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■久瀬太一/7月26日/24時30分
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■久瀬太一/7月26日/24時30分

2014-07-27 00:30
    久瀬視点
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     バスはトンネルの中を走っていた。
    「箱は開きそうか?」
     ときぐるみが言った。
     オレは首を傾げる。
    「たぶん大丈夫だろ」
    「そりゃよかった」
     ああ。だから今日のテーマは、オレの生き死にじゃない。
     バスがトンネルを抜け、目の前に未来が現れる。

           ※

     未来の景色が変わっていた。
     7月27日、20時。
     オレがいるのは、狭苦しいホテルの一室だった。今日、チェックインしたホテルの部屋に、馬鹿みたいに突っ立っていた。
     目の前にはあのサングラスがいる。サングラスはオレに、拳銃を突きつけている。
     バスの中のオレは、その様子を観察する。
     ――やっぱり、箱に発信機がついているのか?
     そうだとしか思えない。でも、だとしてもおかしい。なぜこいつは部屋の中にいる? 明日のオレが鍵を開けるはずなんてないのに。
     サングラスは言った。
    「箱はどこだ?」
     未来のオレは、やはり驚いている様子だったが、でも決めていた言葉を返す。
    「鍵を開けられなければ、偽物なのか?」
     サングラスはじっとこちらをみて、それから首を傾げる。
    「どうしてそう思う?」
     オレは笑った。
    「他のことも知ってるぜ。みさきを誘拐したのは、お前だな?」
    「ああ」
    「いまは――少なくとも、昨日の22時ごろは、彼女はどこかマンションの一室にいた。お前と一緒に、だ」
     サングラスはしばらく、言葉を詰まらせていた。
     それまでよりも抑えた声で、そいつは言った。
    「お前、なにを知っている?」
    「答えてもいい。でも、交換条件だ。みさきを解放しろ」
    「ふざけんなよ。お前、自分の状況がわかってんのか?」
     ――わかってるさ。
     きっと、そのサングラスよりもずっと。
     これは実験だ。一度未来をみえるなら、一度死ねるということだ。だから情報収集に努めようと思った。
     オレはあらかじめ、明日の行動を決めていた。目の前のオレはその通りに行動する。
     ――場所を変えるとどうなるか?
     サングラスはやってきた。
     これは、辛い事実ではあった。
     8月24日、みさきの居場所を変えたところで、やはり彼女の運命は同じなのかもしれない。悔しいが、前進ではある。
     箱を持ち帰ったのは、むしろこいつに会いたかったからだ。できれば扉越しに会話するシチュエーションがベストだったけれど。
     でも、試したいことは試せる。
     ――ソルから聞いたことを話すとどうなるか?
     きちんと彼は動揺したようだった。少しだけ、オレに対する興味を持ったのがわかった。
    「なら、とりあえずみさきはいい」
     どうせ、こいつが提案を呑むはずがないと思っていた。
     オレは尋ねる。
    「ヨフカシについてどこまで知っている?」
     あのきぐるみが言っていたことだ。
     ――ヨフカシを捜すんだ。ヨフカシはスイマの中にいる。
     スーツの誘拐犯が激昂した言葉でもある。よく知らないが、重要なワードなのだろう。
     サングラスは頭を掻く。
    「それを話せば、お前も情報源を話すんだな?」
     オレは頷く。
     つまらなそうに彼は言った。
    「ヨフカシは、ヨフカシだよ。スイマの敵だ。だがそれはオレたちの中に紛れ込んでいる。――ただの噂話だ。確証はない」
     こいつはおそらく、嘘をついてはいない。
     でも、少しだけ違和感があった。
    「それだけか?」
    「ああ」
    「それで、あんな怒り方をするかな」
    「なんのことだ?」
    「お前の仲間のスーツだよ。警察に捕まったあいつだ」
     ――本当にいたのか! ふざけるな! 消えてなくなれ!
    「仲間の中に裏切り者がいる、ってのとは少し違ったような気がするよ」
     どう違うのかは説明し辛いけれど。
     ただの不利益ではない、もっと原始的な嫌悪を感じているような反応だった。
     サングラスはまた首を傾げる。
    「ヨフカシは、センセイを独占しようとしているんだよ。噂じゃな」
     ――センセイ。
     あの、誘拐犯が信仰していた何者か。
    「独占ってのは、どういうことだ?」
     サングラスは笑う。
    「わからないなら、話すことはない。スイマなら誰にでもわかることだ」
     さあ、次はお前が話す番だぜと、サングラスは言った。
    「答えろ。どうして、悪魔の居場所を知って――」
     奴が言い切る前に、オレは最後の実験を始めた。
     オレは片脇にあったベッドのシーツに片手を突っ込んだ。引き抜きながら振る。オレは金属バットを握っていた。明日、購入予定のものだ。
     ――上手くいくとは、思えない。
     でもオレの目的は、箱を開けることじゃない。サングラスに殺されなければいい。とりあえず一度、試してみようと思った。
     意表をつけたのだろう。サングラスは驚いた様子で、大げさに後退する。自然なことだ。奴は拳銃を持っているのだから、オレから距離をとろうとする。
     ――意外と、上手くいくか?
     オレはサングラスの動きに合わせて 奴に近づく。銃口が指す場所には注意を払っている。致命傷にならなければとりあえずそれでいい。バットを突き出すようにして走る。狭い部屋だ。サングラスを壁際まで追い込むことには成功したようだった。
     ――行け。
     ぶん殴れ。狙うのは奴の右半身だ。拳銃を持っている方。あれさえ奴が手放せば、状況は有利になる。
     そのはずだった。けれど。
     壁際で、サングラスは笑った。奴はほんの小さく足を踏み出す。その直後、あり得ないことが起こった。
     いつの間にかサングラスはオレの真後ろに立っていた。オレは先ほどまで奴を追いつめていたはずの、でも今はただの壁を、間の抜けた表情で眺めている。
     まるでSF映画のテレポートのように、まったくゼロ秒でオレの背後を取ったサングラスは、笑みを浮かべたまま言った。
    「箱を開けないなら、死ね」
     銃声が聞こえて、バスはトンネルに入った。

           ※

     オレは――バスの中のオレは、口を開けないでいた。
     ただ窓の外を流れていく、トンネルの壁をみていた。
     バッドでの襲撃に失敗したことは、どうでもいい。
     ただ、ただ、目の前でなにが起こったのか、見当もつかなかった。
    「あいつはプレゼントを貰ったんだよ」
     ときぐるみが言った。
    「プレゼントって、なんだよ」
     まさかワープ装置だとでもいうのか?
    「プレゼントには願いがこもっている。願いは夢を現実にする。あいつのプレゼントは『ニールの足跡』だ」
     相変わらず、きぐるみの話はわけがわからない。
     オレは少しでも動揺を収めようと、首を振る。

           ※

     そうしているあいだに、バスは再びトンネルを抜けて、8月24日に到達した。
     オレの目の前で、またみさきが撃たれ、赤い血を流した。

    ――To be continued
    読者の反応

    あわねむ@ソルカナダ班(違) @Awanemu04 2014-07-27 00:32:59
    ヨフカシはスイマの中にいる…
    ヨフカシはセンセイを独占しようとしてる…


    minion @minion_strife 2014-07-27 00:32:05
    あっ、やっぱりヨフカシはスイマ内部の反乱分子なのか? 


    子泣き中将@優とユウカの背後さん @conaki_pbw 2014-07-27 00:32:57
    おいおい…ワープだと?マジかよ… 


    minion @minion_strife 2014-07-27 00:33:43
    サングラス、最初に登場した時も煙のように現れてたな。 


    光輝 @koukiwf 2014-07-27 00:34:47
    『ニールの足跡』=アームストロングの月面の最初の一歩
    恐らくセンセイは奇跡のたぐいを超能力(という名の手品)を会員に渡してたのかな、と。


    子泣き中将@優とユウカの背後さん @conaki_pbw 2014-07-27 00:34:46
    っとTo be continuedか… 


    kao @kao_aki 2014-07-27 00:37:13
    やっぱりそうなりますよねええ。武器を持とうが場所を移動しようが駄目で、久瀬くん死亡フラグを回避するにはとりあえず鍵を開けるしかないか… 


    桃燈 @telnarn 2014-07-27 00:35:59
    謎解きを完全にソルに投げきってる久瀬君wwちょっとは自分も解こうとしろよww 


    アマキー @RaReRua 2014-07-27 00:38:04
    三日目終了ー
    実働班お疲れ様でしたー!





    ※Twitter上の、文章中に「3D小説」を含むツイートを転載させていただいております。
    お気に召さない場合は「転載元のアカウント」から「3D小説『bell』運営アカウント(  @superoresama )」にコメントをくださいましたら幸いです。早急に対処いたします。
    なお、ツイート文からは、読みやすさを考慮してハッシュタグ「#3D小説」と「ツイートしてからどれくらいの時間がたったか」の表記を削除させていただいております。
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