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  • 山本寛監督インタビュー「いまだからこそ語るべきアニメのこと」第5回 アニメのなかに真実がある【不定期連載】

    2017-02-21 07:0014時間前
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    『らき☆すた』や『かんなぎ』で知られるアニメ監督・山本寛さんの、これまでの活動を総括するロングインタビュー「いまだからこそ語るべきアニメのこと」。第5回では、『らき☆すた』以降の諸作品、『かんなぎ』、『私の優しくない先輩』、そして震災をテーマにした『blossom』についてお話を伺いました。(取材・構成:高瀬司)
    ――また『ハルヒ』はYouTube、『らき☆すた』はニコニコ動画と、新しいWebサービスの登場と同期するかたちで人気が拡大したと思います。ああいった同時代的なシンクロニシティは、当時どのように感じられました?

    山本 以前から2ちゃんねるの反響や、YouTubeでのハルヒダンスの盛り上がりは見ていましたから、『らき☆すた』のときは伊藤プロデューサーと「ネットで突っこまれるような作品にしたいですね」とよく話していたんですよ。そうしたら、2ちゃんのひろゆきが関わり、YouTubeを利用した、コメント付き動画サービスがはじまった(笑)。あのころは、時代が僕の背中にある感覚がありましたね。

    ――あわせて京都アニメーションのフィルモグラフィ自体が、セカイ系の『AIR』にはじまり、セカイ系から日常系への移行を象徴する作品として『ハルヒ』があり、日常系の『らき☆すた』、そして『けいおん!』シリーズ(2009-2011年)と、時代の変遷を体現していたと思います。

    山本 ただ、美学的観点から見れば、アニメが劇的に変化してしまったのは、そのパンドラの箱を開けてしまったのは『けいおん!』だと思います。『らき☆すた』は日常系ではありますが、きちんと人間ドラマを組みこんでいた。オリジナルエピソードとして、柊一家の人間模様を描いた第17話「お天道様のもと」や、修学旅行に行く第21話「パンドラの箱」、こなたの亡くなった母親・かなたをめぐる第22話「ここにある彼方」を加えるなど、必ず家族や異性、社会を意識させるようにしていたんです。女子校ではなく共学であることを強調するために、白石みのる(CV:白石稔)を目立たせたりもしました。
    ところが『けいおん!』では男性は徹底的に排除されているし、両親も出てこないか、映画でやっと出てきても顔が見切れている。ついにここまで来たかと思いましたね。アニメのポストモダン化は『けいおん!』で極まったと思います。

    ――京都アニメーション時代に関する最後の質問になりますが、『ハルヒ』『らき☆すた』と、実際に責任あるポジションを務められてみていかがでしたか? 各話演出時代に武本監督から言われたように、何か意識の変化などはあったのでしょうか。

    山本 やはり見え方が大きく変わりましたね。僕は本当に生意気だったんだなと痛感しました(笑)。よく自分が2人いればいいのにと言う人がいますけど、もし僕が2人いたら確実にもう1人を殺しますね(笑)。なのでいろいろありましたが、京都アニメーションには強い恩義を感じています。これだけ生意気で半狂乱の男をよくここまで育ててくれたなと。 

    Ordetと悲劇

    ――メインテーマに関して一通りうかがったところで、後半では京都アニメーションを辞められたのちのご活躍も簡単に振り返らせてください。山本監督はその後、新たにOrdetを立ち上げられますが、どのような意図があったのでしょうか。

    山本 僕が京都アニメーションを辞めたときというのは、社内もかなり揉めたんですね。実際、僕と同じタイミングで、守りに入った会社の方針に嫌気がさして辞めていったスタッフが何人かいて。Ordetはその受け皿というつもりで立ち上げました。なので必ずしも会社である必要はなかったんですが、そのときの落ちこんでいた気持ちを切り替えるいいきっかけにもなるかなと、軽い気持ちで大阪で起業を。でもこの選択が最悪でしたね。その後の10年にわたる悲劇のはじまりです。

    ――悲劇というのは?

    山本 経営者になってしまうことで、監督としてうまく暴れることができなくなってしまったんですよ。それまでは会社に文句を言う側だったのが、経営者として文句を言われる側へと立場が変わってしまったわけですから。結局、社長であるということを、自分のなかでうまく咀嚼できなくて……それでスタッフもみんな離れていってしまいました。自分で自分の首をどんどん締めていったのがこの10年でしたね。

    ――Ordetでの監督第1作は『かんなぎ』(2008年)ですが、このころというのは?

    山本 『かんなぎ』のころはまだぜんぜんよかったんです。会社を立ち上げた直後ということで、ていねいに作ろうという一心で臨んだ作品でした。それに武梨えり先生の原作は、自分探しのドラマの要素もあるし、ギャグも萌え要素もある、パロディもいける。つまり多方面で自分にとってやりやすい題材で、自分の持ち味を活かせばいいだけだったので、本当に楽しく取り組めて、リスタートにはもってこいの一作でした。


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  • HANGOUT PLUSレポート 森直人×宇野常寛「日本映画は復活するか――〈川村元気以降〉を考える」(2017年2月13日放送分)【毎週月曜配信】

    2017-02-20 07:00
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    毎週月曜夜にニコニコ生放送で放送中の、宇野常寛がナビゲーターをつとめる「HANGOUT PLUS」。2017年2月13日の放送では、映画評論家の森直人さんをゲストに迎えました。『君の名は。』などのヒット作が続き日本映画復活の年といわれた2016年。しかし映画界の業界構造は以前のまま、ブームはアニメと川村元気作品に支えられている状態です。日本映画の現在と未来について、2人の間で熱い議論が交わされました。(構成:村谷由香里)
    ※このテキストは2017年2月13日放送の「HANGOUT PLUS」の内容のダイジェストです。

    川村元気は日本映画の何を変えたのか

    2人の議論は、2016年のキネマ旬報ベストテンから始まります。上位10位内にランクインした川村元気プロデュース作品は、10位の『怒り』のみ。通例のベストテンなら本作品は1位になってもおかしくないとする森さんは、2016年の日本映画を「佳作は驚くほど大量にある。しかし突出した作品のない団子状態」と評します。

    森さんによると、この日本映画の充実の端緒は、中・小規模やインディペンデント作品で『SRサイタマノラッパー2』『さんかく』『川の底からこんにちは』といった若手監督の注目作が次々と公開された2010年にあり、東宝の川村元気作品でいえば同年の『告白』と『悪人』が象徴的に巨大なインパクトを残した。そして、2010〜11年の『告白』『悪人』『モテキ』のそれぞれに対応するのが、2016年の『君の名は。』『怒り』『何者』であり、この6年間で川村元気作品は成熟を迎えたが、それは一方で「緩やかな後退」でもあったかもしれないといいます。

    宇野さんは、2000年代前半の日本映画は、『ウォーターボーイズ』(2001年)の成功をモデルとした「メジャーと単館の中間でスマッシュヒットを狙える」という夢を見ていた時代がまずあり、その夢が一度破綻したあとに出現したのが東宝という大手配給会社の内部で前衛的な作品制作を試みる川村元気プロデューサーだったと指摘します。

    そして2010年というターニングポイントにおける川村元気のプロデュース作『告白』の重要性を訴えます。中島哲也監督によるCM的・PV的なカットの「つながらない」演出は、映画評論家の間では賛否両論だったが、それは日本映画の射程距離を更新しようとする試みであったと評価します。しかしその一方で2016年の川村元気作品にはこうした射程を持ち得た作品はなかったという批判を加えます。


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  • 山本寛監督インタビュー「いまだからこそ語るべきアニメのこと」第4回 『ハルヒ』『らき☆すた』演出ノート【不定期連載】

    2017-02-17 07:001
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    『らき☆すた』や『かんなぎ』で知られるアニメ監督・山本寛さんの、これまでの活動を総括するロングインタビュー「いまだからこそ語るべきアニメのこと」。第4回では、『ハルヒ』のライブシーンやダンスEDの誕生秘話、そして『らき☆すた』降板の舞台裏について、深掘りしてお話を伺いました。(取材・構成:高瀬司)
    ――なるほど……。いまのお話で、これまでなんとなく曖昧だった『ハルヒ』の経緯に関して、いろいろと腑に落ちました。では事実上の初監督作品として、『ハルヒ』の具体的な内容・演出に踏みこんでうかがわせてください。まずそもそも、第1話に「朝比奈ミクルの冒険 Episode00」を持ってくるという構成が衝撃的でした。
     
    山本 『涼宮ハルヒの憂鬱』をアニメ化するときのコンセプトは「超監督・涼宮ハルヒ」だったんですね。つまりあのハルヒが『涼宮ハルヒの憂鬱』というTVアニメを作るとなれば、時系列シャッフルだろうとなんだろうと、ありとあらゆる訳のわからないことをするだろうし、当然一番頭に持ってくるのは自分が監督した自主映画に決まってるだろうと(笑)。

    ただ、それを視聴者に受け入れてもらえるかどうかは、僕らにとっても冒険でした。だから、最速となる東京の初放映時には、2ちゃんねるの実況スレに張りついて反響を見ていたんですよ。そうしたら案の定、最初は大騒ぎなわけです。ネットが動揺している瞬間をはじめて見ました。みなが混乱している。それでいよいよ「これは炎上してしまうかもな……」と思いはじめたころ、原作ファンから「これが『ハルヒ』だよ!」という声があがったんですよ。第1話はOPも「恋のミクル伝説」ですから、通常のOPには出る「超監督・涼宮ハルヒ」というクレジットもなく、メディアにも事前には非公開にしていた情報だったんですが、にもかかわらず僕らが意図したコンセプトを見抜いたんです。やはり『ハルヒ』のファンは頭がいいなと思いましたね。この第1話を受け入れてもらえたことが、その後の僕らの勢いにもつながっていきました。
     
    ――第1話の次に山本監督が担当されたのが第9話「サムデイ イン ザ レイン」です。これも極めて異色なアニメオリジナルのエピソードでした。

    山本 「サムデイ イン ザ レイン」のコンセプトは第三者視点、「定点観測」です。『ハルヒ』の原作というのはつねにキョンによるモノローグ、一人称視点で統一されているのですね。そのせいで、原作ファンのあいだでは、ハルヒではなくキョンこそがこの世界を司る真の神であって、キョンが見ていない世界というのは存在しないのではないか、といった推論も出ていて。だから原作者の谷川(流)先生との打ち合わせのとき、「キョン以外の、第三者視点のエピソードを作りましょうか」と提案してみたところ乗っていただけて、それで最終的に定点観測というコンセプトを立てました。キョンのいないSOS団の部室を、三点からの監視カメラのような映像で延々ととらえる。設定へのエクスキューズとして、コンピ研が仕返しに盗撮していたとか、部室にある太陽のオブジェが実はキョンでもハルヒでもない第三の神だったとか、そういう深読みできる理屈も用意していましたね。

    ――EDでも目立つオブジェですが、本編でも2度ほど意味深にアップでとらえられていましたね。またこのエピソードは、ショット数がものすごく少なく、150ほどしかない点も特徴的です。長回しがすごく多い。

    山本 定点観測ものというのは、同ポ(同ポジション)が多いのでレイアウトこそ楽ですが、引きの画ばかりになるので、登場人物の全身を描かなくてはいけなくなって作画がすごくハードなんですね。一般視聴者からすると楽そうに見えるかもしれませんが、作画カロリーはむしろすごく高い回になっていて、だからどこかで思いっきり手を抜いておこうと。それで長門が本を読んでいるだけの画をずっとリピートするカットを入れたんです。最終的に一番長いカットで2分17秒、さらに一度別のカットを挟んで、もう一度同じ画を1分間という長回しになりました。

    ――作画という点では、その後の第12話「ライブアライブ」のライブシーンも大きな話題を呼びました。

    山本 あの演奏シーンはロトスコープですね。「God knows...」は、当時人気だったアイドルバンド「ZONE」の曲をモデルに神前に作・編曲を発注していて。あがってきた曲をプロのミュージシャンの方に演奏してもらい、その様子をビデオ撮影したうえで、映像をキャプチャした画像をプリントアウトし、それを上からなぞるという手順で作りました。ハルヒのアップの表情は、平野綾さんの歌う映像をもとにリップシンクさせるようにしています。ハルヒのカットの原画は全部西屋(太志)くん、彼は本当にうまかった。それと高雄(統子)さん(※編注:のちに京都アニメーションを退社し『アイドルマスター シンデレラガールズ』『聖☆おにいさん』を監督)のパートもいいんですよ。ハルヒが「God knows...」を歌い終わったあと、大受けの会場を見て安心したようにため息をついて、ドラムのほうを振り向くというカット。あそこの原画は、あがってきたのを見た瞬間に大泣きしてしまいました。僕は基本的に、タイムシートは全カット自分で直していたんですが、あそこだけはもう涙でシートが読めず、そのままスッと戻すよりほかなかったですね。

    また演奏シーン以外にも、文化祭の日のエピソードということで、参加している全員が主役というコンセプトを立て、背景のモブも全部動かすようにしています。キョン視点の物語の背後で、モブの一人ひとりが文化祭を楽しんで、またさり気なくハルヒとバンドメンバーたちの物語も進んでいく。だから結果的に、作画枚数はほかの話数の2倍使うことになりました。


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