• このエントリーをはてなブックマークに追加
■久瀬太一/8月21日/21時30分
閉じる
閉じる

新しい記事を投稿しました。シェアして読者に伝えましょう

×

■久瀬太一/8月21日/21時30分

2014-08-21 21:30
    久瀬視点
    banner_space.png
     明かりをつけていないマンションの一室で、オレは5回、電話をかけた。
     まずは八千代雄吾に。
     だけど、彼は出なかった。

           ※

     次にオレは、父親に電話をかける。
     しつこくコールしていると、やがて父の、どこか間が抜けた声がきこえた。
    「どうした?」
    「訊きたいことがあるんだ」
     ソルから尋ねるよう言われていたことを、オレは順に尋ねる。
     まずはみさきの祖父について。彼は謎が好きだったのか? それと、彼がいなくなった正確な時期について。
    「頭を使う問題は、全般的に好きだったよ」
     と父は答える。
    「よく人に問題を出していた。そういうのを真ん中において、ああだこうだと言いながら酒を飲むのが好きな人だった。いなくなったのは、あまりはっきりとは知らない。10年前の、春ごろだったと思う」
     続けてオレは質問する。
     聖夜協会に入る方法について。
     父は答える。
    「さあな。メンバーの誰かと知り合って、入れてくれっていえばいいんじゃないか? 特別な資格がいるわけでもないよ、あんなもん」
     やはり父が知っている時代の聖夜協会と、今の聖夜協会はずいぶん違うのだろう。
     最後に尋ねる。
    「小さなころ、あんたにキーホルダーを貰ったんだが、覚えているか?」
    「どんなキーホルダーだよ?」
    「赤い帽子をかぶった、目つきの悪い少年の」
     少年ロケット。後ろにそう書かれていたような気がする。
    「いや。よく覚えてないな」
     と父は言う。
    「たぶん、どっかから貰ってきたもんだろう。それがどうかしたのか?」
    「なんか重要かもしれないんだよ」
     もし思い出したら教えてくれ、と告げて、オレは電話を切った。

           ※

     3件目は宮野さんだ。
    「ちょっと貴方なにしてたのよ、こっちは何度も電話してるんだから――」
     とまくしたてる彼女の言葉を適当に聞き流して、オレは尋ねる。
    「先月、一緒に水曜日の噂について調査しましたよね?」
     オレのバイト初日だ。まだ数度しか、彼女の元では働いていないが。
    「それがどうかしたの?」
    「あのときの調査について、詳しく教えて欲しいんです。どこまでが雪って人の指示で、どこからが宮野さんの独断なんですか?」
    「もう覚えてないわよ、そんなもん」
     そんなもんって。
    「まあでも、雪さんからの指示はざっくりしていたと思うから、だいたいは私が考えて調べたんじゃない?」
    「あのバスの停留所もですか?」
     ああ、と宮野さんが呟く。
    「停留所と、それからレストランは雪さんから貰った情報にはっきりあった気がするわね」
     なるほど。
     実際に奇妙なバスがやってきた停留所と、スイマと書かれたアタッシェケースがみつかったレストラン、か。
     オレは続けて尋ねる。
    「今は、なにか頼まれてるんですか?」
     宮野さんは、少し困ったような唸り声を出した。
    「最近、連絡が取れないのよね」
    「最近って?」
    「このあいだ、貴方と八千代さんに会って、雪さんとの電話を繋いだのが最後」
     なるほど。
    「でも、スイマの調査は続けてるんですよね?」
    「そりゃね。締め切り、もうすぐだし」
     そうか。ベートーヴェンは、おそらく月刊誌だろう。
     締め切りに追われる宮野さんと、水曜日の噂を調べてから、もうそろそろひと月経つ。
    「ところで、ミュージックプレイヤーはまだ手元にありますか?」
     とオレは尋ねる。
    「あるわよ。本音を言うと、早く八千代さんに返してあげだいんだけど」
    「オレが返しておきましょうか?」
    「それはダメ」
    「どうして?」
    「なんかね、私が持ってる方が都合がいいらしいのよ、雪さん曰く」
     どういうことだ。
     雪という人物の思惑が、まったくみえない。
    「中身はまだ教えてもらえないんですか?」
     とオレは尋ねた。
    「八千代さんに聞けば?」
     と言って、宮野さんは電話を切った。

           ※

     次は、ちえりだ。
     去年のクリスマス、誰と過ごしたのか尋ねるよう言われている。
     ――なんだそれ。
     と思うが、ソルと約束した以上、尋ねないわけにもいかない。
     なんとなく気が進まないまま彼女に電話をかけ、しばらくなんでもない会話と、それから少しだけみさきの話をした。
     いくつか、あのクリスマスパーティでの思い出話をして、それから尋ねる。
    「みさきは去年のクリスマス、どうしてたんだ?」
     去年? と彼女は、疑問形で呟く。
    「家族でケーキを食べましたよ。でも、あんまりパーティという感じではなかったです」
     またあのころみたいに、クリスマスパーティでお会いしたいですね、と彼女は言った。

           ※

     一通り電話をかけおえて、最後にオレは、もう一度八千代に電話を入れてみる。
     だが、どれだけコールしても、やはり彼はでない。
     ――大丈夫なのか?
     少し、不安になった。
     あいつは今、どこでなにをしているのだろう。
     諦めて、スマートフォンをポケットにしまったとき、玄関の方から音がきこえた。
     どうやら、家主が帰ってきたようだ。
    読者の反応

    子泣き中将@優とユウカの背後さん @conaki_pbw 2014-08-21 21:36:31
    マンション?家主?まさかノイマンの家?  


    八幡 @yawayawayawata 2014-08-21 21:41:53
    久瀬君どこにいるの…!  





    ※Twitter上の、文章中に「3D小説」を含むツイートを転載させていただいております。
    お気に召さない場合は「転載元のアカウント」から「3D小説『bell』運営アカウント(  @superoresama )」にコメントをくださいましたら幸いです。早急に対処いたします。
    なお、ツイート文からは、読みやすさを考慮してハッシュタグ「#3D小説」と「ツイートしてからどれくらいの時間がたったか」の表記を削除させていただいております。
    banner_space.png
    久瀬視点
    コメントを書く
    コメントをするにはログインして下さい。