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男と女の壮絶プロレスとは何だったのか? 天龍源一郎×神取忍 対談
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男と女の壮絶プロレスとは何だったのか? 天龍源一郎×神取忍 対談

2015-02-08 09:54

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    “ミスタープロレス”天龍源一郎、引退表明――!! マット界に残した偉大な足跡は語り尽くせぬものはある天龍だが、“ミスター女子プロレス”神取忍の顔面をボコボコにした壮絶な試合も印象深い。いまから3年前にDropKickでその両雄の対談が実現。あの一戦をテーマにミスタープロレスとミスター女子プロレスの痺れるプロレス観がほとばしる内容となったが、いまあらためて再録したい。




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    天龍 (ホテルのラウンジに到着して)おう、お待たせしました。

    神取 天龍さん、今日はどうぞよろしくお願いします!

    天龍 こちらこそ。(退席する隣の男性集団を見ながら)いまの、隣に座ってた背広の集団は神ちゃんのSP?

    神取 いやいやいやいや、SPなんて、そんなのいないですよお(慌てて)。

    天龍 フフフ、冗談だよ。でも、いまのくだりもちゃんと原稿に書いてよ(ニヤリ)。

    ーー承知しました(笑)。さっそく始めさせていただきますが、そもそも、このビッグ対談を企画させていただいたきっかけは、4月末にTBSで放送された『ガチ相撲』なんですよ。

    天龍 ああ、『ガチ相撲』ね。安田(忠夫)なんかが出てたヤツでしょ? 神ちゃんも出たもんね。

    神取 はい、出させていただきました(神取はサバンナ八木に見事勝利。『ガチ相撲』の中でも屈指の名勝負となった)。

    ーーその神取選手の紹介Vの中に、天龍源一郎vs神取忍の試合の映像が映ったんですが、神取選手のボコボコに腫れ上がった顔を見た方々のなかで、「あの試合はいったいなんだったんだ!」という声が凄く挙ってまして。なので、今日はあらためてあの対戦についてお二人におうかがいしたいと思っております。


    天龍 はい、わかりました。

    ーーと言っても、あれは2000年7月2日の試合なので、気がつけばもう12年も前になるんですよね(※この対談収録は2012年)。

    神取 12年も経つのかあ。もう、ひと回りしてるんですね……(しみじみと)。

    天龍 あのとき神ちゃんをケチョンケチョンにやって、それから12年経ったいまも、これで飯を食えてるというのは凄いよ。

    神取 私もそのおかげでしっかり飯が食えてます(笑)。

    天龍 でもね、これは神ちゃんもそうだと思うんだけど、自分にとってはスタン・ハンセンとかもうガムシャラに闘ったヤツってね、時として友情や何かが生まれたりするんですよ。逆に言うと、何かが生まれなきゃリングで闘う意味はないんですよね。たとえば、負けても相手が上がるとかね、負けても自分が上がったとか、何かを求めてリングに上がってるというのが闘うヤツの本性だと思うんですよ。

    ーー天龍選手はそういう試合はたくさん経験されてると思うんですけど、その中でも神取選手との試合はまた特別だったというか。

    天龍 よくね、終わったあとに「神取選手をあんなにボコボコにして……」って言われるんだけど、化粧してリングに上がった神ちゃんが、試合が終わって化粧が落ちただけの話だから(アッサリ)。

    神取 えーっ! 試合後の顔が私の素顔ってことですか?(笑)。

    天龍 フフフフ。でもね、一番最初にLLPWからこの話が来たときに、俺が神ちゃんに言ったこと覚えてるよね? 「神ちゃん、いいの? 俺、プロレスなんかやらないよ」って。

    神取 はい! もちろん覚えてます。

    天龍 そしたら神ちゃんは「いや、そのつもりですよ!!」って言ったのよ。だからいい度胸してるなって思って、そっからだんだんと俺なりのテンションが上がってきたんですよね。

    ーーもう、そこから試合が始まってたわけですね。

    天龍 でも結論を言えば、リングの中には俺もそうだけど、神取忍というプロレスラーのも残ってたんだよね。だからあのとき俺がまあトップレスラーとして女子プロレスラーを迎えたけども、神ちゃんが死んだわけでもなく、立ち上がって自分の足でリングを去ったってことは、それは神取忍を殺しきれなかったってことですよ。そこに俺の逃げ口があるとしたら、プロレスって殺し合いじゃないということだけども、神ちゃんにとっては「なんだよ、立って歩ける私がいるじゃない」って、たぶん思ったと思うよ。それが今日の神取選手がプロレスをやっていくうえでの何かになったと思いますよね。

    神取 ……(うなずきながら聞き入って)。

    天龍 ただ、俺もコテンパンにやったつもりだったけど、そこまでいかなかったなって思いがある一方で、男のプロレスラーとしての意地は見せたと思ってました。

    ーー神取選手にとっては、あれがLLPWのリングだったということもポイントでしたよね。自分のリングで天龍選手を迎え入れたということが。

    天龍 だから、試合の途中で「おい、もうタオル投げろよ!」ってセコンドの女の子たちに叫んでたのを覚えてますよ。でも、神ちゃんの顔がだんだん腫れてきてるのに誰も投げないんですよね。だから、それはLLPWのトップである神ちゃんの意地であり、一種の違う感動を覚えましたよね。

    神取 でも私は、逆にああいう試合になってもの凄くうれしかったんです。極端にいえば私はもう「お願いします!」ということだけなんですよ。だからそれを受け入れてくださる天龍さんの器の大きさですよね。天龍さんとは、その前にタッグマッチで試合をさせていただいたことがあったじゃないですか。

    ーー1998年12月8日のWARですね。天龍源一郎&ウルティ・ドラゴン組vs冬木弘道vs神取忍組というカードでした。

    神取 そのときに、初めて男子の中で試合をさせてもらったんですけど、やっぱりシングルは当然それどころじゃないんですよね。天龍さんと私という、あの2人だけの空間に立てたというのは、これまでの格闘技経験のなかでもあり得ない経験で、その気持ちを受け止めていただいて、しっかり応えていただいたというなかでは、もの凄くうれしかったです。あの……痛かったですけどね(笑)。

    天龍 ただ俺の中ではね、神取忍という名前を初めて耳にしたのは、ジャッキー佐藤とかと闘ったときなんだけども、あのね、全然境遇は違うんだけど、俺も相撲から転向してきてプロレスに入ったときに、やっぱり“相撲の天龍源一郎”というのは背負ってきたし、彼女も柔道というものは背負ってきてたと思うんですよ。だから「ジャッキー佐藤とやっても負けない私がいるわよ」って思ってたと思うんだけど、その中でも、ずっともがいてたと思うんですよね。

    ーー「プロレスとどう向き合えばいいのか」ということですか?

    天龍 プロレスに来てもうまくいかない自分がいるし、柔道時代のプライドもあるしね。で、俺はちょうどその日の昼間にね、後楽園ホールで全日本プロレスの復帰会見をしたばかりだったんですよ。

    ーー当時は三沢光晴選手をはじめ全日本の選手が大量離脱してNOAHを旗揚げした一方で、手薄になった全日本プロレスに天龍選手が復帰したときでした。

    天龍 で、全日本に戻る前の天龍源一郎というのも、新日本とかあちこち行ったりしながらもがいてた自分がいて、そんな中で神ちゃんとの試合の話がきたんですよ。そのときに、「ここで女子レスラーとガンガン試合するのもいいかな」ってフッ切れた気持ちがあったんですよね。だからこそ、ガンガン行くというのが俺の中での条件だったんですよ。でもそこでね、神ちゃんが「いやいや、そんなこと言わないでくださいよ。プロレスなんですから」って言ってたらスイッチ入ってなかったと思いますよ。

    ーーそういう意味では、何かから脱却したいという同じ気持ちを持って試合に向かったということですね。

    神取 それに、私自身は自分の柔道生活を振り返ってみても、男子とばっかり練習してるんですよ。それにプロレスに入っても山本小鉄先生に教えてもらってたから、私の中では男子と女子というのはまったく境界線がないんですよね。生意気なことを言わせてもらえれば、「リング上では男も女も関係ない」って思ってるので、そういった意味も込めて「よろしくお願いします!」って言わせてもらいました。

    天龍 あのね、プロスポーツをやってるヤツってね、プロレスラーだけどナヨッとしてるヤツを見ると、「あれ、私でも勝てるんじゃない?」って思う人もいると思うよ。男でもプロだったヤツがボッとプロレス来たときに、「こんなことやってたら、ネエちゃんにも負けちゃうよ」って思うヤツもいるんですよ。とくに俺は自分を研磨する意味でもそういうことを思うことがあるんですよね。そこは、神ちゃんの場合だと、一番はじめにジャッキー佐藤と闘ったことが証明してるし、「そうはいかないよ」という自分があったと思うんですよね。だからたぶんね、プロレスに慣れれば慣れるほど、自分がイヤになった部分ってあったと思うよ。自分を殺してプロレスが上手になろうと思ってる自分がいる一方で、プロレスが上手になるってどういうことなの? って。

    神取 確かにそれはありましたね。そこに全部うまくまとまるのか、そうでない自分も持っておかなきゃいけないのかという葛藤はありました。

    ーーでも、神取選手の場合も、節目節目に“まとまらなくさせる試合”というのがありましたよね。

    神取 なんかねえ(苦笑)。その中でもとくに天龍さんとの試合は強烈でしたね。もし引退して「プロレスラー人生を語ってみろ」って言われたときには、まず語りたい試合ですから。

    ーーそんな気持ちを背負いながら、実際にリングに立った瞬間の気持ちってどんな感じだったんですか? ☆このインタビューの続きと、草間政一、小笠原和彦、堀口恭司、斉藤仁の思い出、パンクラス酒井、大仁田厚物語など8本7万字の記事が読める「お得な詰め合わせセット」はコチラ  http://ch.nicovideo.jp/dropkick/blomaga/ar739331

     
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