スマホやカーナビで位置情報を得るために使われる「GPS」を補完・補強する仕組みとして、近年話題にのぼり始めたのが『準天頂衛星システム(QZSS)』というものです。日本では現在JAXA(宇宙航空研究開発機構)が構築を進めているこの仕組み、いったいどんなものなのでしょうか?
特定地域上空にとどまるのが「準天頂衛星」
準天頂衛星とは、特定の地域の上空に長くとどまる軌道をとる人工衛星のことです。日本が2010年に打ち上げた準天頂衛星初号機『みちびき』の場合、8の字(非対称8の字軌道)を描きながら日本からオーストラリアの近辺上空に位置しています。
準天頂衛星システムにできること
GPSでの測位には、同時に4つのGPS衛星からの電波を受ける必要があります。しかし高層ビルが多い都市部や山間部などでは、建物や山岳の影に入ってしまってうまく受信できないケースも。
そこで常に天頂付近(仰角60度以上)にある準天頂衛星がGPS衛星の不足を補うことで、測位の精度や信頼性が向上するというのが、準天頂衛星の大きなメリットになります。
また、「みちびき」が発信する6つの測位信号のうち4つはGPS衛星と同じ信号、あとの2つはGPS精度を高める補強信号。この補強信号では位置情報以外の緊急メッセージを放送することも可能とされ、今までGPSではできなかった新たなサービスに使われることにもなるのかもしれません。
準天頂衛星システムの今後
利用にあたっては、スマホやカーナビ等の受信機側でもGPSとは別に準天頂衛星システムに対応している必要があるため、既存のスマホ端末のほとんどでは、まだ「みちびき」を利用することはできません。
とはいえ、最近ではコヴィア製スマホ『CP-F03a』が準天頂衛星システムに対応していると、同社のFacebook等に記述がありました。やがて主要なスマホ端末のスペック表に「準天頂衛星対応」と書かれる日が来るのかもしれませんね。
日本ではまだ稼働している衛星が「みちびき」1つしかない未完成の状態ですが、これからの発展に期待が寄せられている注目の最新技術ですよ。他国でもロシアのGLONASS、EUのGalileo、中国の北斗といった同種のシステムが開発進行中です。遠い世界のお話にも思える宇宙技術も、我々の生活に関係するサービスへとつながっているのを感じます。
それでは皆さん、今日も一日、スマートに! いってらっしゃい!
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