今年で競馬を始めてちょうど20年となりました。16の頃、ナリタブライアンが三冠馬となり、ダビスタブームに火がついたその年から金沢競馬場に毎週真面目に通って馬券を買ってたんですが、今思えば長閑な競馬場でありました。
当時はマークシートなんてハイカラなものなどなく、窓口のおばちゃんに口頭で「枠単3-6、200円」とか「枠単2流し全通り、100円」とか言って買い目を一つずつ伝えて買う面倒くさいシステムでありまして、締切5分前に場内に「走れコータロー」が流れ出すと窓口に長蛇の列ができ、「早くしろ」「俺を先に買わせろ」「お前なんかあたんねーよ」と罵声が飛び交い、まさに場末の鉄火場の殺伐とした雰囲気に幼かった俺は夢中になりました。
声変わりする前だった自分はいつもより2オクターブ低い声で「単勝5番に全部」とか言ってたんですが、おばちゃんも険しい顔して帽子を目深にかぶった俺の顔を覗き込み、首をひねりながらも馬券を発券してくれました。ちなみに当時の金沢競馬にはまだ馬連がなく、6枠制の枠単のみだったので買い目も全部で36通りと少ないものであり、競争馬もほぼ毎回同じメンツなので、それでよくも毎回30分近く予想で悩んでいたなと今となっては思います。
思い出すのは競馬を始めて半年経った94年の師走の大レース、中日杯。窓口の列に並んでいると前にいた30前後の男2人組が話し掛けてきて「このレースは荒れる。本命のエビスライトオーは1着だけど2着に人気薄の大穴サツマコムスメが入る。俺らはそれをしこたま買う。お前も買え」と言うのです。
今考えれば「お前も買え」っていうのがよく分かんないのですが、それを聞いて当時世の中の酸いも甘いも知らなかった自分はこんな美味しい話があるのかと思い、自分の予想を翻しエビスとサツマコムスメの枠単に当時のお小遣い5千円をすべてぶっ込みました。結果は1-3着。エビスは圧勝し、大穴のサツマコムスメは猛追するも2着に半馬身届かず。馬券が舞い散るスタンドの向こうを見るとさっきの男2人組が目に涙をためて放心状態で立ち尽くしていたので、あんな大人にはなるまいとその時強く誓いました。
競馬を始めて20年。ようやく酸いも甘いも知り尽くしたと言える競馬歴になり、ウマ年の今年、さらに自分も年男ということで、そんな年に当競馬欄に筆を取らせてもらえることを運命のように感じております。
明日の天皇賞(秋)、本命はローカル路線からの刺客ラブイズブーシェ。相手にはイスラボニータ、ディサイファ。今んところ15番人気なのが一抹の不安を覚えるところではありますが、「お前も買え」と強く推したい所存であります。
2014年11月1日 新爆