どうも、執事です。



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【実録!怖い話特集2016】で公開になりました、
アンダーバー国王が体験した不思議な話。


今回は、こちらの後日談を国王に語って頂きましたので、
皆様にお届けさせて頂きたいと思います。



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とある夏の日の出来事ー。


バイトが終わり、疲れた身体で少し遠回りをしながら家に帰ってきた。


気づけば深夜0時も近づいてきている。
早いところ部屋でゆっくりしたいものだ。

玄関の扉を開け、ただいま、と声に出す。
しかし、返事はない。
もう家族は寝てしまったのだろうか。

リビングへ行き誰かいるのか確認する。
誰もいない。

親の寝室へ行ってみる。
それでも誰もいない。


妙に変だなぁ。


そういえば、父親は飲み会で遅くなると言っていたような気がする。
母親はどこにいったんだろうか。
少し疑問に思う。

まあ近くのコンビニに買い物でも行ったのかもしれない。

よくある事だと思い、深くは考えず、自分の部屋へと行った。
しかし、それから1時間が経ち、深夜1時になろうとしても、母親は帰って来なかった。

(おかしいなぁ。こんな時間まで何をやっているんだろう。)

疑問と不安が更に強まっていく。

さすがに夜も遅い。
一度連絡をしてみようか。

僕は自分の携帯を取り出し、母親に連絡をしようとした。
その瞬間。

ガチャ

玄関の扉が開く音がした。
誰か帰ってきた。
自分の部屋を出て廊下を確認すると、母親がやってきた。

「こんな時間までどこ行ってたの?」と聞くと、
「ちょっとね」と言って寝室に行ってしまった。

こんな時間にもなれば流石に眠くもなる。

結局、何処に行っていたのか分からぬまま、母親は眠ってしまった。

まあ無事に帰って来たのだから、特に気にする事ではないだろう。

僕も早く寝る準備をしよう。

そのままお風呂を済ませると、乾いた喉を潤してから寝ようと思った。
何か飲み物を飲もうとリビングへ向かう途中、玄関の前を通った。

すると

ガタッ

何か音がした。なんだろう。
周りをゆっくりと見渡す。

玄関の明かりはついておらず、
月明かりが扉越しに薄っすら入る程度だった。

その微かな明かりに照らされ、"何か"がいるのに気がついた。
なんだろう…。
暗くてあまりよくわからない。

僕は暗さに目が慣れるまで息を殺し、
音を立てずに、じっとその"何か"を見ていた。

すると、その"何か"が急に

ウウゥウゥゥウゥうぅううウゥ

と呻き声に近い音を発した。
その瞬間一気に場の空気が変わった。
わからない。暗くて何も見えない。まだ暗さに目も慣れない。
あまりの恐怖に足が全く動かなくなってしまった。
するとその"何か"は少しずつ、

這いずるように僕の方へと近づいてきた。



ウウゥウゥゥウゥうぅううウゥ


どんどんと近づいてくる。
怖い、一体なんなんだ。
その"何か"が近づき、少しずつ目も慣れ、僕はその"何か"が、何なのかわかってしまった。
そこにいたのは、髪の長い女だった。



しかし、それがわかった所で何も出来ない。
母親を呼びたくても、あまりの恐怖に声が出なかった。

どうしたらいいんだ。
父親がこのタイミングで帰ってこないだろうか。
そう願う事しか出来なかった。
しかし、悠長に考えている時間もなかった。


ガッ

その女がついに僕の足元までたどり着き、僕の足首を掴んだ。
もうお終いだ。
僕はもう諦めてしまっていた。

足も動かず、声も出ず、ただ祈る事しか出来なかった。
しかし、その祈りすらも届かなかった。
僕は恐怖に包まれ、全力で目を瞑った。
するとその女が呟いた


ミズ…ミズ…


あぁ、この人は火事か何かで亡くなられた方なのかもしれない。
一体母親は何処でこんな霊を連れてきたのだろうか。
その女は繰り返す。


ミズ…ミズ…


あまりの熱さに水が欲しかったんだろう。
その無念さを考えると、心が痛くなる。
しかし、僕に出来ることは何もない。
どうか安らかに成仏してほしい。


ミズ…モッテキテ…


少し違う言葉を発した。
僕に助けを求めている。

水を持って来ればいいのかな。
もしかしたら、僕にも何か出来ることがあるのかもしれない。

この幽霊を助けなければならないと気持ちが強くなった瞬間、恐怖は消え足を動かす事が出来た。
僕は急いでコップに水を入れ玄関に持っていった。

そして、そのコップをその女の近くへとおく。
これで成仏出来るのかな。
僕でも力になれたのかな。

すると、その女はコップを手に取り、ガブガブと飲み始めた。


妙に変だなぁ。


まあでも最近の幽霊はコップぐらい触れるのかなぁ。
水を飲み終えた女は

アリガトウ…

と言って立ち上がり、ゆっくりと姉の部屋へと帰っていった。
無事成仏出来たのかな。
少し心配にはなったものの、なんとか幽霊を追い払う事が出来た。


お風呂で火照った身体もすっかり冷めてしまった。
一杯の水と、念のため塩を舐めて、僕は眠りにつくことにした。


あれから母親に何処にいったのか聞いてみたら、
飲みすぎて酔っ払った姉を車で迎えに行っていたそうだ。
しかし、その道中、火事があった現場を通った記憶はないそうだ。


だとしたら、あの女の幽霊一体なんだったのだろう。
今でもそれはわかっていません。


もしかしたら、まだ成仏せずに、この世の何処かを彷徨っているのかもしれません…。