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  • 井上明人『中心をもたない、現象としてのゲームについて』特別編 認知的作品 〈いま・ここ〉を切り取ることをめぐって・前編

    2018-02-20 07:0011時間前
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    ゲーム研究者の井上明人さんが、〈遊び〉の原理の追求から〈ゲーム〉という概念の本質を問う「中心をもたない、現象としてのゲームについて」。今回は特別編として、「早稲田文学増刊 U30」に掲載された井上明人さんの論考をお届けします。ゲームが「作品である」とき、それはどのような事態か。その問いに答えるべく、前編では「切り取られた〈いま・ここ〉」について論じます。 (初出:「早稲田文学増刊 U30」、早稲田文学会、2010年)

    コンピュータ・ゲームのようなメディアが「作品である」というとき、それはどのような事態だろうか。

    コンピュータ・ゲームというメディアは、コントローラーを手にして直接に遊ばなければ作品として楽しむことができない、とふつう考えられている。

    しかし実は、直接手にしなくともゲームが楽しまれる経路は存在する。例えば、ニコニコ動画における「ゲームプレイ実況」と呼ばれる一群の動画が、最近大きな支持を得た。いまや、国内で一四〇〇万アカウントを抱える動画サービス、ニコニコ動画の中でも非常に人気のある動画ジャンルの一つとなっている。

    「ゲームプレイ実況」の動画とは、その名の通りゲームプレイヤーがゲームを遊びつつ、ゲームの展開について実況を交えて解説したり、驚きの声をあげたりする声が吹き込まれている動画だ。『スーパーマリオブラザーズ』シリーズなど、よく知られたゲームについては、概ねこうした実況の動画が存在している。動画の閲覧者は、自分自身がゲームを遊ぶわけでもないのに、二時間も三時間も食い入るように、どこかの誰かがゲームをしている風景を眺める。彼らはみな自らの手でゲームを遊ぶわけではない。ゲームというメディアを「遊ぶ」ことだけに焦点化して考えようとするとき、この事態は説明ができない。

    ゲームとは、百人が遊べば、百様のプロセスが生じる。そこには、無数の展開が生まれ、『スーパーマリオブラザーズ』(以下、『マリオ』)や『テトリス』といった「作品」はそれらの展開を媒介するようなものとして機能しているだけだとも言える。プレイ実況の動画は、ゲームを遊ぶプロセスを一つの物語として見せている。実況動画という形で成立した、ゲームを介した物語を紡ぐ動画を一つの「作品」として数えるとき、ゲームというメディアは、それ自体も「作品」でありながら、それを媒介とした無限の「作品」を可能にするものだ。将棋というゲームがほとんど無限に近いプロセスを持つものだと語る人は多い。将棋は宇宙であるという人もいる。ゲームが無限をたずさえるメディアなのであるとすれば、無限の在り様について語ることは容易ではない。『マリオ』が生み出す一つのプロセスを経験することから、帰納的に『マリオ』のことを語ることはできても、未だ見たことのない『マリオ』の物語は無限に存在する。

    さらには、どこかの誰かが勝手に『マリオ』のプログラムを改造した『改造マリオ』も大人気の動画の一つだ。この動画で遊ばれているマリオは、もはや任天堂がリリースした『マリオ』そのものではない。多くの部分で『マリオ』の要素を借りてはいるが任天堂の『マリオ』には存在しないマップ、存在しない効果音などが様々に埋め込まれている。しかし、これは確かに『マリオ』として楽しまれている動画だ。これが『マリオ』であると認識するとき、『マリオ』であるとは一体どういうことを指しているのだろうか?


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  • 【特別対談】加藤貞顕(cakes)×宇野常寛「テキストコミュニケーションとかつて〈本〉と呼ばれたものの未来について」(PLANETSアーカイブス)

    2018-02-19 07:00
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    今回のPLANETSアーカイブスは、cakesやnoteを運営する株式会社ピースオブケイク代表取締役CEOの加藤貞顕さんと宇野常寛の対談をお届けします。「メディアビジネスの未来」をテーマに、『PLANETS』の歴史を振り返るとともに、情報環境の変化や、その中でこれからの時代に求められるコンテンツの形について語り合いました。(構成:大山くまお/初出:「cakes」メディアビジネスの未来【特別編】
    ※この原稿は2016 年4月29日に配信した記事の再配信です。

    最初は自己実現、能力の証明の手段だった

    加藤 今回は、「メディアビジネスの未来」というテーマで、宇野さんにお話をお伺いできればと思います。現在は評論家としての活動のほか、PLANETSという会社を立ち上げて、雑誌『PLANETS』の刊行や有料メルマガ「ほぼ日刊惑星開発委員会」の発行など、さまざまな活動をされています。
    まずは、『PLANETS』というメディアの始まりから、今に至るまでのお話を教えていただけますか?

    宇野 雑誌の『PLANETS』を最初に作ったのは、もう10年くらい前ですね。当時、京都で普通に会社員をしていたんです。でも物書きをしたい、自分でメディアを作りたいという気持ちが強くなっていて。東京の出版業界に強いコネクションがあったわけでもなく、地方にいるので情報発信の仕事に就くのは難しい。でも、もし自分で雑誌を作って、それが売れたら、自分たちの能力の証明になるんじゃないかと考えたんです。
    それで、僕がおもしろいと思っている書き手の人たちに声をかけて、ウェブサイトで評論活動を始めました。その集大成として作った雑誌が『PLANETS』です。

    加藤 当時は、宇野さん、27歳くらいですよね。僕、『PLANETS』が創刊されたころのことを覚えています。いきなり、おもしろいことをやっているコンテンツ群がネット上に現れて、雑誌まで出してしまう。ぼくは当時、出版社の編集者だったんですが、なんだこれは、と思いましたよ。『PLANETS』は、最初からビジネスにするという気持ちで立ち上げたのですか?

    宇野 いや、そういうわけでもないですね。当時は「自分たちの方が東京の業界人よりアンテナも高いし、おもしろいものが作れるんだ!」という強い気持ちがあって作ったんですけど、今思うと、若さゆえの過ちですよね(笑)。でもね、案外間違ってなかったとも思います。実際、本屋に並んでいる雑誌に同世代の書き手がちらほら載り始めて、まあ、端的に言ってまったく面白くなかったんですよね。だから「これは自分たちでやった方がいい」と思ったんです。僕は昔から、文句ばっかり言って自分では手を動かさないという人たちが一番嫌いなので、自分たちでやってみようとすぐ思ったわけです。
    じつは『PLANETS』を作る前、学生の頃の同人サークルのつながりで知り合った編集者に「僕はそこらへんの人たちより、おもしろいものが書けるので仕事をください。その証明のために、僕たちはこれからホームページを立ち上げるし、雑誌も作ります」とメールしたんですよね。

    加藤 メールでそんな宣言をしてから『PLANETS』を作ったんですか! かなり気合いが入ってますね。しかも当時、会社員だったんですよね。

    宇野 会社員です。出版に関してはほとんど素人でした。当時の直属の上司が、やはり会社員しながらペンネームでずっと本を書いている全共闘世代の人で、彼の影響も大きかったですね。

    加藤 へええ。その創刊号は売れたんですか?

    宇野 最初は、形になればいいというくらいの気持ちでした。創刊号は200部刷って売り切れたので150部増刷して、これも売り切れました。「よかったよかった、これで次の号も作れるね」くらいの話しかしていなかったと思います。
    その後、部数を増やしていき、中身もどんどんやりたいことを妥協せずに放り込んでいった。制作費は全部僕が出していましたけど、最初の頃はみんな手弁当で、儲かったお金は全部他の号につぎ込むという形でしたたね。

    加藤 それから『SFマガジン』の編集者から声がかかって、最初の単著『ゼロ年代の想像力』につながったんですか?

    宇野 はい。『PLANETS』が売れ始めて、東京の出版社からお仕事をもらうようになった頃、以前に僕がメールを出した編集者の方が『SFマガジン』の塩澤編集長を紹介してくださったんです。そのとき、かなりゴツい企画書を持ち込んで売り込みました。字数的には1万字近い連載プランのような企画書でした。

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  • 【インタビュー】坂本崇博「〈仕組み〉に乗っかり〈仕方〉を変える」後編

    2018-02-16 07:00
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    コクヨの社員として「働き方改革」をコンサルティングしている坂本崇博さんのインタビューの後編です。日本の企業の「働き方」を変えるためのさまざまな試みや、45歳での「社会的な死」と、その先にある第二の人生。さらに、実践的な「働き方改革」の方法、今あるリソースをフル活用する発想について伺いました。(構成:鈴木靖子)
    ※この記事の前編はこちら

    別の世界への想像力が自立を促す

    宇野 組織は変えられなくても、自分の「働き方改革」を始めようと考えている人は多いと思います。彼らに対するアドバイスや、上手くいくコツみたいなものはありますか? 

    坂本 基本的には、何でも試してみる精神が大事です。最初から成功させようと思うと萎縮するし、失敗したときはヘコみます。でも、お試しだと思えば、「このやり方では上手くできないという検証結果を発見できた」となる。つまり、失敗ではなくなるのです。  あとは、あまり大きなことから始めない。0から1はそう簡単に生み出せないので、ほかの人がやっていることを取り入れるところから始める。ただし、その中に少しだけ自分のエッセンスを加えるんです。例えば、私は会議や営業ノウハウ本を読んで、少し批判的に捉えて、その本を反面教師に「自分だったらこうする」という一人壁打ちをしています。だから、まず一度は本を読め、セミナーを聴きに行けという話でもありますが、その時常に「自分ならどう話すか、どうやるか」の視点で半分批判的に、つまりアウトプットを想定しながらインプットをすることが大事だと思います。

    宇野 お上は「働き方改革だ!」と旗を振っていますが、それに対して「実態とはかけ離れている」という現場からの批判の声もあります。そこについてはどうお考えですか?

    坂本 「今、流行っているから、とりあえず早く帰れ」というのは改革ではなくて「横並び」であり、それでは従来の働き方と同じです。現状の改革は、全てを一律的に解決しようとしていて、それを受けた従業員の働き方も一律的になってしまう。従業員一人ひとりに、もっと個性を持って動いて欲しいんです。個性を前面に出すことを好まない日本の文化の影響もあると思いますが……。

     なぜ、私がそんなことを考えるようになったのかといえば、多分オタクだからです。これまで触れてきた虚構の数が違います。日本の現実社会にはない多様な個性や歴史、思想に触れてきました。現実とは違う世界に自分を置いたり、そのことで自分を客観視してきた経験がある。だから私は、日本人は全員オタクになればいいと思っているんです。どれだけ虚構に触れてきたか、子供の頃にそういう精神世界を持っていたかで、自分自身を確立できるかどうかが、ずいぶん違ってくる。

    宇野 この現実とは別の世界があると思えるか、思えないかですよね。

    坂本 最近「東京イノベーターズ」という異業種交流会を立ち上げたんです。企業内のイノベーターは独立してしまう人が多いんですが、大きな企業に所属しながら頑張っている人もいる。そういう人たちを集めて、「シリアル・イノベーターはなぜ育つのか」を考えていこうという会です。

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     実際に社内で改革・新事業創造を進めたことのある10名ほどのメンバーがいて、定期的に「どんな環境でどんな経験をすればイノベーターは育つのか」をテーマにだべっています。面白いことに、メンバーの経歴を聞いてみると、大手メーカー勤務者の場合、6〜7割が労働組合の役員経験者なんですよ。大企業だと一般社員が会社経営に関わるシーンはほとんどありませんが、労働組合の役員になると労使協議会に呼ばれるので、若くても経営陣と話ができる。数字を見せられて会社の経営状態や他部署の状況を知ったり、組合というコミュニティに参加することで、自分の世界はひとつではないことを知る。そういう経験が何かを芽吹かせるんだと思います。  あと、3割の人が何らかの形で死を意識した経験があるんです。地震とか事故とかで。そういう人たちには「人生はめっけもの」「生きてさえいれば何でもできる」「生きているうちに何かやりたい」という感覚があるので、大胆にリスクを取れるのかもしれません。

    宇野 労働組合の役員経験というのは面白いですね。今の労働組合は形骸化していて、昔のようなバリバリの左翼はほとんど残っていませんよね。少額だけど手当が出るとか、たまたまバトンが回ってきたとか、その程度の動機で参加する人が多い。しかし、その機会が、結果的にライフスタイルデザインを自覚的に考えることを促しているわけですね。  今、30代以下の都心のホワイトカラーは、発想や考え方の面では新しいソフトウェアに更新されている人が多い。しかし、会社組織や官僚機構、社会的インフラといったハードウェアは古いままです。そして、彼らはスペック的には優秀であるにも関わらず、なかなか能力を発揮できずにくすぶっている。それは特に大企業に多い印象があって、彼らの中から「自分が変わろう」という人たちがたくさん出てくると面白くなると思います。

    坂本 宇野さんがおっしゃるように、仕組みはそう簡単には変わらないんです。長年の苦労によって、すぐには変化しない構造が作られてきたわけで、簡単に変わるようなら仕組みとはいえない。それは回り続ける巨大な鉄球のようなものです。だったら、その鉄球に乗っかってうまくコントロールすればいい。私の働き方改革のポイントは「今、動いている仕組みに乗っかりなさい」ということです。乗っかるほうが、起動するためのパワーがいらない分、効率的なんですよ。

    宇野 坂本さんは徹底的にハックの思想ですよね。一方で、坂本さんたちの活動の最大の障害、働き方改革の一番の論点は、比喩的に言うと「会社に長く残っていたい人たち」がいることでしょう。会議とは名ばかりの取引先の悪口大会に時間を費やして、生産性は上がらないし問題は1ミリも解決していないんだけど、なんとなく絆が深まった気がする。そういった不毛な時間の使い方が好きな人たちが、この国には多い。これは、正しさの問題ではなくて欲望の問題なので、ここを変えることは難しいと思うんです。

    坂本 まさにそうで、会社に社会を求め過ぎているんですよ。取引先の愚痴なんて、居酒屋で町内会の人たちとしていればいいのに、そういったコミュニティを持っていないから、会社内でやらざるを得ないんです。会社という仕事の場なのに「私事」の部分が多いんだと思います。見方によってはワークとライフの融合と言えるのかもしれませんが、それが今は悪い方に働いていますよね。要は、サラリーマンの「生き様」をもう少し変えないといけないということです。

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    45歳の「社会的な死」で第二の人生を生きる


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