ロバを売りに行く親子
♀母親(人の言う事を鵜呑みにして振り回される)
♂子供(ナレーションを担う)
♀村人(ロバを歩かせている事を馬鹿にする)
♀友人(子供を甘やかせてると憤る)
♀牛飼(子供虐待だと騒ぐ)
♂牧師(ロバが苦しそうだと非難する)
♀村の子供(豚の丸焼きの様だと愛護する)
♀恰幅の良い女性(大都会げ売った方が金になる)
♂商人(だったら、俺が買い取ろう)
子供「ある日ママと二人で、このロバを売りに行った日のことです。 家を出て早々、近所のおばさんに会いました」
村人「あなた達、おばかさんなのかな? ロバを引いて、お散歩? 犬じゃないのよ? ロバに乗れば良いじゃない」
母親「それもそうね♪ さ、あなたが乗りなさい♪」
子供「うん♪」
子供「確かに、普段も重い荷物を持ってくれるロバなんだから、 僕が乗っても大丈夫だよね♪」
子供「しばらく行って、町外れの畑で、 お母さんのお友達がせっせと野良仕事をしていました」
母親「畑仕事、御苦労さまですー。 精が出ますね」
友人「んにゃ、なんてことねーよ。 そんなことより、なんでガキなんかがロバに乗って楽してるんだい? 母親歩かせて、随分な御身分だなぁ、おい。 お前は降りて歩け歩け! そして、母親孝行でもしてやるんだな。 まったく。もやしっこになっちまうぞ?」
子供「ごめんなさい。 お母さま、どうぞ乗って下さい」
母親「ありがとうね。 なんて素晴らしい子供なのかしら♪」
友人「おまえが甘やかせすぎなんだよ。 子供のうちに苦労を覚えさせておかなきゃ、ろくな大人になんねーよ」
子供「いつも思うけれど、このおばさんはなんて口が悪いんだろう? 煙草も吸ってるし。 それよりも、楽チンだったのになぁ……」
子供「ちょっとふてくされながら歩いていたら、牛をつれたおばちゃんが現れた」
牛飼「あらまーあんた! 親失格ね! 子供だけ歩かせるだなんてー!!」
母親「いや、さっき、子供は苦労さs―」
牛飼「親子二人で乗れば良いじゃないの! スキンシップにもなって教育的にも良いわ」
子供「……Yes!」
母親「そう、ね。 確かに、二人で一緒に乗れば良いのね。 そうしたら二人とも楽だし♪」
牛飼「そうでしょ?そうしなさいよ」
子供「ナイスだよ、牛飼いのおばちゃん! 楽チンになる♪ ……もう隣町まで近いのかな?」
子供「隣町に入って、教会の前を通りかかったところで、 牧師さんが出てきたんだ」
牧師「もし、そこの人。 ロバを虐待してるなんて感心しないですね。 よく見てみなさい、ロバが疲れているではないですか。 今まで酷使してきたのでしょう? 労わってあげなさい」
母親「そう……ですね。 売る前に弱りきっては見栄えも悪くなってしまうでしょうし。 でも……どうしたら良いんでしょうかねぇ」
牧師「じゃあ、担いだらどうです?」
子供「は? 何言ってるの、この人!」
牧師「この棒を差し上げましょう」
母親「感謝します。 では……」
SE シュルシュル
子供「ちょっと! 足を縛って……吊るすの?」
子供「吃驚だ。 何が吃驚って、これを本当に担ぐの? 僕とお母さんで? お母さんは馬鹿なの?」
子供「(ヘトヘトで息絶え絶え)本気、だったなんて、信じ、られない……」
女児「あらあら! 豚の丸焼きかと思ったら、ロバなの? それ、ロバなの?」
子供「ですよね! 豚の丸焼きかと思いますよね!」
母親「えぇ、ロバです。 酷使して疲れていたので、担いであげたのです。 なにせ売ろうとしてるのに、 酷使して見栄えが悪くなったら買いたたかれてしまいますから」
女児「おばさん知らないの? 馬もだけど、ロバは普通に歩いている方が疲れないのよ?
母親「そうなの? ありがとうね。 おばさん知らなかったわ」
子供「物知りなんだね! ねぇ、僕と結婚しようよ!」
女児「ロバを吊るしちゃうような人は、お断りだわ」
子供「いや、僕もおかしいと思ったよ! お母さんがこんな馬鹿だと思わなかったもん!」
母親「え! お母さんが馬鹿ですって」
子供二人「馬鹿です(ね)」
母親「お母さん、ショック!」
子供「この人が本当に自分の母親なのか、自信を無くしました」
子供「自分ももしかしたらこのお馬鹿な血を受け継いでいるのではないかと 不安になっていると、恰幅の良いおばさんが言いました」
デブ「あなた達、おばかさんなのかな? ロバに乗れば良いじゃない」
子供「聞き覚えあるなぁ……」
母親「ロバに乗ったら疲れてしまうでしょうが! こいつは売り物なんですよー! 判りますかー? より良い条件で売れるように、 乗らずに一番楽で歩かさせてるんですよー!」
子供「お母さん、どうどう」
母親「フゥー」
デブ「その……御免なさいね。 おせっかいをしてしまったみたいで……」
母親「私の方こそ初対面なのに見苦しい姿を見せてしまいまして、 申し訳ありません」
デブ「じゃあ、そこの市場で売るためにこの町にいらっしゃったの?」
母親「はい。 隣の村から来ました」
デブ「あらまぁ。 だったら、もうちょっと頑張ってお城の方を目指したら? 城下町の市場ならもっと高く売れるんじゃないかしら?」
母親「それもそうね!」
子供「旅の延長が決まったようです」
子供「街を出ようかと関門で並んでいたら、 いかにもな商人のおっさんが声をかけてきたんです」
商人「失礼ですが、あなた達は馬鹿でいらっしゃいますか? ロバに乗らないなんて」
子供「あーもう、けっこうです。 その雑な振りは」
母親「このロバを城下町で売ろうとしてて、 疲れさせないために乗らずに 荷物も最低限しか渡さずに歩かせてるんです」
商人「なるほど。 たしかに健康そうな良いロバですね。 あなた達二人を乗せて歩けるくらいに」
母親「えぇ、実際に歩いていたわ」
商人「たしかにこれほどであれば、城下町で売った方が高くつく。 しかし、そこには一つ問題があります」
母親「なんですか?問題って」
商人「村を一つ二つ渡るのと違って、城下町まで旅をしなくてはならない。 そこには路銀が発生する。 今あなたは充分な路銀を支度していますか?」
母親「え?」
子供「宿は無くても良いけれど、ご飯は買って食べないと駄目だよね……」
商人「随分と賢いお子さんですね。 その通りです。 外に居ると言う事はお金がかかるのです。 そこで商談なのですが」
母親「商談、ですか?」
商人「今あなた達に起きうるリスクがいくつかあります。 路銀が尽きる。 ロバが不慮の事故で死ぬ。 死ななくても病気になったり、充分な食事が取れずに 価値が下がってしまう可能性がいくつもありますよね。 であれば、この私に譲りませんか? 城下町での価格でとは行きませんが、 リスクヘッジとしてありだと思うんです」
母親「御免なさい。ちょっと言っていることが」
商人「つまり、城下町に売りに行くとなると、お金がかかって、 ココに戻ってくるときには もしかしたら無一文になってしまうかもしれないから、 今、私に売っては如何ですか? と言うことです」
母親「親切なのですね……解りました、それで手を打ちましょう。 確かに、道中で価値が下がったら無駄足になりますものね」
商人「お母様も息子さんと同じように、頭が良いのですね」
母子「そんなことないです(母は喜び、子は呆れて)」
商人「では、金額は……
子供「僕としては随分と買いたたかれたように思う。 商人の人曰く、リスクヘッジを考えれば妥当だと言うけれど。 とりあえず、僕の収穫はお母さんが馬鹿だったと言う事かな。 おしまい」
♀母親(人の言う事を鵜呑みにして振り回される)
♂子供(ナレーションを担う)
♀村人(ロバを歩かせている事を馬鹿にする)
♀友人(子供を甘やかせてると憤る)
♀牛飼(子供虐待だと騒ぐ)
♂牧師(ロバが苦しそうだと非難する)
♀村の子供(豚の丸焼きの様だと愛護する)
♀恰幅の良い女性(大都会げ売った方が金になる)
♂商人(だったら、俺が買い取ろう)
子供「ある日ママと二人で、このロバを売りに行った日のことです。 家を出て早々、近所のおばさんに会いました」
村人「あなた達、おばかさんなのかな? ロバを引いて、お散歩? 犬じゃないのよ? ロバに乗れば良いじゃない」
母親「それもそうね♪ さ、あなたが乗りなさい♪」
子供「うん♪」
子供「確かに、普段も重い荷物を持ってくれるロバなんだから、 僕が乗っても大丈夫だよね♪」
子供「しばらく行って、町外れの畑で、 お母さんのお友達がせっせと野良仕事をしていました」
母親「畑仕事、御苦労さまですー。 精が出ますね」
友人「んにゃ、なんてことねーよ。 そんなことより、なんでガキなんかがロバに乗って楽してるんだい? 母親歩かせて、随分な御身分だなぁ、おい。 お前は降りて歩け歩け! そして、母親孝行でもしてやるんだな。 まったく。もやしっこになっちまうぞ?」
子供「ごめんなさい。 お母さま、どうぞ乗って下さい」
母親「ありがとうね。 なんて素晴らしい子供なのかしら♪」
友人「おまえが甘やかせすぎなんだよ。 子供のうちに苦労を覚えさせておかなきゃ、ろくな大人になんねーよ」
子供「いつも思うけれど、このおばさんはなんて口が悪いんだろう? 煙草も吸ってるし。 それよりも、楽チンだったのになぁ……」
子供「ちょっとふてくされながら歩いていたら、牛をつれたおばちゃんが現れた」
牛飼「あらまーあんた! 親失格ね! 子供だけ歩かせるだなんてー!!」
母親「いや、さっき、子供は苦労さs―」
牛飼「親子二人で乗れば良いじゃないの! スキンシップにもなって教育的にも良いわ」
子供「……Yes!」
母親「そう、ね。 確かに、二人で一緒に乗れば良いのね。 そうしたら二人とも楽だし♪」
牛飼「そうでしょ?そうしなさいよ」
子供「ナイスだよ、牛飼いのおばちゃん! 楽チンになる♪ ……もう隣町まで近いのかな?」
子供「隣町に入って、教会の前を通りかかったところで、 牧師さんが出てきたんだ」
牧師「もし、そこの人。 ロバを虐待してるなんて感心しないですね。 よく見てみなさい、ロバが疲れているではないですか。 今まで酷使してきたのでしょう? 労わってあげなさい」
母親「そう……ですね。 売る前に弱りきっては見栄えも悪くなってしまうでしょうし。 でも……どうしたら良いんでしょうかねぇ」
牧師「じゃあ、担いだらどうです?」
子供「は? 何言ってるの、この人!」
牧師「この棒を差し上げましょう」
母親「感謝します。 では……」
SE シュルシュル
子供「ちょっと! 足を縛って……吊るすの?」
子供「吃驚だ。 何が吃驚って、これを本当に担ぐの? 僕とお母さんで? お母さんは馬鹿なの?」
子供「(ヘトヘトで息絶え絶え)本気、だったなんて、信じ、られない……」
女児「あらあら! 豚の丸焼きかと思ったら、ロバなの? それ、ロバなの?」
子供「ですよね! 豚の丸焼きかと思いますよね!」
母親「えぇ、ロバです。 酷使して疲れていたので、担いであげたのです。 なにせ売ろうとしてるのに、 酷使して見栄えが悪くなったら買いたたかれてしまいますから」
女児「おばさん知らないの? 馬もだけど、ロバは普通に歩いている方が疲れないのよ?
母親「そうなの? ありがとうね。 おばさん知らなかったわ」
子供「物知りなんだね! ねぇ、僕と結婚しようよ!」
女児「ロバを吊るしちゃうような人は、お断りだわ」
子供「いや、僕もおかしいと思ったよ! お母さんがこんな馬鹿だと思わなかったもん!」
母親「え! お母さんが馬鹿ですって」
子供二人「馬鹿です(ね)」
母親「お母さん、ショック!」
子供「この人が本当に自分の母親なのか、自信を無くしました」
子供「自分ももしかしたらこのお馬鹿な血を受け継いでいるのではないかと 不安になっていると、恰幅の良いおばさんが言いました」
デブ「あなた達、おばかさんなのかな? ロバに乗れば良いじゃない」
子供「聞き覚えあるなぁ……」
母親「ロバに乗ったら疲れてしまうでしょうが! こいつは売り物なんですよー! 判りますかー? より良い条件で売れるように、 乗らずに一番楽で歩かさせてるんですよー!」
子供「お母さん、どうどう」
母親「フゥー」
デブ「その……御免なさいね。 おせっかいをしてしまったみたいで……」
母親「私の方こそ初対面なのに見苦しい姿を見せてしまいまして、 申し訳ありません」
デブ「じゃあ、そこの市場で売るためにこの町にいらっしゃったの?」
母親「はい。 隣の村から来ました」
デブ「あらまぁ。 だったら、もうちょっと頑張ってお城の方を目指したら? 城下町の市場ならもっと高く売れるんじゃないかしら?」
母親「それもそうね!」
子供「旅の延長が決まったようです」
子供「街を出ようかと関門で並んでいたら、 いかにもな商人のおっさんが声をかけてきたんです」
商人「失礼ですが、あなた達は馬鹿でいらっしゃいますか? ロバに乗らないなんて」
子供「あーもう、けっこうです。 その雑な振りは」
母親「このロバを城下町で売ろうとしてて、 疲れさせないために乗らずに 荷物も最低限しか渡さずに歩かせてるんです」
商人「なるほど。 たしかに健康そうな良いロバですね。 あなた達二人を乗せて歩けるくらいに」
母親「えぇ、実際に歩いていたわ」
商人「たしかにこれほどであれば、城下町で売った方が高くつく。 しかし、そこには一つ問題があります」
母親「なんですか?問題って」
商人「村を一つ二つ渡るのと違って、城下町まで旅をしなくてはならない。 そこには路銀が発生する。 今あなたは充分な路銀を支度していますか?」
母親「え?」
子供「宿は無くても良いけれど、ご飯は買って食べないと駄目だよね……」
商人「随分と賢いお子さんですね。 その通りです。 外に居ると言う事はお金がかかるのです。 そこで商談なのですが」
母親「商談、ですか?」
商人「今あなた達に起きうるリスクがいくつかあります。 路銀が尽きる。 ロバが不慮の事故で死ぬ。 死ななくても病気になったり、充分な食事が取れずに 価値が下がってしまう可能性がいくつもありますよね。 であれば、この私に譲りませんか? 城下町での価格でとは行きませんが、 リスクヘッジとしてありだと思うんです」
母親「御免なさい。ちょっと言っていることが」
商人「つまり、城下町に売りに行くとなると、お金がかかって、 ココに戻ってくるときには もしかしたら無一文になってしまうかもしれないから、 今、私に売っては如何ですか? と言うことです」
母親「親切なのですね……解りました、それで手を打ちましょう。 確かに、道中で価値が下がったら無駄足になりますものね」
商人「お母様も息子さんと同じように、頭が良いのですね」
母子「そんなことないです(母は喜び、子は呆れて)」
商人「では、金額は……
子供「僕としては随分と買いたたかれたように思う。 商人の人曰く、リスクヘッジを考えれば妥当だと言うけれど。 とりあえず、僕の収穫はお母さんが馬鹿だったと言う事かな。 おしまい」