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■久瀬太一/8月1日/24時
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■久瀬太一/8月1日/24時

2014-08-02 00:00
    久瀬視点
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     目を開いて、ここは夢の中なのだとわかった。
     いつの間にかバス停にいた。
     なにをすべきかは、もちろんわかっていた。
     オレはベンチから立ち上がり、バスに乗り込む。

     今日の乗客は2人だった。
     きぐるみの少年ロケットと、ひとりの女性。髪の短い女性だ。このあいだバスに乗った時もいた。双子の片方――ビデオカメラを手にしている方だ。
     最後尾の座席から、きぐるみがいう。
    「よう。ちゃんと生きてたみたいだな」
     オレはきぐるみに、「ああ」と応えて、髪の短い女性に声をかける。
    「貴女が、リュミエール?」
     リュミエール、あるいはグーテンベルク。そのふたりから話をきけ、とソルに言われていた。
     こちらを見上げて、彼女は笑った。
    「そう。私の名前がわかったのね」
    「貴女は、聖夜協会の会員ですか?」
    「昔はね。今は違う」
    「聖夜協会のことを、教えてください」
     だが、彼女は首を振る。
    「それはできないわ」
    「どうして?」
    「ルールだから」
    「ルール?」
    「私はあなたに、なにも伝えてはいけない。聖夜協会のことも、ソルのことも、プレゼントのこともね」
     彼女――リュミエールは、バスの後部座席に視線を向ける。
     その先には、あの不気味なきぐるみがいる。
    「疑問があるなら、彼に訊きなさい。彼は私よりもずっと強い権限を持っているから」
     どういうことだ?
    「オレはわからないことだらけなんですよ。少しくらい、教えてくれてもいいでしょう?」
     彼女はもう何も答えなかった。
    「女の子が誘拐されて、困っているんです。貴女は悪いひとみたいにはみえない。ルールってなんです? それは、誘拐事件を解決するよりも大切なことなんですか?」
     やっぱり彼女は、なにも答えない。
     オレはため息をついて、後部座席のきぐるみに近づいた。
    「お前は知ってるのか? 聖夜協会や、ソルや、プレゼントのことを」
    「オレはほとんど、なんにも知らないよ」
     でも、と言って、きぐるみは彼女――リュミエールを丸っこい手で指した。
    「あいつはリュミエールの光景をプレゼントされたんだ」
    「リュミエール兄弟のことか?」
     きぐるみは、オレの質問には答えなかった。
    「妹の方はグーテンベルクだ。今日はいないがな」
    「ヨハン・グーテンベルク」
     映写機を作ったリュミエール兄弟と、印刷術のグーテンベルク。
     ソルはこのふたりの「プレゼント」で、こっちの情報を知ると言っていた。
     ――いったい、なんだってんだ。
     わからない。わからないことだらけだ。
     オレは着ぐるみの隣に腰を下ろす。
    「正直、このバスを待ちわびていたよ」
    「へぇ。オレに会いたかったのか?」
    「お前はどうでもいい。でも、未来を知りたい」
     みさきを救い出す手がかりになる未来。それだけが欲しい。
    「困ってるんだよ。最近、バスもなかなか来ないし、ソルのスマートフォンの電波もあまり入らない。なんとかならないか?」
    「おいおいヒーロー、ずいぶん弱気じゃないか。他人任せか?」
     ヒーローってなんだよ。
    「みさきが助かるなら、なんでもいい。オレひとりでどうこうする必要はない」
     バスのドアが閉まる。
     きぐるみは言った。
    「未来を変えられるのはソルだけだ。でもさ、お前が動かなきゃ、ソルだってなんにもできなくなっちまうんだぜ」
     君が頑張るしかないんだよ、ときぐるみは言った。
     バスの外の景色が、ゆっくりと流れはじめる。
    読者の反応

    Lalf @Lalf_GroupTRON 2014-08-02 00:00:20
    バスかもーん 


    KURAMOTO Itaru @a33_amimi 2014-08-02 00:01:25
    すごいなー,リュミエールとグーテンベルグの推察はどうやら正解だったようですねー… 





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