おやゆび姫
登場キャラ
おやゆび姫
お婆さん おやゆび姫が尊くて尊死しそう
かえる子 ぶちゃいくなかえるの子
さかなA 出身地不明なさかな
モグラ様
魔法使い 魔法使いだけど、別に婆さんではない
かえる母 でっぷりしたカエル
さかなB 素直な軽い少年(?)
野ネズミ 優しいお婆さんネズミ
ツバメ
BG(オープニング)~
お婆さん「ふぅ……もしも願いが叶うならば、子供が欲しかったなぁ…… 一生懸命に生きてきて、気が付いたらこんな老いぼれに…… 趣味の一つも無いと言うのは、酷なものだ」
時間経過
魔法使い「おほほぉ。それで私の所に来たのかい?」
お婆さん「はい。私は本当に心から、小さい子供が欲しいんです。 どこに行けばそんな子が授かるのか、教えて頂けませんか?」
魔法使い「なるほど、なるほど。そんなことは御やすいご用さ」
お婆さん「そうなんですか?」
魔法使い「この大麦の粒を一粒あげよう。 これは、そこらへんの畑に生えたり、にわとりの餌にする大麦とは大違いだよ。 植木鉢に蒔いてごらん。きっと願いはかなうだろうさ」
お婆さん「本当ですか……どうもありがとうございます」
魔法使い「良いってことよ。こんなにお布施もして頂いたしね♪えへへ♪」
BGM~
お婆さん「どれどれ……鉢に蒔いて…… 麦が実ったら、子供を授けてくれる使者でも呼び寄せてくれるのかねぇ?」
SE にょきすく~
お婆さん「おや? 大麦の粒だと聞いていたのだけれど……なんだか、お花の蕾だねぇ。 しかも、これはまた大きい……チューリップみたいな形だ。 これが咲いたら大きく立派で美しい花なんでしょうね」
お婆さん「お? もしかして、花が開こうとしてるのかい?」
SE ポン☆ ~ きらきら♪
お婆さん「おやま!」
おやゆび「ん、んー(背伸び)」
お婆さん「ちょこんと……お人形さんかい?」
おやゆび「おはようございます」
お婆さん「あれま!なんてメンコイ子なんだい!それにしても……ちまいねぇ。 親指くらいの大きさしかないじゃないか」
おやゆび「えっと、あなた、私のお婆ちゃん?」
お婆さん「なんと! ……まるでおもちゃのようだと思ったけれど…… ……これは、胸がキュンキュンするねぇ…… そうだよ、あなたのお婆ちゃんだよ。姫様♪」
外野から、ナレーターを兼ねつつ
魔法使い「ほぉ。小さい女の子になったか。 本当に心の底から小さい子供が欲しかったんだね。 ……ちょっと小さすぎると思うけれど…… そんなお婆さんにとっての大事な大事なお姫様は、 その大きさから『おやゆび姫』と周りから呼ばれるようになったんだ」
BG(日常)~
おやゆび「わぁ♪ これが私のベッド?」
お婆さん「そうだよ。 このくるみの殻、良い形をしてるし、綿を詰めたらかわいいベッドになるでしょ?」
おやゆび「このお花は?」
お婆さん「可愛いベッドだって、お布団が無ければ眠れないでしょ? スミレの花びらを敷き布団のように敷き詰めて、このバラの花びらは掛け布団さ」
おやゆび「かわいいー♪」
お婆さん「(尊い!姫様が私のこさえたベッドに感激してる姿が尊い! あぁ、神様、もう死んでも良いです……なまんだぁ、なまんだぁ……)」
おやゆび「このお皿のプール、入って良いの?」
お婆さん「もちろんだよ。好きな時に使って良いんだよ」
おやゆび「周りにお花がいっぱいあって、まるで夢の世界の湖見たい♪ あ、このお花、もしかしてボート?」
お婆さん「そうだよ。ほら、そこに乗って、これをオールにして漕いだらいい」
おやゆび「あ、動いた♪ お婆ちゃん、ありがとう!」
お婆さん「(尊過ぎて、もう無理!呼吸を止めてしまいそう! 同じ空気を吸っても良いのだろうか? 神よ、お許しください。アーメン!)」
おやゆび「ら~ららら~♪らんらら~♪ ふふ♪ 鳥さんと一緒に歌うの、楽しいわ♪」
お婆さん「うっ!」
おやゆび「おばあちゃん! 大丈夫?」
お婆さん「姫様、ごめんなさい。大丈夫よ」
おやゆび「本当に?」
お婆さん「鳥さんと歌っている姫様が天使すぎて、ちょっと目眩がしただけなの」
おやゆび「お婆ちゃんが心配だから、看病してあげる!」
お婆さん「(姫様、死んじゃいますよ! 私死んじゃいますよ! 尊過ぎて、私、逝っちゃいますよー!)」
BG~FО
かえる母「ゲコ」
BG(ピンチ!)~
かえる母「おや、うちの息子にぴったりの嫁がいた。これは素晴らしい。 頂戴して行こうかね。ゲコ」
SE(鬱そうとした川の音)~
おやゆび「うぅん……(目を覚ます)」
かえる子「ケロ。かあちゃん、僕のお嫁さんが目を覚ますよ」
かえる母「ゲコ! なんだって! 逃げられたら、大変だ。どうしたものか……そうだ。 川の真ん中の大きな水連の葉に乗っけておこう。 こんなにちっぽけな子には、あれだって島みたいなもんさ。 早々逃げ出せまい。ゲコ」
かえる子「ぐへへ……僕のお嫁さんケロ……ぐへへ……」
おやゆび「ん……んん? ……水の、音?」
かえる子「起きたー!お嫁さんが起きたー!」
おやゆび「ヒッ! な、何もの?!」
かえる母「おや? 起きたのかい? ゲコ。よろしくね。 コレは息子です。あんたのお婿さんになるのよ。 二人して、泥の中で楽しくお暮らしなさい」
かえる子「ケロケロ、くえっくえっくえっ♪」
おやゆび「……オェ……うぅ……こんなことって……お嫁さん? ……この人の汚嫁さんになんて……オェ……う……うぅぅ(咽び泣く)」
さかなA「う~ん、でぇれぇべっぴんさんだ」
さかなB「姫さん、このまま不細工なカエルの嫁さんにするのは、駄目な気がする」
さかなA「この水連の茎を食いちぎってしまおう」
さかなB「そうしよう!」
SE ぷちゅぷちゅと食い破る
おやゆび「……うぅ……私、ムリ……せめてイケメンなら……」
SE ちゃぷん
おやゆび「え? あ、あら? 葉っぱが動いてる……船のように、川を流れ始めたわ」
さかなA「今度はあんなブサイクな奴に捕まるなよー」
さかなB「もしもあんたが魚だったら嬉しかったのになー(笑)」
さかな達「達者でなー」
おやゆび「あなた達が助けてくれたのね……ありがとう……」
BG(長旅)~
SE(とうとうと流れる河)~ いつしか森に
おやゆび「(げんなり)……ここは、どこ? 私は、だれ? ……あ、これは……おうち、なのかしら? もし?もし?」
野ネズミ「はいはい? おや、可愛い子だねぇ」
おやゆび「あの……一粒でいいので麦を恵んで下さい……おなかがぺこぺこで……」
野ネズミ「まぁ、かわいそう。さぁさ、あったかい部屋にお入り。 いっしょにご飯を食べましょう」
おやゆび「いいんですか? ありがとうございます!」
野ネズミ「冬の間、うちにいてもかまわないよ。 その代わり、わたしの部屋を綺麗に掃除して、お話を聞かせておくれ。 旅をしてきたんでしょ? わたしはお話が大好きなのよ」
おやゆび「はい!」
BG(お見合い)~
野ネズミ「うちに来てから、本当にしっかりとよく働いてくれたね。 近いうちに、お客さんがみえるよ。お隣さんが一週間に一度たずねて来られるの。 あの人はうちより裕福な暮らしをしておいでなんだよ。 家には大きい部屋がいくつもあるし、 いつもきれいな黒ビロードの毛皮をおめしになっている。 あの方のお嫁さんになれたら、もっと楽に暮らせるだろう。 ただ、あの方は目が見えないのさ…… だから、とびっきり素敵なお話をしておあげなさい」
モグラ様「やぁ、なんて美しい声なんだ。 僕はねぇ、音にはちょっとうるさいのさ。 もちろん生きる為でもあるけれど、音と言うのは耳だけじゃない。 身体や心で楽しむ……そしてなにより、言葉は確かな意思を伝えてくれる……」
おやゆび「そうなんですね♪」
モグラ様「しかし、光。アレは駄目だ。じりじりと照りつけて、土や私達を焼いて行く。 手も届かぬのに暴力だけを振るう」
おやゆび「でも、太陽があるから、綺麗な花が咲くのですよ?」
モグラ様「花? あぁ、あれは全て誘う為のものじゃないか。 形も色も匂いも。娼婦みたいなものさ……実に下衆い」
おやゆび「娼婦?下衆い?」
BGM FO
おやゆび「はぁ…… いくらモグラさんは、広い住まいに住んでいて、教養も深い紳士だって言っても……お日様が苦手で、太陽のように咲いている美しい花が大嫌いだなんて…… ……酷い言いようだし、好きになれないわ……」
BGM~
おやゆび「あら? あ! 鳥さんが倒れてるわ!」
モグラ様「寒さにやられて死んだか。鳥に生まれたなんて、気の毒なもんさ。 鳥ってやつは、ピーチク言うほかはなんの能もない。 冬になりゃ、飢え死にする定めなのさ」
おやゆび「鳥さんの声は美しくないのですか?」
モグラ様「耳触りだね。なにより、何の役にも立たない」
野ネズミ「モグラさんみたいにモノの解った方だからこそ、そうおっしゃられるのですわ。 冬がきたら、ピーチクパーチク鳴いたって何の役に立つでしょう。 飢えて凍えるばかり……そんな暮らしがいいんでしょうかねえ?」
おやゆび「そんな……」
おやゆび「もしかしたら、おばあちゃんちで良い声で歌ってくれた、鳥さんかもしれない。 とっても楽しかった……おうち、帰りたいな……」
おやゆび「さようなら、きれいな鳥さん。さようなら。楽しい歌をありがとう。 生まれ変わっても、またお友達になってね……」
SE トクントクン
おやゆび「あ……生きてる……生きてるわ! そうだ!お日様! お日様の当たるところへ連れて行かなきゃ!」
ツバメ「……あ……りがと……」
おやゆび「頑張って!身体が温まって、寒さに負け無ければ大丈夫よ!」
ツバメ「……ありがとう……きれいな小さいお嬢さん……」
BG(春に向けて)~
ツバメ「ありがとう! もし良かったら一緒に来ない? 背中に乗せてあげる。 緑の森まで飛んで行こうよ」
おやゆび「だとしたら……わたし、お家に帰りたいの……おばあちゃんのお家に……」
ツバメ「おばあちゃんち?」
おやゆび「あなたは、私と一緒に歌を歌った鳥さん……じゃないのね?」
ツバメ「ごめん、きっと違う。でも、僕に似た鳥だったの?」
おやゆび「えぇ」
ツバメ「なるほど…… じゃあ、もっと暖かい季節だったとしたら、ここからもっと北の方かもしれない」
おやゆび「そうしたら、もっと寒いの?」
ツバメ「そう……だね。 僕は死んでしまうかもしれない……」
おやゆび「じゃあもし、暖かい、私のおばあちゃんのお家に居られるとしたら?」
ツバメ「……う~ん…… ……一度は死んだも同然だし……わかった。君のおばあちゃんちへ行こう!」
おやゆび「ほんと!ありがとう!!」
BGM ED~
おやゆび「あ、見えた! たしか、あのお家だと思う!」
ツバメ「寒いー! あ、あのお家で良いのー?」
おやゆび「うん! おばーちゃーん!」
お婆さん「……え? 姫様? ……姫様が、空を飛んでいらっしゃる! 天使だわ! 神様ありがとう! 姫様ー!!」
おやゆび「おばあちゃん!ただいまー!!」
お婆さん「あー、もう無理! 尊い!! 姫様、お帰りなさい! ずっと私のそばに居てー!」
ツバメ「この人間のお婆さん……大丈夫なの?」
END
登場キャラ
おやゆび姫
お婆さん おやゆび姫が尊くて尊死しそう
かえる子 ぶちゃいくなかえるの子
さかなA 出身地不明なさかな
モグラ様
魔法使い 魔法使いだけど、別に婆さんではない
かえる母 でっぷりしたカエル
さかなB 素直な軽い少年(?)
野ネズミ 優しいお婆さんネズミ
ツバメ
BG(オープニング)~
お婆さん「ふぅ……もしも願いが叶うならば、子供が欲しかったなぁ…… 一生懸命に生きてきて、気が付いたらこんな老いぼれに…… 趣味の一つも無いと言うのは、酷なものだ」
時間経過
魔法使い「おほほぉ。それで私の所に来たのかい?」
お婆さん「はい。私は本当に心から、小さい子供が欲しいんです。 どこに行けばそんな子が授かるのか、教えて頂けませんか?」
魔法使い「なるほど、なるほど。そんなことは御やすいご用さ」
お婆さん「そうなんですか?」
魔法使い「この大麦の粒を一粒あげよう。 これは、そこらへんの畑に生えたり、にわとりの餌にする大麦とは大違いだよ。 植木鉢に蒔いてごらん。きっと願いはかなうだろうさ」
お婆さん「本当ですか……どうもありがとうございます」
魔法使い「良いってことよ。こんなにお布施もして頂いたしね♪えへへ♪」
BGM~
お婆さん「どれどれ……鉢に蒔いて…… 麦が実ったら、子供を授けてくれる使者でも呼び寄せてくれるのかねぇ?」
SE にょきすく~
お婆さん「おや? 大麦の粒だと聞いていたのだけれど……なんだか、お花の蕾だねぇ。 しかも、これはまた大きい……チューリップみたいな形だ。 これが咲いたら大きく立派で美しい花なんでしょうね」
お婆さん「お? もしかして、花が開こうとしてるのかい?」
SE ポン☆ ~ きらきら♪
お婆さん「おやま!」
おやゆび「ん、んー(背伸び)」
お婆さん「ちょこんと……お人形さんかい?」
おやゆび「おはようございます」
お婆さん「あれま!なんてメンコイ子なんだい!それにしても……ちまいねぇ。 親指くらいの大きさしかないじゃないか」
おやゆび「えっと、あなた、私のお婆ちゃん?」
お婆さん「なんと! ……まるでおもちゃのようだと思ったけれど…… ……これは、胸がキュンキュンするねぇ…… そうだよ、あなたのお婆ちゃんだよ。姫様♪」
外野から、ナレーターを兼ねつつ
魔法使い「ほぉ。小さい女の子になったか。 本当に心の底から小さい子供が欲しかったんだね。 ……ちょっと小さすぎると思うけれど…… そんなお婆さんにとっての大事な大事なお姫様は、 その大きさから『おやゆび姫』と周りから呼ばれるようになったんだ」
BG(日常)~
おやゆび「わぁ♪ これが私のベッド?」
お婆さん「そうだよ。 このくるみの殻、良い形をしてるし、綿を詰めたらかわいいベッドになるでしょ?」
おやゆび「このお花は?」
お婆さん「可愛いベッドだって、お布団が無ければ眠れないでしょ? スミレの花びらを敷き布団のように敷き詰めて、このバラの花びらは掛け布団さ」
おやゆび「かわいいー♪」
お婆さん「(尊い!姫様が私のこさえたベッドに感激してる姿が尊い! あぁ、神様、もう死んでも良いです……なまんだぁ、なまんだぁ……)」
おやゆび「このお皿のプール、入って良いの?」
お婆さん「もちろんだよ。好きな時に使って良いんだよ」
おやゆび「周りにお花がいっぱいあって、まるで夢の世界の湖見たい♪ あ、このお花、もしかしてボート?」
お婆さん「そうだよ。ほら、そこに乗って、これをオールにして漕いだらいい」
おやゆび「あ、動いた♪ お婆ちゃん、ありがとう!」
お婆さん「(尊過ぎて、もう無理!呼吸を止めてしまいそう! 同じ空気を吸っても良いのだろうか? 神よ、お許しください。アーメン!)」
おやゆび「ら~ららら~♪らんらら~♪ ふふ♪ 鳥さんと一緒に歌うの、楽しいわ♪」
お婆さん「うっ!」
おやゆび「おばあちゃん! 大丈夫?」
お婆さん「姫様、ごめんなさい。大丈夫よ」
おやゆび「本当に?」
お婆さん「鳥さんと歌っている姫様が天使すぎて、ちょっと目眩がしただけなの」
おやゆび「お婆ちゃんが心配だから、看病してあげる!」
お婆さん「(姫様、死んじゃいますよ! 私死んじゃいますよ! 尊過ぎて、私、逝っちゃいますよー!)」
BG~FО
かえる母「ゲコ」
BG(ピンチ!)~
かえる母「おや、うちの息子にぴったりの嫁がいた。これは素晴らしい。 頂戴して行こうかね。ゲコ」
SE(鬱そうとした川の音)~
おやゆび「うぅん……(目を覚ます)」
かえる子「ケロ。かあちゃん、僕のお嫁さんが目を覚ますよ」
かえる母「ゲコ! なんだって! 逃げられたら、大変だ。どうしたものか……そうだ。 川の真ん中の大きな水連の葉に乗っけておこう。 こんなにちっぽけな子には、あれだって島みたいなもんさ。 早々逃げ出せまい。ゲコ」
かえる子「ぐへへ……僕のお嫁さんケロ……ぐへへ……」
おやゆび「ん……んん? ……水の、音?」
かえる子「起きたー!お嫁さんが起きたー!」
おやゆび「ヒッ! な、何もの?!」
かえる母「おや? 起きたのかい? ゲコ。よろしくね。 コレは息子です。あんたのお婿さんになるのよ。 二人して、泥の中で楽しくお暮らしなさい」
かえる子「ケロケロ、くえっくえっくえっ♪」
おやゆび「……オェ……うぅ……こんなことって……お嫁さん? ……この人の汚嫁さんになんて……オェ……う……うぅぅ(咽び泣く)」
さかなA「う~ん、でぇれぇべっぴんさんだ」
さかなB「姫さん、このまま不細工なカエルの嫁さんにするのは、駄目な気がする」
さかなA「この水連の茎を食いちぎってしまおう」
さかなB「そうしよう!」
SE ぷちゅぷちゅと食い破る
おやゆび「……うぅ……私、ムリ……せめてイケメンなら……」
SE ちゃぷん
おやゆび「え? あ、あら? 葉っぱが動いてる……船のように、川を流れ始めたわ」
さかなA「今度はあんなブサイクな奴に捕まるなよー」
さかなB「もしもあんたが魚だったら嬉しかったのになー(笑)」
さかな達「達者でなー」
おやゆび「あなた達が助けてくれたのね……ありがとう……」
BG(長旅)~
SE(とうとうと流れる河)~ いつしか森に
おやゆび「(げんなり)……ここは、どこ? 私は、だれ? ……あ、これは……おうち、なのかしら? もし?もし?」
野ネズミ「はいはい? おや、可愛い子だねぇ」
おやゆび「あの……一粒でいいので麦を恵んで下さい……おなかがぺこぺこで……」
野ネズミ「まぁ、かわいそう。さぁさ、あったかい部屋にお入り。 いっしょにご飯を食べましょう」
おやゆび「いいんですか? ありがとうございます!」
野ネズミ「冬の間、うちにいてもかまわないよ。 その代わり、わたしの部屋を綺麗に掃除して、お話を聞かせておくれ。 旅をしてきたんでしょ? わたしはお話が大好きなのよ」
おやゆび「はい!」
BG(お見合い)~
野ネズミ「うちに来てから、本当にしっかりとよく働いてくれたね。 近いうちに、お客さんがみえるよ。お隣さんが一週間に一度たずねて来られるの。 あの人はうちより裕福な暮らしをしておいでなんだよ。 家には大きい部屋がいくつもあるし、 いつもきれいな黒ビロードの毛皮をおめしになっている。 あの方のお嫁さんになれたら、もっと楽に暮らせるだろう。 ただ、あの方は目が見えないのさ…… だから、とびっきり素敵なお話をしておあげなさい」
モグラ様「やぁ、なんて美しい声なんだ。 僕はねぇ、音にはちょっとうるさいのさ。 もちろん生きる為でもあるけれど、音と言うのは耳だけじゃない。 身体や心で楽しむ……そしてなにより、言葉は確かな意思を伝えてくれる……」
おやゆび「そうなんですね♪」
モグラ様「しかし、光。アレは駄目だ。じりじりと照りつけて、土や私達を焼いて行く。 手も届かぬのに暴力だけを振るう」
おやゆび「でも、太陽があるから、綺麗な花が咲くのですよ?」
モグラ様「花? あぁ、あれは全て誘う為のものじゃないか。 形も色も匂いも。娼婦みたいなものさ……実に下衆い」
おやゆび「娼婦?下衆い?」
BGM FO
おやゆび「はぁ…… いくらモグラさんは、広い住まいに住んでいて、教養も深い紳士だって言っても……お日様が苦手で、太陽のように咲いている美しい花が大嫌いだなんて…… ……酷い言いようだし、好きになれないわ……」
BGM~
おやゆび「あら? あ! 鳥さんが倒れてるわ!」
モグラ様「寒さにやられて死んだか。鳥に生まれたなんて、気の毒なもんさ。 鳥ってやつは、ピーチク言うほかはなんの能もない。 冬になりゃ、飢え死にする定めなのさ」
おやゆび「鳥さんの声は美しくないのですか?」
モグラ様「耳触りだね。なにより、何の役にも立たない」
野ネズミ「モグラさんみたいにモノの解った方だからこそ、そうおっしゃられるのですわ。 冬がきたら、ピーチクパーチク鳴いたって何の役に立つでしょう。 飢えて凍えるばかり……そんな暮らしがいいんでしょうかねえ?」
おやゆび「そんな……」
おやゆび「もしかしたら、おばあちゃんちで良い声で歌ってくれた、鳥さんかもしれない。 とっても楽しかった……おうち、帰りたいな……」
おやゆび「さようなら、きれいな鳥さん。さようなら。楽しい歌をありがとう。 生まれ変わっても、またお友達になってね……」
SE トクントクン
おやゆび「あ……生きてる……生きてるわ! そうだ!お日様! お日様の当たるところへ連れて行かなきゃ!」
ツバメ「……あ……りがと……」
おやゆび「頑張って!身体が温まって、寒さに負け無ければ大丈夫よ!」
ツバメ「……ありがとう……きれいな小さいお嬢さん……」
BG(春に向けて)~
ツバメ「ありがとう! もし良かったら一緒に来ない? 背中に乗せてあげる。 緑の森まで飛んで行こうよ」
おやゆび「だとしたら……わたし、お家に帰りたいの……おばあちゃんのお家に……」
ツバメ「おばあちゃんち?」
おやゆび「あなたは、私と一緒に歌を歌った鳥さん……じゃないのね?」
ツバメ「ごめん、きっと違う。でも、僕に似た鳥だったの?」
おやゆび「えぇ」
ツバメ「なるほど…… じゃあ、もっと暖かい季節だったとしたら、ここからもっと北の方かもしれない」
おやゆび「そうしたら、もっと寒いの?」
ツバメ「そう……だね。 僕は死んでしまうかもしれない……」
おやゆび「じゃあもし、暖かい、私のおばあちゃんのお家に居られるとしたら?」
ツバメ「……う~ん…… ……一度は死んだも同然だし……わかった。君のおばあちゃんちへ行こう!」
おやゆび「ほんと!ありがとう!!」
BGM ED~
おやゆび「あ、見えた! たしか、あのお家だと思う!」
ツバメ「寒いー! あ、あのお家で良いのー?」
おやゆび「うん! おばーちゃーん!」
お婆さん「……え? 姫様? ……姫様が、空を飛んでいらっしゃる! 天使だわ! 神様ありがとう! 姫様ー!!」
おやゆび「おばあちゃん!ただいまー!!」
お婆さん「あー、もう無理! 尊い!! 姫様、お帰りなさい! ずっと私のそばに居てー!」
ツバメ「この人間のお婆さん……大丈夫なの?」
END