おはようございます。
荒神と書いて「こうじん」と読みます。宮部みゆきの小説ですね。
これ、実は、朝日新聞に連載していた新聞連載小説なんだよね。
新聞連載小説って難しくて、一日あたり、単行本でいうと“一見開き半”くらいしか載せられないんだよね。
その掲載枠の中で、ある程度、面白くなきゃいけないんだけど、それを1年やっているんだよね。
連載していたのが2013年から2014年の春までなんだけど。めちゃくちゃ面白いんだよ。
つまり、「外様なんだけども家康さまの覚えめでたく、藩として認められた」という感じなんだ。
この2つの藩は、めちゃくちゃ仲が悪いんだけど、「この国境の村が、一夜にして消えてしまった」というのが、物語の発端なんだ。
なぜかというと、この永津野藩と香山藩というのは両方が仲が悪いからなんだ。
香山藩の藩主はなかなか立派な人で、“新田開発”と言って、山をどんどん畑にして増やしていくから、元は小さい藩ながらも、だんだんと財政状況が良くなっていく。
つまり、新たな産業を興してなかったんだよね。
で、今さら、蚕の養殖を始めて絹を売ろうとしてるんだけども、この間まで金山から金が出ていたから、武士たちの心はなかなかそっちにいかない。
おまけに、ただでさえ食べるギリギリの量しか米が獲れない。
なのに、「蚕を飼え! 桑の畑を作れ!」って、田んぼを潰していくわけ。
なので、「桑を育てて、蚕を飼って、糸を取って、絹にして、絹織物を作って、都に持って行って、売れてと、金が入るのは一体どれだけ先の話なんだ!?」 「その間、私たちは飢えて我慢しなければいけないのか!?」って、百姓がすごい反乱を起こすのね。
一応、国境のところに防衛線が引かれていて、「一切逃がすな!」ということになってるんだけど、なんか“ベルリンの壁”みたいな状態になってるんだよね。
なぜかというと、これは後にわかるんだけども、そいつは体表面の色をカメレオンみたいに自由に変えられて、消えることもできるんだよね。
だけど、「あれはなんだ!? あの竹の下にどんな大きいものがいるんだ!?」って、目を凝らしてもよく見えない。当たり前だよね。保護色みたいな形になっているから。
そのトカゲ型の怪獣は、ものすごく速く動くんだけど。
「あんな足で、どうやって速く動くんだろう?」とよく見ていたら、手足をひっこめてヘビ状の身体になって、ズルズルっと谷底へ滑り降りてるんだよ。
……もう、これ、どう見ても“蒲田くん”なんだよな。
あとは、口から胃液みたいなものを吐くし、「蒲田くんのイメージ元はこれか!」っていう(笑)。
これが、シン・ゴジラの第3形態っぽいんだよね。
その怪獣が、口から霧状の可燃物をファーって噴くと、周りが紅蓮の炎にブワーッと飲まれて、永津野藩が領民を逃さないように作ってる砦がどんどん焼け落ちていく。
そんな中で怪獣と戦うんだけど……また、ここで出てくる戦国武士たちが、怪獣とけっこういい試合をやるんだよな(笑)。
あのね、怪獣映画って本当に難しいんだよ。シン・ゴジラでも、やっぱりそこが出来てなかったんだけども。
怪獣と登場人物との間にはサイズの差があるし、あとは、怪獣の方に“人格”があったらダメなんだ。下手に人格を付け加えてしまうと、卑小化されてしまうから。
つまり、怪獣は、人類とか文明に対して、なんとなく無関心な感じで歩いてないと怖くならないんだよな。
ところが、映画を作る時にはこの登場人物、特に主人公と怪獣との間に何か感情的な関わりがないとお話にならない。
そこら辺を、すごく上手く処理しているのが、たぶん『うしおととら』のラスト5巻で大暴れする、白面の者という大怪獣。
あれが“人格を持った大怪獣”として成立しているギリギリの形なんだよな。
だから、シン・ゴジラがやった「ドラマを全部捨てる」っていうのは、素晴らしい大英断だったと思うんだけども。
荒神はその逆で、「とことんドラマを重視して、女性作家がものすごいリアリティで怪獣モノを描いたらどうなるのか?」ってことをやってるんだよね。
もうね、キャストを見てるだけでわかるし、何より、わずか100分の特番みたいな形でやろうとしているみたいだから、「これ、もう、ダメだなあ」と思って。
というのも、読んでる間「この『荒神』の映画化なりドラマ化なりを、樋口真嗣がやるんだったら面白いだろう!」って思ってたからなんだけど。
ところがね、その解説を読んだら、「樋口真嗣がやっても、ダメなんだ」って思っちゃって。
5億から10億くらいの予算で撮る方法みたいなのが、延々と書いてあったんだけどさ、これを読んでると、めちゃくちゃ醒めるの。
そして、竹林がしなるくらいの風を起こすためには、ヘリをかなり低く降ろさなければいけないんだけど、そのためには天気が良くないといけない。
風景が美しくないんだよ。
一番の基礎の基礎の部分が疎(おろそ)かになるからなんだよね。
あと、さっき話した『スパイダーマン・ホームカミング』も、ただ単にニューヨークのステタン島からニュージャージ州に行くフェリーに乗っているだけのシーンでも、めっちゃ格好いいんだけどさ。
「NHKのドラマ化は……ダメだ!」「じゃあ、樋口真嗣が撮ったら……やっぱりダメだ!」って、勝手に2回絶望しながら読んでしまいました。
そうだよね。
Netflixがやった方がまだマシかもしれないね(笑)。
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