、連中のやり口とネズミに姿を変えて敵の不意を討つやり方には覚えがあった。それは自分が殺されたやり口だった。
     ヘプタは自分がこの街で経験したこと、つまりハーパーとその裏切り、レジスタンスの内紛について語る。(それぞれの導入を参照
     
    エリオン:「もう少し、詳しい話を聞きたいな……」

     そのとき、酒場の外、港に面した表通りから悲鳴が聞こえてきた。


    死人の行列
    ミシュナ:「これは? サーイのゾンビ?」

     潮の足跡を残し、名状しがたい唸りを上げて、街路を死体が歩いて行く。一つ、二つ、いや無数。足取りは遅いが襲撃は迅速だった。瘴気が凝り固まって動き出した類のゾンビではない。額の刻印、口中に押し込まれた黒メノウはサーイの死人操りの秘法の特徴である。彼女にとっては忘れたくても忘れられぬ忌まわしき技であった。

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     街路を駆け抜けるゾンビ達の行く先々で悲鳴と混乱が巻き起こる。
     ただの烏合の衆ではない。その先頭には餓死者のようにやせ細り、赤の衣をまとった男がいた。死体どもを手足のように操り、行く手を阻む者がいれば、群小の亡霊からなる鎖で絡め取り、くびり殺す。その影からは無数の怨霊が染み出し、おうおうと泣く声は正気の者の意識をかき乱す。
     ミシュナは、逃げなかった。まだ脅えに手は震えるが、それを打消すように顔を上げ、街路を疾駆した。

    DM:アンデッドの群れはブラックレイク地区から、橋を渡って守護卿区に向かっています。
    エイロヌイ:「賑やかね、お祭り?」
    セイヴ:「そんなもんかもな」
    サブマス:ジェイドは悲鳴を聞いて真っ先に駆けだしています。ここでミシュナと合流しておきたいんですが。
    ミシュナ:なら、多分ミシュナは追いつかれますね。〈持久力〉がない。
    ヘプタ:「お嬢さん、危ないッすよ。ここは任せるッす」
    ミシュナ:「ダメだ……! アレは、危ない」
    サブマス:では、ジェイドは何も言わずにミシュナを抱え上げ、走り始めます。
    エイロヌイ:「あ♪ あれいいわね。そう思わない、エリオン?」
    エリオン:私の【筋力】は8だ!
    エイロヌイ:ちぇー。
    DM:やがてその一団は守護卿区に隣接する、ネヴァーデス墓地へ入っていきます。

     無目的に街を横断しているわけではなかった。
     レッド・ウィザードは自分の力を最も振るいやすい場所を目指していたのだ。
     それはまるで、都市自身が師の気配を避けて空間をくれてやっているかのようであった。最も近い建物ですら、墓地を囲む分厚い黒い壁から50歩は離れている。

     死人の群れがこの墓地に入っっていったのは確かだった。墓地の門の前には野次馬が群がっている。だれも中に入り込もうとはしないが、何が起こるのかには興味津々だった。
     ジェイドは先ほど拾い上げた娘を下ろす。何が起こっているのかを問おうとした。だが、それにミシュナが答える前に群衆の中から一人、女が歩み出る。
    「それは私が説明しましょう」

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     セイヴが口笛を吹く。
     黒髪を束ね、瞳に力のあるハーフエルフだった。魅力的、と言って良い。年の頃は30前後、朽葉色の外套に使い込んだ革鎧、長剣を携えたその佇まいは明らかに経験を積んだ冒険者である。彼女もまた、死人の群れを追ってきたのだろう、息は荒く、額には汗が浮かぶ。さらには、手傷も負っていた。女冒険者はセルドラ・ティルマランドと名乗った。
    「お願いします、冒険者の方々。奪われた箱を取りかえしてはもらえませんか? この街にとってとても大事なものが入っているのです。報酬は十分にお支払いします」
    「あのゾンビ達は一体?」
    「箱の中身を狙って、待ち受けていたのです。箱の中にあるのは強力な魔法の品。ネヴァーウィンターの未来に関わる品です!」
     予想以上に金になりそうッすね、と呟いたヘプタの足をセイヴが踏む。
     妖精境の二人は興味深げに面頬の奥のジェイドの表情を見ている。

     ――ゆこう。
     ジェイドは、セイヴとセルドラにうなずいて答えた。
     事件の規模から考えても、ネヴァーウィンターの未来に関わるという言葉は、偽りではあるまい。義父レオンは彼がネヴァーウィンターの王家に連なるものだと告げていた。彼とネヴァーウィンターの運命は大きく動き始めている。渦中で見えてくるものもあるだろう。それに、
     ――もう、一人ではない。

    エイロヌイ:「巻き込まれてしまいましたわ♪」とエリオンに。「これは最期まで見届けないと」とレイピアを抜く。
    エリオン:「正直、私は気が進まないが」
    セイヴ:「乗りかかった船ってヤツさ。払いの方は頼むぜ」とセルドラに。
    ヘプタ:では、アニキの後からおっかなびっくりついて行く。
    ミシュナ:「私は、あの死人達を放っておくわけにはいかないんだ……」

     目の前にある門の両側には、何十もの死体が積み上がっている――誰もあの怖ろしい墓地へ亡骸を運びたくなどないのだ。門の扉は両方とも開け放たれている。まるで不吉な歓迎の辞を述べているかのようだった。


    ネヴァーデスの死闘
     門の中は、ひびの入った墓石、砕けた石像、そして枯れて干からびた木々が形作るもう一つの都市だった。
     踏み込んだ冒険者たちの前に、ゆらゆらと生気を求めさまよう死体が何体か。その姿を見てミシュナが思わず息を呑む。馬鹿な、あれは間違いなくサークロスの学友、試験で倒れた生徒達であった。そして、幽鬼のような佇まいのレッド・ウィザードが笑う。その手には、宝石をちりばめられた宝冠が握られている。
    「冒険者風情か、はした金に目が眩み、命を捨てに来るとはな」
    「その品さえ渡せば、命は助けてやるぜ」
     こちらも死人の如く白面のセイヴが返す。
     レッド・ウィザードの声を聞いてミシュナはびくり、と身を震わせる。「先生……?」
     忘れようとして忘れられない記憶が奔流のように蘇る。トリヴァスト師の呪い、倒れたクラスメイト。
    「冒険者の体は、いい材料になる。大事に使ってやるから、安心して死ね!」
     高らかに叫ぶトリヴァストの足下から、黒く焼けた死体が起き上がった。そして冒険者の足下からも無数の死者の手が墓土を跳ね上げ、足をつかんでかきむしる。
     一瞬で引きずり倒され、首筋を爪でかきむしられたのはセイヴだった。どうにか跳ね起きるが流血は酷い。とっさに避けられたのはヘプタ、臑当てで爪をはねのけたのがジェイド。それ以外はその場から動くこともままならない。つまりそれは、間合いの外から秘術を投げかけるレッド・ウィザードに対して無力ということだ。
    「させるか!」
     エリオンはジェイドの腕を掴み、この世界の裏、妖精界へと一歩踏み込み、そして戻ってくる。表れた先は、亡者の手の届かぬ先。これぞエラドリンの業、“フェイの一跳び/フェイ・ステップ”。本来ならば妖精境に踏み込めるのは己一人、しかし卓越した戦闘技術をもつイリアンブルーエンの守護者たちは、仲間を連れて次元を渡るのだ。
    「ジェイドと言ったな。お前の鎧と盾、伊達ではあるまい。前に詰めてレッド・ウィザードを押えろ。雑魚は私が焼き払う。聞け、我が魔剣の鎮魂歌(ブレード・ソング)!」
     振る袖がびょう、と唸り、刀身が呪文に共鳴する。祖神コアロン・ラレシアンの見いだした剣魔一体の魔法剣がここに顕現し、喚び出す力は灼熱の炎。
    「我が右手の封印が破られるとき、あらゆるものが灼熱のPrestissimoに包まれる……。見よ、“火炎双手/バーニング・ハンズ”!!」
     業火が渦巻き、何もできぬまま死体が二体灰と化した。苦痛を叫ぶのは間違いなくトリヴァスト。

     セイヴは腰から下を亡者につかまれ動けそうにない。ならばと投げるダガーも的を外す。
    「クソッ!」
     屍灰を散らすゾンビがジェイドにつかみかかってきた。彼はそれを盾ではねのける。ジェイドには知るよしもないが、これこそはかつてネヴァーウィンターが火砕流に巻き込まれたとき、焼け死んだ人々の苦悶から生まれた死に損ない、アッシュ・ゾンビである。
     
    「先生、どうしてここへ?」杖を構え、ミシュナは問う。
    「お前は……、おお!レウール家のミシュナ。なぜお前はサーイを出た? なぜここにいる? さては、ザス・タム様かヴァリンドラ様の密命か?」
     師は弟子の心を知らず、弟子は師の目的を知らず。時に運命は必然にしか思えぬ偶然を演出する。トリヴァストがこの地に来たのは何か理由があるのだろう、しかしミシュナが逃げてこの地に至ったのは偶然なのだった。
     戻るわけにはいかぬと決別の呪文、“霊力付与の雷光/エンパワーリング・ライトニング”をミシュナは放つ。「愚か者め!」とそれを刃で受け止めるトリヴァスト。「貴様に魔法を教えたのは誰だと思っている!」
     だが、ミシュナの決心は固かった。二度と過ちは繰り返さぬという決意“英雄的努力/ヒロイック・エフォート”がトリヴァストの守りを打ち破り、更に深手を与える。

    「こんなことになるなんて聞いてないッすよ! 」ヘプタは悲鳴を上げて亡者の手から逃れようとする。その時、あの財布が再び光った。「コアロン様!」そしてその光がジェイドを襲うアッシュ・ゾンビを撃つ。眩い光が炸裂し、アッシュ・ゾンビは文字通りに吹き飛んだ。光輝の力で不浄の化け物を退散させる。“アンデッドを討つ一撃/スマイト・アンデッド”の技である。今度は死に損ないが腰を抜かし動けなくなる。
     行く手を阻む者はいなくなった、ジェイドは盾を構えてレッド・ウィザードに突撃する。打ちかかるゾンビの爪は盾と鎧に任せ、真っ直ぐに一撃。受け止められても盾をぶちかまし押しやって行く。やはり“英雄的努力/ヒロイック・エフォート”である。
     逃れられなくなったトリヴァストは亡霊の鎖を呼び出した。鎖はジェイドを引き寄せ、絡め取る。引きずられた先には、魔道士のダガー。鎧の隙間に当たっていたなら貫かれていた。
    「させるか!」と、エリオンは眼前のゾンビを切捨て、返す刀でトリヴァストに殺到するが切裂いたのは赤いローブのみ。
     トリヴァストの注意が逸れたその隙にセイヴは亡者の腕を振り払い、ジェイドの元へ行こうとする。背を向けたセイヴに、ゾンビが爪を伸ばす。その時エイロヌイが微笑んだ。
    「あら、良いのかしら?」と。
     瞬間、光が爪を阻み炸裂。ゾンビは塵となった。自然神シルヴァヌスの“信仰の標的/ディヴァイン・チャレンジ”を侮った報いだった。
     畳みかける、
     ミシュナは冷静に、すべてのメイジが最初に覚え、最後まで使い続ける魔法を放つ。必中の魔力、“魔法の矢/マジック・ミサイル”がかつての師を撃った。

    「イケる、イケるっす。俺もやれるッすよ!コアロン様!」短い祈りでセイヴの血を止めるとへプタはクロスボウを構える。狙うのは先ほどへプタが大打撃を与えたアッシュ・ゾンビ。
    「へへへ、俺は止まってるヤツを撃つのは得意なんすよォ!」引金を引く、弦が震える。
     外れるわけの無い一撃であった。だが外れた。

     詰まるところ、出目は1であった。

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    「あーっ!」悲鳴が上がる。ヘプタの目の前には衝撃から回復したアッシュ・ゾンビがおり、空のクロスボウはおそらく役に立たない。その時である。
    「“勇気持て、友よ!/テイク・ハート、フレンド!”!」声を発したのはジェイドだった。
     戦場の喧噪を貫く力強い言葉だった。ヘプタはジェイドの眼差し、自分を信じてくれている熱い眼差しを感じた。それによりヘプタの胸に一時的hp5点分の勇気が湧き、防御値が2上がるくらいやる気が満ちた。

     戦いは続く、しかしほぼ形勢は決している。

    「良いのか、ミシュナ」息も絶え絶えにトリヴァストが語りかける。
    「ヴァリンドラ様は、ずっと今も我々をご覧になっておいでなのだぞ。お前は逃げられると本当に思っているのか?」
     ミシュナの表情は蒼白である。杖を握りしめた腕がわなわなと震えている。レッド・ウィザードの恐ろしさは自分が一番知っている。
    「今ならまだ……」
    「未練だな。お前」トリヴァストの言葉を“魔剣の鎮魂歌/ブレード・ソング”が遮った。
    「先ほどこの娘はお前に稻妻を投げつけた。すでにお前の敵なのだ。にもかかわらず固執するとは、愚かだな」
    「黙れ!」
     涼しい顔でレッド・ウィザードの叫びを受け止め、エリオンは剣を振るう。刃が肉を噛んだなら、呪文を連ねてとどめを刺す。
    「瞳を灼く陽光の輝き、受けるがよい。“灼眼陽光剣/ダズリング・サンレイ”」
     トリヴァストは絶命した。


    王冠が選ぶもの
    「へへへ、こいつらたいしたことなかったッすね」
     へプタは、崩れ落ちたトリヴァストの手から王冠を取り戻した。ミスラルにサファイアがちりばめてあり、魔法の心得のないものにもそれとわかる魔力を発している。
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    「さっさとここから出るぞ」セイヴが促す。見れば、墓地の奥から生者の命を求め、死に損ないどもが集まりはじめていた。戦うにしてもきりがない。
     冒険者たちは走った。

    DM:すぐに逃げるのならば、難なく逃げ切って門を閉じることができます。門の外には衛兵達や野次馬たちが集まっております。そして、その中から黒髪のハーフエルフ、セルドラが歩み出てきますが、ここで皆さん王冠を見た人は〈歴史〉の判定をしてください。
    セイヴ:難しいこと言うなぁ、ダメダメ。
    エリオン:わからない。
    ミシュナ:20です、パーティで一番でした。
    DM:ならば、ミシュナはわかりますね。この王冠はもしかしたら“ネヴァーウィンターの王冠”と呼ばれるものかも知れません。王家に代々伝わるもので、今は失われているのですが、伝説によればふさわしきの継承者以外がこれを戴いたなら、ほとばしる炎と氷の嵐によって殺されてしまうといいます。
    ヘプタ:わからなかったので、「へっへっへ、これは良いものっすね」と被ろうとします(笑)
    ミシュナ:「だ、だめ!歴史の教科書に載ってた。資格のない人が被ると死んじゃう!」
    ヘプタ:そっとその場に置きます(笑)
     
     あなたの目の前に、その王冠はあった。
     ミシュナの語った伝承が真実ならば、この王冠はネヴァーウィンターの真の継承者以外は戴くことができないのだという。 
     そして、義父レオンはあなたはネヴァーウィンターの真なる継承者の血を引くのだと語った。
     門の前にいる市民達の中にも、この王冠を見てざわめいている者達がいる。正体に気がついているのだ。
     ふと、思った。
     ここで、この王冠を戴けば、自分がこのネヴァーウィンターの正統な王位継承者であると証し立てることができる、と。
     その思いつきは、とても魅力的で、あなたは手を伸ばしはじめていた。

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    このシーンのうらがわ
     というわけで、ここでアンケート。
     ネヴァーウィンターの王権を証し立てる王冠を目の前に、視聴者キャラのジェイドはどう振舞うのか。選択肢は二つ。

    1):「正統な王位継承者であることを示すため、王冠を被る」
    2):「まだ正体を明かすべきではない」

     視聴者の選択は……。



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     セルドラはあなたの手にある王冠を、早く受け取りたいようだった。行儀良く待ってくれてはいるが、焦りは隠せない。
     あなたは迷っていた。
     そもそも自分が王家の血を引くという話も、それが真実か否かを確認できたわけではない。さらにいうなら、王家の血を引いていたからと言って、このネヴァーウィンターで一体何をしようと言うのか。覚悟のない者にとって、権威はその身を滅ぼす諸刃の剣である。
     だが、これを戴くことで自分が何者かを明らかにできるかもしれないというのも、今のあなたにとっては重要だ。あなたの隠された真実故に義父母は討たれ、あなたは流浪の身となったのだから。
     
     そして、あなたは決断した。
     剣を納め、手にした王冠をセルドラへと手渡す。彼女はほっと笑い、金貨の袋を手渡した。

     己のさだめを、今このような場所で、しかも定かであるかを確証もないやり方で試してはならない。この王冠を戴くのは、いつか本当に自分でそうせねばならぬと決心したときのことだ。

     と、考えている間に近づいていたエイロヌイが、あなたの耳に囁いた。

    エイロヌイ:「冠というものは、自分で被るものではないのですよ。被らせてもらうものなのです」
     
     心を見透かされ、あなたははっとエイロヌイに向き直る。彼女は既に背を向け、エリオンの元へと歩み去っている。
     と、あなたの肩をセイヴが叩いた。
    「どうやら、これで他人にたからずにまともなもん食えるようになったな」
    「金貨ッすよ! すげえッす、たくさん入ってる!!」
    「もう少し清潔な場所が望ましいが、私も行こう。先ほどの店、払いはしないで出てきてしまったからな。それにネズミの話も途中だ」

     人生を変える出会いが、どこに転がっているかわからない。
     しかし、偶然に思えた出会いが、あとから省みれば必然とわかることもある。
     今日この日の出会いは、そういう類の出会いであったと、後にあなたは思い返すことになるのだった。


    ジェイドの決断まとめ
    初回:
     問い:成人の誓いはどの神に誓う?
     決断:“幸運の女王”タイモラに誓う。「身寄りのない自分が己の運命を切り開くのに必要」属性は善となる。

    二回目
     問い:衛兵に絡まれているヘプタとセイヴ、あなたはどのように振舞う?
     決断:「兵士は横暴だ。あの二人に言い分がある。力ずくで助ける」

    三回目
     問い:王権を証し立てるネヴァーウィンターの失われた王冠。これを前に、あなたはどうする?
     決断:「まだ正体を明かすべきではない」王冠は被らない。
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