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今日はひとつご提言させていただきたいことがあります。
ウイスキーは皆さんご実感の通り高くなりました。中国人愛好家が増えたから等々、消費者母体の拡大がその要因だと言われます。
確かにそのとおりかもしれません。
けれども日本におけるそれは、理由はそんなこと一つではないと思えるのです。
私のような老馬にとっては、もちろんかつての良さをわかってもらいたいですし、若い人と一緒になって現在と未来も楽しみたいと思っています。
そんななか持ち寄り会イベントや、個々のグループで、我々のような70年代以前層が役目を果たすことが出来る、機会設定も増えてきているような気がします。
一方、大変危機感を覚えることには、かつて「どこかの店で飲んだ」「インポーター等々からのサンプル献上品をテイスティングした」けれども、【今現在、直にみなさんに実物ボトルをシェアできない】(ただお一人はそれが出来るボトルバンクとなっておられるようですが。。。)そんな方々が、ウイスキーのプロを民間とはいえ「認定」するとか、「検定」するとか堂々とやられています。
私はウイスキーは飲み物なので、飲んでいない人はツアーガイドにはなれても、ウイスキーそのもののガイドには不向きだと思うのです。
ましてやウイスキーをガイドしてお金を得るのであれば、その語る内容を論拠付ける、共に実体験できる、実物をまずは自分も一緒になって飲んで、お客さんと一緒になって語るべきだと考えます。
大変申し訳ないですが、一生懸命その(資格認定試験を)受験をして、知識を身に付ける方が大勢いらっしゃると思うのですが、その身につけた蒸留所の知識が、【実体験として】活かせるようになるためには、我々おっさん勢のフォローも必要ではないかとも思いますし、まずは当人がその必要性を理解してもらわなければいけません。
いくら実体験を伴わない知識披露をできたとしても、温度として聴衆者に正確に伝えることは不可能だと思うからです。
要は資格認定側が、その教えている机上の知識を、実物目の前のボトルで【ひも付けさせて】、経験・実感させることをしないと危ないということです。
ところが受験者数の拡大を狙ってか、飲もうが飲むまいが関係ない、現実上のツアーガイド試験になっています。
あくまでお客さんに中身を実感させることと共に、プロとしてウイスキーを語り、サーブしお金を頂くべきなのではないかと。
ところが近年高すぎて実物を出せないまま、店でもSNSでも一部に(実体験の伴わない)知識語りだけが先行しています。これは私の実体験としても危機感を覚えずにはいられないのです。
これでは私が飲み始めた90年代半ばの繰り返しです。89年以前に高すぎて飲めなかった人々があまりにオールドボトル、昔は⚪︎⚪︎ブレンデッドの原酒とか言ってましたが、それを飲ませもしなかったのに素晴らしかった素晴らしかったと若手に自慢をする。
飲んでないお前にはウイスキーは理解できないと。
確かにその通りなんです。
けれどもそこでも実物が提供されなければ、推測と妄想だけが高まるだけで、現実実物と人々の語る内容がどんどん乖離していくばかりでもあるのです。
いわゆる思い込みと信じこみで現実を埋める、というやつです。
昔はまだ買えました。けれど今のレートで買えという方が難しい水準に達しています。
何度も繰り返しますが、プロフェッショナルという資格看板を抱えつつ、お客さんからお金を取るにもかかわらず、その論拠となるボトルすら提示しない(本人も飲んだか飲んでいないか、少なくとも現在提供できるボトルは持っていない)事態。
机上の知識を身につけただけで、飲み物であるウイスキー実物に関して経験がないのです。それでもプロなんだそうなんです。
これでは若手の入門者は疲弊します。思い込みます。信じ込みます。
実物を確認しないことには、曖昧な論拠でお客側に妄想を抱かせるだけです。
日本ではそんな妄想でさらに市場価格が上がり続けているように見えます。
よく市場は思惑で上がり、現実を知ると下がるといいます。
いまやインポーターマージンが比率ではなく、金額として信じられないほど高上りになっています。BARも仲介に入って、余計な買い占め価格高騰に加担している現実です。
本来、プロが現実をお客に知らせることさえ怠らなければ、「10年前まではこの中身のクオリティで1万円代だった。」「冷静に考えれば、現行品もそう大差ないコストで作れているはずではないかと。」気づくはずなのです。効率は良くなりはしても、落ちることは、まず能動的にそうしない限り考えにくいです。
なにより、今年一年を振り返った時、多くの有望な飲み手が価格面で頓挫し、ウイスキー界隈から多数いなくなりました。
とても残念です。
ウイスキーが飲み物であれば、その飲み物を魅力高いものにする知識ではあれ、飲みもしない、実物を出しもしないのに妄想の土台とするだけの知識を弄することは、ウイスキー自体の現実と乖離していくばかりなのです。
こんなことでいいのでしょうか。
おっさん勢のみなさんは特に、資格認定側の尻拭いでもしましょう。妄想ではない、机上の空論ではないウイスキーの魅力を共感共有しましょう。
そしてプロになった皆さん、その知識とリンクしているボトルを、ぜひ若手の皆さんに提供してください。まずは自らが得た知識を論拠できる実物のウイスキーを抱えて、お客さんに実感して貰いましょうよ。
よろしくお願いします。