年が明けてから、市場は大荒れが続いています。
原油価格の急落に続いては、ギリシアのユーロ圏離脱観測、そして1月15日のスイスフランの急騰です。これが原因で、海外のFX(通貨取引)業者が潰れ、その関連の日本法人も潰れはしなかったものの取引に制約が発生し、その他の業者も不安の払拭に終われる状況になっています。
また、スイスフラン急騰の余波は円相場にも及び、円高から株安へと展開しました。これらの状況は、ヤフージャパンなどのポータルサイトでファイナンス欄をご覧になると、無料のチャート情報サービスがありますので、そこで確認できます。
ご案内の通り、西欧の主要部は1999年に通貨が「ユーロ」に統一されて、「ユーロ圏」を形成しています。ユーロ圏の経済規模は、一国としては世界最大の経済力を持つアメリカを凌いで、世界最大となっています。しかし、西欧の主要国でも、英国のようにユーロ圏に入ることを躊躇っている国もあります。また、スイスのように初めから入る気がない国もあります。
これは、通貨の発行権が国家主権の重要な一部であり、これが「ユーロ」全体に飲み込まれてしまうと、金融政策の自由度を失いかねないからです。
逆に言うと、ユーロの中央銀行(ECB)総裁は超国家的な権限を持つ、強大な存在ということになります。また、スイスのような自国通貨を持つ国は、金融政策、為替政策の点で自由度がある、ということですね。
世の中、何が起こるがわからない
今回のスイスフラン・ショックですが、背景はギリシアのユーロ離脱観測やECBによる量的緩和政策の導入観測やら何やらでユーロが安くなり、この反作用としてスイスフランに避難しようとする為替圧力が高くなったところにあります。スイスは精密機械などの輸出国でもあり、観光の受け入れ国でもありますから、通貨があまり強くなっては大変です。そこでスイスの中央銀行が、対ユーロで1.2スイスフランの水準を上限とした通貨の売り支え(というのも変な表現ですが)をもう3年越しで頑張っていました。しかしそれも限界に来て、「もうダメ」と突然、通貨安政策を諦めた、ということです。
スイスフランの上昇圧力は、これで一気に顕在化し、スイスフランは30%くらい急騰しました。
注目すべきは、その発表でスイス中央銀行総裁は「こうした決定の際には、市場の隙を突く必要がある」と言っている点です。これは、一部の市場参加者だけが先んじて知っていると、その業者だけ儲かってしまう、不公正な相場形成がなされるからであり、もっと一般的には政策の効果が先回りされたり、政治的反対が起こって実施が阻害されたり、といったことも起こりかねないからです。
面白かったのは、この発表を受けたユーロの番人ECB総裁であるドラギ氏が「聞いてない」と狼狽していたことです。
以前申し上げた、世の中何が起こるがわからない、ということが最も本質的な「リスク」であると、またしても証明されました。