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エリートの自滅――問われる
コミュニティブ・リーダーシップの真価
(橘宏樹『現役官僚の滞英日記:オクスフォード編』第9回)
☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 ☆
2016.7.7 vol.637
今朝のメルマガは橘宏樹さんの連載『現役官僚の滞英日記』をお届けします。今回のEU離脱国民投票で民意をコントロールしきれなくなっていることが明らかになった英国のエリートたち。これまで社会をリードしてきた彼らが今後どのような動きを見せていくのかを占います。
▼プロフィール
橘宏樹(たちばな・ひろき)
官庁勤務。2014年夏より2年間、政府派遣により英国留学中。官庁勤務のかたわら、NPO法人ZESDA(
http://zesda.jp/)等の活動にも参加。趣味はアニメ鑑賞、ピアノ、サッカー等。
本メルマガで連載中の橘宏樹『現役官僚の滞英日記』これまでの配信記事一覧はこちらのリンクから。
こんにちは。オクスフォードの橘です。最近は、試験の打ち上げもかねて、同級生と卒業旅行に行ってきました。地中海のコルシカ島(フランス領)で泳いできました。イギリスの空とはまったく異なり、地中海は焼け付くような陽射しでした。まだシーズン前で人も少なく、適当に鄙(ひな)びた遠浅のビーチで泳いだり昼寝したりと、みんなで遊び倒してきました。小学生のように日焼けして、現在、肌がずる剥けになっています。忘れられない楽しい思い出ができました。
そして、7月25日には遂に最終帰国することになります。帰国後は派遣元の役所の業務に戻ります。修士論文の締切は9月1日ですけれど、帰国後は浦島太郎状態でバタつくでしょうから、それまでにあらかた書いてしまわねばなりません。お世話になった方々への挨拶回りも始めました。最近ロンドンに滞在した際、約2年前に最初に暮らしていた場所(クイーンズウェイ・ベイズウォーター周辺、ハイドパークのそば)に宿泊しました。矛盾するようなことを言うようですが、懐かしい街を歩いていると、これから何を得られるだろうか、不安だったり期待に胸を膨らませていたりしていた連載第1回の頃の気持ちを、まざまざと思い出すような気もする一方で、今はまったく忘れてしまった別の人物になっているような感もあります。
いずれにせよ、僕はこの2年間で、当初の想像を遥かに超える成果を得られたと思います。少なくとも、時間は一秒たりとも無駄にしなかったと思います。毎日キャパ・オーバーするまで何かをしていました。学識や経験だけではなく、特にロンドンで築き上げた人間関係は「拠点」とすら言えるものが得られたと思いますから、帰国後も継続して(むしろ帰国後こそ)官業やNPO活動との相乗効果を発揮していくと思います。
帰国後の挨拶では「留学での学びや経験を今後の業務に活かして~」などの口上が定番でしょうが、僕は「イギリスの人脈や情報源を今後の業務に活かして~」と述べることになるでしょうし、事実として必ずそうなると思います。ぜひPLANETSにも還元していきたいと思います。
さて、イギリスのEU離脱の国民投票結果を受けて号外を緊急寄稿させていただいた後も、激動は続いています。日本の皆様のもとにも、毎日のように最新情報が断片的に届いて「どうなってしまうんだろう」と思われているのではないかと思います。
国民投票のやり直しを求める運動が起きたり、労働党はイマイチ熱心に残留運動をしなかったコービン党首の責任を追及したり、中国における香港のようにロンドンだけ「独立」してEUに加盟する一国二制度案が出されたり、スコットランドや北アイルランドも独立してEUに残留(独立的に再加盟)しようとしたりと、てんてこ舞いです。EU側も、イギリスに妥協的な姿勢を示して他のメンバー国が同様に離脱されては困るので、独仏伊は連携してイギリスに対して強硬な姿勢を取っています。
こうしてみると、改めて「限りなく離脱に近い残留」というのがイギリスの真のコンセンサスだったように思われます。そもそもこれまでも、独立通貨しかり、他のEU諸国に比べて、かなり特別なポジションを確保してきていたと思います。EUから見れば「ホント、どこまで自分勝手なの?」と苛立ちが抑えきれないところでしょう(目立った失言をしないメルケル独首相ってオトナだなあって思います)。
今回の失敗の評価をめぐり、衆愚的・感情的ポピュリズムの脅威と見たり、英国エリートの質の低下を指摘したりと、批判の観点も百出しています。
▲Wolfson College の”ball”と呼ばれるお祭り(もとは舞踏会)です。みなドレスアップして参加します。会費は食事なしでも約12000円程度かかります。移動式メリーゴーランドが運び込まれ一晩中飲んだり踊ったりの宴が続きます。50周年記念ということもあり盛大でした。Brexitで巷が揺れているなか、ここは別世界なのだなと感じられました…。
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