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■久瀬太一/7月25日/22時35分
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■久瀬太一/7月25日/22時35分

2014-07-25 22:35
    久瀬視点
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     オレンジ色のライトが、きぐるみの横顔を不吉に照らしていく。
     男性とも、女性ともつかない、無機質なアナウンスが聞こえた。――次は7月27日です。
    「おい、明後日じゃないか」
    「ああ。いいだろう? 倍も時間がある」
    「ふざけんなよ」
     オレはバイトと就職活動をしたいんだ。真っ当な大学三年でいたいんだ。
     バスがトンネルを抜ける。

           ※

     窓の外にみえたのは、オレの部屋だった。
     ――またかよ。
     どうしてマンションの3階がバスの窓からみえるんだ。
     まったく、ふざけている。いまさら常識なんてものに期待もしていないけれど。
     暗い時間だ。部屋の中の時計は、午後8時を指していた。その手前で、2人が向かい合っていた。
     一方は、オレだ。手にはスマートフォンを持っている。それを、じっと覗き込んでいた。
     もう一方は、サングラスをかけた男だ。はっきりとはわからない。だが、今日あの廃ホテルで出会った男のように思った。
     サングラスはオレに拳銃をつきつけていた。――拳銃。それも、フィクションじみている。
    「お前には箱を開けられなかった」
     とサングラスは言った。
     テーブルの上には、見覚えのある小さな箱が置かれている。あの、アタッシェケースに入っていた小箱だ。南京錠のような、不思議な鍵が、4つもついていた。
    「偽物は、死ね」
     発砲音。同時に、バスがまたトンネルに入った。

    【BAD FLAG-03 4つの鍵】

           ※

     しばらく口を開けなかった。
     きぐるみがその不気味な顔を、こちらに近づける。
    「どうだい? 自分が死ぬ姿をみるのは」
     オレはゆっくりと首を振る。
    「ショックだよ。もちろん」
     なんてことだ。あと、たった2日で、オレは撃ち殺されるのか。
    「どうすればオレは生き延びられる?」
    「知らねぇよ。箱を開けるんじゃないか? さっきの話の感じだと」
    「どうすれば箱を開けられる?」
    「どうしてオレに訊くんだよ。オレは少年だぜ? 難しいことはなーんにもわからねぇんだ」
     オレはため息をつく。どうしろってんだよ、一体。
     軽い口調できぐるみが言う。
    「さて、そんなことは置いといて、だ」
    「オレが死ぬのがそんなことかよ」
    「本番は、これからだ。バッドエンドは8月24日に訪れる」
     きぐるみがそういうのと同時に、再びバスが、トンネルを抜けた。

           ※

     今度は、道端だ。
     オレはいない。――7月27日に死ぬのなら、当然か。
     そこにいたのはみさきだった。
     佐倉みさきが、両目を見開いて、まっすぐにこちらをみていた。
     彼女の胸には赤い染みがあった。初め、それは小さな染みにみえた。だが急速に広がっていく。朝顔が咲くのを早送りでみているようでもあった。
     彼女の口元から一筋、赤い血が流れて、そして。
     みさきはゆっくりと、前のめりに倒れた。

    【BAD FLAG-?? 8月24日】

           ※

     オレは額に手を当てる。
     ――なんてことだ。
     また、彼女なのか。どうしてまた、彼女が血を流すんだ?
     不条理だと思った。納得できなかった。
    「どういうことなんだよ!?」
     思わず、叫ぶ。
     だが相変わらずきぐるみは気味の悪い笑みを浮かべている。
    「まずは、お前が生き延びろ。話はそれからだ」
     いや、そりゃ生きてたいよ。どうしろってんだよ?
    「そろそろ時間だ。また明日会おうぜ」
     ときぐるみは言った。
    「毎晩出てくるつもりかよ」
    「毎晩ってことはねぇよ。オレだって暇じゃねぇんだ」
    「お前にどんな用があるんだよ」
    「子供は遊ぶのが仕事だよ」
    「ロケットだろ。飛べよ」
    「もちろん。どんどん飛び出すぜ」
     思わずため息が漏れた。こいつとは会話が成立しない。
     バスが停まり、ドアが開く。オレは席を立った。
    「じゃあな」
    「ああ――」
     ぼそりと、きぐるみが言う。
    「ソルを信じろよ」
     ソル。だから、何者なんだよ、そいつは。
     オレは肩をすくめてみせる。
    「だんだん、信じてもいい気になってきた。でもあのスマホ、電波入ってないぞ?」
    「いろいろ難しいんだよ。ソルはずっと遠い場所にいる。でも、本当に大事な時には、その声が届く」
    「そんなもんか」
    「ああ。そういう風にできている」
     オレはきぐるみに背を向けて歩き出す。
     とにかく、明後日、生き延びなければならない。
    読者の反応

    フミ@自称bell初期情報係 @ayn_l_k 
    こ、公式にまで大切にされなくなった久瀬(笑)死ぬことが『そんなこと』かよ! 


    子泣き中将@優とユウカの背後さん @conaki_pbw 
    まずは明後日…あの鍵の箱か 


    tanpopo @touyoutanpopo 
    よっぽど回避が難しいのか、FLAGの数が多いのか・・・ 


    yunyanpuru @yunyanpuru 
    明後日までに4つのカギって…大丈夫か?


    鶏肉 @nanashi_1029 
    ホームページ更新されたっぽい


    蓮霧(れんむ)は愛領@夏休み @renmu0309 
    BADFLAGやっぱり増えてるな・・・ 


    ひげ @HiGravityEdge 
    偽物? 何の偽物だって言うんだ? そういえば、選ばれるだの何だのスーツも言っていたな…  もしや、ソルの援護を受けられる事が、選ばれるという事か?  





    ※Twitter上の、文章中に「3D小説」を含むツイートを転載させていただいております。
    お気に召さない場合は「転載元のアカウント」から「3D小説『bell』運営アカウント(  @superoresama )」にコメントをくださいましたら幸いです。早急に対処いたします。
    なお、ツイート文からは、読みやすさを考慮してハッシュタグ「#3D小説」と「ツイートしてからどれくらいの時間がたったか」の表記を削除させていただいております。
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