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  • 世界が「木更津」化したあとに――『ごめんね青春!』(PLANETSアーカイブス)

    2018-10-22 07:004時間前
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    今朝のPLANETSアーカイブスは、宇野常寛による『ごめんね青春!』批評です。『木更津キャッツアイ』『あまちゃん』などで時代の空気を絶妙に掴んできたクドカンは、今作ではなぜこれまでのような切れ味を発揮できなかったのか? この10年余りの社会状況・情報環境の変化から考えます。(初出:『ダ・ヴィンチ』2015年3月号(KADOKAWA)
    ※この記事は2015年3月13日に配信した記事の再配信です。
     クドカンこと宮藤官九朗の最新作『ごめんね青春!』は、主にその低視聴率による「苦戦」で世間に知られる結果になってしまった。しかし、そもそも彼の作品が視聴率的にヒットしたのは東野圭吾原作の『流星の絆』くらいの話で他は良くてもスマッシュヒット、といったところだろう。二度も映画化されたロングセラー『木更津キャッツアイ』も本放送の視聴率はぱっとしなかったし、あの『あまちゃん』でさえも、内容的には凡作としか言いようがない『梅ちゃん先生』に平均視聴率では負けていた。クドカン作品の魅力とは、端的に述べれば広く浅く拡散していくものではなく、深く刺さるタイプのものなのだ。
     だから僕は本作をその視聴率的苦戦をもって何か言おうとは思わない。現に僕自身、このドラマを毎週楽しみにしていて、最後まで面白く観ていたのは間違いない。
     しかし残念ながらその一方で、僕はこのただ楽しく、面白いドラマに物足りなさを感じていたことも正直に告白しようと思う。もちろん、テレビドラマに楽しく面白い以上の価値は必要ない、という考えもあるだろう。しかし、少なくとも僕はクドカンドラマにそれだけではないものを感じてこれまで追いかけてきたのだ。
     
     今思えば『池袋ウエストゲートパーク』はモラトリアムの「終わりの始まり」の物語だった。長瀬智也演じるマコトが思春期の終わりに、それまで足場にしていた「ジモト」のホモソーシャルの限界に直面する。そして同じ長瀬智也が主演を務めた『タイガー&ドラゴン』はいわゆる「アラサー」になった主人公が、若者のホモソーシャルとは一線を画した大家族的な共同体に軟着陸していく過程を描いていた。そして長瀬が32歳で主演を務めた『うぬぼれ刑事』は、完全に「おじさん」になった主人公がもう一度、大人のホモソーシャルに回帰していくさまを描いていった。要するに、クドカンは自分よりも8つ年下の長瀬智也の肉体を借りて男性の成熟を、歳の取り方を描いてきた作家でもあるのだ。同世代の同性たちからなる若者のホモソーシャルが加齢とともにゆるやかに解体し、やがて(擬似)家族的なものに回収されていく。しかしクドカンの想像力は教科書的な成熟と喪失の物語を選ぶことはなく、やがて男の魂は新しい、大人のホモソーシャルに回収されていったのだ。
     クドカンのドラマから僕がいつも感じるのは、部活動的なホモソーシャルだけが人間を、特に男性を支えうるという確信と、その一方でこうしたホモソーシャルの脆弱さに対する悲しみだ。この確信と悲しみの往復運動が、クドカン作品における長瀬智也の演じるキャラクターの変遷をかたちづくり、あるいは『木更津キャッツアイ』シリーズでクドカンが描いてきた儚いユートピアのビジョンに結実していった。
     
     この視点から『木更津キャッツアイ』について振り返るのならば、人間がこうした部活動的なホモソーシャル、同世代の、同性からなる非家族的な友愛の、「仲間」的なコミュニティに支えられたまま(「まっとうな近代人」の感覚からすればモラトリアムを継続したまま)歳をとって死んでいくという人生観を提示し、しかもそれを幸福なものとして描き出したところが衝撃的だったと言える。そして『タイガー&ドラゴン』以降の作品は、クドカン自身がこの『木更津キャッツアイ』で提示したものを自己批評的に展開していったものに他ならない。
     
     思えばクドカンが台頭したゼロ年代は、「仲間主義」と「ホモソーシャル」の台頭した時代だった。90年代的な恋愛至上主義文化の反動から、恋愛やファミリーロマンスでは人間の欠落は埋められないという世界観が支持を集め、まず『ONE PIECE』的な仲間主義が台頭し、そして「日常系」アニメ(『けいおん!』『らき☆すた』)からAKB48、EXILEまでホモソーシャル(では正確にはない。これらのコミュニティには紅/緑一点の異性すらいない。ミソジニー傾向の代わりに、ボーイズ・ラブ的な友愛の関係性が支配している)の中での非生殖的、反家族的な関係性がジャンル越境的に国内ポップカルチャーにおいて支配的になっていった。そう、今思えば『木更津キャッツアイ』はその後10年に起こることを先取りしていた作品だった。
     
     あれから10年余り、世界はある意味すっかり「木更津」化した。
     若者向けのポップカルチャーはすっかり木更津キャッツアイ的な「ホモソーシャル2.0」の原理が支配的になった。『木更津キャッツアイ』は企画当初『柏キャッツアイ』であったことが象徴的だが、彼らがジモトを愛する理由は、そこに地縁と血縁があるからではなく、自分たちの「仲間」の思い出が、歴史があるからだ。だから同作に登場した青年たちは自分たちの内輪ネタとサブカルチャーの「小ネタ」で凡庸な郊外都市である木更津を、自分たちにとっての「聖地」に変えていった。
     そして今、こうしたコンテンツ依存のジモト愛の喚起、町おこしはむしろ地方自治体の常套手段と言っても過言ではなくなった。2013年に社会現象的ブームを巻き起こし、後世にはおそらくクドカンの代表作として語り継がれるであろう『あまちゃん』の放映時に、舞台となった岩手県三陸地方がこうした「聖地」化によって大きくクローズアップされたことは記憶に新しい。
     そう、この10年余りのあいだに、世界はすっかり「木更津」化したのだ。
     
     クドカンの話に戻そう。クドカンの一連の試行錯誤の集大成が『あまちゃん』だったことは間違いない。クドカンはここで、戦後の消費社会史をアイドルというアイテムを用いて総括した。ここでは前述のクドカンがそれまで培ってきた「ジモト」への視線が、戦後社会の精神史を描く上で大きく寄与していたのだが、本作『ごめんね青春!』では『あまちゃん』では扱われなかった男性の成熟とモラトリアムの問題が再浮上することになった。本作のプロデューサーはTBSの磯山晶、『池袋ウエストゲートパーク』にはじまる一連の長瀬智也主演作品や『木更津キャッツアイ』を担当した人物だ。主役を務めるのは長瀬よりも6歳若い錦戸亮。彼が演じる高校教師が、勤務先の男子校と近所の女子校の合併のために尽力しながら、30歳になっても引きずっている青春の日のトラウマに決着をつける、という物語が展開した。
     これは言い換えれば、『木更津キャッツアイ』で一度男女を分離した、少なくともロマンチック・ラブ・イデオロギーやファミリー・ロマンス信仰とは異なるかたちの救済を提示したクドカンが、もう一度男女を出会わせようとしたもの、とひとまずは言えるだろう。しかし、残念ながらこのコンセプトは物語前半で空中分解してしまった。
     本作では当初激しかった主人公の属する男子校と、合併先の女子校との対立は物語の序盤(第三話)であっさりと解決する。男子生徒嫌いの急先鋒だった黒島結菜演じる女子校側の生徒会長が、自分たちはこれから「男子」と書いて「アリ」と読む、と宣言する。あまり気の利いたセリフ回しではないが、それはまあ、いいだろう。しかし、その後同作はホモソーシャル同士の衝突を正面から描くことはなくなり、端的に言ってただの学園ラブコメになってしまう。もちろん、ただの学園ラブコメであることが悪いわけではない。ただ、この瞬間にどうしてこの複雑な設定が存在するのか、その意味はなくなってしまった。
     こうして「再び〈男女〉を出会わせる」というコンセプトを失ってしまった同作は、最終回へ向けて主人公の教師・平助のトラウマの解消、高校時代に犯した罪の告白と清算(彼なりの「青春」への決別)に焦点を移すことになる。そして、最終回で平助は自分が担任していた学年の卒業式に学生服で乱入し、自分の「卒業」を宣言して青春に別れを告げる。思春期の恋が生んだ葛藤にケリをつけて、次のステージに進む。教師をやめ、満島ひかり演じる女子校の教師と結婚し、自分は学校をやめて地元FM局のDJになる。大いに結構だが、ここで提示された「成熟」モデルが、僕にはどうにも魅力的なものには見えなかった。

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  • 宇野常寛 NewsX vol.3 ゲスト:乙武洋匡「いま必要なのは、もっと『遅い』インターネットだ」【毎週金曜配信】

    2018-10-19 07:00
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    宇野常寛が火曜日のキャスターを担当する番組「NewsX」(dTVチャンネル・ひかりTVチャンネル+にて放送中)の書き起こしをお届けします。9月18日に放送された第3回のテーマは「いま必要なのは、もっと『遅い』インターネットだ」。作家の乙武洋匡さんをゲストに迎えて、現在のインターネットが抱えるムラ社会化の問題と、かつての〈自由と平等〉の理念をいかに取り戻すかについて語り合います。

    NewsX vol.3
    「いま必要なのは、もっと『遅い』インターネットだ」

    2018年9月18日放送
    ゲスト:乙武洋匡(作家)
    アシスタント:加藤るみ(タレント)
    アーカイブ動画はこちら

    宇野常寛の担当する「NewsX」火曜日は毎週22:00より、dTVチャンネル、ひかりTVチャンネル+で生放送中です。アーカイブ動画は、「PLANETSチャンネル」「PLANETS CLUB」でも視聴できます。ご入会方法についての詳細は、以下のページをご覧ください。
    PLANETSチャンネル
    PLANETS CLUB


    「遅いインターネット」計画について考える

    加藤 火曜NewsX、今日のゲストは作家の乙武洋匡さんです。乙武さんと宇野さんはこれまで何度も対談をされているそうですが、宇野さん、乙武さんはどんな方ですか?

    宇野 乙武さんは、ハンディキャップがあることを逆手にとったしたたかなイメージ戦略と、それを上回る情熱が同居している面白い人なんだよね。ときどき情熱のほうが上回って炎上しているという。

    加藤&乙武 (笑)。

    乙武 ありがとうございます。

    加藤 そして、今日のトークのテーマは「いま必要なのは、もっと『遅い』インターネットだ」としました。宇野さん、こちらは?

    宇野 これは後で説明するんだけど、僕が40代をかけて実現しようと思っている、インターネットの使い方をもう一回見直してみようという、そういう運動ですね。PLANETSのVol.10という僕の新しい雑誌で、そのことを特集しているんですよ。明後日、渋谷ストリームで、この本の刊行イベントを乙武さんと、ほかにも前田裕二さんとか箕輪厚介さんを呼んで議論するわけなんだけど。あらためて乙武さんと一対一で、このテーマについて話してみたいと思ったの。なぜかというと、乙武さんは今の間違ったインターネットの最大の被害者だと思っていて、あの件は本当に酷いと憤っているんだけど、このタイミングでもう一回、話したいなと思ってお呼びしました。

    乙武 ありがとうございます。

    加藤 今日も三つのキーワードでトークしていきます。まず一つ目がこちらになります。キーワード1は「遅いインターネット」。

    宇野 その名もズバリで、いきなり本題から入る感じなんだけど。やっぱり今のインターネットって息苦しいですよね。乙武さんは、そのターゲットになっちゃったわけなんだけど。
     週刊誌とかワイドショーが週に一回、ちょっと目立ちすぎた人とか失敗した人に対して「こいつはやらかしてしまったから、石を投げていいぞ、叩いていいぞ」という号令をかけると、Twitterユーザーが一斉に石を投げてスッキリする。そして、安心する。自分たちはやらかしていない、まともな側なんだと。マジョリティの側なんだ。自分の人生はこれで肯定されるということで、一斉に石を投げるじゃない。そのことで、インターネットはすごく陰険な場になってしまったし、息苦しい場になってしまった。
     本来、インターネットってすごく自由な場のはずだったのね。新聞とかテレビは、インターネットが生まれた頃には既得権益化していて。そこのひと握りのエリートが世の中を動かすとされていた。基本的に商業媒体だし、マジョリティに合わせて話題のレベルからチューニングされていて、マイノリティの意見は全然可視化されないんだけど、インターネットがあればそれが可能なんだと、僕らみんな夢を見ていた。
     ところが、2014〜2015年ぐらいになると、むしろインターネットが一番息苦しい場所になっちゃったと思うんだよね。なんでそうなったのかを考えたときに、実は今のインターネットはちょっと速すぎると僕は思うんですよ。ちょっとというか、かなり速すぎる。炎上に参加したりクソリプを飛ばしたりするときに、実際にみんな考えているのかなと。
     よく「自分はこの話題に関心がある」とか「この話題に賛成している」とリツイートするじゃない? でも、ほとんどの人はツイートの中身も吟味していないし、リンクがあっても元記事を読んでいないと思うのね。
     人間というのは、単に新聞やテレビを受け取る側から、インターネットが普及し誰もが発信者になることで、もっと深く考えるようになるという前提で思考してきた。自分でものを書くようになると、もっと深く多角的にいろんなことを考えて、背景のことも勉強するだろうという前提で動いてきた。
     だから、この先にあるのはメディアじゃなくて、プラットフォームなんだと。単に読むだけじゃなくて、読みながら発信する新しい読者を育てなきゃいけないんだとやってきた。でも、誰もが読み手だけじゃなく書き手にもなった結果、むしろ考えなくなった人がほとんど。誰かに石を投げたり、クソリプを送るとき、ほぼ人は考えていない。140字の背景も考えていなければ、元記事も調べてもいないし、下手すれば前後のツイートすら見ていない。
     週に一回、生贄を選んで、その炎上だけで回転していく今のインターネットの速度って、僕は速すぎると思うんですよ。
     だから、僕はそこに抗って、もう一回メディアに戻ろうと思っているんですね。コメント欄も封じて、できれば「はてなブックマーク」とか、あのあたりを全部ブロックして、今のインターネットのトレンドとかも全部無視して。炎上ネタとか流行りの話題とか全部無視して、5〜10年後も読み継がれるような質の高い記事を、Googleの検索順位の高いところに地道に置いていくという新しいウェブマガジンを作ろうと思っているんだよね。それが「遅いインターネット計画」。
     この計画を始めようと言ったときに、僕が信頼している仲間をたくさん呼んで。村本大輔さんとか前田裕二さんを呼んで、座談会を開いて「僕はこんなことを考えているんですが、どう思いますか?」という話をして、そこに乙武さんも来てもらったわけなんです。今日はその話の続きをしたいなと思って、お呼びしました。

    加藤 乙武さんは「遅いインターネット」の構想を聞いて、どう感じられましたか?

    乙武 僕は普段から宇野さんの言葉選びのセンスみたいなものが大好きなんですよ。

    宇野 自分でもすごいと思う。

    乙武&加藤 (笑)。


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  • 本日21:00から放送!宇野常寛の〈木曜解放区 〉 2018.10.18

    2018-10-18 07:30

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    本日21:00からは、宇野常寛の〈木曜解放区 〉

    21:00から、宇野常寛の〈木曜放区 〉生放送です!
    〈木曜解放区〉は、評論家の宇野常寛が政治からサブカルチャーまで、
    既存のメディアでは物足りない、欲張りな視聴者のために思う存分語り尽くす番組です。
    今夜の放送もお見逃しなく!


    ★★今夜のラインナップ★★
    メールテーマ「衝動買い」
    今週の1本  映画「プーと大人になった僕
    アシナビコーナー「井本光俊、世界を語る」
    and more…今夜の放送もお見逃しなく!


    ▼放送情報
    放送日時:本日10月18日(木)21:00〜22:45
    ☆☆放送URLはこちら☆☆

    ▼出演者
    ナビゲーター:宇野常寛
    アシスタントナビ:井本光俊(編集者)

    ▼ハッシュタグ
    Twitterのハッシュタグは「#木曜解放区」です。

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