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「愉快な東京オリンピック破壊計画」はありうるか ――ニッポン放送アナウンサー・吉田尚記が語るポリティカル・フィクションの可能性 ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.101 ☆
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「愉快な東京オリンピック破壊計画」はありうるか ――ニッポン放送アナウンサー・吉田尚記が語るポリティカル・フィクションの可能性 ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.101 ☆

2014-06-26 07:00
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「愉快な東京オリンピック破壊計画」はありうるか
――ニッポン放送アナウンサー・吉田尚記が語る
ポリティカル・フィクションの可能性
☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 ☆
2014.6.26 vol.101

今回のPLANETS vol.9(P9)プロジェクトチーム連続インタビューに登場するのは、ニッポン放送アナウンサー・吉田尚記さん。2008年には特派員として北京オリンピックの取材も経験した"よっぴー"は、なぜ2020年の東京オリンピック破壊を企てているのでしょうか?

【PLANETS vol.9(P9)プロジェクトチーム連続インタビュー第9回】 

この連載では、評論家/PLANETS編集長の宇野常寛が各界の「この人は!」と思って集めた、『PLANETS vol.9 特集:東京2020(仮)』(略称:P9)制作のためのドリームチームのメンバーに連続インタビューしていきます。2020年のオリンピックと未来の日本社会に向けて、大胆な(しかし実現可能な)夢のプロジェクトを提案します。

ニッポン放送アナウンサーとして、一見オリンピックに賛同すべき立場のように思える”よっぴー”。
しかし、ひとたびその構想を語り始めたら止まらないほど、「オリンピックの破壊」に対して意欲を見せました。2008年の北京五輪ではメディアパスを持って取材したという”よっぴー”の考える「2020年・東京オリンピック破壊計画」とは――? 
 
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▼プロフィール
吉田尚記〈よしだ・ひさのり〉

1975年生、ニッポン放送アナウンサー。慶應義塾大学文学部卒業後、1999年にニッポン放送に入社、制作部アナウンサールームに配属。以来、「オールナイトニッポン」シリーズ、「ミューコミ」などの番組を担当。現在は「ミュ~コミ+プラス」などを担当しており、2012年にはギャラクシー賞DJパーソナリティ賞を受賞。自身のラジオ番組ではTwitterなどネットを積極的に活用し、さらには自らトークイベント「吉田尚記の場外ラジオ #jz2」を開催するなど、その先駆的な取り組みが注目されている。放送業界でも一、ニを争うアニメやゲームのオタクとしても知られる。愛称は「よっぴー」。
 
◎聞き手:宇野常寛/構成:ミヤウチマキ
 
 
■東京に決まらなかった時の「x」を常に想像した
 
――ニッポン放送アナウンサーであり、一般的にはオリンピックに対して「賛同」側と思われているであろう吉田さんが、PLANETSが次号で計画している「オリンピック破壊計画」に参加していただいた動機を教えてください。

吉田 少し前の金曜日の夜、会社に残って、宇野さんの「オールナイトニッポンZERO」を聴きながら仕事をしていたんですよ。そこで〈オリンピック破壊計画〉という単語を聴いた瞬間「あっ」「これはやばい」と思いました。

もちろん自分の立場を顧みると、「オリンピックを破壊しよう」なんていう企画にストレートに賛同すべきでないというのもわかっていたんですよ。でも宇野さんの、「なぜオリンピックを破壊するシュミレーションが必要なのか」という理論武装がしっかりしていたので(笑)、もうこれは正解ですということで、今回の企画に参加をお願いしました。

そもそも僕は、2008年の北京オリンピックのときにニッポン放送の特派員として1ヶ月まるまる北京にいて、メディアパスを持って一般的なオリンピックのメディア取材をしたことがあるんです。一般の方はあんまりご存知ないかと思いますが、オリンピックの中継に関しては、JC(ジャパンコンソーシアム)というシステムが作られていて、NHKでも民放でも同じ音声・同じ映像が行くようになっています。

たとえば、ニッポン放送に松本秀夫さんというアナウンサーがいますが、この人の声がNHKでも流れたりするわけです。つまり他局のアナウンサーの声が流れるほぼ唯一の回路なんですね。逆に言うとジャパンコンソーシアムに所属しているあいだはニッポン放送のアナウンサーであってもニッポン放送の仕事をしてはいけないという決まりがある。でも、オリンピック開催都市って、その時期に世界中で一番話題になっている場所だから、その街について報道したいじゃないですか。だから誰か必ず特派員を派遣するんですが、その特派員として行っていたのが僕なんです。

ちなみに僕がメディアパスを持って何をしていたかというと、何も考えずにオグシオ(バドミントン日本代表選手(当時)の小椋久美子と、潮田玲子による女子ダブルスペアのこと)の隣で野球を見ていたりしました(笑)。それで特派員としては街のネタとかを拾ってくるのですが、他のメディアが「日本のグッズがここで売られています!」みたいなことをやっているのを横目に、僕と一緒にニッポン放送から派遣されていた報道部の人は北京五輪のマラソンコース42.195kmを実際に走っていたり、僕のほうは北京に一軒だけあるメイド喫茶の取材に行ったりしていた(笑)。

でもそうやって取材をしているなかで、メディアがどんなバッグチェックを受けて、どういう導線で動いている時にどういうセキュリティホールが存在しえるかを僕は体感として知っているので、この知恵は今回の「オリンピック破壊計画」に還元できると思ったんです。知恵と言っていいのかわからないですけど(笑)。

このあいだの東京オリンピック招致のときは、パブリックビューイングが駒沢で行われていて、僕が司会を担当したんですね。その会場にいるほぼすべての人が「招致は東京に決まる!」と強烈に思っている一方で、司会者の僕はそれどころじゃなかった(笑)。「招致に落ちたらどうやってこの盛り上がりに収集をつけられるんだろう……」って、頭の中はもうそればっかりでした。もちろん結果的に決まってよかったけれども、決まらなかったときの「x」という想定をを他の人よりもできたというのはある気がするんです。

実際にその会場で、決まった瞬間に全員が同じ方向を向いたんです。あのときに感じた気持ち悪さが、「決まらなかったときの『x』」を想定していただけに少し自分のなかに残っていて。それに、この気持ち悪さを感じているのは僕だけじゃないはずで、オリンピックが東京に決定したことを「ん?」って思っている人も少なくないでしょう。そう考えると、東京オリンピックというのは一方で考えつつ、そのオリンピックを破壊する計画というカウンターを考えておくことの価値ってすごいあるな、と思ったわけです。

あと、先に思っていることを言ってしまうと、この〈東京オリンピック破壊計画〉というのはすごくスペクタクルなものになるので、これは映像化するべき、そしてできればアニメ化するべきだと思ったので、それも宇野さんたちとやりましょうよということで話をしているところですよね。
 
 
■トップダウンではなく、ボトムアップで迎え入れるオリンピック
 
――吉田さんは放送業界でも一、ニを争うアニメやゲームのオタクとしても知られていて、今まで見てきたフィクションの数はかなり多いはずだし、もちろんこれまでの人生経験で得たものもたくさんある人なわけですよね。今回の東京オリンピック破壊計画に関して、今までコーディネーターだった吉田さんが、作り手側に踏み出す感じがあるんですが、そのあたりはどう感じていますか。

吉田 僕は学研の通信教育をやりながらコペル21を読むような子供だったので、1986年のつくば科学万博にも行っているんですよ。ただ、86年の30年前に想像していた未来図と、今度のオリンピックに提出された未来図はほとんど変わっていない。要は人間的な実感のない〈つるん〉としたものなんです。どう考えても、30年前の未来図と、今描く未来図が同じであっていいわけがない。ただ、その一方で86年の段階では、携帯電話がここまで普及しているということすら予測できていなかったんですよね。いい意味で完全に予想が裏切られているんですよ。なのに日本は東京オリンピックに向けて、また将来確実に裏切られる未来図を必死に描こうとしている。もう、「なにやってんの」って話なんですよ。

前に、株式会社テレパシーの井口尊仁さんとお話したときに、「世界はどんどんスケスケ化していってる」という話をしたんですね。初めて行く街ならどこが美味しいレストランなのか分からなくて、当てにできるのはガイドブックくらいだった。でも今なら「食べログ」を見てわかってしまう。そうでなくてもTwitterで「この街で美味しいところあったら教えて」って呟くだけで、すぐに情報が集まってきますよね。世界がそういうふうに透明化して、情報が取りやすくなっているのは間違いない。

この現象って、誰か旗ふり役が命令してこうなったわけではなくて、みんなが「スケスケの方がいいじゃん」って無意識に思っているからこそ、今こうなっているのがすごいと思うんですね。そういう強制力がない、旗ふり役がいないところは素晴らしい。でも東京オリンピックで提示されている未来像って、旗ふり役がいることが前提になっているんですよね。

――「トップダウン方式に思える」っていうこと?

吉田 そう、これがあんまりよくないなーと思っている。それと、デジタルが発達しすぎると人間味がなくなるって昔は言われていたんですけど、これは結局逆だったんですよね。どんどん人間味を帯びてくるのがデジタルだったと。

――むしろ、今はコミュニケーション過剰な世の中が出現していますからね。

吉田 そうなんですよ。だから2020年のオリンピックって型通りにはならないだろうし、なっても面白くないですよね。

例えば一昔前のオリンピックの楽しみ方で言うと、選手の成績よりも、「最も美人な選手は誰か!」みたいなものもあったじゃないですか。これは絶対にトップダウン式では行われない楽しみ方だけど、絶対に僕らの中にある。だから、オリンピック自体をボトムアップで迎え入れたときにどうなるのかに、すごく興味がありますね。昔、みなみはるおがやっていた東京五輪音頭みたいな、ああいうマヌケな感じって素晴らしいと思うんですよね。なぜ音頭なのかもわからないし、歌詞もまったく意味不明。

だから、たとえばテロリストがテロを起こす計画をシュミレーションするにしても、こういうボトムアップのバカバカしい部分は絶対に描きたい。「日本人は2020年の段階で、どういう風にオリンピックに対してバカバカしく接することができるんだろう?」と思います。僕や宇野さんがパトレイバーを大好きなのだって、そういった「ゆるさ」があるからじゃないですか。

――どうせやるのなら設定をつくって雑誌で発表して「面白かったねー」で終わりではなくて、この僕らがつくる「東京オリンピック破壊計画」を、作品をつくるベースにしていってほしいという話があったけど、ここに関してもう少し詳しく話を聞かせてください。

吉田 テロリストがテロを起こすなら、一箇所じゃないわけですよね。たとえばオリンピックでIOC、JOC側が用意する白地図ってあるじゃないですか。その白地図を補完して、僕らが持っているレイヤーをトレーシングペーパーでもう1枚載せられると思うんですよね。「ここでこういうことが起きる危険性がある」「ここにはこういうセキュリティホールがあって流用できてしまうかもしれない」――というようなことを、ぜんぶ乗っける事によって、自由な想像を巡らせる状態をつくって、実現可能なテロ計画を100も200も立てられればいいと思うんですよね。

個人的には何かにダメージを与えるというよりも、愉快犯が面白いと思う。それも単に自分が目立つためにテロを起こす愉快犯じゃなくて、その「愉快」の中身をもう少し突き詰めて考えていくと、おもしろいことができるんじゃないのかな。たとえば、そのテロリストの犯行でものすごく小さな国の知名度を上げることに成功して、その小さな国が元気になる、とか。

テロと一口に言っても物理的なテロだけではなく、今だったらサイバーテロとかもありますよね。でもそれって、コンピューターウィルスをばらまいたり、最近ならビットコインをマイニングして何もないところからお金を儲ける、みたいなことが最先端じゃないですか。そうではなくて、もっと中身に関する色んな発想を入れていきたいと思っています。
 
(了)
▼インタビュー動画はこちらから。
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【次回予告】

我らがメールマガジンに惑星開発委員会が放った次なる刺客は、國分功一郎!

哲学者・國分功一郎が考える、効率的な組織運営に必要なものとは?
そして、多くの人が職場で円滑な人間関係を築けない根本的な原因とは?

次回、ほぼ日刊惑星開発委員会
帰ってきた『哲学の先生と人生の話をしよう』
第3回テーマ:職場内の人間関係に関する悩み
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