第257号 2018.2.6発行
「小林よしのりライジング」
『ゴーマニズム宣言』『おぼっちゃまくん』『東大一直線』の漫画家・小林よしのりが、Webマガジンを通して新たな表現に挑戦します。
毎週、気になった時事問題を取り上げる「ゴーマニズム宣言」、『おぼっちゃまくん』の一場面にセリフを入れて一コマ漫画を完成してもらう読者参加の爆笑企画「しゃべらせてクリ!」、著名なる言論人の方々が出版なさった、きちんとした書籍を読みましょう!「御意見拝聴・よいしょでいこう!」、読者との「Q&Aコーナー」、作家・泉美木蘭さんが現代社会を鋭く分析「トンデモ見聞録」や小説「わたくしの人たち」、漫画家キャリア30年以上で描いてきた膨大な作品群を一作品ごと紹介する「よしりん漫画宝庫」等々、盛り沢山でお送りします。(毎週火曜日発行)
【今週のお知らせ】
※「泉美木蘭のトンデモ見聞録」…4週間に渡り、フェイクニュースとジャーナリズムの価値の崩壊、広告代理店とルールなき欲望の市場万能主義、その末に起き得る企業による情報統制について書いてきたが、その結果、その記事そのものが、企業による情報統制に見舞われるというトンデモが起きた!過去にFacebook社がベトナム戦争の象徴的な写真「ナパーム弾の少女」を一律に検閲し、「児童ポルノ」と認定して削除してしまったという事件を紹介したところ、なんとApple社から「『ナパーム弾の少女』は児童ポルノに当たる」として削除要請が来たのだ!なぜこんなことになったのか?
※「ゴーマニズム宣言」…日本相撲協会の理事候補選挙を前に、貴乃花親方はブログで「相撲界の未来」について語り、驚くほど端的に保守の精神を述べていた。ところが保守を名乗る言論人の間でも、貴乃花に対する評価は分かれる。例えば西部邁氏は生前、白鵬を評価して、貴乃花をボロクソにこき下ろしていた。保守を名乗っている人でも、社会問題についての見解がまったく異なることがあるが、果たして「真の保守」とは何なのか?
※よしりんが読者からの質問に直接回答「Q&Aコーナー」!安倍政権が調子に乗り続ける一番の原因は?毛糸のパンツやカイロを使うことはある?大竹まこと氏の娘が大麻所持で逮捕された件をどう思う?一番好きな果物は何?国民栄誉賞は政権の人気取りでは?無声映画は好き?…等々、よしりんの回答や如何に!?
【今週の目次】
1. 泉美木蘭のトンデモ見聞録・第67回「Apple社、『ナパーム弾の少女』を児童ポルノ判定」
2. ゴーマニズム宣言・第263回「相撲、表現規制、原発、対米関係…保守も意見は分かれる」
3. しゃべらせてクリ!・第215回「ぽっくんの未知との遭遇!ファースト・コンタクトぶぁい!の巻〈前編〉」
4. Q&Aコーナー
5. 新刊案内&メディア情報(連載、インタビューなど)
6. 編集後記
第67回「Apple社、『ナパーム弾の少女』を児童ポルノ判定」 AIが暴走したというフェイクニュースをきっかけに、仮想世界のなかに企業が作り出した欲望のシステム、それによる価値の崩壊と平板化、感受性の劣化へと引きずられそうになってゆく現実を書いてきた。
で、このまま無関心・無自覚のままでいると、一企業が設けた「わが社の規定」によって画一的な情報統制がなされてしまうよ、そう、Facebook社が「ナパーム弾の少女」を機械的に児童ポルノ判定して削除したようにね。
・・・という記事を書いたら、その記事中の「ナパーム弾の少女」が児童ポルノ判定されて、削除させられてしまった!
まじか。
■経緯
経緯を改めて書いておく。
1月30日に配信した記事について、翌31日までに、Apple社からニコニコチャンネルを運営するドワンゴ社に対して、「ナパーム弾の少女」が児童ポルノに当たるとして、削除依頼があった。
どうしてAppleから? 青天の霹靂すぎて驚いたが、ニコニコチャンネルにスマホから簡単にアクセスできる機能として、「ニコニコチャンネルアプリ」というものが配信されており、ライジングをスマホの専用アプリで簡単に見られるような仕組みがあったらしい……。
そしてこのスマホアプリが、Apple社の配信基準に合わせて運用されているため、ドワンゴを飛び越えて、Appleの規約に触れたということだった。
ドワンゴにとっては、Appleと契約の上でスマホアプリのサービスを利用しているわけで、Appleをコントロールすることは不可能。ドワンゴのチャンネル担当者は、記事を読んでくれていて、「記事の意図からも、該当画像が児童ポルノ画像には当たらないと考えている」とのことで、なにか他に対応策はないか検討してくれたようだが、不本意ながら、現状では削除するしか方法がないということだった。
■Appleは人道に反しすぎている
しかし、どこの誰が、あの写真を見てポルノだと思うのか。いるとしたら、相当特殊に病んでいる人間で、そのような特殊なごく一部の人間のために、紋切り型のルールを全世界に適用し、歴史的に重要な報道写真まで排除するなんて、Appleは異常すぎる。
だいたい、ナパーム弾はアメリカが開発したものだろう。あの写真だって、南ベトナム軍(=アメリカが加担した側)の空爆による実態を示しているのだ。広島・長崎の原子爆弾によって、身ぐるみを吹き飛ばされてしまった少女の写真があったとして、それを掲載したらアメリカの会社からポルノ呼ばわりされ、一方的に削除されるようなもの。人道に反するのもいい加減にしてもらいたい。
それに、あの写真に写っている少女、キム・フック氏は生存しており、大人になって、現在も反戦活動家として各国で講演を行っている。背中一面に壮絶なケロイド状の火傷の痕のあるキム・フック氏が、生まれたばかりの我が子を抱きしめる写真もかなり印象的だ。来日したこともあり、日本の大学などで講演会も行っている。もちろん、あの写真をみずから説明しながら。
キム・フック氏は、自伝も出版しており、自伝の表紙にも、あの写真が使われている。
しかも、少女時代の逃げ惑う自身の姿の部分をあえて明るく加工し、スポットライトを当てたようなデザインになっている。自身の存在意義を示す写真でもあるだろう。だが、その本の書影をここに掲載したら、またAppleから削除依頼が来るのかもしれない。
「The Girl in the Picture: The Story of Kim Phuc, the Photograph, and the Vietnam War」という洋書だ。戦争で過酷な体験をした生き証人である女性の自伝が、児童ポルノ扱いされるなんて、本当に腸の煮えくり返るデタラメな世界だ。
■たどりつかない…
こういうことを、直接Appleに言って、見解を聞こうと思ったのだが、まず、どこに連絡したらいいのかがわからない。
コメント
コメントを書く保守と名乗る言論人は多いけれど、本当に保守に値する人は少ないと思う。保守は昔を知り、今を知り、さらにはその中でバランス感覚を求められる非常に難しいものだと思います。
だからこそ、例えばよしりん先生、西部氏、親米保守の間で意見の相違があるわけで、その中でやはり保守と言える人は、よしりん先生しかいないだろうと僕は思います。
親米保守は弱いものに強く強いものには弱く、だから、現状がおかしくても、変えようとしないどころか、おかしいとも思いません。
また、西部氏も社交という名の世間に絡めとられることがあり、やはりブレが生じてしまう。
しかし、よしりん先生は世間におもねらず、思考も停止しない、そして、時には闘うので、純粋にバランスをとることができるわけです。
保守は精神の素養を積んだ人こそ、名乗れるものなのでしょうね。
吉岡里帆の投げキッス動画なんて、知りませんでした。
先生情報早いなぁ~~。どっから手に入れたのかなぁ。
「吉岡里帆 投げキッス」で、ツイッターかYouTubeで
検索したら出てきます。
たしかに可愛いですが、嫉妬したおそらく女性のアンチが
うずまいてるようですね・・・。
(男は高橋一生に嫉妬しないのにね)
裕木奈江みたいにならないよう祈りますが。。
今号の感想です。これで、今回のコメント欄のしめになるのかな?
泉美木蘭のトンデモ見聞録・第67回「Apple社、『ナパーム弾の少女』を児童ポルノ判定」
木蘭師範がアップル社に問ひ合はせをされてゐる下りをよみ、まるでPC修理やOUTLOOKの設定が分からずにパソコン関連会社に電話をかけまくって長時間待たされてゐる場面を思ひだしました。ああいふ体験は、やった人でないと分からないですよね。アウトルックほど設定がむづかしいソフトはない!あれは缺陥ソフトだ。
などといふ私怨はさておいて、前回も記しましたが、あの少女のことは、はじめて見た人は「何だ」、と驚愕してしまふのですが、事情を知れば知るほど戦争への怒り、攻撃をしかけたものの残忍、冷酷、没義道さが伝はってくるものです。機械的に駆除してよいものではないです。
かういふものを検閲する人たちも大変だらうと思ひますが、何とかできぬものでせうか。機械には高度な判断はできず、人間がプログラムしたことしか不可能なのだから。そのプログラムが人間を打ち負かし始めてゐるのだから、世の中、つくづく単純化・省略化してをり、火の鳥の未来篇で、核爆発が連鎖しておきる事態が現実のものになりつつありあるのだ、と感じさせられます。古い生活様式に逃げ込んだり、あるいはスマートフォンからダダ漏れする情報に縛られて、身を任せてゐて宜しいのでせうか。今こそ紙の書物から何かを苦闘して学ばねばならぬ時だらうと思ひます。
と私が言ってみたところで、便利なものは便利だ、車のはうが小回りが聞いて、自分のゆきたい場所につれていってくれて楽だ、インターネットもゐながらにして何もかも分かるから、と反駁されるのでせうか。
ぢゃあ、目が悪くなったら同じぢゃないか、と。車はガソリンがないと、スマートフォンは充電しないと動かせないではないか、と。
ゴーマニズム宣言・第263回「相撲、表現規制、原発、対米関係…保守も意見は分かれる」
相撲のことについては、もう何度も記したし(今回も)、しょくしゃう気味になりましたので、「世間」とか「社交」のことについて。
正直言って、私は人づきあひは下手なんてレベルではないです。いつも、「ゐばってゐる」とか「自慢話ばかり」みたいな言はれ方をされるのですが、何が何だかさっぱりです。なぜ、「この部分はかうだから、このやうに改善した方が良い」とか、口や文章でつたへないのだらうか。それだけ人間の感情は、(先のインターネットの自動検閲の件とも重なりますが)、冷静な判断力を奪はせ、理性と論理にもとづく結論を阻碍するのだらうか、と。
かくいふ私も、かなり感情家ですが。医療機関にかよってゐるのも、(かなり昔に)姉に言はれて、己を外側からチェックしてもらひなさいといふアドヴァイスをきいたからで、言はれた当時はショックでしたから(今は、さういふのは偏見だ、と感じます。自分は何も悪いことはしてはゐないのだから。一般的に見て、悪いことをしないやうに、さういふところへ通ふのだから)。
私たちは、自分のことが完全に分かるほど、萬能なのでせうか?むしろ、己の敵は、内なるところにこそ、潜んではゐますまいか?「とかトントン」といふ音も、そのやうなものではないか、と。
個人的な話はともかく、私はかういふ表記をしてゐますが、実は山本有三の作品が大好きです。けれども「いかに生くべきか」を示したからだけではないです。そこには人間の感情や対立、矛盾もかなり描かれてゐるからです。
とりわけ、有名なのが「路傍の石」ですが、実は2ヴァージョンあって、朝日新聞に連載された最初のものでは吾一は新雑誌をつくるのに次野先生と対立してしまひ、一人夜明けの工場で活字を拾ふ、といふ場面で「第一部完」となってゐます。「いかに生くべきかも重要だけれども、自分らのやうなものには今をどう生きるかも大切だ」みたいな吾一の述懐を語らせて。
吾一と次野のやうに、親密な心の結びつきで結ばれた師弟においても、かくの如き対立が起こるのだから、人は個人それぞれ異なってしまって、仕方ないのだと思ふのです。そんな中で、では人類、世界普遍の共通の真理みたいなものを見いだしてゆくわけなのだから、哲学が「愛知」といふ名前だったとしても、それがむづかしく、難解で、かつ爽快ではないものになるのはやむを得ないのではありますまいか。「路傍の石」自体が、鉄橋で命をかける場面を有する、命がけのもの語りであり、丁稚奉公からの逃亡やおとむらひ稼ぎといふ世の底辺をも描写したものなのだから、そこから何かをよみとるのは真剣勝負でないと讀者の側もいけないのでは、と思ひます(笹さんとのヴィデオの内容も踏まへて記してみました)。
ぎりぎりですが、こんな感じです。東京新聞の記事については讀解を要するので、また改めて。
それでは次回配信を期待します。
狼少女
狼少年
配信ありがとうございます。
今はアップルに情報だけでなく表現も握られていますよね。イラストレーションのようなプロ仕様なソフトウェアは皆マックオンリー。互換性の関係からスマホもアイホーンにしなくちゃならないし…。
一企業にこんなにすべてを握られてる恐怖は、もっと知られて良いと思われます。
しかもその企業がAIだよりで融通が効かないとは…。クレーム対策や経費対策で人間性を排除とか、どんなディストピアだよ、と思いました。
相撲について…。
白鵬関は改革の人なのでしょう。今の相撲界を新しくしたい。が、新しい事が全て素晴らしいと言う訳ではない、と私には思えます。
何故なら最近の白鵬関には、日本相撲や横綱という存在に対しての尊意が感じられないのです。
いままで何を成してきたかも重要ですが、これから何を為そうとしているかも大事ではないでしょうか?
白鵬関の中には故郷のモンゴル相撲があるような気がします。あちらの方がスポーツ性が高く、現代人には理解されやすい。日本とモンゴルのアウフヘーベン、と言うと聞こえは良いですが、時代後れの暴力や隠蔽があって、日本相撲への尊意が無いとなれば、単なるモンゴル相撲の亜種にしかなれません。だから貴乃花親方は必要以上に警戒心を剥き出しにしているのでは無いでしょうか?
ただ親方は相撲の世界しか知らないようなので、やり方に問題はあるし、結果ネトウヨになつかれてバランスが取れて無いと思えるしで、相撲はもうじり貧だなぁ、と思えてなりません。
今日のライジングも楽しみです。
小室さんと眞子さまには、どのような形であれ本当にお幸せになって頂きたいです。
週刊誌はいつまでも美智子さま雅子さまを苦しめれば気が済むのでしょうか。
安倍の周りにいくらでもネタがあるのに!
>>142
リボンの騎士さん
よしりん先生の作品や、ライジングへの感想もいつもながら考察と直感の深さ・鋭さに敬服しております。
映画作品に対する造詣の深さも刺激になります。
以前、コメント返信戴いた時の映画作品をまだ観ていませんが(汗)(すみません;;)
作品を改めて観ることで、刺激と、教養+感性の貯蓄が出来るのかなと感じております。
しゃっちょこばる必要はないのかもしれませんが、
ライジングの掲示板が設けられた意味を改めて考えて、感想を書いていきたいものですね。
ライジングの購読のきっかけになったのが、この掲示板でのファンの方々の書き込みの鋭さでした。
今もそういう書き込みを見るにつけ、学ばせて戴いております。
そうなんですよね。ワイドナショーの三浦瑠璃の発言の批判記事が目に入ったので見てみたらツネヒラちゃんで、何度も名前確認しましたよ~
松本人志のツイッターも確認しました。
何が批判されているかとか、中身はどうでもいいのですね。
もう録画したガキ使も観る気がしない…
(T_T)