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充電しすぎたバッテリーが爆発? 噂の真偽をメーカーに聞きました
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充電しすぎたバッテリーが爆発? 噂の真偽をメーカーに聞きました

2014-06-03 07:00
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    スマートフォンのバッテリーとして使われている充電池については、様々な都市伝説(ウソか本当かよく分からない噂)が存在しています。


    ・充電しすぎたらバッテリーが劣化、または爆発する?
    ・電池は使い切ってから充電した方が寿命がのびる?
    ・充電しながらスマホを使うとバッテリーが劣化する?

    これらの疑問に対する回答については、未だに間違った情報が少なからず流されております。そこで、今回改めて正しい情報をお伝えしておきたいと思います。

    間違った噂に流されることなく、より良いスマホライフを送っていただければ幸いです。
     

    リチウムイオン電池、リチウムポリマー電池の特性

    現在のスマートフォンに使われている充電池(二次電池)は、主に2種類あります。リチウムイオン二次電池(以下、LiB)と、リチウムポリマー二次電池(以下、LiPB)です。

    少々乱暴に言えば、ユーザーの観点から見て両者にはほとんど違いがありません。ちなみに、LiBの改良型がLiPBとなります。

    LiBもLiPBも、旧来の充電池と比べるとハイパワーで、継ぎ足し充電(充電が残っている状態で充電開始)をしても電池容量が大きく減ってしまうことなく自然放電も少ないという、まさに携帯電話のために作られたような特性を持っています。

    しかしながら、長所があれば短所もあるのが世の常です。LiB、LiPBには以下のような欠点があります。


    ・容量の限界まで充電してしまうと、電池の性能が急速に劣化、最悪の場合発火も
    ・完全に放電してしまうと、2度と充電できなくなってしまい、最悪の場合発火も
    ・ショート(短絡)してしまうと、発火することも

    これらの特性がゆえに、冒頭の画像のように電池が発火(爆発)してしまったという例が、いくつか報告されているのは事実です。


    LiB、LiPBを制御するスマートフォン

    上で挙げたように、危険な特性を持っているLiB、LiPBですので、常に携帯するスマートフォンに採用するにあたっては、各メーカーとも対応策を施してあります

    具体的には、満充電となる前に充電を停止する。過放電となる前にスマホの電源を強制的にオフにするという仕様になっており、表示上の電池残量は0%や100%となっていても、実際にはいくらかの余裕をもたせた上での数値ということです。


    つまり、簡単にまとめれば、充電を開始するタイミングも、充電器から外すタイミングも、充電しっぱなしにするのも、全て好きなようにご自由にしていただいて大丈夫ということです。都市伝説にダマされて、ムダな努力をしないようにいたしましょう。

    LiBもLiPBも、どんなに気をつけて使用していたとしても、あらかじめ決まっている寿命が来てしまうと使えなくなってしまいます。常にケーブルに繋ぎっぱなしだとか、一度充電したら数週間は充電するチャンスがなくなってしまうだとか、特殊な条件で使用している場合を除き、結局は、都市伝説を信じて行った努力も徒労に終わるだけです。

    人間の寿命なら、60歳が61歳になるのは大いに意味があることですが、スマホ電池の寿命が3年から3年と2週間に伸びるのだとして、それにそれほどの意義はないですよね。

    ユーザー側で気をつけておきたいことといえば、万が一の発火を起こさないように、充電ケーブルはできるだけ純正品を使うということと、純正品以外のバッテリーを使用しないということくらいです。



    ここで、今回はこの話の裏を取るべく、実際にいくつかのメーカーに問い合わせてみました。少し専門的な話になりますので、興味のある方だけ読み進めてください。

    問い合わせたメーカーは、HTC、ソニー、LG、サムスンです。ただし、ソニーのサポート窓口は、日本においてはドコモ、auといった通信キャリアとなっているので、情報の信憑性を高めるためにスウェーデン在住の友人に頼んで、ソニーの海外サポート窓口に問い合せています。また、執筆中の段階では未だサムスンからの回答が届いていません。後ほど回答する旨、返信はいただいていますので、特段の情報が記載されていれば追記したいと思います。

    少し専門的な回答となっているメーカーもありますが、原文にできるだけ忠実に掲載することといたしましたので、長くなる点はご了承ください。


    問い合せた質問の内容

    【質問1】過充電について

    リチウムイオン電池が、過充電、過放電に弱いということはよく知られていますが、これに対する対応は、端末側でなされておりますでしょうか?
    例えば、夜寝る前に充電を開始し、朝起きた時にケーブルを抜くというような使用をした時に、過充電による充電池への影響は考えられますか?

    【質問2】過放電について

    電池を使い切ってから充電した方が良いという話も、まれに聞かれますが、これは過放電による影響を受けるということは考えられますか?
    表示上は0%となり、強制的にシャットダウンを開始しても、過放電の影響を与えない程度の余地を残しているという仕様ではないかと推測しているのですが、いかがでしょうか?

    【質問3】充電しながらの使用について

    リチウムイオン電池が極端な寒暖に弱いという話も聞きます。
    充電しながらの使用だと、本体が熱くなって充電池に悪影響があるというのですが、これは正しいでしょうか?


    HTCの回答

    【回答1】過充電につきまして、携帯端末側に過充電防止の保護回路(電流量を制御する装置)がございますのでので、リチウム電池に影響を与えることはないとのことです。

    【回答2】過放電につきまして、リチウム電池は過放電致しました場合、充電できない恐れがございますため、端末側のソフトでは、電池の電圧が規定以下になりましたら、端末を強制シャットダウンするよう設定されております。
    こちらは、過放電の段階までまだある程度の電池残量がある状態となります。

    【回答3】充電時には温度制限がございまして、リチウムイオン電池(HTC J)の場合、45度以上の環境で長時間充電されますと、電池の寿命が大幅に短くなる恐れがあります。
    なお、リチウムイオンポリマー電池(HTC J Butterfly、HTC J One)の場合は、高温環境での充電に比較的強い特性がございますため、リチウムイオン電池と比較いたしますと、劣化しにくくなります。


    ソニーの回答

    【回答1:原文まま】Our Sony Xperia phones don't suffer any negative effect from being connected to a charger even while fully charged.
    【回答1:翻訳】ソニーのXperiaは、充電完了後に充電ケーブルに繋いだままでも、それによって悪影響を受けることはありません。

    【回答2:原文まま】Completely discharging batteries was common with older types of batteries, our Sony Xperia phones of today on the contrary benefit from being charged as often as possible.
    【回答2:翻訳】完全に放電してから充電するべきだというのは、古いタイプの充電池に当てはまる話です。現在の充電池は、継ぎ足し充電をひんぱんに行っていただいても、問題ありません。

    【回答3:原文まま】Sony Xperia phones are fine being used while charging, this won't cause overheating problems with average use. If the phone is under heavy load and is susceptible to overheating the phone will turn itself off due to its overheating security function.
    【回答3:翻訳】ソニーのXperiaは、通常使用では加熱しないようになっておりますので、充電中にご使用いただいても問題ありません。大きな負荷がかかる処理をする時など、熱の影響を受ける可能性がある場合には、安全装置が働いて強制的に電源がオフになるようになっております。


    LGの回答

    【回答1:一部日本語訳に難がある部分を筆者にて修正】過充電、過放電しないように充電可能電圧を4.35Vまで、充電停止電圧を3.4Vに設定しております。
    最大充電時間を設定しているため、仮に異常発生の場合でも、過充電が発生する前に充電を中断します。従って、お問い合わせいただいた例では過充電によりバッテリーに及ぶ影響はないと判断します。
    またLGバッテリーには、基本的にバッテリー保護回路が内蔵されております。保護回路は過充電、過放電を事前に防止します。
     1) 過充電保護の設定値:4.375 ± 0.025V
     2) 過放電保護の設定値:2.400 ± 0.070V
    上記条件以上になった場合、バッテリー単品で電源を切断するように設計されています。従って、一般的な状況で過充電、過放電によるバッテリーへの影響についての可能性は低いと判断します。

    【回答2:一部日本語訳に難がある部分を筆者にて修正】ご認識で合っております。バッテリーを使い切り、「表示上で0%になり強制終了を始める」というのは、過放電の影響を与えない程度の余地を十分残した上でのことです。

    【回答3:一部日本語訳に難がある部分を筆者にて修正】本体が熱くなり、バッテリーの温度も極端に上がった場合、 当然バッテリーに悪影響がございます。充電時には0°C〜45°C、放電時には-20°C〜60°Cの間を通常使用の範囲として保証しております。
    弊社製品では、過熱保護アルゴリズムを適用しており、充電可能な温度の範囲を超えた場合、充電を中断するよう設計されております。
    また、本体及びバッテリーが60°C以上の温度に上がった場合、強制的に電源オフさせバッテリー及び本体を保護するように設計されております。



    筆者がHTCのユーザーということもあるのか、HTCの回答は非常に早く、問い合せた2日後での回答でした。ソニーについては、スウェーデンからの問い合わせだったからか、クレーマーなどに気を払っていないような大らかな回答をいただきました。そしてNexus 5のメーカー、LGについては、技術的なことにも触れていただき、詳細な回答をいただきました。

    各社とも、多忙な中でのご協力に感謝いたします。ありがとうございました。


    【参考資料】
    アップル社:リチウムイオンバッテリーについての解説
    ウィキペディア:リチウムイオン二次電池
    ウィキペディア:リチウムイオンポリマー二次電池
    コトバンク:リチウムイオン電池
    上村メカトロニクス株式会社:リチウムポリマーバッテリー解説


    (田中宏和)

     

    RSSブログ情報:http://www.tabroid.jp/news/2014/06/battery-knowledge.html
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