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  • 更科修一郎 90年代サブカルチャー青春記〜子供の国のロビンソン・クルーソー 第7回 高田馬場・その3【第4水曜配信】

    2017-04-26 07:006時間前
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    〈元〉批評家の更科修一郎さんの連載『90年代サブカルチャー青春記~子供の国のロビンソン・クルーソー』は高田馬場編の3回目です。『漫画ブリッコ』を起点とする80年代ロリコンブームが、やがて90年代に「オタク文化の大衆化工作」へと変質していった時代を振り返ります。

    第7回「高田馬場・その3」

     消えたバーミヤンに驚いた筆者は、新目白通りを左折し、かつての通勤ルートである裏通りへ戻った。
     裏通りの窪地には、高田馬場では珍しいオフィスビルがある。筆者が通勤していた頃は専門学校の校舎だったが、いつの間にか白夜書房本社ビルになった。
     白夜書房の森下会長は、高田馬場で空きビルが出るとすぐに買うという癖があった。社員たちはよく笑い話にしていたが、経営者としては実に正しかった。
     二十年前の時点でも、自社ビルを建てる出版社は潰れると言われていた。実際、アーケードゲーム雑誌『ゲーメスト』を出していた新声社が、自社ビルを建てた2年後に倒産していた。
     しかし、森下会長は他社が手放した空きビルを安く買い叩くことでリスクを抑えていた。
     そこまでして自社ビルを確保する必要があるのか?
     あるのだ。
     まず、自社ビルを倉庫で使えると、倉庫賃貸料が発生しない。これが外部の賃貸倉庫だと、在庫の本を出し入れするだけで、一冊2〜3円の手数料が発生する。このコストが単行本の許容返本率を大きく左右するのだ。
     当然、編集部があるフロアの賃貸料も発生しないので、部署ごとに設定された総予算に余裕が出る。
     元々、安価で販売される雑誌はほとんど儲からない、特に月刊漫画誌は出すだけで毎月、確実に赤字を垂れ流す。
     編集部やレーベルの収益は、ほとんど大ヒット作品の単行本に支えられている。
     出版という商売は、本質的に、確実な攻略法のない博打なのだ。
     筆者はコアマガジン退社後、藤脇氏と『まんが編集術』(白夜書房)というインタビュー本を作ったが、『週刊少年ジャンプ』三代目編集長だった、故・西村繁男氏に伺ったところ、653万部の史上最高部数を達成した頃のジャンプでも、採算分岐点は96%だった。毎週、営業部が精緻に発行部数を調整しても、雑誌だけでは儲からないのだ。
     なので、00年代に入ると、少年漫画誌でも30年以上の長期連載や過去のヒット作のリブートが頻発するようになった。少年漫画なのに。

     これがマイナー系の漫画出版社だと、頼れる大ヒット作品も稀なので、確実にシングルヒットを積み重ねていくしかない。
     担当営業の藤脇氏は、成年漫画のコミックスを8000〜10000部刷った場合、販売率70%がボーダーラインだと言っていた。損益分岐点は56〜62%くらいで、それを下回った漫画家は「二度と起用するな。代原でも禁止だ」と厳命されていた。
     先輩編集が担当していたベテラン漫画家たちがこの数字を下回り、次々とクビになっていたが、平然と編集部に現れ、筆者と筆者が担当していた若手漫画家の悪口を言っては、代原扱いで載っていた。
     先輩たちもあらかじめ台割をスカスカにして、代原を使わざるを得ない状況を仕組んでいた。
     巻頭カラーで看板扱いの作品以外、次号予告をしない雑誌だったのだ。
     今にして思えば、特に悪気もなく身内意識でやっていたのだが、当時の筆者は憤り、あらかじめ発注していた若手の原稿をスカスカの台割を見た瞬間にねじ込み、先に乗っ取る対抗戦術を採った。
     結果、自分の担当作家だけで手一杯となり、編集者として一本立ちしたのだが、代わりにもう一人の同期が、雑用を一手に引き受ける羽目になった。
     増刷こそ稀だったが、担当していた若手たちの販売率は総じて高く、席取り勝負になればこちらの言い分が通った。だいたい、クビになった作家を代原で載せていても、単行本にならない。


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  • 【対談】泉幸典×三宅陽一郎 いつか僕らはロボットと服について語り合うだろう

    2017-04-25 07:001
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    ロボットユニフォームブランド「ROBO-UNI(ロボユニ)」の開発をする泉幸典さんは、ロボットに服を着せるという行為がロボットと人間の関係をより良い形に変えると考えています。今回、人工知能開発者の三宅陽一郎さんと泉 幸典さんの対談が実現しました。ロボユニの開発秘話から、ユニフォームの果たすシンボル的な役割や内包する文化、ロボットが作る未来のカウンターカルチャーの可能性まで、縦横無尽に語り合いました。(構成:高橋ミレイ)

    原点となったシリコンバレーでの挫折

    ――まずロボユニがどういうものかということと、なぜその事業を始めようと思ったのかという背景から、お願いします。

     ロボユニは、コミュニケーションロボットに特化した専用のアパレルブランドです。もともと私たちはホテルやレストランの接客スタッフが着用するユニフォームを作っているメーカーなんです。人のユニフォームを何十年も作ってきましたが、日本の少子高齢化が進み、特に接客業に関しては若い子たちがどんどん減ってきています。そうなるとユニフォームの需要も少なくなるので、人のユニフォームを作り続けたとしても、市場自体が縮小してしまいます。新しいアパレルのジャンルを自分たちで作っていかないと、五年後十年後、三十年後の事業が続かないと思ったのがロボットのユニフォームを作ろうと思った最初のきっかけです。

    レストランやホテルの仕事は、昔はすべて人がしていましたが、今はビジネスホテルのチェックインがタブレットでできるようになるなど、機械に置き換わりつつあります。Pepperのようなロボットたちがガイドをしてくれるようにもなりました。そうなると、仕事の正確さだけで見れば、人間のアルバイトの子たちよりもロボットの方が上回るという現象が起きてくると思います。「人間の方がロボットよりも仕事できないね」と言われるような時代が来た時に、「さぁ、人間はどうしていくんだろう?」と思ったんです。そんな時代が来た時に人間が持つ、「人を喜ばせたい、良いサービスをしたい」という意志をテクノロジーの力で促進してあげられないかって思っていたんですね。

    当初は、既存のユニフォームの中にデバイスを搭載させて、ゲストが近くにいることを振動によって知らせたり、お客様の不満を音声認識で拾って、本格的にお怒りになる前にバックヤードから責任者が出てきてお客様のクレームを最小限に抑えることを考えていました。提携先として、そのような技術を持つ会社を探すためにシリコンバレーに行ったところ、現地では技術はあっても前例がまったくないことが分かりました。僕はそれを聞いて、「あ、これいけるな」と思ったんですけれど、こうとも言われたんですね。「実現可能な技術があるのに商品やサービスが世の中にないということは、新規性があるからではなく、誰もそれを必要としていないからじゃないの?」と。その方は、「そんなものに金をかけるくらいなら、時間をかけてでも人材育成に力を入れていくべきだ」とおっしゃっていました。ラグジュアリーホテルに来るゲストは、なぜ高いお金を払うかと言えば、人と人とのコミュニケーションによる質の高いサービスによる感動を得たいからです。しかし、そこをテクノロジーに頼ってしまうと、人間の本質的な喜びとは違う方向に行ってしまうとも指摘されました。もう何もかもが「その通りだな」と思いましたね。

    サンフランシスコから日本へ戻る飛行機の中で、行きの便では絶対いけると思っていたのに出た結論は真逆だったことに落ち込みながら、「そもそもなぜ僕は、あのような商品を考案したのだろう?」と考えました。すると実は僕自身が、既存のテクノロジーに人間が色んなものを付け加えた結果、やっぱり人間の方が素晴らしいという結論に至りたかったからだと気がついたんです。言い換えればテクノロジーを僕が敵だと思っていたからなんですね。それに思い至ったところで、「本来ならばテクノロジーは敵ではなく、人間の役に立つために作られているはずだ」という考えに立ち返ったんです。

    そのような問いを立てた時、引き合いに出すのに分かりやすいテクノロジーがロボットでした。調べれば調べるほど、ロボットや人工知能の研究開発に携わっている方たちが、人間のことを深く研究して、日常的な動作など僕たちが当たり前にしている行動がいかに複雑な仕組みによって成り立っているのかを理解していることがわかりました。しかし多くの人たちは、ロボットたちが何をできるかさえ知りません。もっとそれを簡単に理解する方法があれば、人間はロボットとの付き合い方が分かるし、ロボットもさらに人の役に立つことができると思いました。それを伝える記号として、ユニフォームが大きな役割を持つと思ったんです。

    ユニフォームがロボットと社会をつなぐ  

     たとえばユニクロの黒のシャツを1枚買ったとします。それを家で着ていると単なる黒のシャツですが、同じ物を10枚買って皆が着てスターバックスで働くと、それはスターバックスのユニフォームになります。物は一緒なのにシチュエーションや組織といった環境を変えてしまうと、それは制服になるんです。明治時代、洋装が普及し始めた時に、日本で初めて近代ユニフォームを導入した組織が鉄道と警察と病院でした。世の中が混乱している中で窃盗が起こったり、病気になった場合、十分に教育を受けていない人たちも多くいるなかで、それは非常に役に立ちました。白衣を着ている人を見たら、「あの人が私たちの命を助けてくれる人だ」、あるいは泥棒に遭った時に警察官の服を着ている人がいたら、「あの人に言えばいい」と判断できる視覚的な認識記号になったのです。対象が何者かであるかを示す記号であることがユニフォームの根幹にあります。

    パーソナルロボットは、各企業や各家庭の要望に応じた異なる使命を持っており、それぞれの分野に特化した膨大な知識が入っています。でもロボットたちは量産されたもので外見も均一なため、人間以上に個々のパーソナリティがありません。ですから大抵の人は、「こんにちは」とか「今何時?」くらいのレベルのことしかロボットに聞かないのです。しかしユニフォームがあれば、彼らがどう役に立つのかが子ども達やお年寄り、外国の人たちにも一目で分かるはずです。このような考えから着地した製品がロボットユニフォームです。 

    三宅 人工知能は環境を理解したり何かを推論したり、なるべく人間に近づける形で発展してきましたが、このようにロボットにユニフォームを着せるという視点は、我々人工知能開発者にとっては盲点でした。大抵の人工知能は特化型人工知能と言って、株式の予測やレコメンドシステム、あるいはお料理ロボットといった、特定の問題を解くための人工知能として開発されます。さらにそれらの人工知能が体を持つことで、バーチャルな空間から現実世界に進出しようとしているのが今の大きな流れです。


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  • 【春の特別再配信】京都精華大学〈サブカルチャー論〉講義録 第1回 〈サブカルチャーの季節〉とその終わり

    2017-04-24 07:001
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    「2017年春の特別再配信」、第2弾は本誌編集長・宇野常寛による連載『京都精華大学〈サブカルチャー論〉講義録』の第1回です。テーマは戦後の若者カルチャーの変遷。60年代の学生運動の挫折から、サブカルチャーの時代の到来、米国西海岸で生まれたカリフォルニアン・イデオロギーの拡大と、サブカルチャーの時代の終焉まで、1960年代から2000年代までの世界的な文化状況を、俯瞰的に論じます(この原稿は、京都精華大学 ポピュラーカルチャー学部 2016年4月15日の講義を再構成したものです/2016年5月13日に配信した記事の再配信です)。

    宇野常寛が出演したニコニコ公式生放送、【「攻殻」実写版公開】今こそ語ろう、「押井守」と「GHOST IN THE SHELL」の視聴はこちらから。
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    はじめに――〈オタク〉から考える日本社会

     これから半年間、「サブカルチャー論」という授業を担当する宇野と言います。もしこの中で僕のことを知っている人がいたら、たぶんワイドショーやテレビの討論番組に出演して、社会問題についてしゃべっているところを見た、という人がほとんどだと思うのですけれど僕はどちらかといえば社会ではなく文化の評論家で、専門はサブカルチャーです。特にアニメやアイドルといったオタク系の文化を題材にしてきました。
     この授業はそんな人間が、なぜ社会問題について語るようになったのか、というところからはじめたいと思います。僕という人間と社会のとかかわりから、サブカルチャーと現代社会のかかわりについて考えるところを議論の出発点にしたい。
     というのも、僕がニュース番組に出ると「あんな奴をテレビに出すな」という苦情がいっぱい来るんですよ(笑)。なぜなら、僕は生放送中にまったく「空気を読まない」からです。


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