3D小説「bell」本編
■久瀬太一/8月16日/18時
タクシーで山の近くまで移動した。
さすがに今さら遅いか、とも思ったけれど、もしかしたらソルたちに会えるかもしれない。
大通りでタクシーを降り、小路を山の方向へと進む。道はなだらかな上り坂だ。意外に体力を奪われてつらい。でも懐かしい風景を眺めるのは悪い気分じゃない。
右手に畑がみえる。しばらく進むと、左手にはほんの小さな、細長い公園。ゾウのすべり台がある。覚えている。かつてオレは、友人たちとこの辺りを走り回っていた。
小路を左手に曲がり、少し進むと坂がその角度を増した。足元はまだアスファルトに覆われているが、木々が色合いを変え、いよいよ山に入ってきたなという実感がある。少し息が上がった。
右手に少し開けたスペースがあり、ぽんとコンテナが置かれている。以前からかわらない。中はちょっとした居住空間になっているのだ。越智の父が作ったものだが、秘密基地のようでうらやましかった。
オレは辺りを見渡す。
だがやはりソルらしき人物の姿はない。夏の山はひっそりと静まり返っている。
――遅かったか。
仕方ない。
どうせなら山を上ろう、と思った。それほど高い山でもないけれど、意外なくらいに見晴らしがいいのを覚えていた。
この山のことは、よく覚えていた。短い期間だったけれど、この山には何度も遊びにきた。
鬼ごっこをして、バーベキューをした。あのコンテナにこもって、携帯ゲーム機を持ち寄って遊んだこともある。夏になればもっと思い出が増えただろう。でもオレは、たしかその前に引っ越した。だから夏のこの山にくるのはたぶん初めてだ。
でも、春はどうだっただろう?
冬はどうだっただろう?
なぜかそのころのことが、上手く思い出せない。
ずきん、と、頭が痛んだ。
※
そして山のてっぺんに立ち、オレは少し驚く。
――あれ?
これまで、タイムカプセルを掘ったような穴は、どこにもなかった。
オレは周囲を見渡す。
ウキキと呼んでいた、なぜか浮きが引っかかった気がある。白と黒、ふたつのなんだかよくわからない像がある。生い茂った草の影に、赤い針金でできた星がある。
でも、タイムカプセルを掘り起こしたような穴は、どこにもない。
子泣き少将@優とユウカの背後さん @conaki_pbw 2014-08-16 18:08:32
穴掘った後がないか…
みお@3D小説はまだまだ続く @akituki_mio 2014-08-16 18:18:01
やっぱり久瀬くんのいる場所とソルが居る場所は繋がってないみたいだぬー
鬼村優作 @captain_akasaka 2014-08-16 18:20:17
いやまて。ポンちゃんがスイマだと確定できたのは、久瀬君が送った写真が決めてだったからだろ?じゃあなぜそんな話になるんだ…?
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