些々暮さん のコメント
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少年は寂しかった。
何故ならば、彼に兄弟はいなかったし、学校の友人が放課後グラウンドを駆けずり回る頃、彼は一人お受験の為に駅の向こう側にある塾に通わなければならなかったからである。彼は両親からそこそこの期待を寄せられているのを敏感に感じとりはしたが、いつしかそれはしがらみとなって彼をそこそこ苦しめた。勉強は嫌いではなかったが、それでも友達との時間は何ものにも変え難かったのだ。彼は幼いながらも、友人関係においてその繋がりを強固なものとする方法の一つは何事かを共有することだと知っていたし、何よりそうして共有したものには鮮度があり、また足が早いということに焦りもした。
塾から帰る頃には日が沈み、町はその姿を変えて待ち構えている。塾のある路地には妖しげなドレスを身に纏った女性が立ち並んでいて、少年は何だか目のやり場に困って顔を伏せ、地面にこびりついたガムを数えて歩いたものだった。
路地を抜けると駅
私は圧倒的後者だ。
小説よりも詩を書くことの方が多いが、二十歳くらいまでは自分の過去の恋愛体験を洗いざらい作品にしていた。
二十歳を過ぎた頃からはフィクションとノンフィクションを織り交ぜた作品を書いたが、昨年までの影響か、同級生たちには全て私の実体験のように思われてしまった。
自分の人生を作品にすることが出来る豊かな想像力は今はもうほとんどない。
思いついてもそれは爆発的でもはや狂気に近い愛情やそれに伴う嫉妬くらい。
あんなに純真無垢だった私はどこにいったのだろうと自分でも分からなくなる。
二十一歳のある日、私はこれまでの人生で経験したことのないほどの鮮烈な恋をした。そしてそれは私の創作活動へ大きな影響をもたらす。
「芸術家は愛を知ると死ぬ」
私は詩が書けなくなった。
いや、書けるのだがどれもありきたりで熱意のないただの文字の羅列。
誰にでも書ける詩に成り果ててしまったのだ。
この恋を知り私は大人になったが今までのとは違う辛いだけではないこの甘い身の疼きと熱に脳内は侵され、ただの惚気ポエマーへと堕落した。
あれは私の人生最大の汚点だ。
愛を知ることは人間としてとても満たされるが、創作者としてはまるで羽のない天使、牙の抜けたライオン同然だった。
そんな私がまた、様々な感情を抱えて新しい詩を書けるようになったのは…また、別のお話。
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