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ゲストさん のコメント

以前、ニコニコさんでブロマガ登録させて頂きましたが登録を解除せずインターネットの使用を止めてしまい、その支払いがずっと引き落とされてるんですがこういう場合どうしたらいいかおわかりになるでしょうか?
ちなみにその時のパスワード、IDなどは忘れてしまっています。
コメントではないのですが困っています、宜しくお願い致します
No.1
128ヶ月前
このコメントは以下の記事についています
津田:ドワンゴ [*2] といえば、僕はニコニコ生放送 [*3] やブロマガ [*4] でお仕事させていただく機会が多いのですが、昨年の衆院選前には自民党の安 倍総裁が当時の野田首相との党首討論の場に「フェアな場所」としてニコニコ 動画を指名し、話題になりました [*5] 。これに対して民主党の安住幹事長代 行(当時)が「ニコニコは偏った動画サイト」だと発言して騒動になるなど [*6] 、いまや日本の政治のトップが意識せざるを得ないサービスにまで成長し ています。今日は川上さんの経営者としての手法というところからお話をうか がっていきたいのですが、まず、会社としてはニコニコの事業より先に着メロ 配信の「dwango.jp」[*7] を成功させていますよね。こちらの事業にしても独 特な展開をされているなと。というのも僕、「dwango.jp(当時は「いろメロミッ クス」)」がスタートした当初、テレビCMをバンバン打っていたのがめちゃく ちゃ印象に残っているんです。当時は着メロをテレビで宣伝する会社なんてほ かになかったと思うのですが、やはりあれは成功する確信があってやったこと だったのでしょうか? 川上:まぁそうですね。普通にテレビで宣伝すれば効果があるだろうなと思っ ていたのと、ほかにする人がいないからという「逆張り」のつもりでもありま した。プロモーションについて言うと、みんなと同じことをしてもあまり意味 がない。僕、逆張りが好きなんですよ。 津田:当時、着メロはケータイ電話のサービスだったから、テレビでプロモー ションする人なんていなかった。そういう意味での「逆張り」だったと。 ◇「競争しない」という戦略 川上:ただし、「逆張り」であり、ある意味では「順張り」だったんですよ。 当時――1990年代後半は、多くの企業が着メロ事業に参入して、うちなんて二 番煎じどころか37番煎じくらい(笑)。みんなと同じマーケットに向かうのは 向かったけれど、そこでとった行動がほかの会社と違ったということなんでしょ うね。つまり、僕はできるだけ同業他社と競争したくないんです。ニコニコ動 画をスタートさせたときもそうで、当時はYouTubeがブームになっていて、国内 にも類似サービスがすでに10社くらいあったんです。そんななかでただの動画 サービスを運営するだけではYouTubeと競争しなくてはならないし、生放送サー ビスだとUstreamと正面からぶつかってしまう。それならうちは違うところへ行 こうと。 津田:競争しているように見せて、実は独自路線を行ったわけですね。なるほ ど。 川上:それって結構重要な視点だと思っていて、優秀な人は勝つことに慣れて いるがゆえに競争することに抵抗感がないから、つい競争しちゃうんです。で も、よっぽどの差がない限り、競争なんてやっちゃいけない。だって、本来は 個人個人にそんなに大きな差なんてないですから、競争すること自体がかなり リスキーな賭けなんです。極論をいえば戦争もそうだと思いますよ。そういう 意味では、生き残るために大切なのは競争を避けることなんじゃないかって。 津田:競争を極力避けつつ、新しいことを始めるのがポイントであると。 川上:はい。じゃないと、戦って生き残れたとしても、ちょっと気を許すと死 んじゃうような状況は変わらない。つねに一生懸命走っていないと勝てない、 みたいな生活が続くのはつらいですよ。僕はのんびり生きたいので(笑)。 津田:でも、川上さんは実際にドワンゴをここまで大きくしてきた経営者なわ けですよね。経営者としてのご自身をどう分析されているんですか。 川上:僕の場合、自分を客観的に見たとき、人生における最大の欲望は一日中 ゲームしたり本やマンガを読むことで、それって要するに「ひきこもり」なん ですよね。 津田:人生の目標がひきこもりですか(笑)。 川上:本当にそうなんですよ。それを自覚したうえで仕事を続けるとなると、 これはもう自分のために働いていると思うとやってられないんです。 津田:「ひきこもり」と「仕事」って相容れないですからね。ただ、世の中の 経営者には脇目もふらずに走り続けてるようなトップランナーも多いと思うん です。少なくとも川上さんはそういうタイプじゃないんですね。 川上:ぜんぜん違いますね。僕はそういう生き方はできないです。だからそん な人がすごく羨ましいとも思う。何かひとつのことだけに集中していたり、人 生の目標をもっていたりする人。 津田:となると、気になるのが川上さんが一番興味をもつのってどんな人なん だろうということなんですね。「この人は面白いな、話してみたいな」と思う のは? 川上:うーん。そうだなぁ……さっきも言ったとおり、僕はのんびりして生き たいんだけど、そうするためにはそれなりの結果を出さなければならない。そ の矛盾をどうして解決するのかというのが個人的な最大のテーマなんですね。 そうすると、結局はモチベーションをどうやって保つのかってところに行き着 くんですよ。だから、モチベーションの高い人には興味がありますよね。僕と 似た環境に身を置いていて、僕にも真似できそうな方法で高い精神状態を保っ て生きている人(笑)。 津田:わははは(笑)。たとえば、スタジオジブリ [*8] の鈴木敏夫プロデュー サーとかですかね? 川上:まさにそうですね。彼のような生き方や精神状態にはすごく憧れます。 津田:川上さんは2011年からスタジオジブリの“プロデューサー見習い”とし て働いていますが [*9] 、ジブリや鈴木さんから学んだことというのはドワン ゴの経営やサービスに影響を与えていると思いますか? 川上:与えています。特に、ものづくりに関して――コンテンツとはなにかと か、そういう問いに対する回答を得られた気がしています。 津田:おっ! 川上さんが行き着いた「回答」がなんなのか、すごく興味があり ます。 川上:コンテンツとはなにかってことを人類の進化から紐解くと、人間は「わ かりそうでわからないもの」に惹かれるという傾向を本能的にもっていたと思 うんです。たとえば石器時代なんかでも、近くでガサゴソと物音がすると猛獣 が潜んでそうで気になって仕方がなかったはずなんです。不完全な情報に対し て「それがなんなのか突き詰めたい」という欲望は、人間の生存本能から生ま れたもので、それがコンテンツの本質。つまりウケるコンテンツというのは本 能に働きかけるものなんです。それはなにかというと、ひとつの大きな要素は 性的なものですよね。もうひとつ大きいのは面白いもの。それも、わかるよう でわからないような中間地点にあるものですね。 津田:なるほど。それは興味深いお話ですね。そういう意味では、「ニコニコ 超会議」なんてまさに面白いコンテンツばかりを集めた一大イベントですよね。 2012年に開催された第一回はリアルの来場者9万人以上、ネット来場者347万人 を記録して大いに盛り上がりました。そもそも、ニコニコ動画のようなウェブ サービスをリアルなイベントに展開しようと思ったのはなぜなんでしょう。 川上:インターネットのオフ会って楽しいし、ネットの中だけではできないも のがリアルで実現するのって絶対に面白いじゃないですか。むしろ、なんでほ かの人はやらないのかな? っていう(笑)。 津田:ここでもまた逆張りなんですね。2012年に続き、2013年には「ニコニコ 超会議2」を開催することも決まり、任天堂をはじめとする名だたる企業がスポ ンサーについたと聞いています [*10] 。これ、いつまで続けたいと思っていま すか? 川上:まぁ、10年はやりたいですよね。 津田:10年ですか! 10年後も川上さんは変わらぬスタンスで働いていると。 川上:こんなぬるい感じで仕事できるのは幸せだと思っているので、いまの生 活が続けばそんなにいいことはないなぁと。 ◇インターネットと人類の未来 津田:では、10年後、20年後のインターネットは人類にとってどういうツール になっていくと思いますか? 川上:そうですね……。ひきこもりを代表して言わせてもらうと、インターネッ トがその草創期においてひきこもりの人たちに居場所を与えたというのは、あ る側面では事実だと思うんです。たしかにそれで幸せを感じていた人たちもい たし、いまもいるのかもしれない。でも、それは過渡的な状況にすぎなかった という気がしていて。つまり、インターネットが本当の意味で人類を幸せにす るかと言われれば、僕は若干疑念をもっています。 津田:みんながインターネットで幸せになる世界にはならないと。 川上:「人間の幸福」という観点で考えると、インターネットは自分に都合の いい情報だけを見せるアーキテクチャになるというか、そっちの方向に進化す るんだろうなと。ツイッターなんかもそうでしょうね。それが最終的になにを もたらすかといえば、自分しかいない世界ですよね。自分と、自分に都合のい い他人しかいない世界。ただ、その未来はあまりにもSF的なディストピアな世 界だと思うので、理想としてではなく予想として言うんですけどね。 津田:表面的にはみんな幸せそうに見えるんだけど、じつはガチガチの監視社 会だという……。もしくは旧エヴァンゲリオンのエンディング的な世界。 川上:あと、インターネットの集合知的な観点でいうと、「ネットを使った直 接民主主義」を目指そうとする流れもあるじゃないですか。でも、そういうか たちでみんなで相談して決める集合知って、決して頭の良いものにはならない んですよ。実際には情報を局地化してサイクルを回したほうが高度な論理を操 れる。一方、みんなの意見を合わせて「こういうときはこうしたら良いよね」 としていくと、一見は矛盾してなさそうなんだけど、実際には矛盾に満ちた決 まりごとのセットみたいなものができてしまうと思うんです。それってつまり アルゴリズムですよ。 津田:僕も集合知については『ウェブで政治を動かす!』[*11] などで書いて いますが、集合知で動かす政治の向かう先は、川上さん流に言えば「アルゴリ ズムに支配された世の中」だと。 川上:はい。しかも、大衆はそれを望んでいるんだと思うんです。僕はイヤで すけどね。そんなのよりは、理不尽な独裁者でもなんでもいいんですけど、め ちゃくちゃな施政でめちゃくちゃな世の中になるほうがマシだというか。でも、 多くの人はそんなふうに考えない。 津田:川上さんの問題意識はとてもよくわかります。でも、「局地化された高 度な論理」と「集合知」の中間を取ることはできませんか? たしかに僕はみん なの意見を政治に集約したほうがいいと考えていますけど、それは限定的であ るべきだと思っていて。たとえばこれまでは官僚や有識者といった高度な知識 をもつ人たちが議論してできた法案が国会に送られ、そこで国会議員がバグ取 りのような調整をしてきたわけですよね。そのバグ取りを政治家じゃなくて、 ネットを使った集合知に委ねる。そうすると国民もわかりやすく政治に参加で きるので、政治への関心も高まるのかなと思うんですけど。 川上:うーん、どうでしょう。じゃあ、米国の大統領選を例にしてみましょう か。ネットなどで話題になった噂を信じると、2012年の大統領選を戦ったオバ マ大統領陣営のネット対策が非常に優れていたということですよね [*12] 。各 選挙区ことにどういうスタンスの発言をすれば一番票が伸びるか、だれが有権 者にメールを送れば献金してもらいやすいかといったことを計算して [*13] 、 きめ細かな選挙戦を戦ったと言われている。 津田:まさに「アルゴリズム選挙」ですね。 川上:そう。民意をパラメーターとしてアルゴリズムで決めているわけです。 そんなシステムの政治における議員の役割はなんなのかというと、「ごまかし」 ですよね。国民を代表する政治家の参加が、みんなの意見が政治に取り入れら れているかのように見せるための儀式にしかならない。そんな時代がやってく るかもしれない――というか、いまもすでにそんなところがあるじゃないです か。 津田:たしかにそうかもしれません。 川上:政治家は政策なんて全然決めていないんですから。彼らが政策をつくっ ているという”幻想”のもとに権力争いやパワーゲームが展開されるのがいま の政治だと思うんですけど、それがどんどん進んでいくんじゃないですかね。 そうしたら結果として、先ほど津田さんが言っていたような「みんなの政治参 加」というのはアーキテクチャ的につくられた擬似参加にはなっても、本当の 意味で参加することにはならないだろうなと思うんです。 ◇人類の終わりの始まり 津田:なるほどね……。ただ、そうするとわからないのは、川上さんがどうい う考えでニコ生の政治系番組を運営しているのかということです。ニコ生には ニコ論壇 [*14] ができて、ある時期から意識的に政治系の番組を増やしてきま したし、ユーザーからの人気も集めてきた。あそこに視聴者がコメントを書い たりアンケートをとったりしてみんなの意見が集約されることで「アルゴリズ ムに支配される」ことを助長させる可能性もあるんじゃないかと。 川上:それはそうでしょうね。ニコ生でどういう発言や行動をすればユーザー がどんな反応をするかというのは、かなりの精度で予想できますから。現状は 運営側がコントロールしようとしていないだけで、それは十分可能だと思いま す。 津田:となると、今後、しっかりしたメディア戦略を立てたPR会社や代理店が 増えてくるであろうなかで、ニコ生の特性を知り尽くした政治家や政党が積極 的にニコ生を使おうとしたときに、運営側はどういう立場を取ることになるん でしょうか。 川上:そこはやっぱり、ガラガラポンしたいですね(笑)。 津田:ちゃぶ台返しをしたいんだ!(笑) 川上:そう簡単にコントロールされてたまるかっていう(笑)。 津田:アルゴリズムを学んできた川上さんだからこそ、アルゴリズムに支配さ れたくないという抵抗感みたいなものが人一倍強いのかもしれないですね。 川上:というか、アルゴリズムに支配されちゃうって、人間という種の終わり だと思うんですよね。たとえば蒸気機関というのは、シリンダにガスを送り込 んで動力をつくっています。そのとき、シリンダの中にある気体分子ひとつひ とつの特性なんていうのはどうでもよくて、外から見るとただのエンジンとし て起動しているわけです。その構造を人間社会に当てはめてしまうと、僕ら一 人ひとりの個性はどうでもよくて、社会を動かすシステムのほうが大事だとい う世の中になってしまう。すでにある部分はそうなっているし、将来的には完 全にそうなるだろうと。それを止めるのはむずかしいし、仕方がないことでは あるんだろうけど、なんとなく感情的に受け入れがたいですよね。 津田:なるほど。だとすると川上さんは、グーグルの「世界中のありとあらゆ る情報を整理し尽くす」みたいな世界政府的な価値観には否定的なんですね。 川上:否定的ですよ。さっきも言ったように、人類の歴史の終わりの始まりだ と思ってますから。おそらく、遠い未来に歴史を振り返ったとき、グーグル的 な価値観の出現がターニングポイントだったなって言われる時代が来るんじゃ ないかな。 ◇身近な人たちを幸せにしたい 津田:じゃあ、ニコニコはそれに対して小さな抵抗をしている部分もあると。 川上:とりあえずそういうスタンスを取っておこうかなとは思っています。た だ、それになんの意味があるんだとか、いろいろ考えるところはありますけど ね。僕の予想は結構いい線いってると思うんですけど、いまの世の中にそんな 価値観はないというか、まだみんな気づいていないじゃないですか。そこに対 する抵抗ですよね。みんなが「そうなっていくのは当たり前じゃん」って言い 始めたら、僕は抵抗することすらやめるかもしれない。 津田:まぁ、「人類の未来は」とか「生きる意味」とか、そんなことを常日頃 から考えている人は少ないでしょうからね。たぶん大多数の人は日々生きてい くのに精一杯で、政治にすら興味がないのが現実なわけで。 川上:残念ながらそうなんですよね。実際、ニーチェ [*15] にしてもマルクス [*16] にしても、19世紀とか20世紀の人のほうが「人間とは」「人生とは」み たいなことを考えていたと思うんです。彼らの予言は結構当たっていて、僕ら は彼らが予言した時代に生きているから……。 津田:人生の矛盾や葛藤を前提として受け入れてしまっているんですよね。た だ、そうなると、そろそろ「見たいものしか見なくなる」「アルゴリズムで支 配されている」ような高度情報化社会のなかで生きていくための新しい哲学が 生まれてもいいタイミングだと思うんです。「アルゴリズムに支配されないた めの自己とは!」みたいな。 川上:うーん……。そうかもしれないけれど、僕は旧世代の人間なので(笑)。 津田:旧世代側に立ちたいと(笑)。 川上:いまのグーグル的な価値観ってまだ底が浅いと思うので、人間はそんな に簡単に負けないぞと言いたい。 津田:インターネットは世界に多様性をもたらしたと思われています。しかし、 あまりにも情報が整理されすぎていることで逆に多様性を失いつつある──そ れがいまのわれわれの社会が抱くべき危機意識なんですかね。 川上:そういった意識が逆バネになってくれるので、いずれにせよ仮のスタン スとしてもつのは全然アリだと思いますけど。 津田:いやー今日はいろいろ刺激的な話が伺えてとても楽しいです。それにし ても川上さんが人類の未来へ警笛を鳴らしたり、IT企業の会長なのにグーグル 的な価値観に抵抗しているのは意外でした。そういう思いはどこからくるんで すか? 川上:それは単純な話で、たとえば、世界のどこかの国で飢えて死ぬ子どもた ちがいるとして、そういった現実に対する僕のスタンスは「知ったこっちゃな い」なんですね。だって、その子たちのこと知らないもん。それをどうにかし ろといわれても困ってしまうのですが、自分の周りの人たちにはやっぱり幸せ になってほしい。身近なところからもう少し範囲を広げると、同じ国に住む日 本人にも幸せになってもらいたいですよね。逆に言えば、自分の知っている範 囲の人たちが不幸になればいいって思う動機がないというか。 津田:あ、それは僕もよくわかります。僕も自分の知っている人たちには絶対 に幸せになってほしい。彼らにとっての「幸せ」とはお金だったり自己承認だっ たり人それぞれなんでしょうけど、ネットを通せば結構な数の人にそれを分配 できるんじゃないかと思うんです。僕ひとりがカバーできるのは100人、1000人、 数万人単位が限界だとしても、僕の周りで幸せになってくれた人たちが同じよ うな役割を果たしてくれれば、幸せの総量は増えていきますよね。そんなふう にネットを活用できればいいなと。 ◇津田大介はカルトを目指すべき? 川上:津田さんらしい考え方ですよね。じつは僕、最近津田さんについて人と 話すことが多いんですけど、そのなかで「なるほど!」と思ったことがあるん ですよ。それはどういうことかというと、津田さんは政治的な信条とか、政治 そのものにはあまり興味がないでしょ? 津田:うーん……ないかもしれないですね。 川上:やっぱり(笑)。津田さんは「ウェブを使って人を動かす」というアー キテクチャやプロセスに興味があるだけで、内容自体には興味ないんじゃない かというようなことを言っている人が何人かいて、妙に納得したんですよ。で、 そのあと津田さんから献本いただいた『動員の革命』[*17] とか『ウェブで政 治を動かす!』のタイトルだけ見て、確信するようになったんです(笑)。 津田:そこはちゃんと本の中身を読んでくださいよ(笑)。 川上:いやいや、きちんと本を読んでいるであろう人がそういうことを言って たから、僕の想像は当たっていたのかなと。そこを本人に確認したかったんで す。 津田:そうですね……。確かにその見立ては大筋では正しいと思うんですけど、 政治そのものへの興味もたぶん3割くらいはあるんですよ。父親が活動家で政治 家の秘書をやっていたという血筋的な意味も含めて。 川上:3割くらい(笑)。 津田:ただ、残りの7割くらいはやっぱり人や世の中が動くダイナミズムみたい なものだったり、なんで人が動くんだろう、ということへの興味なんですよね。 自分の一生の仕事になるだろうなと思っているのはメディアなんですけど、僕、 原稿を書いていて楽しいと思ったことが一度もないんですよ。本当につらくて たまらなくて、いつも「俺、なんでこんな仕事やってるんだろう」と思うくら い。でも、その原稿が本になってAmazonでいっぱい売れていたり、読者さんが ツイッターで感想寄せてくれたりするのを見ると、「やってよかったな」とし みじみ感じるんです。その瞬間が一番楽しいので、自分の発信したものが伝わっ ていったり、それで盛り上がったりしているのを感じたくてこの仕事選んだん だろうなと。そういう意味では、ミュージシャンとかニコ動の歌い手さんのこ とがめちゃくちゃうらましいんです。ミュージシャンは音楽アルバムを、ニコ 動の歌い手さんは動画でコンテンツをつくって、それらが消費される。そこま では僕も一緒なんですよ。本をつくってるわけですから僕も一応はクリエイター なんです。でも、作品までは作れるけど、彼らと違って「ライブ」ができない んですよね。だから、ライブで歌ったり、ギター弾いたら観客がすごく熱狂し てくれるのがすごく良いなぁって。 川上:すごくわかります。ああいうのは本当にうらやましいですよね。 津田:それは有名なミュージシャンとか歌い手さんしか得られない最高の快楽 で、物書きやジャーナリストは絶対に経験することができない。ただ、疑似体 験としては、本を出したときにツイッターなんかで盛り上がって、みんながわーっ て騒いでくれるのがちょっとライブに近いんじゃないかと。 川上:ツイッターなんて特に、リアルタイム感がありますもんね。 津田:ニコ生もそうで、盛り上がってきてコメントがぶわーっと弾幕になった りしたときに、ミュージシャンの気持ち――快楽をちょっとは体験できてるか なという瞬間があって。まぁ、僕は書くのが好きじゃないし、川上さんと同じ であんまり働きたくはないので、とにかくメディアを運営したいですよね。人 になんらかの手段で感情や情報を伝えることで、人々が動き出してくれればう れしい。とはいえ、「こうしろ、ああしろ」って自分の意見を押しつけるつも りはまったくなくて、「情報をこういうふうに使うとこう動けるんだ」みたい なヒントを得た人が自分で動いていくと面白いことが起きるんじゃないかなっ て。いまはそのための種まきをしている段階ですね。 川上:じゃあ、残りの3割は? 政治的信条の部分。 津田:自分の政治的な信条はどちらかといえばリベラルですよね。お金を稼げ る人たちがたくさん稼いで、それができない困っている人たちに再分配すれば 良い、みたいな考えが根底にあることは否定しません。ただ、だからといって リベラル政党だけを支持しているのかといえばちょっと違って、自民党にも共 産党にも民主党にも思想に共感できる議員はいるし、そうでない議員もいる。 そういうものをうまく選り分けていけばいいのかなと。 川上:いま聞いた話だと、津田さんは「ウェブで人を動かす」という方法論や アーキテクチャに興味があるというよりは、そういうものに関わることによっ て自分が世の中を動かしている感覚とかのほうがポイントになっているのかな という気もしました。もしかして当たってる? 津田:うーん、どうなんでしょう……。たぶんそうじゃないと思うんですよね。 自分が読売新聞グループの渡邉恒雄会長みたいになりたいかって聞かれると、 それは違いますし。自分が中心になって世の中を動かしたい、みたいな願望は ないんですよ。『ウェブで政治を動かす!』という本も、僕やウェブが政治を 動かすのではなく、みんなが――国民一人ひとりが政治を動かすための方法論 を書いたつもりなので。まぁ、集合知みたいな政治参加のシステムに関しては、 川上さんと僕で意見は違うと思うんですけれど、それぞれが動かせば良いんじゃ ないのっていう考え方ですね。 川上:僕はいまの津田さんなら動かせると思うけどなぁ。というのも僕の親戚 にかつての大蔵省の結構いいポジションまで上りつめた人がいて、「大蔵省の なかで自分が決めた大きな仕事はある?」って聞いたことがあるんです。そし たら、そういうのにポジションは関係ないらしいんですよね。「この役職に就 いたら世の中を変えられる」みたいなことは、実際には官僚のトップになった としてもあまりないんだと。むしろ、ポイントポイントで「いまこの瞬間、自 分がボールをもっているな」と感じる瞬間がくるんだそうですよ。それをちゃ んと自覚して、しかるべき役割を果たしたときに世の中を動かせるんだという ようなことを言っていて。そういう意味では、津田さんっていまのネットの言 論社会において、ある種のボールをもっている人だなという気がするんですよ ね。 津田:ああ、そうなんですかね。自分ではそういうことはあまり意識してない ですけどね。僕自身は、これから自分で政治メディアをつくろうと思っていま す。インターネットを使って、政治と国民の距離を縮められるようなサービス。 だから今日の川上さんの話はいろいろ参考になりました。 川上:いや、そういうのじゃなくて、津田さんはもっとカルト的な方向に行っ てくださいよ(笑)。そういう津田さんも見てみたい(笑)。 津田:まぁ、たぶんそっちに行こうと思えば行けるでしょうからね……。選択 肢として取りえるだろうなってことを客観的に認識はしてます。 川上:「橋下はダメだ!!!!!!」とか、そんな感じのことやってほしいで すね(笑)。 ▼川上量生(かわかみ・のぶお) 1968年、愛媛県生まれ。京都大学工学部卒業後、ソフトウエア総合商社を経て、 1997年、オンラインゲーム専門のゲーム会社としてドワンゴを創業。その後、 着メロなど携帯電話関連事業に進出し、2006年からはニコニコ動画をスタート させる。2011年1月にはスタジオジブリに入社し、プロデューサー見習いとして 鈴木敏夫氏に師事している。 [*1] http://www.historychannel.co.jp/detail.php?p_id=00557 [*2] http://info.dwango.co.jp/ [*3] http://www.nicovideo.jp/ [*4] http://ch.nicovideo.jp/portal/blomaga [*5] http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1211/26/news083.html [*6] http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1211/27/news027.html [*7] http://pc.dwango.jp/ [*8] http://www.ghibli.jp/ [*9] http://www.yomiuri.co.jp/entertainment/ghibli/cnt_kokurikozaka_minarai.htm [*10] 「ニコニコ超会議2」は2013年4月27日・28日の2日間にわたって幕張メッ セで開催され、リアルの来場者数10万3561人、ネット来場者数509万4944人を記 録した。 http://www.chokaigi.jp/ [*11] http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4022734779/tsudamag-22 [*12] http://www.asahi.com/politics/update/0606/TKY201306060374.html オバマ大統領の大統領選でのデータ戦略については、本メルマガvol.54のニュー スピックアップExpanded「なぜ今、「データジャーナリズム」なのか?」に詳 しい。 公開記事 http://tsuda.ru/tsudamag/2013/01/1693/ [*13] http://megumisasaki.com/?p=446 [*14] http://ch.nicovideo.jp/ch2323 [*15] http://kotobank.jp/word/%E3%83%95%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%89%E3%83%AA%E3%83%92%E3%83%BB%E3%83%8B%E3%83%BC%E3%83%81%E3%82%A7 [*16] http://kotobank.jp/word/%E3%83%9E%E3%83%AB%E3%82%AF%E3%82%B9 [*17] http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4121504151/tsudamag-22
津田大介の「メディアの現場」
テレビ、ラジオ、Twitter、ニコニコ生放送、Ustream……。マスメディアからソーシャルメディアまで、新旧両メディアで縦横無尽に活動するジャーナリスト/メディア・アクティビストの津田大介が、日々の取材活動を通じて見えてきた「現実の問題点」や、激変する「メディアの現場」を多角的な視点でレポートします。津田大介が現在構想している「政策にフォーカスした新しい政治ネットメディア」の制作過程なども随時お伝えしていく予定です。