• このエントリーをはてなブックマークに追加

今なら、継続入会で月額会員費が1ヶ月分無料!

  • 窪寺博士のダイオウイカ研究記-その15

    2018-10-04 15:01
    50pt
    89a4532c326a89e99a3468f94ea991b7e0d418c9

    [本号の目次]
    1.特別展「パール」
    2.大騒動のニュース・メディア
    3.日本のニュース・メディア
    4.ナショナルジオグラフィックの嬉しい評価

    特別展「パール」

     英国の生物系学術誌、ロイヤルソサエティー、シリーズBからダイオウイカ論文が公表される予定の2005年9月27日の前夜、私は特別展「パール」の開催に向けて、上野の国立科学博物館・地球館地下3階にある特別展会場準備室でその準備に忙殺されていた。10月7日(金)に関係者内覧会とセレモニー、そして10月8日(土)からは一般公開が始まるのだ。特別展担当責任者として、各々の展示品と解説パネルなどの確認、配布する資料や図録の準備、会場整備とオープニングに向けた最終調整など、やらなければならないことが山ほど残されていた。
     その時、交換台から英国から国際電話が入っていると連絡があった。何事かと受話器をとると、よく聞き取れないがロンドンのラジオ局のスタッフと名乗る男からインタビューをお願いしたいとのことのようである。何のことかと聞き返すと早口の英語で、ジャイアントスクイッド・ファーストタイムを何度も繰り返した。どうも論文公表の前に内容が漏れたようである。適当にごまかして電話を切ったが、また直ぐにかかってきた。仕方がないので、脂汗をかきながら拙い英語で質問に答えてなんとかその場を凌いだ。自分で聞くことは出来なかったが、深夜のロンドンでラジオから私の声が流れたのかもしれない。取材解禁前のフライイング気味だが、彼にとっては大スクープになったに違いない。その後も何度か交換台から国際電話の知らせがはいったが、交換手さんに「クボデラはこちらにはいない」と伝えるようにお願いして、二度と受話器を取ることはなかった。

    4cd9deb7167c820506f191742799a36edae18deb
    「パール」展に出品する美術品を事前に調べる。

    56023605f7cab888fa57d2d131bf414dd728fc42
    ジョー・ディマジオがマリリン・モンローに贈ったといわれる伝説のパールのネックレス。
     
  • 窪寺博士のダイオウイカ研究記-その14

    2018-09-24 14:23
    50pt

    6645336007aad51e0579e36b948faf72fb7d1317

    [本号の目次]
    1.一本の触腕が語ること
    2.新しい発見
    3.論文の原稿
    4.論文の投稿

    引揚げた一本の触腕が語ること

     ダイオウイカが自ら引き千切り残していった1本の触腕は、イカ針にかかって揚収された。船上で詳しく測ると長さは約6m、先端の72㎝が触腕穂と呼ばれる部分で、中央の大吸盤の直径が28㎜であった。今までに報告されているダイオウイカの測定値から、触腕穂長と触腕大吸盤の直径と外套長の相関式を求めて、この触腕のダイオウイカの大きさを推定した。外套長は触腕穂長から1,615㎜、大吸盤直径から1,709㎜と計算された。外套膜の大きさがおおよそ1.6~1.7m、頭腕部は外套長の約1.5倍であることから、このダイオウイカの体長は約4.7mと推定され、6mの触腕もふくめると全長は優に8mに達するものと推定された。また、この触腕の筋肉の一部を100%のエチルアルコールに保存し持ち帰り、研究室でミトコンドリアDNAのCOI領域の1,276塩基配列を解析したところ、今までに日本海沿岸に打ち上げられたダイオウイカや、小笠原で発見されたダイオウイカ5個体の塩基配列と99.7~100%で合致して、DNAからもダイオウイカであることが確証されたのである。


    触腕から解析されたダイオウイカのミトコンドリアDNA、COI領域の1,276塩基配列
    TACACTATACTTTATTTTCGGTATTTGAGCAGGACTTCTAGGAACCTCCTTAAGATTAATAATTCGTACTGAATTAGGACAACCAGGGTCATTATTAAACGATGACCAACTATATAATGTAGTAGTTACTGCCCATGGTTTCATTATAATTTTCTTCTTAGTTATACCTATTATAATTGGAGGATTTGGTAATTGATTAGTACCCCTAATATTAGGAGCACCCGATATAGCTTTTCCACGAATAAATAACATAAGATTCTGATTACTACCCCCTTCCTTAACACTACTTCTAGCTTCTTCAGCCGTAGAGAGAGGGGCTGGAACAGGATGAACAGTTTATCCCCCTTTATCTAGAAATCTCTCCCACGCGGGCCCATCAGTAGACTTAGCCATTTTCTCACTTCATTTAGCAGGGGTATCTTCCATTTTAGGAGCCATTAACTTTATTACAACAATCTTAAATATACGATGAGAAGGTCTACAAATAGAACGTTTACCTCTATTTGCCTGATCCGTATTTATTACCGCAATCCTACTACTCCTATCCTTACCTGTACTAGCAGGGGCTATTACAATATTACTAACTGACCGAAACTTTAATACTACTTTTTTTGACCCAAGGGGAGGTGGAGATCCCATCCTATATCAACACCTATTCTGATTTTTTGGACACCCAGAAGTCTATATTTTAATTCTTCCAGCTTTTGGTATTATTTCTCATATTGTTTCCCATCACTCTTTTAAAAAAGAAATCTTTGGAGCCTTAGGAATAATCTATGCAATACTATCAATTGGGCTTCTAGGTTTCATTGTATGAGCCCACCACATATTCACAGTCGGTATAGATGTAGATACTCGTGCCTACTTCACATCAGCAACAATAATTATTGCAATCCCTACAGGAAtTAAAGTATTTAGtTGAtTAGCCACAAtTTATGGATCCCCAATTAAATATAATACCCCTATACTCTGAGCATTAGGATTTATTTTTCTATTTACTGTGGGGGGGTTAACTGGTATTATTCTATCAAATTCTTCTCTAGACATTATACTCCATGACACCTATTACGTTGTAGCCCACTTCCATTATGTCCTATCCATAGGGGCAGTATTTGCTCTATTTGGAGGATTTAATCACTGATACCCACTAATTACTGGTTTAAGACTAAATCAACAATGAACTAAAGCCCACTTCATAACCATATTCTTAGGAGTAAACTTAACCTTTTTTCCACAACATTTtTTAGGTTTAGCCGGTATACCACGACGTTATTCA 
     
  • 窪寺博士のダイオウイカ研究記-その13

    2018-09-10 15:33
    50pt
    6645336007aad51e0579e36b948faf72fb7d1317

    [本号の目次]
    1. 調査三年目の奇跡 – ダイオウイカを撮る
    2. 調査三年目の奇跡 – 連続静止画像
    3. 調査三年目の奇跡 – もう一つのミラクルショット
    4. 調査三年目の奇跡 – 水深計の語ること

    調査三年目の奇跡 – ダイオウイカを撮る

     「お、お~」と3人から思わず声が上がる。しかし、画像の取り込みは中断することができない。その数秒後から長い腕を大きく広げて動き回る画像が次々と現れると、確証にかわった。我々は世界で初めて、ダイオウイカの生きて動き回る連続静止画像を撮ったのだ。森さんが今度は無言で握手を求めてきた。磯部さんは漁師の手でバシッと私の背中をたたくと、「先生、やったね!」と顔を綻ばせた。
     600枚ほどの静止画像が自動的に番号を振られ、5分ほどでフォルダーに保存された。後は、静止画像のブラウザーを立ち上げて、一枚一枚時間をかけて見ていく。ロガーが水深200mに達し、30秒後ごとに画像を撮り始めてから50枚目、25分後の一枚が下の画像である。あまり鮮明ではないが、ダイオウイカの頭部と左右に広げた腕、腕に付いている吸盤、その間にぐるぐると丸めたような触腕が確認できる。仕掛けの下に付けた餌のスルメイカを二本の触腕で捕らえて、腕の間に引き込んだ瞬間を捉えたものと判定される。30秒ごとに1枚の画像としては、ミラクルショットといっても過言ではない。しかも、上に付けた餌のスルメイカに比べてなんという巨大な頭腕部であろう。

    9c4fad75c0db7822ac88a2527eea655f3b087135
    撮影開始から50枚目(25分後)の静止画、ダイオウイカが現れる。