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■山本美優/12月22日/22時
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■山本美優/12月22日/22時

2014-12-22 22:00
    山本視点
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     メールのことを忘れていられたのは、テストのあいだだけだった。
     私はひとつのことを始めると別のことを考えられなくなる。でもテストが終わったとたん、あのメールのことを思い出した。
     昨夜、センセイと名乗る人物から届いたメール。
     返信はまだしていなかった。
     得体をしれない人たちの「クリスマス懇親会」なんてものに、私は参加したくはなかった。ただでさえ人見知りだし、漠然とした身の危険のようなものを感じる。理性的に考えてあんなもの無視してしまうのが最適だとわかっていた。
     ひっかかっていたのは、やはり久瀬くんのことだ。
     彼は一体、どこに消えてしまったのだろう?
     センセイという人物は、少しでも彼のことを知っているのだろうか?
     私が返したいメールはこうだ。――懇親会とやらには参加できませんが、久瀬くんについて、知っていることをすべて教えてください。
     でもメールを送るだけで、なんだかこちらの居場所がばれてしまうような根拠のない不安があって、それでなかなか返信を書けないでいた。
     私は安いワンルームマンションのベッドに腰かけている。
     枕元のミルキーを一粒、口の中に放り込む。しばしば食べているのに懐かしい味だと感じた。ほんの少しだけ気持ちが安らぐ。
     マンションの窓からはうちの大学がみえた。本当に、大学の目の前にある学生用のアパートなのだ。
     暗い学校。うちの大学はとても小さくて、校舎の形や並び方も、他の大学よりもなんだか子供っぽい。その風景はしばしば、私をノスタルジックな気分にさせた。
     エアコンが効きすぎているのか、頭が少しぼうっとする。
     私は立ち上がり、少しだけ窓を開けてみる。
     冷たい空気を吸い込んで、小さく咳き込む。
     そういえば久瀬くんが私の小学校にいたのは、秋から冬にかけてだった。
     彼の名前を思い浮かべた直後に、鞄の中からジングルベルが流れ始める。
     長い。メールじゃない。どうしてこんな着信音なんだ、と誰でもない誰かに毒つきながら、私は鞄からスマートフォンをひっぱりだす。
     モニターには「非通知設定」と表示されている。
     電話。出た方がいいのだろうか? でも気持ち悪い。
     早く決めないと。このままだとコールが鳴りやんでしまうかもしれない。私を慌てさせないで欲しかった。私はすぐに追い詰められるし、追い詰められると自分でもわけのわからないことをしてしまうのだ。窮鼠猫を噛むという言葉は、決してネズミに対する褒め言葉ではない。
     結局私は応答してスマートフォンを耳に当てた。
     ――久瀬くんからの連絡。
     ほんの少しだけ、私はそれを期待していた。
     でも。受話器から聞こえてきたのは、どこか冷たく感じる女性の声だった。

           ※

    「山本さん?」
     と、その女性は言った。間違い電話ではないようだった。
     おそるおそる応える。
    「はい」
    「懇親会への参加は決めた?」
     どうしてそのことを知っているんだろう?
     センセイの関係者、なのだろうか?
    「貴女は、誰ですか?」
    「アルベルト」
     日本人じゃないのか? でもアルベルトは明らかに男性名だ。
    「偽名を名乗る人は、信用できません」
     と、私は言ってみた。どきどきする。
    「別に偽名というわけでもない。あだ名が近い」
    「本名は?」
    「どうして本名にこだわる?」
     どうしてって。上手く説明できないけれど、普通そうじゃないのか?
     やっぱり怪しい。クリスマス懇親会とやらには、参加しない方がよさそうだ。
     電話を切ろうとして、躊躇って、最後に尋ねる。
    「貴女は久瀬くんのことを知っていますか?」
     その女性は平然と答える。
    「知っている」
     息が詰まった。
    「え。本当に?」
    「10年前に消えた少年。消息はわからない」
    「どうして、知っているんですか?」
    「その理由は答えられない。すまないね」
    「答えられないって、どうして――」
     喋り終わる前に、ふいに。
     通話が切れた。
     ――なんなんだ、一体。
     でも。彼女は、久瀬くんのことを知っていた。
     クリスマス懇親会なんて怪しげなものにはでたくなかった。
     でも一方で、このスマートフォンを経て飛んでくる情報は、やっぱり彼に繋がっているようだった。
     手が小刻みに震えている。
     それから、窓を開けたままだということに気がついた。
    読者の反応

    あいう @aiu_096
    来たぞ!アルベルトだ!


    inamura @onthedish
    アルベルトさん女性か! 


    雑食人間@3D小説第2部キーホルダー運搬 @zassyokuman
    本編更新、アルベルトからの電話か。この話し方はどこかで?雪さんだっけ?


    姫蚕 @himeko0112
    アルベルトは久瀬君が10年前に失踪したという。ノイマンも聖夜協会も英雄を失ったというし、1部の主人公は一体なんだったんだ?なぜノイマンやファーブルと会えたのか。いわゆる平行世界説なのか?


    鬼村優作 @captain_akasaka
    尾道に大学2つしかないやん…


    あいう @aiu_096
    スカイプで特定がほぼ終了した件について…


    姫蚕 @himeko0112
    スカイプ組もキモい特定力だな。


    鬼村優作 @captain_akasaka
    なんで完全西日本開催なんだよwww 何のメリットもないだろうにwwww


    まにょ@ソル大阪 @mannnory
    フィニッシュは東京なんじゃないですかね?





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